飲み方・初心者ガイド

コンパスボックスの飲み方|ストレート・ロック・ハイボール全解説

蒸溜所を持たないブレンダー、コンパスボックスの定番4本をストレート・ロック・ハイボールでどう飲むかを解説。オーチャードハウスやピートモンスターなど銘柄別のおすすめ、46%・冷却濾過なしが加水に与える影響、樽から飲み方を選ぶコツがわかります。

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コンパスボックスとは|蒸溜所を持たないブレンダーだと知ると飲み方が決まる

コンパスボックスは、2000年にジョン・グレイザーが創業したスコッチウイスキーのブランドです。ロンドン・リッチモンドの「Blending Room」で原酒をブレンドしています。「どこの国のウイスキーか」と聞かれたら、会社の拠点はイングランドのロンドンで、中身はスコットランドの蒸溜所でつくられた原酒を使うスコッチだと答えるのが正確です。

結論から言うと、定番4本のおすすめの飲み方は次のとおりです。

  • オーチャードハウス:ストレートか、数滴の加水
  • ネクタロシティ:常温のストレートか、ハイボール(1:3)
  • ザ・ピートモンスター:ハイボール
  • クリムゾンカスク:ストレートかトゥワイスアップ

自社蒸溜所を持たず、原酒と樽で香味を組み立てる

コンパスボックスは自社の蒸溜所を持ちません。各地の蒸溜所から原酒を調達し、どの原酒を選び、どの樽で熟成させ、どの比率で合わせるかで香味を組み立てます。そのため「コンパスボックス蒸溜所」は存在しません。スチルの数や形状、ラインアームの角度、ミドルカット(製品に使う部分)の取り方といった蒸溜設備の仕様も、ブランドとしては公表されていません。蒸溜段階の個性は原酒を選ぶ時点で織り込まれ、ブランドの設計は「選ぶ」ことと「樽で育てる」ことに集中しています。この前提で見ると、銘柄ごとの違いを読み解きやすくなります。

樽の種類香味の傾向主に使う銘柄
ファーストフィル(初めて原酒を詰める)のバーボン樽バニラ、ハチミツ、明るい果実味オーチャードハウス、ネクタロシティ、クリムゾンカスク(一部)
特注のバージンアメリカンオーク(未使用の新樽)ココナッツ、キャラメル、濃いバニラネクタロシティ
シェリー系の樽(オロロソのバット、パロコルタドでシーズニングしたバット、リフィルのシェリーパンチョンなど)ドライフルーツ、ナッツ、厚みのある甘みクリムゾンカスク、ネクタロシティ(一部)
スペイン産赤ワインのバリック赤い果実の印象、タンニンクリムゾンカスク
特注のフレンチオークスパイス、引き締まった渋みオーチャードハウス(初版の自社ハイランドモルトブレンド)、クリムゾンカスク(ヘビートースト、一部)

シーズニング樽とは、ウイスキーの熟成用にオロロソなどのシェリーを一定期間入れて馴染ませた樽のことです。ボデガのソレラで長年シェリーの熟成に使われた樽とは別物で、スコッチで使うシェリー樽の大半はこのシーズニング樽です。

飲み方を決めるときは、樽の種類を起点にすると判断がぶれません。銘柄ごとの最適な飲み方は、後半の早見表で整理します。オロロソ由来の重さを持つクリムゾンカスクは、ストレートか少量の加水で質感を確かめるのに向いています。

46%・着色なし・冷却濾過なしが飲み方に与える影響

コアレンジは、オーチャードハウス、ネクタロシティ、ザ・ピートモンスター、クリムゾンカスクの4本です。いずれも46%で、着色・添加物・冷却濾過のどれも行っていません。冷却濾過は、ウイスキーを低温にして脂肪酸エステルなどを析出させ、濾し取る工程です。濁りを防ぐ効果がある一方、取り除かれる成分は口当たりの厚みや香りにも関わります。この工程を省くと、質感と香りが残りやすくなります。

  • 加水や冷却で白く濁ることがあります(詳しくは後述)
  • 46%は加水の余地がある度数です。まずストレートで香りを取り、次に数滴ずつ水を足して香りの開き方を確かめられます
  • 着色していないので、液色の濃淡は樽の種類と熟成の結果として読めます

経営体制の変遷:「バカルディ傘下」は誤り

2015年4月にバカルディが取得したのは少数株で、2022年からはロンドンの投資会社Cælum Capitalが過半数株主です。創業者グレイザーは2024年5月に経営から退いて株主として残り、ディレクターはブレンドを共に手がけてきたジェームス・サクソンが継いでいます。現行のボトルをグレイザー個人の作品として紹介するのは、実態に合いません。

透明性キャンペーンと配合比率の開示

SWR 2009(スコッチウイスキー規則)では、熟成年数を表示する場合、書けるのは最も若い原酒の年数だけです。コンパスボックスは2016年2月に「透明性キャンペーン」を始め、熟成年数や配合比率を任意で開示できるよう規制の見直しを求めました。法律は変わりませんでしたが、求めた消費者には詳細を伝える運用で決着しています。

その代表例がオーチャードハウスです。メーカーが開示した2021年の初版の配合では、ファーストフィルのバーボンバレルで熟成したリンクウッド39%、クライヌリッシュ29%、ベンリネス20%が軸です。これに、オロロソでシーズニングした樽のアベラワー、ファーストフィルのバーボン樽のカリラ、特注フレンチオーク樽の自社ハイランドモルトブレンドを少量加えています。比率がわかれば、リンゴや洋ナシの香りはバーボン樽熟成の主要原酒から、ほのかなピートはカリラから来ていると見当がつきます。ストレートで香りを探すときの手がかりになります。なお、2026年版ではレシピが変わり、クライヌリッシュの比率が上がり、ベンリネスがグレンマレイに替わっています。

いま買える定番は4本|2024年のコアレンジ刷新と各銘柄の設計

ウイスキーのイメージ写真

コンパスボックスは2024年にコアレンジを刷新しました(海外での発表は2024年7月29日)。このときスパイスツリーとザ・ストーリー・オブ・ザ・スパニアードは終売し、代わりにネクタロシティとクリムゾンカスク(Crimson Casks)が加わっています。終売した2本を「定番」として紹介している記事や売り場のPOPは、刷新前の情報です。2025年1月22日に日本で発表されたコアコレクションは、オーチャードハウス、ネクタロシティ、ザ・ピートモンスター、クリムゾンカスクの4本です。日本向けはいずれも700ml・46%で、オープン価格で販売されています。

区分を見ると、ネクタロシティだけがブレンデッドスコッチ(モルトとグレーンを合わせたもの。SWR 2009の区分)で、ほかの3本はモルトだけを合わせたブレンデッドモルトです。

銘柄区分設計の軸香りの軸
オーチャードハウスブレンデッドモルト(モルトのみ)リンクウッド、クライヌリッシュ、ベンリネスをファーストフィルのバーボンバレルで熟成(2021年初版の開示。2026年版はベンリネスをグレンマレイに置き換え)リンゴ、洋ナシ、トーストしたモルト、ほのかなピート
ネクタロシティブレンデッドスコッチ(モルト+グレーン)ファーストフィルのバーボン樽、特注でトーストしたミズーリ産バージンオーク樽、パロコルタドでシーズニングしたバット、リフィルのシェリーパンチョンバニラ、ハチミツ、ココナッツ、キャラメル
ザ・ピートモンスターブレンデッドモルト(麦芽100%)ヘビーピートのアイラ原酒に、ミディアムピートのハイランド原酒を合わせるピートの煙
クリムゾンカスクブレンデッドモルト(モルトのみ)グレンマレイ、ベンリネス、ティーニニックなどのモルトを、オロロソのシェリーバット主体のワイン系の樽を中心に、バーボンバレル、特注フレンチオークも使って構成オロロソ樽由来の厚みのある甘み

オーチャードハウス:配合が読める果実系

2021年発売。2026年版でレシピが変わり、Whisky Advocate誌で93点を得ています(2021年の初版は89点)。配合は前の章で触れたとおりです。構成原酒の輪郭をつかむには、クライヌリッシュ 14年を横に並べてストレートで比べ、共通する香りを探す方法が有効です。少量配合のアベラワー(オロロソでシーズニングした樽)とカリラは主役ではありません。それぞれ中盤の丸みと、余韻のほのかな煙を担っています。

ネクタロシティ:甘さはトーストした新樽から来る

甘い香りの源は、樽材の焼き方にあります。トーストは、炎で表面を炭化させるチャーより低い温度で、時間をかけて樽材を加熱する処理です。熱でリグニンが分解されるとバニリン(バニラ香の成分)が生じ、ヘミセルロースからはキャラメルのような香ばしい成分が生まれます。アメリカンオークはもともとオークラクトン(ココナッツ香の成分)を多く含み、トーストでさらに引き出されます。加えてバージンオークは、前に詰めた酒に成分を吸い出されていません。そのため、ファーストフィルのバーボン樽よりも抽出が強く出ます。

原酒は、日本の発表資料やWhisky Advocate誌の紹介によると、クライヌリッシュ、バルメナック、リンクウッドのモルトと、ガーヴァン、キャメロンブリッジのグレーンです。グレーン原酒は連続式蒸溜機で高い度数まで蒸溜されるため、麦芽由来の香味が軽く、新樽から引き出したバニラやココナッツを受け止める土台になります。樽にはバーボン樽と新樽のほか、パロコルタドでシーズニングしたバットとリフィルのシェリーパンチョンも使われ、甘さの奥にナッツのような陰影を加えています。

ザ・ピートモンスターとクリムゾンカスク

ザ・ピートモンスターの煙は、麦芽を乾燥させるときに焚くピートの煙に含まれるフェノール類が、麦芽に付着して生まれます。設計は、ヘビーピートのアイラ原酒にミディアムピートのハイランド原酒を合わせるもので、配合比率はバッチによって異なります。カリラ 12年と飲み比べると、どこまでがアイラ由来の煙かを判断しやすくなります。

クリムゾンカスクは、Whisky Advocate誌の紹介によると、グレンマレイ、ベンリネス、ティーニニックと、アベラワー近郊の名前を伏せた蒸溜所のモルトで構成されています。樽の内訳は、ワイン系の樽(オロロソのシェリーバット、スペイン産赤ワインのバリック、シェリー樽)が78.2%、ファーストフィルのバーボンバレルで熟成したベンリネスが14.5%、特注のヘビートーストのフレンチオークで熟成したハイランドモルトが7.3%です。オロロソバットがシーズニング樽かどうかなど、シェリー樽の履歴は未公表です。

価格と入手の確かめ方

  • 国内価格:オーチャードハウス (700ml・46%)
  • 国内価格:ネクタロシティ (700ml・46%)
  • 国内価格:ザ・ピートモンスター (700ml・46%)
  • 国内価格:クリムゾンカスク (700ml・46%)
  • 英国価格:ネクタロシティ55ポンド、クリムゾンカスク65ポンド
  • 日本ではオープン価格のため、実売価格は店頭か、輸入元の有限会社スリーリバーズ(THREE RIVERS)の案内で確認

最初の1本の選び方

  • 果実の香りを楽しみたい:オーチャードハウス
  • バニラやココナッツの甘さが好き:ネクタロシティ
  • 煙の香りを試したい:ザ・ピートモンスター
  • シェリー樽の厚みを求める:クリムゾンカスク

飲み方の基本と、46%・冷却濾過なしだから起きること

ストレート:常温30mlで、ノージング・パレット・フィニッシュの順に確かめる

グラスは、口がすぼまったチューリップ型のテイスティンググラスを使います。すぼまった口に香りが集まり、アルコールの刺激と香りを分けて嗅ぎやすくなるためです。量はシングル30ml、ダブル60mlが目安で、温度は常温にします。確かめる順番は3段階です。まずノージング(香りを取る)で、鼻を少し離して軽く嗅ぎます。次にパレット(口中の味)で、少量を舌全体に行き渡らせます。最後にフィニッシュ(余韻)で、飲み込んだ後に残る香りの長さと質を見ます。オーチャードハウスなら、余韻の最後に出るほのかな煙がカリラ由来かどうかを、この段階で探すと設計が読めます。

加水とトゥワイスアップ:水で香りが立つ理由

加水はスポイトで1〜2滴ずつ行い、そのたびにノージングをやり直します。少量の水で香りが立つのは、アルコール濃度の変化が香気成分の居場所を変えるからです。エタノールは、水に溶けにくい香気成分を液中に抱え込みます。濃度が下がるとその力が弱まり、成分が液面へ移って揮発しやすくなります。ピートの煙に関わるフェノール類のように水に溶けにくい成分ほど、この変化が出やすくなります。46%は40%の銘柄より薄める幅が大きいので、何滴目で香りが開き、何滴目で薄まり始めるかを段階的に確かめられます。

30mlに対する加水の始め方は、銘柄ごとに次を目安にします。

  • オーチャードハウス:1〜2滴から。果実香が広がったところで止める
  • ネクタロシティ:2〜3滴から。バニラが前に出て、甘さの重さが和らぐ
  • ザ・ピートモンスター:数滴ずつ増やす。煙の奥のハイランド原酒の甘みが見えてくる
  • クリムゾンカスク:1〜2滴から。厚みを残したまま香りを分けたいときはトゥワイスアップへ進む

トゥワイスアップは、ウイスキーと常温の水を1:1で合わせる飲み方です。46%なら約23%になり、ブレンダーが香りを評価するときの濃度に近づきます。アルコールの刺激に隠れていた原酒ごとの香りが分かれて感じられるので、ブレンドの設計を読み取りたいときに向いています。

ロック・ハイボール・水割りの比率と度数

飲み方比率(ウイスキー:割り材)度数の計算値要点
トゥワイスアップ1:1(常温の水)約23%ブレンドの構成を読む
ハイボール1:3〜1:4(炭酸)約11.5%〜約9.2%香りの持ち上がりと爽快さ
水割り1:2〜1:2.5(水)約15%〜約13%食中に長く飲む

度数は、氷の溶け水を含まない計算値です。

  • ロック:大きく溶けにくい氷を使います。冷やすと揮発が抑えられて香りが閉じ、甘みも感じにくくなります。溶けた水で濃度は下がり続けるので、最初の一口と終盤の味が違うことを前提に飲み進めます
  • ハイボール:①冷えたグラスに氷を縁まで詰める②ウイスキーを注ぎ、10回程度ステアして冷やす③溶けた水を捨てて氷を足す④冷えた炭酸を氷に当てないよう、グラスの内側に沿わせて注ぐ⑤バースプーンで縦に1回持ち上げる。炭酸を氷に当てたり混ぜすぎたりすると、炭酸が抜けます。46%は40%の銘柄より香りが残りやすく、1:4まで炭酸を増やしても味が崩れにくくなります
  • 水割り:氷を入れてステアし、温度と濃度をそろえてから飲みます。ネクタロシティのように樽由来の甘さが強い銘柄は、1:2から始めると甘さの輪郭が残ります

白く濁るのは劣化ではない

冷却濾過をしていないボトルは、冷やしたり加水したりすると白く濁ることがあります。脂肪酸エステルなど、アルコール度数が高く温度が十分にあるうちは溶けている成分が、度数と温度が下がって溶けきれなくなり、細かい粒として現れるためです。前の章で触れたとおり、これは冷却濾過で取り除かれるはずだった成分です。濁りが出たことは、その成分が残っている証拠になります。覚えておくことは次の3点です。

  • 冷却濾過をしていないために起きる現象で、品質の劣化ではない
  • ロック・水割り・ハイボールで濁りやすい
  • 濁ってもそのまま飲める

開栓後の保管

瓶の中の空気が増えるほど、酸化と香りの揮発が進みます。保管は直射日光を避け、瓶を立てて行います。度数の高い液体が栓に触れ続けると、栓が傷みやすくなるためです。残量が減るほど瓶内の空気が増え、香りの変化が早まります。

銘柄×飲み方の早見表|4本それぞれの最適解と失敗例

ウイスキーのイメージ写真

4本の飲み方は、香りの主役がどの成分かで決まります。樽由来の香りには、冷やすと揮発しにくくなり閉じやすいものと、炭酸や低温でも残りやすいものがあります。下の表は、その違いを銘柄ごとに整理したものです。

銘柄最適解次点避けたい飲み方と理由
オーチャードハウスストレート、数滴の加水ハイボール(ほのかなピートが輪郭を締める)キンキンに冷やしたロック。青リンゴのようなエステル香が揮発せず閉じる
ネクタロシティ常温のストレート、加水ハイボール(1:3で甘さが残る)香りを確かめたい場面でのロック。バニラやココナッツが弱まる
ザ・ピートモンスターハイボールストレート(煙の下の甘みを探す)冷やしすぎたロック。煙は残るが、ハイランド原酒の甘みが消える
クリムゾンカスクストレート、トゥワイスアップ少量の加水濃いハイボールや薄い水割り。タンニンが浮くか、香味がぼやける

オーチャードハウスとネクタロシティ:冷やし方で香りが変わる

オーチャードハウスのリンゴや洋ナシの香りは、エステル(果実を思わせる香気成分)によるものです。低温では揮発しにくくなるので、まず常温のストレートで香りを取り、次に1〜2滴の加水で広げます。ハイボールにすると果実香は軽くなりますが、カリラ由来のほのかなピートが余韻を締め、食中でも輪郭が残ります。

ネクタロシティのバニラやココナッツは、トーストしたバージンオークから来ています。この香りは常温か加水で最もよく開きます。ハイボールにするなら1:3が目安です。弾ける泡が液面の香りを持ち上げるので、バニラは鼻を近づけた瞬間に軽く立ち、口の中には甘さが残ります。ロックにすると甘さが締まり、飲み口は軽くなります。ただし香りは弱まるので、甘さが重く感じる人向けの調整と考えます。

ザ・ピートモンスターとクリムゾンカスク:強さの種類が違う

ザ・ピートモンスターの煙を生むフェノール類は、炭酸の刺激や冷却に負けにくい成分です。そのためハイボールにしても煙の骨格が崩れず、「ピートモンスター ハイボール」はこの銘柄の正攻法といえます。ストレートで飲むときは、アイラ原酒の薬品のような香りを最初に受け止めます。その奥に、ミディアムピートのハイランド原酒がもたらす甘みがあるので、パレットの中盤でそれを探します。

クリムゾンカスクの干しブドウやナッツの香りは、オロロソのシェリーバットを主体とするワイン系の樽に由来します。ストレートで厚みを確かめ、トゥワイスアップで香りを分けて読むのが合っています。炭酸を少なくした濃いハイボールでは、樽のタンニンと苦味が炭酸の刺激で強調され、甘みより渋みが先に立ちます。

よくある失敗と、その理由

  • シェリー樽の銘柄を薄い水割りにする:ドライフルーツの香りは厚みのある甘みと一体で感じられるため、薄めすぎると甘みと香りが同時に痩せ、ぼやける
  • ピートの銘柄をロックで冷やしすぎる:フェノール類は低温でも残るのに対し、甘みは低温で感じにくくなる。その結果、煙と苦味だけが残る
  • 氷が少ないハイボール:グラスが冷えず、炭酸ガスは温度が上がるほど液から抜ける。手順は前の章のハイボールの項のとおり

ペニシリン:ピートモンスターは「浮かせる」役

現代のクラシックカクテル「ペニシリン」は、メーカーの案内では、2005年にニューヨークのバー「Milk & Honey」でバーテンダーのサム・ロスが考案したもので、ベースにコンパスボックスのブレンデッドスコッチ「アサイラ」、仕上げのフロートにピートモンスターを使ったとされています。フロートの銘柄は出典によって記述が揺れており、アイラのシングルモルトとする紹介もあります。アサイラは現行品ではないため、家庭ではほかのブレンデッドスコッチで代用します。代用に同じ区分のネクタロシティを使うと、樽由来のバニラが前に出ます。

一般に知られる配合と手順は次のとおりです。

  • シェイカーに氷と、ブレンデッドスコッチ45〜60ml(一般に知られる配合では60ml)、レモン果汁約20ml、ハチミツ・ジンジャーシロップ約20mlを入れてシェイクする
  • 氷を入れたロックグラスに注ぐ
  • ピートモンスター約7mlを、バースプーンの背を伝わせて液面にフロートする

ピートモンスターをシェイクに混ぜ込まないことが肝心です。液面に浮いたフェノール類が最初に鼻へ届くので、飲む前に煙を感じ、口の中ではベースのスコッチとレモン、ハチミツ、ショウガの甘酸っぱさが主役になります。混ぜてしまうと煙が全体に薄まり、この二段構えが崩れます。

シーン別の選び方

  • 食中:ハイボール。揚げ物や燻製にはザ・ピートモンスター、塩味の軽い料理にはオーチャードハウス
  • 食後:クリムゾンカスクかネクタロシティを、ストレートかトゥワイスアップで。チョコレートやナッツと合わせる
  • ギフト(煙が好きな相手):ザ・ピートモンスター
  • ギフト(ウイスキーに慣れていない相手):果実香のオーチャードハウスか、甘い香りのネクタロシティ
  • ギフト(ワインやシェリーが好きな相手):クリムゾンカスク

ハイボール缶・バーでの頼み方・よくある質問

COMPASS BOX オーチャードハウス ハイボール缶

「COMPASS BOX オーチャードハウス ハイボール缶」は2026年5月26日に発売されました。350mlで税込618円です。販売店は、酒類を扱う全国のローソン約14,000店です(ローソンストア100は除きます)。

税込618円は缶1本の価格で、700mlボトルの価格ではありません。

バーでの頼み方

注文は「銘柄名→飲み方→量」の順に伝えます。銘柄を最初に言えば、バーテンダーが棚からボトルを取る動作と、グラスを選ぶ判断を同時に始められます。量はシングル(30ml)かダブル(60ml)で伝えます。

  • 「ピートモンスターをハイボールで、シングルで」
  • 「クリムゾンカスクをトゥワイスアップで、水は常温で」
  • ハイボールを濃いめにしたい場合も、注文の時点で伝えられます(例:「オーチャードハウスのハイボールを濃いめで」)。作った後に足すより、比率を最初から組み直すほうが炭酸を損ないません

店の1杯の値付けはどう決まるか

700mlのボトルからシングル30mlを取ると、約23杯になります。ただし、1杯の価格はボトル価格を23で割った値にはなりません。値付けには、次の要素が加わります。

  • 仕入れ値
  • 開栓後に香りが落ちることによる損失(出数の少ない銘柄ほど、最後の数杯の品質が下がるリスクを抱える)
  • サービス料、グラス・氷・炭酸などの提供コスト

同じ銘柄でも、店によって1杯の価格が違うのはこのためです。出数が多く回転の速い店では、開栓後の劣化による損失を小さく見積もれます。

よくある質問

質問答え
どれが初心者向け?果実香ならオーチャードハウス、甘い香りならネクタロシティです。煙の香りに慣れていない人は、ザ・ピートモンスターを2本目以降に回すと失敗しにくくなります
同じ銘柄でもバッチで味が違う?違うことがあります。ザ・ピートモンスターは配合比率がバッチによって異なります(定番4本の章を参照)。オーチャードハウスも2026年版でレシピが変わり、ベンリネスがグレンマレイに替わっています。飲み比べるときは購入時期を控えておくと、違いを版の差として読めます
缶とボトルの違いは?缶は炭酸で割った状態の350mlです。ボトルは700ml・46%で、ストレートからハイボールまで比率を自分で決められます

開栓後の香りの落ち方を確かめるには、開けた直後に一度ストレートで香りを取り、印象を短く記録しておく方法があります。後日同じ量で比べると、香りがどれだけ落ちたかを、残量だけに頼らず判断できます。

よくある質問

ウイスキーのイメージ写真

4本を飲み比べるなら、どの順番がよいですか?

オーチャードハウス、ネクタロシティ、クリムゾンカスク、ザ・ピートモンスターの順が基本です。香りの軽いものから重いものへ進み、ピートの銘柄は最後に置きます。フェノール類は口や鼻に残りやすく、先に飲むと後の銘柄の果実香や樽の甘みを覆ってしまうためです。少量ずつ注ぎ、間に水を挟むと違いを比べやすくなります。

ボトルを冷凍庫で冷やして飲んでもよいですか?

飲めますが、この4本には向きません。低温では香気成分が揮発しにくくなり、果実香や樽の甘い香りが閉じます。ハイボールを冷たく仕上げたい場合は、ボトルではなくグラスと炭酸を冷やし、氷を縁まで詰めてください。そのほうが香りを損ないません。

熟成年数の表示がない銘柄は、何を手がかりに選べばよいですか?

年数表示のルールは透明性キャンペーンの節で触れたとおりで、表示がないことは若い原酒だけでできていることを意味しません。手がかりは3つです。1つ目は樽の構成で、ファーストフィルかリフィルか、バーボン樽・新樽・シェリー系の樽をどう組み合わせているかが開示されているかを見ます。2つ目は度数で、46%前後あれば加水で香りの開き方を確かめる余地があります。3つ目は冷却濾過と着色の有無で、どちらもしていなければ、質感と液色を原酒と樽の結果として判断できます。コンパスボックスの4本はいずれも後の2つを満たし、樽の構成も銘柄ごとに紹介されています。

加水やトゥワイスアップには、どんな水を使えばよいですか?

常温の軟水のミネラルウォーターが基本です。硬度の高い水はミネラルの味が出て、繊細な果実香を覆うことがあります。水道水はカルキの匂いが香りの判断を邪魔します。冷水は液温を下げて香りを閉じるので避けてください。比べるときに毎回同じ水を使えば、香りの変化をウイスキー側の違いとして読み取れます。

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。