スコッチウイスキー

ノンピートウイスキーおすすめ|製法で選ぶスコッチ

煙の香りが苦手な人向けに、メーカーがノンピートと明記するグレンリベット12年、グレンゴイン12年、ブナハーブン12年、クラシック・ラディ10年を好み別に紹介。煙が付く製麦工程や、公表されるppmの多くが麦芽の値である点も解説します。

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この記事で紹介した銘柄:グレンゴイン 12年・ザ・グレンリベット 価格と購入先へ ↓

ノンピートとは何か|煙の香りが付く工程と「ppm」の正しい読み方

煙の香りを避けたい人は、メーカーがノンピートと明記している次の銘柄から選ぶと確実です。それぞれの香味がどこから来るのかは、この後の章で製法に沿って説明します。

  • 軽く華やかな香りから試したい:ザ・グレンリベット12年。蒸溜の設計による軽さを知るための基準になる1本
  • 果実の甘さを求める:グレンゴイン 12年。ピートを焚かず、熱風だけで乾燥させた麦芽を使うとメーカーが明言している
  • 樽の甘さとナッツの香りを求める:ブナハーブン12年。アイラ島の蒸溜所が造るノンピート
  • 加水やハイボールで長く楽しみたい:ザ・クラシック・ラディ 10年。度数が50%と高く、加水で調整できる幅が広い

煙の香りは製麦の乾燥工程で付きます

ピート由来の香りは、蒸溜や樽からではなく、大麦を麦芽にする製麦の段階で付きます。発芽させた大麦を乾燥させる工程(キルニング)でピート(泥炭)を焚くと、その煙が麦芽に移ります(スコッチウイスキー協会)。煙に含まれるフェノール類は、麦芽がまだ水分を多く含む乾燥の初期ほど付きやすく、これが焚き火、ヨード、薬品などと表現される香りのもとになります。ノンピートとは、この乾燥工程でピートを使わない麦芽で造ったウイスキーを指します。

「ノンピート(unpeated)」は、SWR 2009(スコッチウイスキー規則)で定められた法定の表示語ではありません。何ppm以下ならノンピートと呼べるという公的な基準もありません。各メーカーが、自社の麦芽の仕様にもとづいて使っている呼び方です。たとえばザ・グレンリベット12年は、メーカーがノンピートと明記しています。購入時に確かめるときは、産地やボトルの印象ではなく、メーカーの製品説明に「ノンピート」「ピートを使わない麦芽」と書かれているかを見るのが確実です。アイラ島の蒸溜所でも、ブナハーブン12年やブルックラディのザ・クラシック・ラディ 10年はノンピートです。

公表されるppmの多くは「麦芽」の数値で、グラスの中の数値ではありません

銘柄のピート度として公表される「ppm」は、多くの場合、仕込みに使う麦芽に含まれるフェノール類の濃度(フェノール値)です。瓶詰め後のウイスキーを測った値ではありません(ブルックラディ蒸溜所)。フェノール濃度は、ニューメイク(蒸溜したての原酒)や製品でも測定できます。数値を比べるときは、麦芽、ニューメイク、製品のどれを測った値かを先に確かめてください。麦芽からボトルまでの間に、フェノール類の残り方は工程ごとに変わります。

  • 糖化・発酵:麦芽を湯に浸して糖を取り出し、酵母で発酵させる段階。麦芽のフェノール類がすべて麦汁やもろみに移るわけではありません
  • 蒸溜のミドルカット(本留として採る範囲):フェノール類の多くは沸点が高く、蒸溜の後半に多く出てきます。本留を遅くまで採るほど煙の香りは残りやすく、早めに切り上げれば軽くなります
  • 熟成:樽の中で年数を重ねるうちに、ピート香は角が取れ、目立ちにくくなっていきます

このため「◯ppmだから、この程度スモーキー」とは単純に言えません。同じppmの麦芽でも、スチルの形やカットの位置、樽、熟成年数が違えば、グラスで感じる煙の強さは変わります。麦芽のppmは「原料の段階でどれだけ煙を当てたか」の目安として読み、実際の香りは製品ごとに確かめる、というのが正しい使い方です。

「スモーキーかどうか」と「クセの強さ」は別の軸です

スモーキーを避けたい人がつまずきやすいのは、「煙がない=軽くて飲みやすい」と考えてしまう点です。飲み口の重さや個性は、ピートとは別に、樽の種類、瓶詰め時の度数、蒸溜の設計でも決まります。メーカーの案内をもとに、ノンピートの3本を並べると違いが分かります。度数は、後の「度数・仕様・価格で比較」の章でまとめて比べます。

銘柄熟成樽蒸溜・瓶詰めの特徴
ザ・グレンリベット12年ヨーロピアンオーク樽・アメリカンオーク樽ランタン形の銅製ポットスチル
ブナハーブン12年バーボン樽・シェリー樽洋梨形のスチル、冷却濾過なし・着色なし
ザ・クラシック・ラディ 10年バッチごとに構成が異なる高めの度数で瓶詰め、冷却濾過なし・着色なし

3本ともノンピートですが、ストレートで感じる重さは同じではありません。シェリー樽由来のドライフルーツのような濃さや、50%前後の度数によるアルコールの刺激を「クセが強い」と感じる人もいます。選ぶときは、まず「ピートの有無」で煙を避け、次に「度数」と「樽の種類」で重さを選ぶ、という2段階で考えると、自分用でも贈り物でも外しにくくなります。

ノンピートの定義の広がりや代表的な銘柄の整理は、基礎知識の記事(/non-peat-whiskey-essentials-for-beginners-and-enthusiasts/)にまとめています。

「アイラ=スモーキー」は誤り|ノンピートのアイラモルトとラベルの確かめ方

ウイスキーのイメージ写真

アイラ島の蒸溜所にも、ピートを焚かない麦芽で造るノンピートの主力品があります。

ブナハーブン12年|ノンピートの麦芽と洋梨形スチル

ブナハーブン12年は、蒸溜所がノンピートと明記しています。バーボン樽とシェリー樽で熟成し、度数46.3%で瓶詰めします。スチル(蒸溜釜)は洋梨形でスワンネック(釜の上部の首)が長く、還流の多い設計です(仕組みは次の章で説明)。ピートを使わない麦芽にバーボン樽とシェリー樽の組み合わせが重なることで、煙ではなく、樽由来の甘さとナッツのような香りが前に出ます。

冷却濾過・着色は行いません(濁りの仕組みは度数・仕様の章で説明します)。

ザ・クラシック・ラディ 10年|年数表記の変更とバッチ差

ブルックラディのザ・クラシック・ラディ 10年は、スコットランド産大麦100%で造るノンピートのシングルモルトです。度数は50%で、冷却濾過も着色も行いません。クラシック・ラディを「熟成年数表示のない現行品」と紹介している情報は古くなっています。2026年の国内品は「10年」表記で、700ml瓶は2026年3月2日に国内で発売されました。古い記事や通販ページには、年数表記のない旧ラベルの画像や説明が残っている場合があります。ラベル正面の「10」の表記と、掲載時期を必ず確かめてください。

また蒸溜所は、クラシック・ラディの樽構成がバッチごとに異なると説明しています。そのため、他人のテイスティングノート(香りや味の記録)が、手元のボトルの香味と一致するとは限りません。酒販店やバーでは、ボトルを入れ替えるたびに香りを取り直し、説明を更新するのが確実です。購入時は、ラベルのバッチ表記を確かめ、メーカーが樽構成を公開していれば照らし合わせてください。

産地名ではなくラベルと公式説明で確かめる

確認項目見る場所判断の目安
「ノンピート」「unpeated」の表記メーカー公式の商品ページ、裏ラベル明記があれば、煙を避けるという第一条件を満たす
使用麦芽の説明公式の製品説明「peated malt」やppmの記載があればピートあり
香味の表現公式のテイスティングノートsmoke、peat、bonfire、iodine、medicinalがあれば避ける
年数とラベルラベル正面クラシック・ラディは「10」の表記があるか
バッチ・ロットラベル、メーカーの案内樽構成の違いを前提に選ぶ
  1. 蒸溜所名や産地で判断しない。ブルックラディ蒸溜所は、ピートを強く効かせたポートシャーロットやオクトモアも造っている
  2. メーカー公式の説明で、麦芽の仕様と香味の表現を確認する
  3. 通販ページの説明は公式と照らし合わせ、年数表記と掲載時期に食い違いがないか見る
  4. 贈り物にする場合や店頭で説明する場合は、バッチ表記まで控えておく

味の方向で選ぶノンピートのおすすめ|蒸溜器と樽が香味を決める理由

この章では、メーカーの資料でノンピートの麦芽を使うと確認できた銘柄だけを取り上げます。

軽快・華やか|発酵で生まれ、還流で残る香り

果実や花の香りのもとになるエステル類は、主に発酵の段階で生まれます。発酵時間を長く取ると、後半に乳酸菌が働き、エステルが増えやすくなります。ウォッシュバック(発酵槽)が木桶だと内側に菌が棲みつきやすく、ステンレス製より蒸溜所ごとの個性が出やすいとされます。蒸溜は、こうして生まれた成分のうち重いものを削り、軽いものを残す工程です。

背の高いスチルや長いスワンネックでは、上る蒸気が途中で冷えて凝縮し、釜へ戻る還流が増えます。沸点の高い重い成分ほど冷却器まで届かず、銅に触れる時間も長くなります。ラインアーム(スワンネックから冷却器へ向かう管)が上向きなら還流が増えて軽く、下向きなら減って重くなります。冷却器がシェル&チューブ型(筒の中に多数の銅管を通した冷却器)なら銅との接触が多く軽く、ワームタブ(屋外の水槽に蛇管を沈めた冷却器)なら接触が少なく、硫黄系の重さが残りやすくなります。銅との接触が多いほど硫黄系の重さが取れ、発酵で生まれた花や青リンゴのような軽い香りが残りやすくなります。ザ・グレンリベットのスチルはランタン形です。メーカーは釜の形状を酒質に関わる要素の一つとして説明していますが、酒質は加熱の仕方、釜に入れる量、ラインアーム、冷却、カットの位置といった運転条件にも左右されます。

基準になる1本はザ・グレンリベット12年です。メーカーがノンピートと明記しており、ヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽で熟成し、度数は40%です。まずこれを飲み、次の1本は「これより軽いか重いか」で決めると迷いません。

果実の甘さを求めるなら、次の候補はグレンゴイン 12年です。メーカーは、ピートを焚かず熱風だけで乾燥させた麦芽を使うと明言しています。原料の段階で煙の香りが入らないため、香味は発酵、蒸溜、樽で組み立てられます。メーカーは蒸溜をゆっくり進めることも特徴に挙げています。蒸溜をゆっくり進めると、蒸気が銅に触れる時間が長くなります。

バーボン樽・アメリカンオーク|バニラとココナッツはオークから

バーボンは、内側を強く焼いて炭化層(チャー)を作ったアメリカンオークの新樽で熟成させます。炭化層の下で熱を受けた層では、木材のリグニンが分解してバニリンが、ヘミセルロースが分解してキャラメルやトーストのような香りが生じます。炭化層そのものは、硫黄化合物などを吸着する役割を持ちます。アメリカンオークに多いオークラクトンは、ココナッツのような甘い香りのもとです。バーボンを払い出した樽にスコッチを詰めると、これらの成分が移ります。トーストやキャラメルに近い香りは、主にこの熱を受けた層に由来します。麦芽に移るピートのフェノール類とは、由来も香りも別物です。ノンピートと確認できた銘柄では、ザ・グレンリベット12年のアメリカンオーク樽や、ブナハーブン12年のバーボン樽が、この方向の香りを担います。

シェリー樽|濃さと煙は別物

シェリー樽からは、レーズンやデーツのようなドライフルーツ、ナッツ、カカオの濃さが出ます。現在の「シェリー樽」の主流は、シェリーを運んだ輸送樽ではありません。熟成用に造った樽へシェリーを一定期間入れ、樽材に染み込ませたシーズニング樽です。濃さはファーストフィル(その樽での初回のウイスキー熟成)で最も強く出ます。リフィル(2回目以降)では樽の影響が穏やかになり、原酒の個性が前に出ます。

硫黄系の香りは、マッチを擦ったように感じられることがあります。樽の殺菌で燃やす硫黄に加え、銅との接触が少ない蒸溜設計の原酒そのものが硫黄香を持つ場合もあり、香りだけで由来は特定できません。これを「スモーキー」と感じる人もいますが、ピートの煙とは原因が違います。ノンピートと確認できた銘柄では、ブナハーブン12年がバーボン樽とシェリー樽を組み合わせて熟成しています。

方向別の「最初の1本」と「次の1本」

方向最初の1本次の1本香味の主な由来
軽快・華やかザ・グレンリベット12年(メーカーがノンピートと明記)グレンゴイン 12年(メーカーがピートを焚かない麦芽と明記)還流を生む蒸溜設計、アメリカンオーク樽を含む熟成
樽の甘さとナッツブナハーブン12年(メーカーがノンピートと明記)ザ・クラシック・ラディ 10年(メーカーがノンピートと明記)バーボン樽とシェリー樽の組み合わせ(ブナハーブン)、バッチごとに異なる樽構成(クラシック・ラディ)
  • 最初の1本の甘さが物足りない場合:同じ列の右ではなく、1つ下の段へ進む
  • 重い、アルコールが強いと感じた場合:上の段へ戻るか、同じ銘柄に水を数滴ずつ加えて香りを確かめる
  • 来客や贈り物に選ぶ場合:煙が苦手と分かっている相手なら、上の段から選ぶ
  • 店頭で棚に並べる場合:この表の上から下へ、軽い順に並べると説明しやすい

度数・仕様・価格で比較|40%・46.3%・50%の違いと冷却濾過の有無

ウイスキーのイメージ写真

ノンピートの3本を、瓶詰め時の度数、冷却濾過・着色の有無、メーカーが示した価格で並べます。スコッチウイスキー規則(SWR 2009)では、瓶詰め時の度数は40%以上と定められています。そのため40%は、スコッチで最も低い度数です。

3本の仕様比較

銘柄度数冷却濾過・着色発売時・発表時の税込価格向く飲み方
ザ・グレンリベット12年40%公式記載なし掲載しない(未確認)ストレート、ハイボール
ブナハーブン12年46.3%冷却濾過なし・着色なし掲載しない(未確認)ストレート、少量の加水
ザ・クラシック・ラディ 10年50%冷却濾過なし・着色なし7,370円(発表時・700ml)加水、トゥワイスアップ、濃いめのハイボール

冷却濾過の有無で何が変わるか

冷却濾過は、瓶詰め前に原酒を低温まで冷やし、析出した成分をフィルターで除く工程です。除かれるのは、長い炭素鎖をもつ脂肪酸エステルやたんぱく質などです。これらは、アルコール度数が下がるほど、また温度が下がるほど液体に溶けにくくなり、細かな粒になって白い濁りを生みます。冷却濾過の主な目的は、店頭や家庭で冷えても濁らないようにすることです。一方で、除かれる成分には口当たりや香味に関わり得るものも含まれる、と説明する蒸溜所もあります(ブルックラディ蒸溜所)。

ノンチルフィルタード(冷却濾過を行わない瓶詰め)では、これらの成分が残ります。ただし、冷却濾過品と非冷却濾過品を比べた盲検調査では、経験のある飲み手も濾過の有無を安定して見分けられませんでした。濾過の有無だけで口当たりの厚みや香りの強さは決まらないため、味の判断は銘柄ごとに行います。冷却濾過をしない銘柄の多くが度数を高めに設定するのは、ボトルの中で濁りが出ないようにするためです。濁りが出やすいのは次の条件です。

  • 水を加えて度数が下がったとき(加水、トゥワイスアップ、水割り)
  • 氷や冷えたソーダを加えたとき、冷蔵庫や冬場の冷えた場所で保管したとき
  • 冷えて濁った場合も、室温に戻ると透明に戻ることが多い。成分の性質による変化で、劣化ではない。氷やハイボールで人に出すときは、濁ることがあると先に一言伝えておく

度数の違いは「クセ」ではなく「伸びしろ」

度数が高い1本は、ストレートでは舌への刺激が強く出ます。これは度数による刺激で、香味の個性とは分けて考えます。度数が高い分、加水で調整できる幅は広くなります。30mlに水10mlを加えた場合の計算上の目安は、50%なら約37.5%、46.3%なら約35%です。トゥワイスアップ(ウイスキーと常温の水を1対1で合わせる飲み方)にすると、50%は約25%、40%は約20%になります。ソーダで1対3に割るハイボールでは、50%が約12.5%、40%が約10%です。同じ割り方なら、50%のほうが飲用時の度数は高くなります。ただし味の残り方は原酒の香味の強さにも左右されるため、銘柄ごとに確かめてください。なお、水とアルコールは混ぜると体積がわずかに縮むため、数値は目安です。

40%の銘柄は、飲む量を保ったまま薄めて楽しむ幅は小さいものの、香りを確かめる目的のトゥワイスアップには向きます。ブレンダーが香りを評価するときは、20%前後まで薄めて取るのが一般的です。40%でも、水を数滴ずつ加えれば香りの感じ方は変わります。

価格は「発売時・発表時」と「実勢」を分けて見る

上の表の価格は、メーカーが発売時や発表時に示した税込価格です。店頭や通販での実勢価格は、為替や在庫で変わります。実勢価格を書き留めるときや、店でPOPに載せるときは、必ず確認日を添えてください。メーカーの価格を確認できない銘柄は、比較表に数字を入れず、購入時に実際の価格を見て判断します。

予算・度数・飲み方から1本に絞る

  1. 予算を決める:発表時の価格が1万円以下と確認できるのは、クラシック・ラディ 10年。ほかの2本は、店頭の実勢価格で判断する
  2. 飲み方を決める:ストレートが中心なら、40%のザ・グレンリベット12年を選ぶ
  3. 加水やハイボールで1本を長く楽しむなら、クラシック・ラディ 10年を選ぶ
  4. ストレートでも加水でも飲むなら、46.3%のブナハーブン12年を選ぶ。樽由来の甘さとナッツの香りの出方を、加水の量を変えながら確かめられる

ノンピートをおいしく飲む実務|度数別の加水量・グラス・開栓後の管理

ノージンググラスでストレートから確かめる

チューリップ型のノージンググラスは、膨らんだボウルの中で香りを揮発させ、すぼまった口でその香りを鼻先に集めます。ロックグラスのように口が広いグラスでは香りが散り、アルコールの刺激だけが先に鼻へ届きやすくなります。

  1. 15〜30mlを注ぎ、まずグラスを回さずに少し離した位置で香りを取る。次に軽く回し、立ち上がる香りの変化を見る
  2. ストレートで少量を口に含み、舌全体に広げてから飲み込む。余韻(フィニッシュ)の長さを確かめる
  3. スポイトで常温の水を2〜3滴加え、軽く回して少し置き、もう一度香りを取る
  4. 香りが開き続ける間は数滴ずつ足す。香りが平板になった、水っぽくなったと感じたら、その一つ手前を自分の加水量とする

加える水は、においの少ない常温の軟水を使います。水道水の塩素臭は、繊細な香りに混ざってしまうためです。度数の高いウイスキーでは、グラスの上の空間にエタノールの蒸気が多く漂います。この蒸気が鼻を刺激して、ほかの香りを感じにくくします。加水でエタノールの割合が下がると刺激が和らぎ、隠れていた果実やナッツの香りに気づきやすくなります。

度数別の加水の目安

度数加水の目安見るポイント
40%(ザ・グレンリベット12年)数滴から。香りを確かめるならトゥワイスアップも試す飲む目的なら数滴ずつ加えてストレートと比べる。トゥワイスアップ(約20%)では香りの取り方が変わる
46.3%(ブナハーブン12年)数滴ずつ段階的に加水の量によって、樽由来の甘さやナッツの香りの出方が変わりやすい
50%(クラシック・ラディ 10年)数滴から始め、トゥワイスアップまで試す刺激の奥にある香りが加水で表に出る。バッチによって合う量が変わる

46.3%と50%の銘柄は、ストレート、数滴の加水、トゥワイスアップの3杯を並べて比べると違いがよく分かります。トゥワイスアップは、15mlずつのように同じ量のウイスキーと常温の水で作ると比べやすくなります。ノンチルフィルタードの2本は、加水で白く濁ることがあります(前述)。

ハイボールは冷たさと炭酸を守る

グラス、ウイスキー、ソーダはすべて冷やしておきます。氷を入れたグラスにウイスキーを注いだら、ソーダは氷に直接当てず、グラスの内側に沿わせて静かに注ぎます。混ぜるのは、マドラーで氷を縦に1回持ち上げる程度にとどめます。炭酸ガスは、温度が高いほど、また衝撃を受けるほど抜けやすいためです。比率や氷の扱いは、ハイボールの記事(/beginner-friendly-non-peat-whisky-appeal-and-easy-delicious-highball-recipe/)で詳しく説明しています。

冷やしすぎると香りが閉じる理由

果実や花を思わせるエステル類などの香気成分は、液面から揮発してはじめて鼻に届きます。揮発する量は温度が下がるほど減るため、冷やしすぎると届く香りが少なくなり、「香りが閉じた」状態になります。香りを確かめるストレートや加水は、冷やさず常温で飲みます。ハイボールは、香りよりも爽快感を優先する飲み方と割り切ると、使い分けやすくなります。香りが弱いと感じたら、手のひらでボウルを包んで少し温めると、香りが立ち上がっていく様子を確かめられます。

開栓後の保管と飲み切る判断

開栓すると、ボトル内の空いた部分(ヘッドスペース)の空気に原酒が触れます。そのため、揮発しやすい香りが少しずつ抜け、酸化も進みます。残量が減るほど液量に対する空気の割合が大きくなり、香りの変化も速くなります。

  • 立てて保管する:横にすると、度数の高い液体がコルクに触れ続ける。コルクが傷み、においが移ったり崩れたりする原因になる
  • 直射日光と高温を避ける:光と熱は香味の変化を早める。温度変化の少ない暗所に置く
  • 栓をしっかり閉め、開栓日をラベルに書いておく
  • 残りが3分の1ほどになったら、早めに飲み切る。すぐに飲めない場合は小瓶に移し、空気に触れる量を減らす
  • 酒販店・バーでは、開栓中のボトルの香りを定期的に取り直し、店での説明と合っているか確かめる

バーでの頼み方

  • 「スモーキーでないもの」:まずピートを避けたいことを伝える
  • 「シェリー樽系かバーボン樽系か」:ドライフルーツの濃さを求めるか、バニラや柑橘の軽さを求めるかを伝える
  • 「ストレートか加水か」:加水する場合は、チェイサーとは別に加水用の水を頼むと、自分で量を調整できる

シングルとダブルの量は店によって異なり、共通の基準はありません。価格は量によって変わるため、注文前に1杯の量を確かめておきます。量を知っておけば、複数の銘柄を飲み比べるときも量をそろえられます。

ノンピートウイスキー選びのよくある疑問

ウイスキーのイメージ写真

ノンピートは「まがい物」でも「邪道」でもありません

ピートの有無は品質の上下ではなく、香味の設計の違いです。原料の段階で煙を当てるかどうかは設計の一要素で、ウイスキーであるための条件ではありません。スコッチの多くは、ピートを強く効かせていません。煙の香りで骨格を作るか、発酵とスチルの還流、樽で骨格を作るかが分かれています。

ジャパニーズのノンピートは、2つの表示を分けて読みます

日本洋酒酒造組合の「ジャパニーズウイスキー」表示基準は、法律ではなく自主基準です。経過措置は2024年4月に終了しています(国税庁の資料)。ラベルを見るときは、2つの表示を別々に確かめます。「ジャパニーズウイスキー」は原料や製造地に関わる表示で、「ノンピート」は麦芽の仕様を示す表示です。前者が付いていても、煙の有無は分かりません。ノンピートかどうかは、各メーカーの製品説明で確かめます。基準の中身と銘柄の選び方は、ジャパニーズのノンピートの記事(/welcome-to-the-world-of-premium-non-peated-japanese-whiskies/)で詳しく扱っています。

贈り物は、相手の好みと飲み方を確かめてから絞る

ピートの煙の香りは、好きな人と苦手な人がはっきり分かれます。煙が苦手だと分かっている相手には、ノンピートは選びやすい1本です。好みが分からない場合は、まず普段飲んでいる銘柄と飲み方(ストレート、ロック、ハイボール)を、本人や身近な人に確かめます。普段の銘柄がピートの効いたものなら、ノンピートにこだわる理由はありません。甘さの好み、樽香の強さ、度数への慣れも、普段の銘柄から見当を付けられます。度数を40〜46%台に収めるのにも理由があります。この範囲なら、ストレートでもロックでもハイボールでも、飲み方の説明を添えずに成り立ちます。また定番品は買い足しやすく、相手が気に入ったときに同じ1本を探しやすいという利点もあります。

  • 煙が苦手と分かっているが、飲み方は分からない:40%のザ・グレンリベット12年
  • ストレートで飲み慣れている相手:46.3%のブナハーブン12年。「アイラ島の蒸溜所だがノンピート」と添えると、話のきっかけにもなる
  • 50%のザ・クラシック・ラディ 10年:加水やハイボールを楽しむ人向け。贈るなら、少しずつ水を加える飲み方を一言添える

同じ銘柄でも味が違うのはなぜか

定番品は、1つの樽ではなく、多数の樽の原酒をヴァッティング(混ぜ合わせること)して瓶詰めします。同じ種類の樽でも、樽材の個体差、使用回数、倉庫内の置き場所で熟成の進み方は変わります。そのため、瓶詰めのたびに原酒の組み合わせを調整して、香味をそろえます。それでも完全に同じにはならず、この差がロット差として表れます。ボトリングの時期が違えば、その時点で使える原酒の在庫や樽の構成も変わるため、同じ表記でも香味が少しずつ移ることがあります。バッチ差を前提にした銘柄の例は、アイラの章のザ・クラシック・ラディ 10年を参照してください。

  • 比べる前に、ラベルの年数表記とバッチ表記を控える
  • 開栓からの期間、グラス、温度をそろえる。開栓後の変化とロット差を区別するため

ノンピートなのに煙っぽく感じるとき

麦芽にピートを焚いていなくても、煙のように感じる香りが出ることがあります。可能性のある要因は、次のとおりです。どれが当てはまるかは銘柄によって違います。確かめられるのは、メーカーが公表している範囲だけです。

  • 樽の履歴:リフィル樽の中に、以前ピートの効いた原酒を熟成した樽が含まれていれば、樽材に残った成分が移る可能性がある
  • 樽の加熱と硫黄:前の章で触れたとおり、熱を受けた樽材に由来するトーストのような香りや、マッチのように感じられる硫黄系の香りは、煙と取り違えやすい
  • 先入観:「アイラ=スモーキー」という思い込みで、ほかの香りを煙として受け取ってしまうことがある

見分けるときは、まずメーカー公式の樽の説明を確かめます。次に、水を数滴加えて香りを開かせます。ヨードや薬品、焚き火のような香りなら、ピート由来のフェノール類を疑います。トーストやキャラメルに近ければ樽の加熱に由来する香りと考えられます。マッチのような香りは硫黄系の可能性がありますが、香りだけでは由来の工程までは特定できません。

よくある質問

ピートの効いたウイスキーと飲み比べるなら、どの順番で飲むのがよいですか?

ノンピートで度数の低いものから始め、ピートの効いたものは最後に回します。ピート由来のフェノール類は口や鼻に長く残りやすいためです。先に飲むと、後の1杯の果実や花の繊細な香りを感じにくくなります。銘柄の間には常温の水を少し口に含み、香りをリセットしてから次のグラスに移ります。

熟成年数が長いノンピートほど、おいしいのでしょうか?

年数が長いほど良いとは限りません。熟成が進むと樽由来の成分が増え、バニラやドライフルーツ、木のタンニンの印象が強まります。その分、スチルが生む原酒の軽さや果実味が樽に隠れることもあります。エンジェルズシェア(熟成中に蒸発で失われる分)で量が減るため、価格も上がります。まず12年前後で好みの方向をつかんでから比べるのが確実です。

カスクストレングスやシングルカスクのノンピートは、最初の1本に向きますか?

好みの方向をつかんでからのほうが選びやすいです。カスクストレングスは加水せず、樽出しの度数で瓶詰めするため刺激が強く出ます。シングルカスクは1つの樽の原酒だけを詰めるため、ヴァッティングで香味をそろえる定番品より個性の振れ幅が大きくなります。定番品で軽快かシェリー樽系かを決め、同じ方向の1本を少量の加水で試すと外しにくくなります。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。