ジャパニーズウイスキー

ウイスキーの高騰はいつまで?定価改定と原酒不足から読む見通し

ウイスキーの高騰がいつ終わるかは断定できません。サントリーの2026年4月定価改定と原酒不足によるプレミア化を2つの層に分けて整理し、12年ものなど年数表記品の供給が追いつくまで時間がかかる理由や、実売価格の上乗せ率の確かめ方を解説します。

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この記事で紹介した銘柄:グレンドロナック 12年・グレンドロナック 価格と購入先へ ↓

結論:高騰の終わりは誰にも断定できない。まず「定価の上昇」と「実売のプレミア」を分けて考える

ウイスキーの高騰がいつ終わるかは、現時点で誰にも断定できません。 サントリーは価格改定の告知でも需給の説明でも、高騰が収まる時期を示していません。「〇年には値下がりする」と言い切る情報を見かけたら、メーカーの発表に基づくものかどうかを先に確かめてください。根拠がたどれない予測を前提に、買い控えや買いだめ、仕入れの判断をするのは危険です。

見通しを考えるときは、「高騰」をひとまとめにせず、性質の違う2つの層に分けると判断しやすくなります。

層1:メーカー希望小売価格そのものの上昇

1つ目は定価の改定です。サントリーは2026年4月1日出荷分から、山崎・白州・響などの価格を改定しました。理由として挙げているのは、包材などのコスト上昇です。ボトルや化粧箱、輸送にかかる費用は、原酒の需給が落ち着いても元の水準に戻るとは限りません。そのため、この層は下がる方向の改定を期待しにくい性質のものです。

なお、2026年4月改定について「値上げ幅6〜15%」「39ブランド187品目」という数字が出回っていますが、これは報道ベースの数字です。サントリーの公式リリースは対象ブランド名を告知したもので、品目数や上げ幅の一覧を示したものではありません。個別の銘柄の新価格は、メーカーの商品ページで確認するのが確実です。

銘柄(700ml)2024年4月改定前2024年4月改定後現行(2026年10月確認)
山崎12年税別1万円税別1万5,000円税別1万6,000円
白州12年税別1万円税別1万5,000円税別1万6,000円
山崎(年数表記なし)——税別7,500円
白州(年数表記なし)——税別7,500円
響 JAPANESE HARMONY——税別8,000円

注記:表の金額はいずれもメーカー希望小売価格で、店頭やネット通販の実売価格ではありません。「—」は本記事で確認した範囲外の項目です。

12年ものは、2年あまりで税別1万円から1万6,000円に上がっています。各商品の度数は43%のまま案内されています。ただし、2回の改定の理由は同じではありません。2024年4月の改定について、サントリーは中味品質の向上や生産設備の強化などを理由に挙げています。2026年4月の改定では、包材等のコスト上昇を理由に挙げています。

層2:品薄による実売価格のプレミア化

2つ目は、店頭の実売価格や二次流通の価格が定価を大きく上回る現象です。サントリー自身が2023年に、国産プレミアムウイスキーの一部で需要に十分応えられていないと説明しています。つまりこの層の原因は、コストではなく需給の不一致です。

年数表記品は、表記年数が増産の効果を待つ時間の下限になります(次章で詳述)。プレミアが縮むかどうかは、過去の仕込み量と現在の需要の釣り合いで決まります。そのため、年数表記なしの銘柄よりも12年ものの方が、供給が追いつくまでに時間がかかる構造です。海外需要の増減は、次々章で一次データとともに扱います。

見つけた価格の上乗せ率を確かめる

実売価格は、店、時期、販売条件によって大きく変わります。ある時点の相場をそのまま基準にせず、見つけた価格をその場で税込希望小売価格と比べ、上乗せ率を出してください。

上乗せ率(%)=(税込実売価格−税込希望小売価格)÷税込希望小売価格×100

銘柄(700ml)税込希望小売価格上乗せ率20%の価格上乗せ率50%の価格上乗せ率100%の価格
山崎12年1万7,600円2万1,120円2万6,400円3万5,200円
白州12年1万7,600円2万1,120円2万6,400円3万5,200円
山崎(年数表記なし)8,250円9,900円1万2,375円1万6,500円
白州(年数表記なし)8,250円9,900円1万2,375円1万6,500円
響 JAPANESE HARMONY8,800円1万560円1万3,200円1万7,600円

注記:税込希望小売価格は、上の表の現行の税別価格に消費税10%を加えた金額です。上乗せ率ごとの価格は計算上の目安で、実際の販売価格ではありません。

購入を判断するときは、見つけた価格ごとに次の項目を記録します。

  • 調査日:相場は短期間で動くため、日付のない価格は比べない
  • 販売経路:正規取扱店の店頭・抽選、量販店、通販サイト、フリマアプリなどの二次流通を分けて記録する
  • 条件:容量(700mlか)、化粧箱の有無、本数制限や抱き合わせ販売の有無をそろえる
  • 税込実売価格:送料や手数料を含めた支払総額で記録する
  • 税込希望小売価格:購入時点の価格をメーカーの商品ページで確認する
  • 上乗せ率:上の式で計算し、同じ銘柄の前回の記録と比べる

立場別の判断基準

  • 贈答用に買う人:定価が上がった分は今後も戻りにくいと考えてください。待つ価値があるのは、実売価格が希望小売価格を大きく上回っている分だけです。購入時は実売価格と希望小売価格を並べて比べ、上乗せ分が大きい店を避けるのが基本です。
  • 酒販店:販売価格の根拠を「定価改定分」と「仕入れ値の上乗せ分」に分けて説明できるようにしておくと、問い合わせに答えやすくなります。
  • バー:1杯の値付けは希望小売価格ではなく、実際の仕入れ値から逆算してください。定価だけを見て値付けすると、プレミア分がそのまま赤字になります。
  • 訪日客や海外の知人に頼まれた人:実売価格は希望小売価格どおりではないことを、購入前に伝えておくと行き違いを防げます。

なぜすぐに供給を増やせないのか:熟成年数・原酒の作り分け・樽という製造側の制約

ウイスキーのイメージ写真

年数表記は「最も若い原酒」の年数を示す

年数表記は、ボトルの中で最も若い原酒の熟成年数を示します。12年ものは「平均12年」ではありません。使う原酒のすべてが12年以上でなければなりません。15年や18年の原酒を加えることはできますが、11年の原酒は1滴も使えません。そのため、今日蒸溜した原酒を12年ものに使えるのは、最短でも12年後です。

ただし、12年ものの出荷量はそれだけで決まるわけではありません。すでに熟成中の樽は、順に12年を満たしていきます。既存の熟成原酒をどの製品にどれだけ配分するかによっても、出荷量は変わります。新しい仕込みの効果が出る時期と、出荷量が増減する時期は、分けて考える必要があります。

年数表記なしの製品も、原酒在庫の一部を分け合っている

年数表記のない山崎や白州は熟成年数の縛りが緩いため、増産の効果が早く出るように見えます。ただし、年数表記なしの製品と12年ものの両方に使える原酒が、一部重なることがあります。ブレンダーは、樽の履歴、熟成年数、香味の設計、品質基準を見ながら、樽ごとに用途を振り分けています。すべての原酒がどちらの製品にも使えるわけではありません。そのため、ある製品に回した量が、そのまま別の製品の減産になるという単純な関係ではありません。年数表記なしと12年ものの品薄には、共通して使える原酒の配分が影響する場合がある、と捉えるのが実態に近い見方です。

原酒の作り分けは個性の源泉であり、制約でもある

山崎蒸溜所は形状の異なるポットスチル16基を使い、直火と間接の加熱を使い分けています。白州蒸溜所もポットスチル16基を備え、形状は大きくストレート型とランタン型に分かれます。スチルの形が変わると還流、つまり蒸気がネック部で冷えて釜に戻る量が変わります。還流が多いほど重い成分が釜に戻り、軽やかな原酒になります。還流が少ないほど重い成分まで留出し、厚みのある原酒になります。加熱方法の違いも、原酒の性格を変える要素の1つです。

1つの蒸溜所の中で性格の異なる原酒を作り分ける体制が、山崎や白州の香味の幅を支えています。一方で、特定のタイプの原酒が足りなくなったとき、それを作れるのは同じ設備だけです。スコッチのブレンデッドウイスキーでは、ブレンダーが他社の蒸溜所の原酒も調達して使う慣行があります。そのため、ある原酒が不足しても、似た性格の原酒で補う選択肢を持てます。一方、単一の蒸溜所の原酒だけで造るシングルモルトには、他の蒸溜所の原酒を足して不足を補う選択肢がありません。山崎や白州のシングルモルトも同じで、足りないタイプの原酒は自社の同じ設備で造るしかありません。自社の原酒で香味を設計する体制では、この逃げ道が狭くなります。

樽と熟成中の目減りも量を縛る

樽も供給の制約になります。山崎(年数表記なし)はワイン樽貯蔵モルトとミズナラ樽貯蔵モルトを使い、響 JAPANESE HARMONYも山崎蒸溜所のミズナラ樽原酒を使います。ミズナラは樽材に使える原木が限られ、液漏れしやすいため、製樽に手間がかかります。こうした樽で熟成させた原酒は、急に量を増やせません。その原酒を香味の要に据えている銘柄ほど、出荷量を調整しにくくなります。

さらに、熟成中の樽からは原酒が少しずつ蒸発します。これがエンジェルズシェアと呼ばれる目減りです。仕込んだ量がそのまま製品になるわけではなく、熟成期間が長い製品ほど、目減りの影響を長い年月にわたって受け続けます。

製造側の制約から見た、供給回復の読み方

  • 年数表記なし:12年ものより量を調整しやすい。ただし、12年ものと共通して使える原酒の配分に左右される場合がある
  • ミズナラ樽原酒を使う銘柄(山崎の年数表記なし、響 JAPANESE HARMONY):樽の調達と製樽の手間が増産の足かせになりやすい

需要は本当に増え続けているのか:輸出額と表示基準の一次データで確かめる

「海外で人気だから需要は伸び続け、価格も上がり続ける」という見方は、国税庁の輸出統計と合いません。日本のウイスキー輸出額は増減を繰り返しています。国税庁の資料で2022〜2025年の金額を並べると、次のとおりです。

年ウイスキー輸出額前年比読み取れること
2022年560億5,200万円—4年間で最も高い水準
2023年500億6,000万円10.7%減減少に転じる
2024年436億3,500万円12.8%減2年続けて減少
2025年489億7,900万円12.2%増増加に転じたが、2022年・2023年の水準には届いていない

注記:2023年の金額は国税庁の資料による。2022年・2024年・2025年の金額は、国税庁が公表した各年の酒類輸出金額の資料による。前年比は表の金額から算出しています。

輸出額が減っても、国内の店頭価格が下がるとは限らない

輸出額は金額ベースの統計です。出荷本数が同じでも、輸出単価が上がれば金額は増えます。本数が増えても、安い価格帯の比率が高まれば金額は伸びません。銘柄別や価格帯別の内訳も示されていません。そのため、輸出額の減少を「山崎12年の海外需要が減った」と読み替えることはできません。品薄が続く年数表記品の需給は、熟成年数という別の制約で決まります。輸出額は、業界全体の勢いを見る指標として使うのが適切です。

「ジャパニーズウイスキー」と名乗るための条件

日本洋酒酒造組合の自主基準は、法律ではなく業界の自主ルールです。ただし、2024年3月31日で経過措置期間が終わっています。主な要件は次のとおりです。

  • 原料:麦芽を必ず使用
  • 製造:糖化・発酵・蒸溜を日本国内で行う
  • 貯蔵:内容量700リットル以下の木製樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵
  • 瓶詰め:日本国内で行う
  • 着色:色調調整のためのカラメルは使用可

樽容量の上限と3年以上の貯蔵は、スコッチウイスキー規則(SWR 2009)と同じ水準です。ただし、SWRがオーク樽に限るのに対し、この基準は「木製樽」と定めています。また、カラメルの使用が認められているため、色の濃さは熟成の長さを示す根拠になりません。どちらの基準でも同じことが言えます。

ラベルを価格判断の材料にする

基準の適用で、国内で蒸溜・熟成した原酒だけで造る商品と、輸入原酒を使うなどして「ジャパニーズ」と名乗れない商品の線引きがはっきりしました。和風の商品名や筆文字のラベルは、中身の産地を保証しません。

  • 贈答用に買う人:価格帯が近い候補を比べるときは、ラベルやメーカーの商品情報で「ジャパニーズウイスキー」の表示、または自主基準への適合を確認する。表示があれば、選ぶときの判断材料になる。この基準は要件を満たす商品にその呼称の表示を認めるもので、表示を義務付けるものではない。表示が見当たらないだけでは要件を満たさないとは判断できないため、製造元の商品説明で原酒の産地と基準への適合を確かめるか、製法をメーカーに問い合わせる。和風の装丁だけを根拠に、中身が国産原酒だけだと判断しない
  • 海外の知人に頼まれた人:相手が「日本のウイスキー」を求めているなら、表示の有無を基準に選ぶ。山崎・響が手に入らないときも、この表示がある別銘柄なら趣旨に合う代替になる
  • 酒販店・バー:メニューや棚札で「ジャパニーズ」と書くのは、表示要件を満たす商品に限る。輸入原酒を含む商品を同じ並びに置くと、価格の根拠を問われたときに説明がつかない

新しい蒸溜所の原酒は、全体の供給を厚くする

国内の新しい蒸溜所の原酒は、3年以上の貯蔵要件を満たしたものから順に「ジャパニーズウイスキー」として市場に出てきます。中長期的には、カテゴリー全体の選択肢と供給量を厚くする要素です。

ただし、特定ブランドの製品は、そのブランドの原酒でしか造れません。前の章で触れたとおり、ブランドの香味は自社設備で作り分けた原酒で組み立てられています。他社の原酒で、山崎12年の出荷本数を増やすことはできません。一方で、代替になる銘柄が増えれば、購入者の選び方が変わり、品薄銘柄に集まっていた需要が分散する可能性はあります。それが実売プレミアにどの程度影響するかは、断定できません。新興蒸溜所の供給増で確実に言えるのは、同じ予算で選べる国産の選択肢が増えることです。プレミア価格を払う前に、表示要件を満たす別銘柄と比べる価値は年々高まっています。

落ち着き始めたかを自分で見極める判断材料と、目的別の買い時

ウイスキーのイメージ写真

前の章で分けた2つの層のうち、待つことで縮む可能性があるのは層2の実売プレミアだけです。定価改定は、高騰が和らぐ兆しには数えません。次のシグナルは、1つだけで判断せず、複数が同じ方向にそろったかで読みます。

和らぐ兆しと続く兆しを見分けるシグナル

見るもの和らぐ兆し続く兆し確かめ方
メーカーの需給説明「需要に十分応えられていない」という説明が変わる同じ説明が続く。限定品や終売が告知されるメーカーのニュースリリース
出荷制限・抽選販売抽選や本数制限の告知が減る年数表記品の抽選販売や出荷制限が続く百貨店や量販店の販売告知
定価に近い店頭在庫年数表記品が定価に近い値札で棚に並び続ける入荷してもすぐ売り切れる複数の店を月1回、同じ条件で観察する
二次流通との差実売価格と希望小売価格の差が縮み続ける差が広がる、または高止まりする銘柄・容量・販売条件をそろえた複数店の税込価格を月1回記録し、税込希望小売価格との差の推移を見る
定価改定該当しない(層1は下がりにくい)コスト要因による追加の改定メーカーの価格改定告知

判定に使うのは、表の上の4行(下のチェックリストの1〜4に対応)がそろった場合に限ります。輸出統計は個別銘柄の需給を示さないため、この表には含めていません。業界全体の背景として、国税庁の年次資料で確かめてください。

終売の告知は、駆け込みの需要を生みます。告知の直後は、その銘柄だけでなく同じブランドの別の製品も、二次流通で一時的に値上がりしやすくなります。告知直後の相場は平常時の基準にしないでください。

目的別の判断基準

  • 飲むのが目的:プレミア価格では買わないでください。定価で買える抽選や入荷を待つ間は、年数表記なしの製品か、「ジャパニーズウイスキー」の表示要件を満たす別銘柄で代えます。容量の選び方は、次章の開栓後の管理を参照してください。
  • 贈答:渡す期日から逆算して、待つのをやめる日を先に決めます。その日までに定価で手に入らなければ、予算に合う年数表記なしの製品や他銘柄に切り替えます。直前まで抽選に頼ると、プレミア価格で買うしかなくなります。
  • 転売・投資:負うリスクは3つあります。1つ目は価格下落です。プレミアが縮めば、含み益は消えます。2つ目は偽造品です(見分け方は次章参照)。3つ目は保管による劣化です。光や高温で香味が変わります。温度の上下や乾燥した環境でコルクが縮むと、液面が下がります。主な原因は温度の上下による膨張と収縮です。液面の低さは、売るときの減額理由になります。なお、酒類を継続して販売するには、酒類販売業免許が必要です。

酒販店の判断基準

  • 価格への反映:新価格をどの在庫から適用するかを決めておきます。新しい仕入れ値の入荷分から上げる方法と、全在庫をいま仕入れ直す場合の価格にそろえる方法があります。どちらを選ぶにしても、方針を決め、棚札と問い合わせで同じ説明ができるようにします。
  • 数量制限:対象の銘柄と期間を決め、「1会計1本」のように掲示します。国籍や言語で条件を変えず、全員に同じルールを当てはめてください。訪日客や海外在住の知人向けのまとめ買いを頼まれても、上限は超えません。上限を超える分は、表示要件を満たす別銘柄を提案して補います。

自分で判定するチェックリスト

  1. メーカーが、需要に応えられていないという説明を変えたか
  2. よく行く店で、抽選や本数制限の告知が減ったか
  3. 年数表記品を定価に近い値札で、複数の店で3か月続けて見かけたか
  4. 銘柄・容量・販売条件をそろえた複数店の税込実売価格と、税込希望小売価格の差は、前回までの記録より縮み続けているか
  5. 輸出額の動き(判定には使わず、業界全体の背景として確認する)
  6. コスト要因による定価改定や、終売の告知が新たに出ていないか

1〜4がそろって「はい」なら、その銘柄と自分が観測した範囲では、実売プレミアに縮小の兆しがあると判断できます。市場全体のプレミアが縮んだとまでは言えません。6で新しい告知が出ていれば、プレミアが縮んでも、定価の水準そのものが上がります。価格の記録は月1回、少なくとも3か月に1度はこのリストを確かめ、前回の結果と比べてください。

高騰期の実践:定価で買う方法、バーでの値付け、香味の要素で選ぶ代替銘柄

定価で手に入れる:正規店の抽選と、二次流通で確かめる点

定価で買える経路は、百貨店・量販店・酒販店などの正規取扱店に限られます。具体的には抽選販売と、入荷時の店頭販売です。よく行く店の会員登録や通知を設定し、入荷曜日を把握したうえで、抽選の応募先を複数持つのが現実的です。フリマアプリや個人間取引には、本物の空き瓶に別の液体を詰めた品や、ラベルを偽造した品が混じります。購入前に次の点を確かめてください。

  • 封緘:キャップシールに破れ、浮き、貼り直しの跡がないか
  • ラベル表示:裏ラベルの品目、アルコール分、内容量、製造者名がそろっているか。表と裏で印刷の質に差がないか
  • 液面:同じ銘柄の未開栓品より低くないか
  • 販売元:酒類販売業免許を持つ事業者か。空き瓶や化粧箱だけを出品している相手からは買わない

バーの値付け:実効杯数から逆算する

700mlを30mlで割ると23杯強です。ただし実際には、注ぎこぼしやメジャーカップの内側に残る分、瓶底の残量がロスになります。

以下は、シングルを30ml、ダブルを60mlで提供し、ロスを1本あたり30mlと見込んだ場合の例です。注量は店ごとに異なるため、自店の量に置き換えてください。この仮定では、実効杯数はシングル22杯、ダブル11杯です。この実効杯数を使って、次の式で計算します。

  • 1杯の原価=実際の仕入れ値÷実効杯数
  • 1杯の価格=1杯の原価÷目標原価率
  • 仕入れ値が上がったときの値上げ幅=仕入れ値の上昇額÷実効杯数÷目標原価率

この式で出るのは、酒液の原価から見た価格の目安です。実際の値付けは、次の点を確かめてから決めます。

  1. 税込売価:算出額を税抜として扱うか決め、メニューには消費税を含めた総額で示す
  2. 提供経費:決済手数料、グラスや氷・チェイサーなどの提供にかかる費用、家賃・人件費の1杯あたりの負担を加味する
  3. 回転率:開栓から空くまでの期間を見込む。回転が遅い銘柄ほど、次の項で述べる香りの変化と資金の滞留が重くなる

開栓後の香りの変化と保管

液面が下がるとボトル内の空気が増え、香気成分の揮発と酸化が進みます。高価格帯の銘柄を少ない杯数で何か月も置くと、最後の数杯は開栓直後と別の香りになります。同じ価格で出しにくくなる分も、値付けで見込んでおいてください。回転が遅い銘柄は、残量が半分を切ったら小さい瓶に移し替えると、空気に触れる量を減らせます。家庭で飲む場合も同じで、飲む頻度に対して大きすぎる瓶を選ぶと、後半の数杯の香りが変わります。高価な1本を何年もかけて飲むより、飲み切れる期間に合う容量を選んでください。向きと光・温度の管理は、FAQの「未開栓なら何年でも価値は変わらないのか」を参照してください。

代替銘柄は「香味の由来」で選ぶ

名前の響きが似ているかではなく、目当ての香味がどの製法から来ているかで代わりを選びます。

求める香味由来になる製法要素候補確認点
響のような調和モルト原酒とグレーン原酒のブレンドイチローズモルト モルト&グレーン クラシカルエディション、キリン 富士山麓 シグニチャーブレンド「ジャパニーズウイスキー」表示の有無
山崎(年数表記なし)の赤い果実やワイン樽由来の甘酸味ワイン樽(赤ワイン樽)熟成原酒赤ワイン樽での熟成、または赤ワイン樽でのフィニッシュ(後熟。熟成の最後に別の樽へ移して香味を重ねる工程)を明記したシングルモルト樽の種類と、全期間の熟成か後熟かをメーカーの案内で確認
ドライフルーツ系の濃い果実味を求めるなら(山崎の代替ではなく別系統)シェリー樽熟成原酒グレンドロナック 12年、アベラワー 12年 ダブルカスクマチュアード樽構成をメーカーの案内で確認
白州のような軽やかさ軽快な原酒を造る蒸溜所のシングルモルトグレンフィディック 12年、キリン 富士 シングルモルト白州のピート由来の煙を求めるなら別系統を選ぶ

サントリーは、山崎(年数表記なし)のイチゴを思わせる香りをワイン樽熟成モルトに由来すると説明しています。ただし、山崎の香味は複数の樽の原酒を組み合わせたもので、ワイン樽という樽名だけで一致する銘柄が見つかるわけではありません。代えたいのが香りの赤い果実なのか、口に含んだときの甘酸味なのかを先に決めてください。そのうえで、メーカーが示す原酒や樽の構成と、候補のノージング(香り)、パレット(口に含んだ味)、フィニッシュ(余韻)を照らし合わせて選びます。

現在の「シェリー樽」の多くは、熟成用にシェリーを一定期間なじませたシーズニング樽です。初めて使う樽(ファーストフィル)か、再使用の樽(リフィル)かで、果実味の濃さは大きく変わります。「シェリー樽」という一語で判断せず、樽構成の比率を見てください。度数と価格は、5,940円前後(2026年10月25日時点)のように購入時点の情報で比べます。

割って飲むなら年数表記なしが合理的

加水で度数が下がると、エタノールに溶け込んでいた香気成分が液面から立ちやすくなります。ただし、ハイボールのようにウイスキー1に対して炭酸水3〜4(例:30mlに炭酸水90〜120ml)まで薄め、さらに氷で冷やすと、長期熟成に由来する繊細な香りは感じ取りにくくなります。希釈で香気成分の濃度が下がり、低温で揮発もしにくくなるためです。その結果、割って飲むと、価格差ほどの違いを感じにくくなります。12年ものは、ストレートやトゥワイスアップ(常温の水を1対1で加える飲み方)に回してください。割る用途には、年数表記なしや代替銘柄を使うのが合理的です。

ハイボールは、次の手順で作ります。

  1. グラスに氷を満たす
  2. ウイスキーを注ぎ、ステアしてウイスキーと氷を冷やす
  3. 冷えた炭酸水を、氷に直接当てないようにグラスの内側に沿って静かに注ぐ
  4. 最後にバースプーンを縦に1回だけ軽く動かして混ぜ、炭酸を逃がさない

よくある疑問:値下がり・転売・保管・年数表記

ウイスキーのイメージ写真

「〇年には価格が下がるのか」

メーカーは、価格が下がる時期を示していません。答えは、前の章で分けた2つの層ごとに変わります。定価は包材などのコスト上昇を理由に改定されたもので、下がる方向の改定を見込む根拠は今のところありません。実売のプレミアは、年数表記品の原酒の在庫が需要に追いつけば縮む可能性があります。ただし、追いつく時期は表記年数より前の仕込み量で決まるため、外からは読めません。「〇年に下がる」という予測を見かけたら、どちらの層の話なのか、メーカーの発表に裏付けがあるのかを確かめてください。

「今買っておけば値上がり益が出るのか」

前の章で挙げた価格下落、偽造品、保管劣化の3つのリスクに加えて、売るときの手間と費用も差し引いて考える必要があります。

  • 手数料と送料:フリマアプリやオークションの販売手数料、送料、緩衝材の費用がかかる。瓶が割れたときの補償も自分で負う
  • 資金の拘束:売れるまでの間、仕入れに使った資金は動かせない

これらを差し引くと、プレミアが少し縮むだけで利益は消えます。飲むか贈る予定のない本数まで買い込むのは避けてください。

「年数表記なしと12年の違いは何か」

違いは年数の縛りだけではありません。原酒の組み立て方も違います。山崎(年数表記なし)は、ワイン樽で貯蔵したモルトとミズナラ樽で貯蔵したモルトを使い、樽由来の香りで香味の輪郭を作っています。白州(年数表記なし)は、ライトリーピーテッドモルト、つまり軽くピートを焚いた麦芽から造る原酒を使います。白州12年は、12年以上熟成したモルト原酒だけで構成されます。度数はどれも43%で、税別の希望小売価格は年数表記なしが7,500円、12年が1万6,000円です。年数表記なしを「12年の若い版」と見なすより、樽構成を変えて別の香味を設計した製品と捉えるほうが実態に合います。

「未開栓なら何年でも価値は変わらないのか」

変わります。ウイスキーは、瓶に詰めた後は樽の中のようには熟成しません。そのため、何年置いても年数表記の価値は増えません。一方で、劣化は未開栓でも進みます。

  • 温度:昼夜や季節で温度が上下すると、液体と瓶の中の空気が膨張と収縮を繰り返す。そのたびに栓のすき間から揮発し、液面が下がる。液面低下の主な原因はこの温度変化で、コルクが乾燥して縮むとさらに進みやすくなる
  • 光:直射日光や蛍光灯の光に長く当たると、香味や色が変わる。化粧箱に入れたまま暗所に置く
  • 向き:立てて保管する。横に寝かせると度数の高い液体がコルクに触れ続け、栓が傷んで崩れやすくなるためだ。立てるとコルクは乾きやすくなるので、極端に乾燥した場所や、暖房器具の近くなど高温になる場所は避ける
  • 点検:半年に1度は液面とキャップシールの状態を確かめる

「海外の知人や訪日客に頼まれたらどう対応するか」

店の購入数量の制限は、誰のための購入でも同じように守ります。店を回って制限を超える本数を集めるのは、転売目的と見なされるおそれがあります。相手の国に持ち込める本数、免税の範囲、関税は国ごとに違います。この確認は相手に任せ、自分の判断で「大丈夫」と答えないでください。そのうえで、次の点を事前に決めておくと行き違いを防げます。

  • 代替の可否:手に入らない場合に、「ジャパニーズウイスキー」の表示がある別銘柄でよいかを確認する
  • 持ち運び:市中で購入した700ml瓶は、機内に持ち込める液体の制限があるため、通常は預け荷物に入れ、割れないように緩衝材で包む。空港の保安検査後の免税店で購入する場合は、機内に持ち込める条件と、乗り継ぎ先の空港の規則を確認する

よくある質問

12年ものをストレートで飲むとき、加水はどう試せばよいですか

常温の水をスポイトやストローで数滴ずつ加え、そのたびに香りを確かめます。43%から度数が少し下がるだけで、エタノールの刺激が和らぎ、隠れていた香りが立ちやすくなります。入れ過ぎると戻せないため、少量ずつ重ねるのが基本です。止めどきは、本文で触れた1対1に至る前に判断します。香りが開いてそれ以上変わらなくなったところ、または口当たりが水っぽく感じ始めたり、余韻が短くなり始めたりした手前が目安です。冷えた水は香りが立ちにくくなるので避けてください。

テイスティングに向くグラスは何ですか

チューリップ型のノージンググラスが向きます。膨らんだボウルで液面から香りを立たせ、口に向かってすぼまる形で、立ちのぼった香気成分を飲み口に集めます。グラスを回して液面を広げても、こぼれにくい形です。注ぐ量は、液面がボウルの最も膨らんだ部分より下にとどまる程度にすると、上の空間に香りがたまります。ロックグラスは口径が広いため、香りが鼻に届く前に散りやすくなります。氷を入れて冷やしながら飲む用途に向くグラスで、香りを比べるテイスティングには向きません。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。