アードベッグ10年は初心者にきつい?理由と飲みやすくする方法
アードベッグ10年のきつさを煙・薬品系の香り・度数・煙と甘さの組み合わせの4つに分けて整理して解説。ハイボールの割り方の目安や、バーで少量から試す手順も紹介し、購入前に自分に合うか見極められます。
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アードベッグ10年は初心者にきついのか:「きつさ」を4つに分けて判断する
アードベッグ 10年は飲む人を選ぶ銘柄です。ただし、「きつい」の理由は人によって違います。煙が苦手な人、薬品のような香りが苦手な人、度数が強すぎると感じる人、煙と甘さの組み合わせが合わない人がいます。理由によって、合う飲み方も代わりに選ぶべき銘柄も変わります。まず、自分がどれに引っかかりそうかを見極めることが、失敗を避ける近道です。
「きつさ」を4つに分ける
| きつさの種類 | 感じ方の例 | 製法上の由来 |
|---|---|---|
| ① スモーク | 焚き火、燻製、灰 | 製麦業者がピート(泥炭)を焚いた煙で麦芽を乾燥させ、煙に含まれるフェノール類を麦芽に吸わせる。アードベッグはピートレベル最低55ppm(麦芽の値)の麦芽を使う |
| ② 薬品・タール・ヨード | 正露丸、湿布、消毒液 | 同じピート由来のフェノール類のうち、薬品やタールを思わせる成分が前に出たもの。公式の香りの説明にも「タール」が入る |
| ③ アルコールの刺激 | 鼻や舌がピリッとする、喉が熱い | 通常版は46%で、一般的な40%前後のウイスキーより高い。刺激の主因は度数(ノンチルは口当たりに関わる。第2章) |
| ④ 煙と甘さの同居(人によっては) | 燻製と甘いバニラが同時に来て、焦げた菓子や甘い煙のように感じる | バーボン樽に由来するバニラ系の甘さや、ピュリファイアーを通した軽く果実的な原酒の性格が、強いピートと同時に出る |
55ppmは麦芽の値で、グラスの煙の強さとは一致しません(詳しくは次章)。
①と②は同じピート由来ですが、別のものとして考えるのが大切です。燻製は好きでも、正露丸系の香りは受けつけない人がいます。④は人によって受け止め方が分かれます。甘さを期待して口に含むと、その分ピートが苦味として際立ち、きつく感じることがあります。
評価ははっきり割れる
好みは煙と薬品香の許容度で大きく分かれます。ピート好きには定番として高く評価される一方、ピートを飲み慣れていない人からは「正露丸」「消毒液」のようだという拒否反応が典型的に出ます。酒としての品質の評価と、自分の好みに合うかどうかは別の問題です。
買う前の自己診断
- 燻製、スモークチーズ、ラプサンスーチョン(松の煙で燻した紅茶)が好き → ①は問題になりにくい
- 湿布や消毒液、正露丸の香りに強い抵抗がある → ②で引っかかる可能性が高い。燻製好きでも、ここは別に判断する
- 度数7%前後の缶ハイボールでも強いと感じる → ③に注意する。割り方は次々章(飲み方の章)の比率を参照
- 煙と甘さが同時に来る味わいが自分に合うか分からない → ④は説明だけでは判断しにくい。バーで少量を試してから決める
判断の目安は2つ目の項目です。ここに当てはまる場合は、ボトルの購入はいったん保留しましょう。バーでシングル(1杯30ml前後)を頼み、ストレートと加水を試してから決めるのが安全です。1つ目に当てはまり、2つ目に当てはまらない人は、ボトルで試す価値が十分にあります。
限定のカスクストレングス(61.7%)と取り違えないよう、ラベルの**46%**を確認してください(第4章参照)。
なぜきついのか:55ppmの麦芽、ピュリファイアー、バーボン樽、46%ノンチルフィルターから読み解く

アードベッグ 10年の煙っぽさは、麦芽を乾かす工程から生まれます。発芽させた大麦を乾燥させるときにピート(植物が長い年月をかけて堆積した泥炭で、燃料に使われます)を焚くと、煙に含まれるフェノール類が麦芽に付きます。その量はppm(100万分の1)で表され、蒸溜所は使う麦芽を最低55ppmにすると説明しています。アードベッグは自社でフロアモルティング(床に麦を広げて発芽させる伝統的な製麦)を行っておらず、ポートエレンなどの製麦所が55ppm仕様で燻した麦芽を調達しています。
「55ppmのウイスキー」は誤解
55ppmは麦芽の値で、瓶詰めしたウイスキーの値ではありません。フェノール類は糖化から熟成までの工程で減っていきますが、最も大きく効くのは蒸溜です。重いフェノール類は沸点が高く、スピリットの後半(フェインツ側)に多く出てきます。そのため、ミドルカット(製品に使う中留部分)をどこで切り上げるかが、製品に残る煙の量を大きく左右します。カットを遅くまで取るほど、留液にフェノール類が残ります。熟成中も、樽の中で煙の印象は徐々に穏やかになります。そのため「55ppmのウイスキー」という言い方は正確ではありません。麦芽のppmは原料をどこまで燻したかを示す数字で、グラスで感じる煙の強さをそのまま表すものではありません。銘柄どうしを比べるときは、麦芽の値どうしで比べます。
ピートが強いのに甘さや柑橘を感じる理由
蒸溜で注目したいのは、スピリットスチル(2回目の蒸溜に使う釜)のラインアームに付いたピュリファイアーです。ラインアームは、釜の上部から冷却器へ蒸気を送る管のことです。ピュリファイアーは重い蒸気を釜に戻し、もう一度蒸溜させます。還流(蒸気が冷えて釜に戻ること)が増えると、重い成分は留液に残りにくくなります。強いピートを持ちながら軽さや果実感もある香味は、この仕組みとつながっています。ただし、香味にどの程度効いているかは公式に示されていないため、要因のひとつと考えるのが正確です。
熟成樽について、公式情報は通常版をバーボン樽熟成としています。バーボン樽とは、バーボンウイスキーの熟成に使われたアメリカンオークの樽のことです。アメリカンオークは、内側を焦がす(チャー)、焼く(トースト)といった加熱によって木のリグニンが分解し、バニリンなどの甘い香りの成分が生じます。バーボンの払い出し後、初めてスコッチの熟成に使うファーストフィルの樽ほどこうした成分が多く溶け出し、2回目以降に使うリフィルの樽では穏やかになります。通常版のファーストフィル比率は非公表です。この甘さにピートの煙が重なると、燻製と焼き菓子を同時に口にしたような印象になることがあります。煙と甘さの組み合わせが合わないと感じる人は、この重なりに違和感を覚えている可能性があります。
| 公式ノートの香り | 結びつく製法 | 補足 |
|---|---|---|
| 煙 | 麦芽の乾燥に使うピート(フェノール類) | ピート香の中心 |
| タール | 同じくピート由来 | 煙の重く焦げた側の印象 |
| 柑橘 | 発酵でできるエステル類と、ピュリファイアーによる軽い留液の性格 | 果実的な香りとして現れると考えられる |
| メントール | アメリカンオーク由来の成分や、ピートのフェノール | 両者が重なって感じる清涼感として語られることが多い |
いずれも一般的な由来の説明で、蒸溜所が香りと製法の対応を公表しているわけではありません。
46%の度数が刺激を、ノンチルフィルターが口当たりと濁りを左右する
通常版は**46%**で、冷却濾過をしないノンチルフィルター仕様です。鼻や舌への刺激の主な理由は、40%前後の一般的なウイスキーより高いこの度数です。冷却濾過とは、ウイスキーを冷やして濁りの元になる成分を析出させ、フィルターで取り除く工程です。濁りの元になるのは、長鎖脂肪酸のエチルエステル(ラウリン酸エチル、パルミチン酸エチルなど)を中心とした成分で、度数や温度が下がると液に溶けにくくなります。これを取り除かずに残すと、口当たりに厚みが出るとされます。冷却濾過をしないこと自体が、アルコールの刺激を強めるわけではありません。一方で、残った成分が加水や冷却で析出し、白く濁ることがあります。温度が上がると、濁りが薄れることもあります。
- 氷や水を入れて白く濁った場合:上の成分が析出したもので、品質の問題ではありません。そのまま飲めます
- 色から無着色かどうかを判断したい場合:着色の有無は公式に確認できません。「淡い金色」という色の記載だけでは、無着色とは言えません
ラベルの「10年」とシングルモルトの意味
スコッチウイスキー規則(SWR 2009)では、年数表示は使った原酒のうち最も若いものの熟成年数を示します。「10年」は平均の年数ではなく、最低保証の年数です。シングルモルトとは、水と大麦麦芽のみ(酵母を加えて発酵)を原料に、単一の蒸溜所のポットスチルによる単式蒸溜でつくり、スコットランド国内で容量700リットル以下のオーク樽で3年以上熟成したものを指します。
時系列の事実も押さえておきます。2021年に新しい蒸溜棟が完成し、ポットスチルは2基から4基に増えました。2026年には、蒸溜所所長がコリン・ゴードンからブライオニー・マクニヴンに交代しています。どちらについても、味が変わったかどうかは公式に示されていません。以前のボトルと印象が違うと感じても、これらの変化と結びつけて判断する根拠はありません。なお、2021年以降に蒸溜した原酒は、2031年まで10年表示の製品には入りません。
きつさを和らげる飲み方:ハイボール・トゥワイスアップ・加水の比率と手順、よくある失敗
最初の一杯はハイボール:度数に弱ければ1対6から
アードベッグ 10年を初めて飲むなら、ハイボールから始めると失敗が少なくなります。炭酸で割ると度数が下がり、鼻と舌を刺すアルコールの刺激が減ります。炭酸の泡が香りを持ち上げるので、煙の輪郭は残ります。比率は、度数への強さで選びます(いずれも氷が溶けた水の分を除いた計算です)。
- 缶ハイボール(7%前後)でも強いと感じる人:ウイスキー1:炭酸6で、約6.6%です。ウイスキー15mlに炭酸90mlの少量で作り、飲みきれる量で試します
- ハイボールの濃さを楽しめる人:1対4で約9.2%、1対3で約11.5%です。缶ハイボールより濃い一杯になります
薄いと感じたら、次の一杯で比率を1段階ずつ濃くしていきます。
- タンブラーに氷を縁まで詰め、マドラーで回してグラスを冷やし、溶けた水を捨てます
- ウイスキーを注ぎ(1対6なら15ml、1対3〜4なら30ml)、しっかり混ぜて原酒そのものを冷やします
- よく冷えた炭酸(1対6なら90ml、1対3〜4なら90〜120ml)を、氷に当てないようグラスの内側に沿わせて静かに注ぎます
- マドラーを底まで差し込み、縦に1回持ち上げて終えます
ストレートと加水は少量から段階的に
ストレートは10〜15mlを脚付きのテイスティンググラスに注ぎます。すぼまった口が香りを集めるため、縁に鼻を入れて深く吸うと、フェノール(ピート由来の煙の成分)とアルコールが一度に届きます。最初は鼻をグラスから数cm離し、軽く息を吸う程度で香りを取ります。
加水は、数滴→小さじ1杯→等量(トゥワイスアップ。ウイスキーと常温の水を1対1で、約23%)の順に足し、段階ごとに香りを確かめます。度数が下がるとアルコールの刺激が引き、隠れていた香りが表に出ます。メーカーのテイスティングノートも、加水すると潮風を思わせる香りが現れるとしています。ストレートで煙しか感じない場合は、少量の水を加えて香りの変化を確かめてみてください。
水割りとロックは冷やしすぎに注意します。冷やすと香りを取りにくくなる人もいるので、ロックと常温の加水を少量ずつ用意し、同じ量で比べて自分に合うほうを選びます。白く濁っても品質の問題ではありません(第2章参照)。
グラスと温度で変わる感じ方
| グラス | 向く飲み方 | 感じ方の傾向 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| テイスティンググラス(脚付き) | ストレート・加水・トゥワイスアップ | 常温で香りが立ち、柑橘・メントール・潮の変化を追いやすい | 香りが集まるので鼻を近づけすぎない |
| ロックグラス | ロック | 冷えるほど刺激は丸くなるが、香りを取りにくく感じる人もいる | 大きな氷1個で溶けを遅らせる |
| タンブラー | ハイボール・水割り | 冷たさと泡で刺激が抑えられ、煙は軽く広がる | 氷と炭酸を十分に冷やしておく |
よくある失敗とその理由
- ぬるい炭酸を使う:ガスは温度が高いほど抜けやすく、泡が香りを運びません。薄まったアルコールと煙だけが残ります
- 氷が少ない:すぐ溶けて水っぽくなり、温度も上がってアルコールが立ちます
- 炭酸を入れてから何度も混ぜる:ガスが抜けて爽快感の支えがなくなり、ピートの苦味が前に出ます
- ダブル(60ml)のストレートから始める:46%の刺激とフェノールに鼻と舌が先に疲れ、「煙たくてきつい」印象だけが残ります
- 最初の一杯の直後に濃い料理を合わせる:にんにくや甘辛いタレの味で舌がふさがり、香味を判断できないまま苦味だけが記憶に残ります
香りの強さが釣り合う食べ合わせ
香りが強いぶん、料理の側にも同じくらいの主張があると釣り合います。
- 燻製(スモークサーモン、燻製チーズ、ベーコン):煙どうしが重なり、ピートが料理になじみます
- ビターチョコレート:カカオの苦味とほのかな甘さがタールの重さを受け止めます
- ブルーチーズ:塩気と脂が強い燻香と拮抗し、互いの角が取れます
- 牡蠣:潮とヨードの風味が海辺を思わせる香りと同じ方向を向きます。トゥワイスアップと合わせると潮の香りが重なります
開けた後の保管
キャップをしっかり閉め、ボトルは立てて保管し、光と高温を避けます。寝かせると度数の高い液体が栓に触れ続け、傷みの原因になります。飲みきる期限は決まっていませんが、残りが少なくなるほど瓶の中の空気が増え、酸化と揮発で香りが変わりやすくなります。弱まるのは、柑橘のような軽い香りが先です。残りが3分の1ほどになったら、小瓶に移して空気に触れる量を減らします。ストレートで飲みきれない場合は、ハイボール用と割り切るのも一つの判断です。香りが多少落ちても、炭酸で割れば煙とキレは十分に楽しめます。
買う前の判断材料:価格の目安、通常版と限定カスクストレングスの違い、バーで先に試す方法

価格の目安:希望小売価格7,865円を基準線にする
2026年にメーカーが示したアードベッグ 10年(700ml)の希望小売価格は税込7,865円です。国内の酒販店では税込6,710円や7,480円で載っている例もあり、現在の目安は 4,980円前後(2026年10月10日時点) です。価格は店や時期で変わるため、ここに挙げた金額はあくまで目安です。
買うときは、次の順に確かめます。
- まず容量が700mlかどうかを確かめる。
- 送料や手数料を含めた支払総額を出し、希望小売価格の7,865円と比べる。希望小売価格は比較の基準で、下回っていることだけで買いどきとは言えない。
- 販売元を確かめる。正規輸入品か並行輸入品か、保管状態について説明のある店かを見て、条件が分からない出品は避ける。
通常版と限定のカスクストレングスは別の商品
2026年2月24日に「アードベッグ10年 カスクストレングス」が数量限定で発売されました。名前はほぼ同じですが、中身も価格も別の商品です。カスクストレングスとは、瓶詰めの前に加水して度数を下げる工程を通さず、樽から出したときに近い度数で詰める仕様を指します。
| 項目 | アードベッグ 10年(通常版) | アードベッグ10年 カスクストレングス |
|---|---|---|
| 位置づけ | 定番品(2000年発売) | 数量限定品(2026年2月24日発売) |
| アルコール度数 | 46% | 61.7% |
| 希望小売価格(税込) | 7,865円(700ml) | 14,300円(700ml) |
| 30mlに含まれるアルコール | 約13.8ml | 約18.5ml |
| 46%前後まで薄めるのに必要な水 | 不要 | 30mlに対し約10ml |
| 向く人 | 初めての1本、アイラモルトの入門 | 通常版を飲み慣れていて、度数違いを比べたい人 |
ラベルや商品ページで見分けるポイントは2点です。商品名に「カスクストレングス」の語があるかどうかと、度数表示が46%か61.7%かです。通販では商品名が途中で省略されることがあるので、度数の欄まで見てください。なお、カスクストレングスは日本では「アードベッグ コミッティーストア」限定で発売された商品で、2026年10月1日時点で公式販売分は完売しています。酒販店や通販で見かける場合は、公式販売とは別に流通している在庫なので、販売元と支払総額を確かめてから判断してください。
「きつい」が不安な人が最初に買うのは通常版です。61.7%になると、同じ量でもアルコールの刺激がはっきり強くなります。刺激が強いと煙や柑橘、メントールといった香りを感じにくくなり、「きつい」という印象だけが残りやすくなります。さらに希望小売価格は通常版の約1.8倍で、合わなかったときの損も大きくなります。カスクストレングスは、通常版を気に入った人が並べて飲み、度数の違いで香味がどう変わるかを楽しむためのものと考えてください。
ボトルを買う前にバーで試す方法
- 注文するときは「アードベッグの10年を、ハイボールで」と伝える。棚には年数表記のないアードベッグが並んでいることもあるので、「10年」まで言うと取り違えを防げる。
- ストレートも試したいなら「ストレートで、チェイサー(口直しの水)もお願いします」と頼む。一口ごとにチェイサーを飲むと、舌の刺激がリセットされる。
- 量はシングル(多くの店で30ml前後)で十分。初回は、好みを確かめやすい飲み方を1杯選ぶ。度数が不安なら、ハイボールを「ソーダ多めで」と頼むとよい。ストレートとハイボールを両方比べたいなら、それぞれ少量で出せるか聞き、間にチェイサーを飲む。ストレートで香りを確かめてからハイボールに移る順番もあるが、決まった手順ではない。
- 値段が気になるときは、注文の前に「1杯おいくらですか」と聞いてよい。
バーの1杯は、700mlのボトルをシングルの杯数(約23杯)で割った金額ではありません。グラスや氷、ソーダ、提供の手間まで含めて値段が付けられています。1杯の値段だけを見て「ボトルで買うより割高」と考える必要はありません。数千円のボトルを買って合わなかったときの損を避けられるなら、試す価値は十分にあります。
試したあとの判断は、次のように分けられます。ハイボールで美味しいと感じたら、通常版を買って家ではハイボールを中心に飲めば失敗しません。ストレートでも嫌でなかったら、トゥワイスアップや加水も楽しめます。どちらも合わなかったら、そのときは買わないのが正解です。
贈り物にする場合の判断基準
- 相手が普段からスモーキーなウイスキーを飲んでいる:通常版を選べば外しにくい。
- 相手の好みを確かめられない:購入前に、燻製のようなスモーキーな酒を飲むかどうかを確かめる。確かめられないなら、ピートを使わない別系統の銘柄を選ぶ。ソーダで割っても煙の香りは残るため、ピート香そのものが苦手な相手には逃げ道にならない。通常版を贈るのは、ピート好きと分かっている相手に限る。
- 相手がすでに通常版を愛飲している:入手しやすい上位品のアードベッグ ウーガダールが第一候補になる。カスクストレングスを選ぶ場合は、公式販売分が完売しているため酒販店の流通在庫になる。流通在庫は希望小売価格を大きく上回ることがあるので、支払総額を確認する。
定番品なので「試してから買う」順番で動ける
通常版は2000年に発売され、2026年10月1日時点でも日本の公式サイトに定番商品として載っています。限定品のように、売り切れる前に急いで買う理由はほとんどありません。バーで1杯試し、合えば通常版を買い、気に入ったら限定品を探します。この順番なら、「きつくて飲みきれないボトルが残る」という最も多い失敗を避けられます。
合わなかった人・もっと欲しくなった人の次の一本と、よくある質問
合わなかった理由・気に入った理由から次の一本を選ぶ
次の一本は「10年のどこが引っかかったか」で決めます。煙そのものが重かったのか、薬品のような香りが苦手だったのか、度数の刺激がつらかったのかで、向く方向は変わります。逆に気に入った人は、「甘さを足したいのか」「強さを上げたいのか」で選び分けます。
| こんな人 | 次の一本 | 10年との違い | 最初の飲み方 |
|---|---|---|---|
| ピートは好きだが、もう少し穏やかにしたい | カリラ 12年(43%) | 煙が軽めでオイリー、塩気寄り。刺激が前に出にくい | ハイボールか、水と1:1のトゥワイスアップ |
| 燻製香は好きだが、薬品香が苦手 | ハイランドパーク 12年(40%) | ヘザー(ヒース)を含むピートで、甘い煙と蜂蜜のような甘さが中心。薬品香は前に出にくい | ストレートからトゥワイスアップへ |
| アイラの若々しいピートを別の蒸溜所で比べたい | キルホーマン マキヤーベイ(46%) | 若い原酒ならではの鋭さと甘さの対比を、別の蒸溜所の個性で確かめられる | 少量をストレートで飲み、次に数滴加水 |
| 10年の煙に甘さと厚みを足したい | アードベッグ ウーガダール(54.2%) | シェリー樽由来の干し果実のようなコクが煙に重なる。通常版より高い度数 | 加水を前提に少量から。水は数滴ずつ足す |
| 10年では物足りない | アードベッグ コリーヴレッカン(57.1%) | 煙も厚みも押し出しが強い。通常版より高い度数 | 加水を前提に少量から |
| 煙を外して、穏やかなモルトから慣れたい | グレンフィディック 12年(40%) | ピートを使わないモルト。度数も10年より低く、果実香や麦の甘さを軸に樽の感じ方を学べる | ストレートからトゥワイスアップへ |
| 煙を外して、同じ46%の刺激を比べたい | アラン 10年(46%) | ピートを使わないモルトで、度数は10年と同じ。刺激が度数由来かどうかを確かめやすい | 10年と同じ量・同じ加水で並べる |
ピートのないモルトで慣れてからアイラへ戻るなら、比べ方を固定すると違いがはっきりします。同じグラスに同じ量を注ぎ、同じ比率で加水して、アラン 10年とアードベッグ10年を並べます。どちらも46%なので度数の条件がそろい、刺激が度数由来かどうかは確かめやすくなります。ただし蒸溜器の形や樽構成、原酒の性格の違いも重なるため、感じる差は煙だけによるものではありません。グレンフィディック 12年は40%なので、並べる場合は度数の差も刺激の違いに含まれる点に注意します。度数の刺激だけがつらかった人は、銘柄を替える前に、10年を加水やソーダ割り(第3章の1:6)で試してみてください。
アードベッグ ウーガダールは、10年の路線に甘さを重ねた一本として位置づけられます。飲み方や終売の噂の真偽は、別記事で扱っています。
ラフロイグ10年とどちらが初心者向きか
ラフロイグ10年とアードベッグ10年は、どちらもフェノール由来の薬品様の香りがはっきり出ます。ラフロイグは海藻やヨードの印象が前に出やすく、アードベッグは柑橘やメントールが重なります。どちらが入りやすいかは個人差が大きく、香りの説明だけでは決められません。判断材料として実用的なのは度数の違いで、日本の正規品のラフロイグ10年は40%、アードベッグ10年は46%です。同じ量なら、ラフロイグのほうがアルコールの刺激は小さくなります。薬品香が壁の人は、どちらもボトルの購入は保留し、バーで少量ずつ並べて確かめてください。
よくある質問
Q. 瓶詰めの時期(ロット)で味は違う? 違いが出ることはあります。シングルモルトは、毎回異なる樽の原酒を組み合わせて同じ香味の設計に寄せますが、樽ごとの個性は完全には一致しないため、煙や甘さの出方にわずかな差が出ることがあります。ボトルに印字されたロットコードを控えておくと、印象が違ったときに比べやすくなります。ロットごとの違いについて、メーカーの公式な説明はありません。
よくある質問

正規輸入品と並行輸入品で中身は違いますか?
同じ商品名・同じ度数なら、基本的に同じ製品です。違いは流通の経路にあります。並行輸入品は輸送や保管の履歴が分かりにくく、瓶詰め時期(ロット)が正規品と異なることもあります。高温や直射日光の下に長く置かれたボトルは香りが落ちていることがあるため、価格だけでなく、保管状態を説明している店かどうかで選んでください。
アードベッグ コミッティーとは何ですか? 限定品はどう買えばよいですか?
アードベッグ コミッティーは、蒸溜所が運営する愛好家向けの会員制度です。登録すると、会員向けの限定ボトルの案内や購入の機会が得られます。日本では「アードベッグ コミッティーストア」で会員向けの限定品が販売され、10年 カスクストレングスもここで限定発売されました。限定品は短期間で売り切れることが多いため、案内を受け取れるよう事前に登録しておくのが確実です。
アードベッグ10年はなぜ薬品のような味がするのですか?
原料の大麦麦芽を乾燥させる際に、ピート(泥炭)を焚いて燻すためです。煙に含まれるフェノール類が麦芽に移り、蒸溜と熟成を経ても一部が残ります。消毒液や正露丸のような薬品様の香りには、フェノールやクレゾールなどのフェノール類が関わります。正露丸の主成分である木クレオソートにも、同じ系統の化合物が含まれています。一方、「ヨード様」は香りを表す官能評価の言葉で、ヨウ素の含有量を示すものではありません。海を思わせる香りについてはブロモフェノール類を検出した研究もありますが、アードベッグ10年の成分として確認されたものではありません。
同じボトルなのに、スモークを強く感じる日と感じない日があるのはなぜですか?
飲む側の状態と提供の条件で、感じ方が変わるためです。体調や鼻の通り、直前に食べたものによって香りの感度は変わります。液温が低いと香りが立ちにくく、常温に近いほど煙も柑橘も広がります。また開栓後は軽い香りから先に弱まるため、時間が経ったボトルでは相対的に煙が目立つことがあります。比べるときは、同じグラス・同じ量・同じ温度で確かめてください。
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。