ピートが効いたスコッチウイスキーおすすめ|ppmの読み方と選び方
ピートの効いたスコッチを選ぶ前に知りたいppmの意味を解説。ppmは乾燥後の麦芽の値で、煙の出方は蒸留のミドルカット、熟成年数や樽、度数や冷却濾過で変わります。工程ごとの違いを押さえ、好みのスモーキーさに合う一本を選ぶ手がかりにできます。
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ピート香はどの工程で生まれ、どの工程で変わるのか
ピート香の量の土台は製麦で決まり、出方は蒸留・熟成・瓶詰めで変わります。同じ程度のppmでも飲んだ印象がそろわないのは、後の工程がそれぞれ煙の残り方を変えるためです。
製麦:煙のフェノール類が麦芽に付く
Scotch Whisky Associationの説明では、スモーキーな香りは麦芽を乾燥させる際に焚くピートの煙から生じます。煙に含まれるフェノール類が麦芽に付き、これが香りの元になります。資料で見るppmは、この乾燥後の麦芽に含まれるフェノールの値です。瓶詰め後のウイスキーの値ではありません。
スコッチウイスキー規則(SWR 2009)の要件には、スコットランドで3年以上熟成し、40%以上で瓶詰めすることが含まれます。一方で、ピートを使うかどうかは定義に含まれません。ピート香はスコッチの条件ではなく、蒸溜所ごとの選択です。
蒸留:還流とミドルカットで煙の残り方が変わる
還流とは、スチルの中で冷えて液体に戻った蒸気が下へ落ち、再び蒸発することです。還流が多いほど、重い成分はスピリッツに残りにくくなります。メーカーの案内によると、アードベッグのスピリットスチルには、重い蒸気を戻して再蒸留するピュリファイアーが付いています。アードベッグは、公式の製法説明では50ppm、販売元のブランド説明では50〜60ppmの麦芽を使いながら、香りの出方が重さ一辺倒になりません。この構造は、その理由の一つと考えられます。
ミドルカットとは、蒸留液のうち製品に使う中間部分の取り出し範囲のことです。フェノール類は蒸留の後半に多く出やすい性質があります。そのため、後半へ切り替える位置を遅らせるほど煙は残りやすく、早めるほど軽くなります。麦芽のppmが近くても煙の重さが違うのは、この切り替え位置の差も大きく関わります。
樽と熟成年数:煙の輪郭を出すか、包むか
| 樽 | 煙への働き | 樽構成が公表されている例 |
|---|---|---|
| バーボン樽 | 煙と柑橘・バニラの輪郭を前に出しやすい | アードベッグ 10年、ラフロイグ10年 |
| シェリー樽・ワイン樽 | 果実味で煙を包む方向に働く | キルホーマン マキヤーベイ(オロロソ・シェリー樽10%)、ポートシャーロット10年(フランス産ワイン樽25%) |
熟成年数が長いほど、煙は穏やかになりやすい傾向があります。長期熟成ではフェノール類の一部が揮発や樽との反応で減り、同時に樽由来の香味が重なるため、煙は絶対量でも比率でも後ろへ下がりやすくなります。「長熟ほどスモーキー」とは限りません。ただし、熟成年数と樽種は香味の手掛かりにとどまります。原酒のフェノール類の組成、樽の使用履歴や活動度、原酒の配合によって結果は変わります。煙の鋭さを求めるなら、年数と樽種で候補を絞ったうえで、メーカーのテイスティングノートや試飲で、煙が主役か、果実味や樽香と重なるかを確かめてください。
瓶詰め:度数と冷却濾過で厚みが変わる
瓶詰め前の加水が少ないほど度数は高くなり、香りの密度と口当たりの厚みが増します。冷却濾過は、低温で濁りの原因になる成分を冷やして濾し取る処理です。この処理を省くと、油分を含む質感が残りやすくなります。メーカーの案内では、アードベッグ 10年は46%で冷却濾過なしです。度数は市場向けで異なる場合があります(第4章参照)。
「アイラ産ならスモーキー」は誤り
アイラ島の蒸溜所でも、ブルックラディのシングルモルトはノンピートです。同じ蒸溜所が、40ppmの麦芽を使うポートシャーロットや、17.4で108.2ppmの麦芽を使うオクトモアも造っています。つまり、産地ではなく銘柄ごとの麦芽の仕様が煙の有無を決めます。
ラベルと製品ページから煙の出方を読む手順
- 煙を前面に感じたい場合:バーボン樽主体、46%以上、冷却濾過なしの銘柄を候補にする。度数はラベルで、樽構成と冷却濾過の有無はラベルに無ければメーカーの製品ページで確かめる
- 煙を果実味でやわらげたい場合:シェリー樽・ワイン樽を使う銘柄を候補にする。熟成年数と樽種は手掛かりにとどめ、メーカーのテイスティングノートや試飲で、煙が主役か、果実味や樽香と重なるかを確かめる
- 加水の手順は第5章
- 冷却濾過なしのボトルは、加水や氷で白く濁ることがあるが、これは品質の問題ではない
ppmの数値だけで煙の強さは決まらない。公式値で比べる

キルホーマン蒸溜所も、ppmは蒸留や熟成で変化すると説明しています。そのため、ppmの順位はグラスで感じる煙の順位になりません。
麦芽のppmがそのまま瓶に届かない理由
麦芽に付いたフェノール類は、糖化・発酵・蒸留の各段階で減っていきます。糖化後の搾りかす、蒸留後の残液、ミドルカットから外れた後留へと分かれていくためです。どれだけ残るかは、蒸溜所ごとのスチルの形とカットの位置で変わります。
さらにppmは、フェノール類の総量を示す値です。煙の質を決めるグアイアコール(燻した香り)やクレゾール類(薬品的な香り)の比率までは分かりません。正露丸の原料である木クレオソートにも同系統の成分が含まれるため、薬品的な煙は正露丸にたとえられます。比率は、使うピートの採取地や焚き方で変わります。測定方法によって数値がずれることもあるため、蒸溜所の違う銘柄の小さな差に意味はありません。
公式値と樽・度数を同じ表で比べる
次の表には、蒸溜所の公式情報で確認できる値だけを載せています。出典の列から各メーカーのページをたどれます。限定品は版番号と確認時点を併記しています。ppmの列だけでなく、樽と度数の違いの大きさにも目を向けてください。
| 銘柄 | 麦芽のppm(公式) | 熟成樽の構成 | 度数 | 補足 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| オクトモア 17.4 | 108.2ppm | ファーストフィルのオロロソ樽で7年熟成後、フランス産ヴァージンオークで後熟 | 57.2% | 限定品。版番号17.4の仕様(2026年11月時点の公式ページで確認)。17シリーズは17.1〜17.4が掲載 | ブルックラディ公式 |
| アードベッグ 10年 | 50ppm(公式の製法説明。販売元の説明では50〜60ppm) | バーボン樽 | 46% | 冷却濾過なし | アードベッグ公式 |
| キルホーマン マキヤーベイ | 50ppm | バーボン樽90%、オロロソ・シェリー樽10%(公表構成) | 46% | 2025年にシェリー樽の使い方を見直したと蒸溜所が案内。樽比率だけで香味を予測しない | キルホーマン公式、変更の案内 |
| ポートシャーロット10年 | 40ppm | アメリカンウイスキー樽75%、フランス産ワイン樽25% | 50% | 表の中でppmは低い側。度数は50% | ブルックラディ公式 |
| ラフロイグ10年 | 通常35〜45ppm(公式の目安。個別ボトルの値ではない) | バーボン樽 | 43%(国内向け750ml) | 幅の中の特定の数値は推測しない | ラフロイグ公式 |
ポートシャーロット10年は、表の中ではppmが低い側ですが、50%で瓶詰めされています。度数はグラスでの香気の立ち方を変えますが、香りの濃さは原酒の成分と配合にも左右されるため、ppmが低いから煙が弱いとは判断できません。アードベッグ 10年は公式説明で50ppmですが、第1章で触れたスチルの構造もあり、重さだけが前に出る酒質ではありません。
オクトモアは「版」で読む
オクトモアは、版ごとにppm・樽・度数が変わるシリーズです。現行の17シリーズには、公式に17.1〜17.4が掲載されています。108.2ppmは17.4の麦芽の値で、オクトモア全体に共通する数値ではありません。「オクトモア=常に最高値」と覚えるのではなく、購入や仕入れの際はボトルの版番号と公式の仕様表を照らし合わせてください。贈り物にする場合も、版番号まで確認すると説明に誤りが出ません。
ppmが公表されていない銘柄、幅で示される銘柄の扱い
カリラなどは、公式にppmを公表していません。そうした銘柄に、流通している推定値を当てはめて表に並べることはしません。ラフロイグは、10年などのピートレベルを通常35〜45ppmと公式に示していますが、これは目安の幅で、個別ボトルの値ではありません。ラフロイグ10年は、この幅に加えて、バーボン樽熟成という仕様と、ヨード香や薬品的な香味の傾向で位置づけます。
ppmを使ってよい場面、使わない場面
- 同じ蒸溜所の中で比べる:設備と製法が共通するため、ppmは目安になる。ブルックラディ蒸溜所なら、ノンピートのシングルモルト、40ppmのポートシャーロット、オクトモアの順に煙の土台が重くなる
- 蒸溜所が違う銘柄同士で比べる:ppmは参考程度にとどめ、樽構成・度数・熟成年数を先に見る。10〜20ppm程度の差では順位を決めない
- バーのメニューや酒販店の棚札:ppmだけを並べず、樽構成と度数も併記する。ppmが公表されていない銘柄は空欄にする
- 飲み比べの順番:ppmの順ではなく、度数の低い順、バーボン樽主体からシェリー樽・ワイン樽の比率が高いものへ進める
煙のタイプと飲む場面で選ぶ、ピートの効いたスコッチ
煙の質は大きく4つに分けられます。①潮気・ヨード系(薬品や正露丸にたとえられる系統)、②灰や焚き火のようなドライな煙、③果実や甘みに包まれた煙、④ピートを試す入口になる穏やかな煙です。このタイプと飲む場面を組み合わせると、次の1本を絞り込めます。
| 煙のタイプ | 銘柄 | 向く場面 | 価格 |
|---|---|---|---|
| ①潮気・ヨード | ラフロイグ10年 | ストレート、贈答 | 4,989円前後(2026年11月8日時点)(750ml・43%、サントリー希望小売価格・税別) |
| ①潮気・ヨード | アードベッグ 10年 | 基準の1本、ハイボール | 実勢価格は変動 |
| ②灰・焚き火 | カリラ 12年 | ハイボール、食中 | 実勢価格は変動 |
| ③果実・甘み | キルホーマン マキヤーベイ | 2本目、贈答 | 実勢価格は変動 |
| ③果実・甘み | カリラ ディスティラーズエディション | カリラ 12年との飲み比べ | 実勢価格は変動 |
| アードベッグの比較用 | アードベッグ ウーガダール、アードベッグ コリーヴレッカン | ストレートでじっくり | 実勢価格は変動 |
| ④穏やか・入口 | ラフロイグ セレクト | 初めての1本、ハイボール | 4,884円前後(2026年11月8日時点)(700ml・40%、サントリー希望小売価格・税別) |
| ④穏やか・入口 | アイラミスト | 手頃に試す、ハイボール | 実勢価格は変動 |
| 比較の対照(ピートのおすすめではない) | クライヌリッシュ 14年 | ピート香の有無を切り分ける試飲 | 実勢価格は変動 |
ラフロイグの2本以外は、実勢価格の変動が大きい銘柄です。購入や仕入れの前に、販売店の価格を確かめてください。
アードベッグ 10年を基準に、同じ蒸溜所で変化をたどる
アードベッグ 10年(バーボン樽、46%、冷却濾過なし)を基準に置き、アードベッグ ウーガダールとアードベッグ コリーヴレッカンを並べます。同じ蒸溜所の異なる樽使いと度数を楽しむ比較で、3本の間では樽・度数・原酒の熟成年数の構成が変わります。公開仕様では、ウーガダールはバーボン樽とオロロソ・シェリー樽で54.2%、コリーヴレッカンはバーボン樽とフレンチオーク樽で57.1%です。10年は10年熟成ですが、2本は熟成年数を表記していません。樽の選別や配合、製造時期も異なり得るため、香味の差を樽だけの効果とは断定できません。
飲み比べるときは、同じグラスに30mlずつ注ぎます。度数を10年の46%にそろえる場合、足す水の量は「30×度数÷46−30」で求めます。ウーガダールは約5ml、コリーヴレッカンは約7mlです。度数をそろえると、アルコールの刺激の差に引きずられずに、煙と甘さの重なり方を比べやすくなります。
キルホーマン マキヤーベイ:バーボン樽主体に、シェリー樽の甘みを重ねる構成
マキヤーベイは、50ppmの麦芽を使い、46%で瓶詰めされます。公表されている樽構成はバーボン樽90%とオロロソ・シェリー樽10%で、バーボン樽が主体です。ただし蒸溜所は、2025年にシェリー樽の使い方を見直したと案内しています。瓶詰め時期によって香味の重なり方が変わり得るため、樽の比率から香味を決めつけず、メーカーのテイスティングノートと試飲で確かめてください。見るポイントは、ノージングで煙が先に立つか、パレットの後半からフィニッシュにかけて干した果実のような甘みがどれだけ重なるかです。2025年のInternational Spirits Challengeで金賞を受けており、贈り物に添える説明としても使えます。
カリラ 12年とディスティラーズエディション:後熟の有無で比べる
後熟とは、熟成の最後に別の樽へ移し、香味を加える工程です。カリラ 12年は、灰っぽくドライな煙をそのまま味わえる1本です。同じ蒸溜所の原酒を後熟させたディスティラーズエディションと並べると、後熟の樽が煙にどれだけ甘みと丸みを足すかを比べられます。ディスティラーズエディションは、モスカテル(甘口の酒精強化ワイン)の樽で後熟させ、43%で瓶詰めする構成です。年ごとの版はラベルの蒸留年・瓶詰め年で区別できるので、どの版を比べたかを記録しておきます。
ピートを試す入口と、比較の対照
入口には、ピートを使っていることと香味の傾向をメーカーが示している銘柄を置きます。ラフロイグ セレクトは、ラフロイグの原酒をヴァージン・アメリカンオーク樽で後熟させた1本で、煙の上に甘い樽香が重なります(第4章)。アイラミストはブレンデッドで、グレーンウイスキーと合わせて仕上げています。そのぶん、手頃な価格帯でピート香を試せます。
クライヌリッシュ 14年は、ピートのおすすめではなく、比較の対照として表に入れています。メーカーの製法解説では、ノンピート麦芽を使う例として挙げられています。ピートの効いた銘柄と並べて飲むと、どこまでが煙で、どこからが麦芽や樽の香りなのかを切り分けやすくなります。
場面ごとの判断基準
- 初めての1本:④から選ぶ。煙を受け入れられたら、①のラフロイグ10年かアードベッグ 10年へ進む
- ハイボール:アードベッグ 10年は46%あり、割っても最終度数が下がりすぎない(作り方は第5章)
- ストレート:アードベッグの3本の飲み比べに向く(加水の手順は第5章)
- 2本目:1本目と違うタイプの番号を選ぶ。①を飲んだならマキヤーベイ(③)かカリラ 12年(②)
- 贈答:相手が煙に慣れているなら①、慣れていないかもしれないなら③のマキヤーベイ。受賞歴も説明に添えられる
同じ銘柄でも中身は違う。ラベルの読み方と最近の変化

同じ「ラフロイグ」の名が付いていても、セレクトと10年は熟成の設計も瓶詰めの仕様も違います。ラベルでは、銘柄、版・熟成年数、度数、容量を確かめます。ppm、樽の内訳、冷却濾過の有無はラベルに載らない製品も多いため、公表されていればメーカーの製品ページで照合します。確認先をこの2つに分けることが比較の出発点です。
ラフロイグ セレクトと10年は別の設計
サントリーの案内によると、セレクトは複数種の樽で熟成した原酒を合わせ、最後にヴァージン・アメリカンオーク樽で後熟します。ヴァージン・オークは、一度も酒を入れていない新しい樽です。木材由来のバニラやスパイスが短期間で強く移るため、煙の上に甘い樽香が重なります。一方、ラフロイグ公式の説明では、10年はバーボン樽で熟成します。樽の個性が控えめな分、ヨード香と煙の輪郭がそのまま出やすい構成です。また、セレクトには熟成年数の表記がありません。10年の「10年」は、使われた原酒のうち最も若いものの年数を示します。
国内向けのサントリー掲載品は、セレクトが700ml・40%で4,884円前後(2026年11月8日時点)、10年が750ml・43%で4,989円前後(2026年11月8日時点)です。「ラフロイグ10年は40%」と一律に書かれた情報もありますが、手元のボトルの仕様とは限りません。購入時は必ずラベルの度数を確認してください。
3%の差は、割ったときの最終度数に表れる
40%はスコッチとして瓶詰めできる下限の度数です。セレクトと10年の3%の差がはっきり数字に表れるのは、同量のソーダで割ったときの最終度数です。30mlを3倍のソーダ(90ml)で割ると、氷の溶けた水を含めずに計算して、セレクトは約10%、10年は約10.8%になります。この差が煙の残り方にどう表れるかは、原酒の成分と配合にも左右されるため、度数だけでは決まりません。加水も同じで、両方を数滴ずつ加水し、それぞれの香味の変化を確かめて判断します。
- セレクトをハイボールにする場合:ソーダは3倍寄りにし、氷はよく締めて溶けにくくする
- トゥワイスアップで香りを取る場合:仕上がりはセレクトが約20%、10年が約21.5%。度数差は残るので、両方を並べて香りの開き方を比べる
- メニューの値付け:30mlで計算すると、700mlは約23杯、750mlは約25杯。1本の価格ではなく1杯あたりで原価を出す
- 店の定番を切り替える場合:「ラフロイグハイボール」の名前のまま中身を替えず、銘柄名をメニューに書く
ラベルで確かめる項目
| 項目 | 分かること | 見方 |
|---|---|---|
| 熟成年数表記 | 最も若い原酒の年数 | 表記がなければ、メーカーの製品ページの樽構成の説明で設計を読む |
| 度数 | 加水やハイボールにしたときの最終度数 | 同じ銘柄名でも数字を確認する |
| 容量 | 1杯あたりの原価 | 700mlと750mlを混同しない |
| 冷却濾過の有無 | 質感、加水した時の濁り | Non Chill-Filteredなどの表記を探す。ラベルに無ければメーカーの製品ページで照合する |
| 樽の表記 | 香味の方向 | 熟成の樽と後熟(フィニッシュ)の樽を分けて読む。内訳はラベルに無ければメーカーの製品ページで照合する |
| 限定品・バッチ番号 | 仕様の版 | 番号ごとに公式の仕様と照合する |
オクトモアの番号は、小数点の前がシリーズ、後が版です(仕様は第2章参照)。
ロット差とボトリング時期をそろえて比べる
定番品も、複数の樽を合わせたバッチ単位で瓶詰めされます。樽ごとに原酒が違うため、ブレンダーが香味を近づけても完全には一致しません。その結果、ボトリングの時期によって煙の強さや甘さが揺れます。評価のときは、次の条件をそろえてから比べてください。
- ラベルや瓶に印字されたロットコードを記録し、どのボトルを比べたかを特定できるようにする
- 開栓からの期間をそろえる。開栓後は揮発しやすい香りから先に変わる
- 度数の違うボトルは加水で濃さを合わせる
- 同じグラス・同じ量・同じ温度で並べて比べる。過去の記憶とは比べない
ポートエレン再開と、店頭のボトルの読み方
アイラ島のポートエレン蒸溜所は1983年に閉鎖され、ディアジオによると2024年3月19日に再開しました。再開後は2対の銅製スチルを備えています。スコッチを名乗るには3年以上の熟成が必要なため、再開後の原酒がスコッチとして瓶詰めできるのは、早くても2027年3月以降です。したがって、現在店頭にあるポートエレンのシングルモルトは、閉鎖前に蒸留された原酒によるものです。ラベルの蒸留年の表記で確かめられます。
ピート香を活かす飲み方と、開栓後の扱い
ピート香はグラスの形・注ぐ量・加水・温度で見え方が変わります。開栓後は、ボトルに残った空気の量によって香りが変わる速さも変わります。
グラスと量:香りを集めてから判断する
ノージング(香りを嗅いで確かめること)には、口のすぼまったテイスティンググラスを使います。口がすぼまったグラスは揮発した香りを口元に集めやすく、煙の下にある柑橘や麦芽の甘さまで拾いやすくなります。ロックグラスは口が広く、香りが散りやすい形のため、銘柄の差を比べる用途には向きません。量の目安は、シングルが約30ml、ダブルが約60mlです。ただし店によって量が異なる場合があるので、杯数で比べるときは何mlかを確かめてください。
加水とトゥワイスアップの手順
- ストレートで香りを取り、第一印象を記録する
- スポイトなどで水を数滴だけ加え、グラスを軽く回して香りを取り直す
- 煙が後ろに下がって甘さや果実香が前に出てきたら、そこで止める
- トゥワイスアップは、ウイスキーと常温の水を1:1で合わせる。冷水を使うと香りが立ちにくくなる
46〜50%の銘柄は、加水で香りが開く余地が大きくなります。度数が下がるとアルコールの刺激が引き、それまで隠れていた香りを感じ取りやすくなるためです。たとえば50%のポートシャーロット10年なら、数滴ずつ段階を踏んで変化を追えます。
ハイボール:炭酸で煙が立つ理由と作り方
比率はウイスキー1に対して炭酸3〜4です。泡がはじけるときに揮発しやすい香り成分が液面から運び出されるため、ピートの煙は炭酸で立ちやすくなります。この効果を活かすには、ガスを抜かないことが大切です。
- 氷・グラス・炭酸をよく冷やしておく
- ウイスキーを注いで氷となじませてから、炭酸を加える
- 炭酸は氷に当てず、グラスの内側に沿わせて注ぐ
- マドラーで縦に1回持ち上げる程度にとどめ、かき混ぜすぎない
温度:冷やすと香り全体を感じにくくなる場合がある
低温では、煙を含む香気成分の立ち方が変わり、香り全体を感じにくくなる場合があります。どの香りが残って感じられるかは銘柄によって違うため、同じ銘柄を常温のストレートとロックで並べ、香りの出方を比べてみてください。香りを取って判断するときは、ストレートや加水を常温で行うのを基本にします。ロックにすると印象が単調になったと感じたら、氷を1個に減らすか、トゥワイスアップに切り替えます。
開栓後の保管と小瓶に移す判断
ボトルは直立させて保管します。横に寝かせると、度数の高い液体がコルクに触れ続けて傷めるおそれがあります。保管場所は、直射日光と高温を避けたところを選びます。残量が減ると瓶内の空気が増えて酸化が進みやすく、揮発しやすい香りから先に抜けていきます。
- 少量を長期間保管するなら、清潔で密閉できる小瓶への移し替えを検討する
- 開栓後の変化は、残量だけでなく、開栓からの期間、開け閉めの回数、保管場所の温度や光にも左右される
- 移した日付とロットコードを小瓶に書いておく
バーでの頼み方
注文では、銘柄名・飲み方・量の3つを伝えます。銘柄を決めていない場合は、煙の強さの好みを言葉で伝えます。
- 「アードベッグ 10年をストレートで、シングル。チェイサーもお願いします」
- 「煙は強すぎず、甘さが後から来るものをハイボールで」
- 「ヨードっぽい煙が好きです。次は灰っぽいドライな煙を試したい」
店の値付けは、1杯の量と仕入れ値をもとに決まります。シングルとダブルの価格差や、同じ銘柄でも店ごとに価格が違う理由は、ここから読み取れます。
この記事で紹介した銘柄
よくある質問

樽の「ファーストフィル」と「リフィル」で、煙の出方は変わりますか。
ファーストフィルは、バーボンやシェリーを払い出した後に初めてスコッチを詰める樽です。木材や前の酒の成分が多く溶け出すため、甘さや樽香が煙に重なりやすくなります。リフィルは2回目以降に使う樽で、樽の影響は穏やかです。その分、原酒の煙や麦芽の香りが出やすくなります。ただし、樽の使用履歴を公表している銘柄は多くありません。選び方に使えるのは、ラベルやメーカーの製品ページで履歴が公表されている銘柄に限られます。たとえばオクトモア 17.4は、ファーストフィルのオロロソ樽で7年熟成したと公表されているので、108.2ppmの煙にシェリー樽由来の果実味がどう重なるかを確かめる手がかりになります。
色が濃いほど樽の影響が強いと考えてよいですか。着色の有無はどこで分かりますか。
色だけでは判断できません。スコッチウイスキー規則では、色を整えるためにスピリッツカラメルを加えることが認められています。着色の表示の決まりは国によって違い、ドイツなど一部の国では着色した場合の表示が求められますが、どの国でも表示されるわけではありません。確かめる順番は、まずラベルの「Natural Colour」や着色なしの表記、次にメーカーの製品ページです。どちらにも記載が無ければ着色の有無は「不明」として扱い、色の濃さを樽の判断材料にしません。着色なしと明記されたボトルなら、色も樽の判断材料に加えられます。
ピーテッドとノンピートを同じ席で出すときは、どの順番がよいですか。
ノンピートを先に、ピーテッドを後に出します。ピート由来のフェノール類は口の中とグラスに残りやすく、先に飲むと、後のノンピートの麦芽や樽の香りが読み取りにくくなるためです。ピーテッドの中では、第2章の飲み比べの順番と同じく、度数の低いものから進めます。比較の対照として途中でノンピートに戻る場合は、グラスを替え、常温の水で口をすすいでから注ぎます。
飲み比べで前のピート香が残り、次の銘柄の判断がぶれます。どう防ぎますか。
銘柄ごとにグラスを替え、同じグラスを使い回さないことが基本です。ピート由来の香りは、ガラスにも口の中にも残りやすいためです。銘柄の合間には常温の水で口をすすぎ、無塩のクラッカーなど香りの弱いものを挟みます。グラスは無香料の洗剤で洗い、湯ですすいで自然乾燥させます。こうすると、残り香や洗剤のにおいが次の評価に混ざりにくくなります。
出典・参考にした情報
- Scotch Whisky Association(確認日 2026-11-08)
- サントリー(確認日 2026-11-08)
- ラフロイグ(確認日 2026-11-08)
- アードベッグ(確認日 2026-11-08)
- ブルックラディ蒸溜所(確認日 2026-11-08)
- キルホーマン蒸溜所(確認日 2026-11-08)
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。