ストレートで飲むコスパ最強ウイスキー 度数と原酒で選ぶ
ストレートで飲む手頃なウイスキー7本を、30mlあたりの価格と純アルコール単価で比較。トリス、角瓶、ティーチャーズ、陸などを好み別に紹介し、度数による刺激や加水の効果、店頭価格での計算方法も解説します。
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この記事で紹介した銘柄:サントリーウイスキー オールド・カナディアンクラブ 価格と購入先へ ↓
ストレートで「コスパ最強」を決める基準:価格だけでなく度数と容量で比べる
手頃な価格でストレートを楽しむなら、候補は次の7本です。
- 軽い飲み口が好み:トリスウイスキー
- 甘い木香が好み:ジムビーム、角瓶
- 香りの厚みを重視:サントリーオールド
- ほのかなスモーキーさが欲しい:ティーチャーズ ハイランドクリーム
- カナディアンウイスキーを試したい:カナディアンクラブ
- 濃さを自分で調整したい:キリンウイスキー 陸
ストレートで飲むときのコスパは、1本の値段だけでは決まりません。容量は700mlと500ml、アルコール度数は37%から50%まで差があります。そこで、まず30ml(シングル1杯)あたりの価格で比べます。計算式は「価格÷容量×30」です。度数の差は、純アルコール量あたりの価格で補って確かめます。
30ml(シングル1杯)あたりの価格で並べる
次の表は、メーカーが公表している税別の希望小売価格に消費税10%を加え、税込に換算した目安です。店頭の実売価格ではありません。純アルコール1mlあたりの価格は「価格÷(容量×度数)」で求めます。度数の差を確かめるための補助の指標として載せています。
| 銘柄 | 税別希望小売価格 | 容量 | 度数 | 純アルコール量 | 30mlあたり(税込換算) | 純アルコール1mlあたり(税込換算・補助) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| トリスウイスキー | 990円 | 700ml | 37% | 259ml | 約47円 | 約4.2円 |
| ティーチャーズ ハイランドクリーム | 1,610円 | 700ml | 40% | 280ml | 約76円 | 約6.3円 |
| カナディアンクラブ | 1,680円 | 700ml | 40% | 280ml | 約79円 | 約6.6円 |
| ジムビーム | 1,690円 | 700ml | 40% | 280ml | 約80円 | 約6.6円 |
| 角瓶 | 1,910円 | 700ml | 40% | 280ml | 約90円 | 約7.5円 |
| サントリーオールド | 2,250円 | 700ml | 43% | 約301ml | 約106円 | 約8.2円 |
| キリンウイスキー 陸 | 確認できる希望小売価格なし | 500ml | 50% | 250ml | 算出せず | 算出せず |
表の数字は、あくまで希望小売価格をもとにした試算です。実際に買うときは、店頭の税込価格(例: 1,222円前後・2026年10月26日時点)を同じ式に入れて計算し直してください。陸は500mlの瓶でも純アルコール量が250mlあり、700ml・37%のボトルとの差は1割弱にとどまります。容量の数字だけで「少ない」と判断すると、比較を誤ります。
単価が安いほど良い、とは限らない理由
純アルコール単価は「同じ量のアルコールを飲んだときの負担」を測る補助の目安です。度数が高いほど有利になる指標なので、香味の満足度とは別の軸として扱ってください。ストレートでは、度数の差がそのまま舌への刺激と香りの立ち方に表れます。37%と43%では、エタノールが口に当たる強さが違います。一方で、度数が高い銘柄ほど加水できる幅は広くなります。ただし、香りの強さや加水による変化は銘柄によって異なります。
瓶詰め度数の下限は、国や地域の規則で異なります。スコッチ(SWR 2009)、カナディアン、バーボンは、いずれも40%以上での瓶詰めが求められます。日本の酒類の法令にはこの下限が無いため、37%の製品が成り立ちます。トリスは37%、スコッチのティーチャーズは規則上40%以上です。ただし、飲み口の軽さは度数だけでは決まりません。
度数が高い銘柄は、数滴ずつ加水して香りを開かせる余地もあります。アルコール濃度が下がると、水に溶けにくい香気成分が液面へ移りやすくなるためです。50%の陸は冷却濾過をしていないため、加水で白く濁る場合があります(「冷却濾過をしない意味と白い濁り」で後述)。
ストレート向きかを判断する3つの軸
- アルコールの刺激:まず度数を見ます。次に、熟成がどこまで効いているかを見ます。熟成樽の条件も手がかりになります(新樽を使うジムビームの例は、後述の「原料の穀物と樽で、甘さの出方が変わる」で扱います)
- 香りの厚み:モルト原酒の個性と樽の種類から読み取ります。ティーチャーズ ハイランドクリームのキーモルトはアードモアです(次の章で詳述)。角瓶は山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒を使い、サントリーオールドはスパニッシュオーク樽原酒を強化しています
- 飲み続けて飽きにくいか:甘さ、苦み、木香のバランスで判断します。常飲用なら、ひと口目の派手さよりも、フィニッシュ(飲み込んだあとの余韻)に雑味が残らないかを確かめてください
条件別の選び方
- 1杯あたりの価格を最優先する場合:トリスウイスキー(30mlあたり約47円)。37%なので、同じ量を飲んだときのアルコール量は40%の銘柄より少なくなります。軽い飲み口を好む人に向きます
- 1杯を80円前後(税込換算)に抑えつつ個性も欲しい場合:ティーチャーズ ハイランドクリーム、ジムビーム、カナディアンクラブを飲み比べます。3本は1杯あたりの価格がほぼ同じなので、香味の違いだけで選べます
- 香りの厚みに上乗せして払える場合:角瓶(約90円)やサントリーオールド(約106円)を選びます。43%のオールドは、価格差を香りの立ち方で取り戻せるかを試す1本になります
- 加水で香りの変化を楽しみたい場合:50%の陸。価格で比べる前に、1杯の中で味の変わり方を見る銘柄です
1,000円台〜2,000円台でストレートに耐える銘柄と、香味の出どころ

この価格帯の候補は、度数が37%から50%まで分かれます。原酒の産地も日本、スコットランド、カナダ、アメリカと異なります。価格は前の章で比べたので、ここでは香味がどこから来るのかを整理します。
| 銘柄 | 度数 | 原酒・蒸溜・樽 |
|---|---|---|
| トリスウイスキー | 37% | モルト・グレーンウイスキーに加え、グレーンスピリッツを使用(メーカー表示) |
| 角瓶 | 40% | 山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒を使用 |
| サントリーオールド | 43% | スパニッシュオーク樽原酒を強化 |
| ティーチャーズ ハイランドクリーム | 40% | キーモルトはアードモア。グレーンはトウモロコシ由来2タイプ・小麦由来1タイプ |
| カナディアンクラブ | 40% | カナディアンウイスキー。カナダの規則で小型の木樽で3年以上熟成 |
| ジムビーム | 40% | トウモロコシ・ライ麦・麦芽大麦。ダブラーで再蒸溜し、新樽で熟成 |
| キリン 陸 | 50% | 富士御殿場蒸溜所のグレーン原酒主体にモルト原酒、一部に海外原酒。冷却濾過なし |
国産の3本:トリスウイスキー・角瓶・サントリーオールド
店頭に「トリス〈クラシック〉」の旧ラベルと「トリスウイスキー」の新ラベルが並んでいても、中味は同じです。2025年11月下旬以降に順次名称が変わっただけで、メーカーは中味を変えていないと案内しています。度数は37%で、候補の中で最も低い数字です。そのため、ストレートでも口に入れた瞬間のアルコールの熱さが抑えられます。その分、香りと味の量感も軽くなります。加水はほとんど必要なく、軽さをそのまま楽しむ1本です。
角瓶の甘い木香とバニラ系の香りは、山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒から来ます。バーボン樽とは、バーボンの熟成に使ったあとの樽です。バーボン熟成で生じたバニリンや、オーク材由来のウイスキーラクトン(ココナッツのような甘い香りの成分)が木部に残り、2回目以降の使用でも原酒に移ります。成分が生じる仕組みは、後述の「原料の穀物と樽で、甘さの出方が変わる」で説明します。
サントリーオールドについて、メーカーはスパニッシュオーク樽原酒を強化したと説明しています。スパニッシュオーク(ヨーロピアンオーク)は、アメリカンホワイトオークよりエラジタンニンが多く、色と渋みが出やすい樽材です。一般に、ウイスキー用のこの種の樽は、シェリーを一定期間詰めて木に染み込ませた「シーズニング樽」であることが多く、ソレラで長年使われた輸送樽とは別物です。香味は、樽材のタンニンと、シーズニングに使った酒の残りが合わさって生まれます。43%は700mlの候補で最も高い度数です。陸を除けば、ストレートで香りの厚みを最も得やすい位置にあります。注ぐ量はシングル(30ml)にとどめ、ひと口目は数秒口に含んでから飲み込んでください。舌が刺激に慣れ、樽由来の香りを拾いやすくなります。
輸入の3本:ティーチャーズ・カナディアンクラブ・ジムビーム
ティーチャーズ ハイランドクリームのキーモルト(ブレンドの骨格になるモルト原酒)はアードモアです。アードモアはピーテッドとノンピーテッドの両方の麦芽を使います。原酒は主にファーストフィル(バーボンを払い出した直後に初めて使う樽)のバーボン樽で熟成し、クォーターカスクやポートワイン用パンチョン樽も使います。クォーターカスクは小型の樽です。原酒の量に対して木に触れる面積の割合が大きいため、樽の成分が早く移ります。グレーン原酒には、トウモロコシ由来2タイプと小麦由来1タイプを使っています。ストレートでは、グレーンの穀物の甘さの上にモルトの香りがどう乗るかを確かめてください。
カナディアンクラブはカナディアンウイスキーです。カナダの規則では、カナダ国内で糖化・蒸溜し、小型の木樽で3年以上熟成させ、40%以上で瓶詰めすることが求められます。一方、バーボンと違って新樽を使う義務はありません。
ジムビームの原料はトウモロコシ、ライ麦、麦芽大麦です。トウモロコシが甘さの土台をつくり、ライ麦がスパイシーさを加えます。原酒はダブラー(連続式で得た原酒をもう一度通す単式の再蒸溜器)で再蒸溜します。樽と熟成については、後述の「原料の穀物と樽で、甘さの出方が変わる」で扱います。
キリン 陸:濃さを自分で決める1本
キリン 陸は、富士御殿場蒸溜所のグレーン原酒を主体にモルト原酒をブレンドし、一部に海外原酒を使っています。同蒸溜所は、5塔式の連続蒸溜器、ケトル蒸溜器、ビアカラムとダブラーを組み合わせた蒸溜器でグレーン原酒を造り分けています。グレーン主体でも、原酒の性格に幅があります。まず少量を50%のまま確かめてください。刺激を強く感じたら、常温の水で濃さを決めて飲みます。30mlに対する加水量の目安は次のとおりです。
- 水約5ml:約43%。サントリーオールドと同じ濃さ
- 水約7.5ml:約40%。角瓶やジムビームと同じ濃さ
- 水30ml(トゥワイスアップ):25%。香りの変化を最も追いやすい濃さ
安くてもストレートで飲める理由を製法から読み解く
「安いウイスキーはストレートでは飲めない」という通説は、価格の決まり方から見ると成り立ちません。値段を押し上げるのは、熟成年数、モルト原酒の比率、樽の調達コスト、生産規模です。長く寝かせるほど在庫を抱える期間が延び、樽からの蒸発(エンジェルズシェア)で液量も減ります。また、単式蒸溜器で仕込みごとに造るモルト原酒は、連続式で大量に造れるグレーン原酒より原価が高くなります。どれも、ストレートでの刺激の少なさや雑味のなさとは別の要素です。
なお、ブレンデッドでは、キーモルトや蒸溜所の仕様が製品にそのまま出るわけではありません。以下は、香味の方向を読む手がかりとして扱ってください。
グレーン原酒は「無個性」ではない
グレーン原酒は連続式蒸溜で高い度数まで精留するため、フーゼル油などの重い成分が抜け、クセの少ない原酒になります。ただし、各製品のグレーン原酒の比率は公表されていないことが多く、ストレートでの刺激や後味は製品ごとの香味として確かめる必要があります。たとえばトリスウイスキーについて、メーカーはモルト・グレーンウイスキーに加えてグレーンスピリッツの使用を表示していますが、配合比率は公表していません。また、軽さの度合いは蒸溜方法で変わります。前の章で触れたとおり、富士御殿場蒸溜所は3種類の蒸溜器を使い分けています。塔の段数が多い連続式ほど成分が削られて軽くなり、バッチ式のケトルやダブラーでの再蒸溜ほど香味成分が残って厚みが出ます。キリン 陸のようなグレーン主体のブレンドを「軽いだけ」と決めつけられないのは、このためです。
原料の穀物と樽で、甘さの出方が変わる
ティーチャーズ ハイランドクリームはトウモロコシ由来と小麦由来のグレーン原酒を併用し、ジムビームはトウモロコシ・ライ麦・麦芽大麦を使います。一般的な傾向として、トウモロコシは甘さに、ライ麦はスパイシーな印象につながりやすいとされます。ただし、蒸溜度数や熟成で出方は変わります。原料表示で味を決めつけず、舌先に甘さが来るか、飲み込んだあとに胡椒のような刺激が残るかを確かめてください。
バーボンは米国の規定で、内側を焦がした新しいオーク容器での熟成が求められます。4年ほどの熟成でも色が濃く出やすいのは、このためです。チャーは、樽の内面を炎で炭化させる処理です。炭化層は硫黄系の香りを吸着し、色の抽出も助けます。その下の加熱された木部(レッドレイヤー)では、ヘミセルロースが分解して甘くカラメルに似た成分が、リグニンが分解してバニリンが生じます。これらは熟成中に原酒へ溶け出します。トーストは炭化させずに木を加熱する処理で、炭化層はできません。新樽では、こうした成分がまだ前の中味に抽出されていないため、使用済みの樽より強く出ます。ジムビームのメーカーの製法説明では、原酒を連続式蒸溜器とダブラーで蒸溜し、内側を焦がした新しいアメリカンホワイトオーク樽に詰めて熟成させます。ジムビーム(ホワイトラベル)の熟成期間は4年です。一方、角瓶のバーボン樽原酒やサントリーオールドのスパニッシュオーク樽原酒は、使用済みの樽や樽材の違いによって、成分の出方が異なります。リフィル(2回目以降の使用)はファーストフィルより出方が穏やかで、原酒そのものの香りが前に出ます。
蒸溜器の形と酒質の重さ
ポットスチルでは、蒸気の一部が首やラインアーム(蒸気を冷却器へ送る管)で冷えて釜に戻ります。これを還流といいます。還流が多いほど重い成分が釜に戻り、酒質は軽くなります。首が高い形、くびれや膨らみがある形、ラインアームが上向きの形は還流を増やします。背が低くラインアームが下向きの形は、重い成分を通しやすくなります。アードモアは、胴が玉ねぎのように膨らんだオニオン型を初溜・再溜とも4基ずつ使います。
度数ごとのストレートの感じ方
- 37%(トリスウイスキー):舌に当たる熱さが最も穏やか。加水すると香りが薄まりやすいので、まずはそのまま
- 40%(角瓶・ティーチャーズ・カナディアンクラブ・ジムビーム):ひと口目はそのまま、2口目は1〜2滴加水して比べる
- 43%(サントリーオールド):含んだ直後の刺激が一段強い。重く感じたら数滴ずつ加水
- 50%(キリン 陸):まず少量をそのまま確かめる。刺激を強く感じる場合は少量ずつ加水。加水を試せる幅は候補の中で最も広い
冷却濾過をしない意味と白い濁り
冷却濾過は、瓶詰め前に原酒を冷やし、低温で析出する長鎖脂肪酸エチルエステルなどをフィルターで除く処理です。目的は、冷やしたり加水したりしても濁らないようにすることです。これらの成分は、一般にアルコール度数が46%前後を下回ると溶けにくくなります。ノンチルフィルタード(冷却濾過をしない)製品は、46%以上で瓶詰めされることが多くあります。この度数帯なら、常温で成分が溶けたまま保たれやすいためです。キリン 陸は50%で、冷却濾過をしていません。そのため、瓶の中では澄んでいても、加水で度数が下がったり、氷や冷蔵で冷えたりすると、成分が溶けきれずに白く濁ることがあります。劣化ではありません。冷えて濁った場合は、常温に戻ると透明になることがあります。冷却濾過の有無が口当たりや香りにどう表れるかは、銘柄によって異なります。実際に飲み比べて判断してください。
手頃なボトルをストレートでおいしく飲む手順:グラス・量・加水・保管

グラスの選び方:香りを集めるか、刺激を逃がすか
チューリップ型のテイスティンググラスは、膨らんだ胴で揮発した香りを、すぼまった口に集めます。香りを細かく拾えるため、ノージング(香りを嗅いで評価すること)に向いた形です。ただし、エタノールの蒸気も同じように集まるので、鼻への刺激も強く感じます。ロックグラスは口が広く、香りが散るぶん刺激も逃げるので、鼻当たりは穏やかです。ショットグラスは液面が小さく、香りがほとんど立ちません。ひと口で流し込む形になるため、舌全体に刺激が当たります。
- 37〜40%の銘柄で香りを比べたい:チューリップ型
- 43%以上を加水せずに飲む、または鼻への刺激が苦手:最初はロックグラス。慣れたらチューリップ型へ
- 香りを確かめたい場合:ショットグラスは不向き
量の目安と香りの取り方
バーではシングルが約30ml、ダブルが約60mlです。自宅では、まず15ml前後を注いで香りと刺激を確かめ、シングルまで足すかどうかを決めます。チューリップ型は液量が少ないほど液面の上の空間が広くなり、香りがたまりやすくなります。
注いですぐ鼻を近づけると、先に揮発するエタノールが鼻の粘膜を刺激し、ほかの香りが分かりにくくなります。次の順で嗅いでください。
- 注いだら1〜2分置く
- グラスを鼻から数cm離して、最初の香りを確かめる
- 軽くスワリング(グラスを回して液を内壁に広げ、香りを立たせること)をする
- 鼻を近づけて嗅ぐ。口を少し開けておくと刺激が抜けやすい
- 少量を口に含む
加水の手順:スポイトで数滴ずつ
香りの少ない常温の軟水を、スポイトか小さじで用意します。30mlに対して1〜2滴ずつ加え、そのたびにスワリングして香りを確かめます。香りが開いたと感じたところで止めてください。水を入れすぎると元には戻せません。トゥワイスアップは、ウイスキーと常温の水を1:1で割る飲み方です。数滴の加水が「香りが最も開く点」を探す方法なのに対し、トゥワイスアップは度数を一気に下げ、刺激を除いた状態で香りの全体像を見る方法です。そのぶん味の濃さは薄くなります。
キリン 陸は、2つのグラスに分けて比べると違いがはっきりします。1つは50%のまま、もう1つは前の章の目安で約40%まで加水して並べます。さらに、40%に下げた陸を角瓶やジムビームと並べてください。度数を近づけると、各製品の香味を比べやすくなります。ただし、樽、熟成、ブレンド、濾過の違いは残り、加水によって陸自体の香味も変わります。比べるときは、各銘柄を同じ量ずつ、同じ温度のグラスに注ぎます。陸は加水してから少し置き、香りが落ち着いてから並べて嗅いでください。
温度とチェイサー
冷やすと香気成分が揮発しにくくなり、香りが閉じます。ボトルもグラスも常温が基本です。香りが弱いと感じたら、グラスの胴を手のひらで包んで少し温めてください。チェイサー(口直しの水)を横に置き、ひと口ごとに飲むと、舌の刺激がリセットされ、次のひと口でも香味を拾いやすくなります。
開栓後の保管
開栓後は、瓶の中の空気に触れて香りが少しずつ変わります。残量が減って空気が増えるほど、変化は早まります。半分を切ったら飲み切る予定を立てるか、ガラスの小瓶に口元までいっぱいに移してください。キャップはしっかり締め、立てて保管します。直射日光は色と香りを傷めます。温度変化があると、瓶の中の空気が膨張と収縮を繰り返して出入りするので、場所選びでも避けてください。
バーで一杯だけ試す
注文では「銘柄名」「ストレート」「シングルかダブル」「チェイサーの有無」の4点を伝えます。たとえば「ジムビームをストレートで、シングル、チェイサー付きでお願いします」と頼みます。陸を試すなら、加水用の水を別に頼み、自分で数滴ずつ加えてください。手頃な銘柄はバーでも比較的安い価格に設定されていることが多いので、ボトルを買う前に一杯だけ試す方法として使えます。
好み別の選び方と、ラベル表示で見落としやすい点
好みと条件別の早見表
| 好み・条件 | 候補 | 選ぶ根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ①とにかく安く常飲したい | トリスウイスキー | 30mlあたり約47円(税込換算)で候補中最安 | 37%なので香りの量感は軽い |
| ②甘い木香が好き | ジムビーム、角瓶 | 新樽で熟成するバーボン/山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒 | 角瓶は使用済みの樽なので、甘さの出方は新樽より穏やか |
| ③香りの厚みを重視 | サントリーオールド | 43%・スパニッシュオーク樽原酒を強化 | 樽由来の渋みも出る |
| ④スモーキーさを少し感じたい | ティーチャーズ ハイランドクリーム | キーモルトのアードモア蒸溜所がピーテッド麦芽を使う | 飲み比べでは40%の中で最後に回す |
| ⑤濃さを自分で調整したい | キリン 陸 | 50%・冷却濾過なし | 500ml瓶。希望小売価格は確認できず |
④のスモーキーさは、麦芽を乾燥させるときに焚いたピート(泥炭)の煙に含まれるフェノール類が麦芽に付くことで生まれます。麦芽の段階ではフェノール値(ppm)で示されますが、蒸溜のカット(原酒として取り分ける範囲)や熟成によって、製品に残る量は変わります。
選んで失敗しやすい例
- 37%に濃い香りを期待する:トリスウイスキーは刺激の穏やかさが長所です。厚みが欲しいなら43%のサントリーオールドか、陸を加水して使います
- バーボンの甘さをカナディアンクラブに求める:バーボンには新樽の義務があり、カナダの規則にはありません(前の章を参照)。同じ40%でも甘さの出方は異なります
- 陸を冷やして飲み、濁って驚く:冷却濾過をしていないためで、劣化ではありません(「冷却濾過をしない意味と白い濁り」参照)
「国産ウイスキー」と「ジャパニーズウイスキー」
「ジャパニーズウイスキー」には日本洋酒酒造組合の自主基準があります。組合員は、この基準を満たす商品に「ジャパニーズウイスキー」と表示できます。2021年4月に運用が始まり、それ以前の表示を認める経過措置は2024年3月末で終わりました。基準では、糖化・発酵・蒸溜を日本国内の蒸溜所で行うこと、日本国内で3年以上貯蔵すること、日本国内で瓶詰めし、瓶詰め時のアルコール分を40%以上とすることなどを求めています。一方、「国産ウイスキー」は日本で造られた・瓶詰めされたという意味の一般的な呼び方で、原酒の産地までは保証しません。
キリン 陸は一部に海外原酒を使うと案内されているため、この基準の「ジャパニーズウイスキー」には当たりません。角瓶とサントリーオールドは、メーカーが基準適合を明記しています。トリスウイスキーは度数37%のため、この基準には適合しません。購入時は、ラベルやメーカーの案内に「ジャパニーズウイスキー」の表記があるか、原酒の産地がどう説明されているかを確かめてください。
価格表示の読み方
メーカーが公表しているのは税別の希望小売価格です。
最終的な選び方の手順
- 1本の予算を決める
- 税込の実売価格から30mlあたりの価格を出し、度数の差は純アルコール単価で確かめる
- 香りの方向を決める(甘い/軽い/香りが厚い)
- 可能ならバーで一杯試す
- ボトルを買う
よくある質問

色が濃い銘柄ほど熟成が長く、味も濃いと考えてよいですか?
そうとは限りません。スコッチはSWR 2009でプレーンカラメルによる着色が認められています。ボトル裏の原材料欄に「カラメル色素」の記載があるかが、着色の有無を確かめる手がかりになります。また、新樽を使うバーボンは、短期の熟成でも色が濃く出ます。色は樽と着色の影響を受けるため、度数と原酒の説明を見て判断してください。
家で複数の銘柄を飲み比べるときは、どの順番で飲めばよいですか?
度数の低いものから飲みます。トリスウイスキー(37%)、40%の4本、サントリーオールド(43%)の順が目安です。ティーチャーズはピーテッド麦芽を使うアードモアがキーモルトで、煙の香りが舌に残る可能性があるため、40%の中では最後にします。量はすべて同じにそろえ、1杯ごとにチェイサーで舌を戻してください。
1本でストレート何杯分になり、1杯あたりいくらになりますか?
シングル(約30ml)なら、700mlで約23杯、500mlの陸で約16杯です。希望小売価格を税込に換算して計算すると、トリスウイスキーは1杯約47円、サントリーオールドは約106円です。自宅では15mlずつ試すと、杯数は倍になります。実際の購入価格でも同じように計算し、ボトルを買うかバーで1杯試すかを決める材料にしてください。
ハイボール用に買ったボトルをストレートで試すとき、何を見ればよいですか?
まず15mlをチューリップ型かロックグラスに注ぎ、1〜2分置いてから香りを確かめます。少量を口に含んだら、次の3点を見てください。
- 刺激が舌先に出るか、喉の奥に出るか
- 飲み込んだあとの余韻が続くか、すぐ消えるか
- 余韻に苦みやえぐみなどの雑味が残るか
次に1〜2滴加水し、同じ3点がどう変わるかを比べます。そのままでも加水後でも刺激ばかりが目立ち、余韻に香りが残らない場合は、炭酸で割る飲み方に回すのが無難です。
出典・参考にした情報
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。