ウイスキーの健康効果は本当?公的指針で読む飲み方の基準
「ウイスキーは体に良い」は本当か。厚生労働省の飲酒ガイドラインとWHOの見解をもとに、少量飲酒の研究の扱い、熟成年数や価格とリスクの関係、樽由来ポリフェノールが話題になる理由、純アルコール量で考える飲み方の基準を解説します。
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結論:ウイスキーに「健康効果」を期待して飲む根拠はない
厚生労働省は2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。ウイスキーとの付き合い方を判断するときは、まずこの国の指針と、WHO(世界保健機関)の見解を基準にします。結論として、ウイスキーを「体に良いから」という理由で飲む根拠はありません。
WHOの見解:リスクの源は「アルコールそのもの」
WHOは、がんのリスクについて「安全といえる飲酒量はない」としています。さらに、リスクをもたらすのは酒の価格や品質ではなく、酒に含まれるアルコールだと明言しています。ウイスキーが蒸溜酒であることや、銘柄が上等であることは、この評価を変えません。
「少量なら体に良い」という研究の扱い
軽い飲酒に保護効果があることを示唆する研究は、一部にあります。しかしWHOは、その効果が個人のがんリスクを相殺するという証拠はないとしています。また厚生労働省のガイドラインは高血圧について、少量の飲酒でも発症リスクが上がるとする日本人の研究結果を示しています。こうした状況から、「適量のウイスキーは心臓病や糖尿病を予防する」とは言えません。
長期熟成や高価格の銘柄でもリスクは同じ
純アルコール量は注いだ量と度数だけで決まり、熟成年数や価格は入りません(計算は後述)。同じ量でも差が出るのは、度数の高いカスクストレングスを注いだときのように、度数が変わる場合です。
| 要素 | 純アルコール量への影響 |
|---|---|
| 熟成年数(12年・18年など) | なし |
| 価格・希少性 | なし |
| シングルモルトかブレンデッドか | なし |
| アルコール度数 | あり(度数に比例) |
| 注ぐ量 | あり(量に比例) |
樽由来の「ポリフェノール」が話題になる理由
オーク樽は、製樽のときに内側を火で加熱します。加熱の仕方は樽の種類によって違います。米国で作られるバーボン樽は、表面を強く焼いて炭化させる「チャー」が中心です。スペインのシェリー樽は、時間をかけて熱を通す「トースト」が中心です。スコットランドでは、使い込んだ樽の内面を焼き直す「リチャー」で樽を再生することもあります。熱を受けると、まず熱に弱いヘミセルロースが分解され、フルフラールやマルトールなど、カラメルやトーストを思わせる香りの成分が生じます。細胞壁を固めているリグニンが分解されると、バニリンやシリンガアルデヒドができます。
ニューメイク(蒸溜直後の原酒)に含まれる硫黄系の未熟な香りは、主にポットスチルやコンデンサーで蒸気が銅に触れることで減ります。ミドルカット(留液のうち製品にする中間部分を切り分けること)の取り方でも、残る量は変わります。チャーした樽では、残った硫黄系成分を炭化層が吸着します。熟成で好ましくない香りを取り除く、いわゆる「引き算の熟成」です。また原酒は、炭の層の奥にある加熱された層まで染み込み、そこから成分を引き出します。こうした過程で、オーク由来のエラジタンニンなどのポリフェノール類も原酒に溶け出します。これが「ウイスキーにもポリフェノールがある」と言われる理由です。
ただし、これらの成分の主な役割は、香味や色、口に残る渋みをつくることです。含まれる量は、樽の履歴(初めて原酒を詰めるファーストフィルか、再使用のリフィルか)や熟成年数によって変わります。そして、樽由来の成分が飲酒によるリスクを打ち消すという根拠はありません。成分が含まれていることと、健康上の利益があることは別の話です。
客に健康面を聞かれたときの答え方
銘柄で差は出ず、差が出るのは注ぐ量と度数です。具体的な答え方は、飲み方の手順の章の末尾にある「酒販店・バーの運営者向けの補足」を参照してください。
リスクは「何を飲むか」より「どれだけ・誰が」で決まる
リスクは量・頻度と、飲む人の年齢・性別・健康状態で決まります。
ウイスキーが「糖質ゼロ」になる理由と、それでも太る理由

蒸溜によって原料由来の糖はほぼ留液に移らず、食品成分表上のウイスキーの炭水化物は0gです。ただし、熟成後の製品に微量の糖が含まれる場合はあります。また、炭水化物0gはカロリーがないという意味ではありません。糖質がほぼ残らない理由と、エネルギーがどこから来るのかを分けて押さえると、「ウイスキーは太らない」という話のどこが正しく、どこが誤りなのかがはっきりします。
蒸溜で糖が残らない仕組み
モルトウイスキーは、まず麦芽を温水で糖化して麦汁をつくります。そこに酵母を加えて発酵させ、もろみ(ウォッシュ)にします。このとき酵母は麦汁の糖の多くをアルコールに変えますが、すべてではありません。発酵しきれなかった糖やデキストリン、酵母の死骸、たんぱく質などの固形分も、ウォッシュに含まれたまま残ります。
これらの成分は揮発しません。ポットスチルでウォッシュを加熱すると、蒸気になって上がるのはアルコールと香気成分、そして水だけです。糖は揮発しないため釜に残り、固形分とともに、初溜後はポットエール、再溜後はスペントリーズと呼ばれる残液として排出されます。なお、スチルのネックやラインアームで蒸気の一部が凝縮して釜へ戻る「還流」は、スチルの形状やラインアームの角度によって度合いが変わり、留液の香味の重さ・軽さを左右します。これは香味の話で、糖が留液に入らない理由とは別です。
スコッチの場合は、法的な定義もこれを裏づけます。スコッチウイスキー規則(SWR 2009)では、スコッチウイスキーに加えてよいのは水とスピリットカラメル(E150a。色調を整えるための着色料)だけで、甘味料は加えられません。一方、熟成中には樽材のヘミセルロースが分解され、木由来の糖がごく微量に原酒へ移ることがあります。樽由来の糖は微量で、成分表で炭水化物0gと表示される範囲ですが、すべての銘柄に糖がまったく含まれないという意味ではありません。なお、「はちみつ風味」などの甘いウイスキー系の商品は、ウイスキーではなくリキュールとして扱われるものが多く、糖質を含みます。
炭水化物0gでも234kcalある理由
食品成分表のウイスキーは、可食部100g当たり炭水化物0g、エネルギー234kcalです。このエネルギーの出どころは、ほぼアルコールです。厚生労働省のe-ヘルスネットによると、アルコール自体が1g当たり7.1kcalのエネルギーを生じます。
度数40%のウイスキーをシングル30ml注ぐと、純アルコールは9.6gです。これに7.1kcalを掛けると約68kcal、ダブル60mlなら19.2gで約136kcalになります。糖質がゼロでも、注いだアルコールの分だけエネルギーは確実に入ります。
加水・樽・熟成年数で変わらないもの
加水しても飲み干せばエネルギーは同じです(量の計算は次章)。樽の種類や熟成年数が純アルコール量に関係しないことは、最初の章の表のとおりです。
糖質が加わる場面
ウイスキーそのものの糖質はごく微量で、糖質がはっきり増えるのは、割り材やリキュール、つまみなど、ウイスキー以外のものが加わるときです。
| 飲み方・場面 | 糖質の出どころ | エネルギーの出どころ |
|---|---|---|
| ストレート・トゥワイスアップ・水割り | ほぼなし | アルコール |
| ハイボール(無糖の炭酸水) | ほぼなし | アルコール |
| ジンジャーエール割り・コーラ割り | 割り材の糖 | アルコール+割り材の糖 |
| 甘味のあるリキュールを使うカクテル | リキュールの糖 | アルコール+リキュールの糖 |
| つまみ | 揚げ物・ナッツ・甘い菓子など選んだもの次第 | つまみ全体 |
店では、「ジンジャーハイボール」や「コークハイ」も、ハイボールの名で出てくることがあります。糖質を避けたいなら、注文時に「炭酸水で」と割り材を指定すると確実です。ただし、無糖の炭酸水で割ったハイボールでも、アルコールのエネルギーは残ります。ハイボールが「ダイエット向き」と言われるのは、糖質が加わらないからにすぎません。杯数が増えれば、そのぶんエネルギーも増えます。
太るかどうかを判断する基準
判断の基準は、糖質の有無ではありません。次の3点の組み合わせで決まります。
- 飲む量:1杯ごとの純アルコール量(g)×杯数で見る。ダブルを重ねると、すぐに数百kcalになる
- 割り材:無糖の炭酸水か水を選ぶ。甘い割り材やリキュールは糖質を足す
- つまみ:アルコールで食欲が進んだときに何を選ぶかで、合計が大きく変わる
「糖質ゼロだから太らない」のではありません。ウイスキーで糖質が増えないのは、割り材とつまみに糖質がないときだけです。そしてアルコールのエネルギーは、どの飲み方でも差し引けません。
シングル・ダブル・ハイボールの純アルコール量を計算する
純アルコール量は、厚生労働省が示す式「飲酒量(ml)×アルコール度数÷100×0.8」で求めます。末尾の0.8はアルコールの比重で、体積(ml)を重さ(g)に直すための係数です。この式に入るのは注いだ量と度数だけで、熟成年数や価格は入りません。
40%のウイスキーで換算する
度数40%なら、シングル30mlは9.6g、ダブル60mlは19.2gです。700ml入りのボトル1本は224gになります。目分量で注ぐと量が増えがちなので、計量の仕方は飲み方の手順の章の手順2を参照してください。
ハイボールや水割りにしても量は同じ
ハイボール、水割り、トゥワイスアップ(ウイスキーと同量の水で割る飲み方)は、グラスの中の度数を下げるだけです。シングル30mlを炭酸で割ったハイボールも、純アルコールは9.6gのままです。水や炭酸水を足しても、すでに注いだ原液の純アルコール量は変わりません。減らすには、注ぐ原液のml数と杯数を減らします。グラスの容量が違えば同じ「1杯」でも原液の量は変わるため、杯数だけでなくml数で見てください。カスクストレングスを加水して香りを開かせる場合も同じで、計算は加水する前に注いだ原液の量で行います。注意したいのは、薄めると口当たりが軽くなることです。そのぶん1杯を飲み終えるのが速くなり、杯数も増えやすくなります。
度数が上がると、同じ量でもアルコールは増える
カスクストレングスは、熟成を終えた原酒を、加水で瓶詰め度数に調整せずに瓶詰めしたウイスキーを指す言葉です。スコッチウイスキー規則(SWR 2009)の条文で定義された用語ではありませんが、樽から出した度数がそのまま瓶詰め度数になるため、度数はロットごとに異なるのがふつうです。度数が高いことと、カスクストレングスであることは同じではありません。度数の高い製品の例として、度数60%の**グレンファークラス 105は、30mlで14.4gになります。名称は英国式の105プルーフ(=約60%)に由来し、度数が60%にそろえられています。度数40%のグレンフィディック 12年**と同じ30mlを注いでも、純アルコールは1.5倍です。
| 注ぎ方 | 度数 | ウイスキーの量 | 純アルコール量 |
|---|---|---|---|
| シングル(ストレート) | 40% | 30ml | 9.6g |
| シングルのハイボール・水割り | 40% | 30ml | 9.6g |
| トゥワイスアップ(水30mlを加える) | 40% | 30ml | 9.6g |
| ダブル | 40% | 60ml | 19.2g |
| グレンフィディック 12年 30ml | 40% | 30ml | 9.6g |
| グレンファークラス 105 30ml | 60% | 30ml | 14.4g |
| グレンファークラス 105 60ml | 60% | 60ml | 28.8g |
| ボトル1本 | 40% | 700ml | 224g |
60gは避けるべき「一時多量飲酒」の線
ガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール60g以上を飲む「一時多量飲酒」を、避けるべき飲み方としています。60gは「ここまで飲んでよい」上限ではなく、避けるべき飲み方の線です。度数40%のウイスキーなら約188ml、ダブルなら3杯強に当たります。シングルのハイボールは6杯で57.6g、7杯で67.2gになります。この換算は、6杯までなら安全という杯数を示すものではありません。度数60%のグレンファークラス 105では、約125mlで60gに届きます。
店で飲むときの確かめ方
店で出るシングルやダブルの容量は、店ごとに違います。「シングル=30ml」と決めつけず、量が気になるときは注文時に確認してください。
- ストレート・ロック:「シングルは何mlですか」と聞く
- ハイボール・水割り:「ウイスキーは何ml入りますか」と聞く。グラスの大きさでは判断できない
- カスクストレングス・限定品:度数をボトルのラベルで確かめてから杯数を決める
「1日の適量」をどう読むか
1日の純アルコール量が男性40g・女性20gという数値は、「この量より少なければ安全」という意味ではありません。生活習慣病のリスクを高める量を飲む人を減らすための基準で、個人が飲んでよい量を示したものではありません。リスクの個人差は次の章で扱います。自分がどれだけ飲んでいるかを把握し、量を減らすための物差しとして使ってください。
血圧・睡眠・がん:ウイスキー好きが知っておきたいリスク

ここまでの純アルコール量は、量を測るための物差しです。ただし、同じグラム数でも、影響がどこに出るかは臓器ごとに違います。また、誰が飲むかによっても変わります。ウイスキーを日常的に飲む人が気にしやすい血圧・睡眠・がんについて、指針が示す内容と判断のしかたを順に整理します。
高血圧:「シングル1杯なら平気」は当てはまらない
最初の章で触れたとおり、厚生労働省のガイドラインは、少量の飲酒でも高血圧の発症リスクが上がるとする日本人の研究結果を示しています。血圧については「ここまでなら上がらない」という量を前提にできません。健康診断で血圧を指摘された人は、一般向けの目安をそのまま使えません。自分の数値と健康状態に合わせて、量を個別に考える必要があります。
- 晩酌の杯数と度数を記録し、1日・1週間の純アルコール量を把握する。受診時にその数字を伝えると、医師が判断しやすくなる
- 毎日飲んでいるなら、まず飲まない日を週に設ける。ガイドラインも挙げている方法
- 降圧薬などを服用している場合は、飲むかどうかと量を医師に確認する
睡眠:寝酒のウイスキーは眠りを改善しない
アルコールを飲むと、一時的に寝つきは良くなります。一方で、睡眠の後半の質を悪くし、夜中に目覚める回数を増やします。寝る前にストレートを1杯、という習慣は「すぐ眠れる」実感がある分、効いているように感じます。しかし、寝つきの速さと眠りの質は別のものです。寝酒は眠りの改善にはなりません。夜中に目が覚める、朝に疲れが残るという人は、寝酒をやめた夜と比べてみてください。それが判断の材料になります。眠れないから飲むという状態が続くなら、量を増やして対処するのではなく、医療機関に相談してください。
がん:度数の高さではなく、飲んだアルコールの総量
最初の章で触れたとおり、WHOは、がんのリスクについて安全といえる飲酒量はないとしています。リスクの源は酒に含まれるアルコールです。そのため、「蒸溜酒は度数が高いから危ない」「ハイボールで薄めれば安全」という考え方は、どちらも論点がずれています。比べるべきなのは、グラスの中の濃度ではなく、体に入ったアルコールのグラム数です。がんのリスクを下げるには、飲むアルコールの総量を減らすことが重要です。飲まないという選択もあります。
同じ量でも、影響は人によって違う
WHOは、飲酒による健康リスクが、飲む量や頻度のほか、年齢、性別、健康状態によって異なるとしています。同じダブル1杯(度数40%で19.2g)でも、若く健康な人と、高齢の人や持病のある人とでは、受ける影響が同じではありません。ガイドラインの数値が男女で分かれているのも、この違いを反映しています。「同僚が平気だから自分も大丈夫」という比べ方はできません。年齢を重ねたときや、健康診断の結果が変わったときには、それまでの量を見直してください。
飲酒を避ける必要がある人・医師に相談すべき人
| 条件 | 対応 |
|---|---|
| 20歳未満 | 飲酒しない(法律で禁止) |
| 運転する前・運転する日 | 飲まない |
| 妊娠中・授乳期中 | 飲酒を避ける |
| 少量で顔が赤くなる体質(アルコールの分解で生じるアセトアルデヒドを分解しにくい体質) | 飲酒を避ける。少量でも食道がんなどのリスクが高いとされるので、無理に飲まない |
| 健康診断で血圧を指摘された | 量を個別に考える。医師に相談する |
| 病気の療養中・薬を服用している(服薬後を含む) | 飲酒してよいかと量を、主治医に確認してから決める |
| 寝つくために毎晩飲んでいる | 寝酒をやめ、眠りの悩みは医療機関に相談する |
健康に配慮してウイスキーを楽しむ飲み方の手順
厚生労働省のガイドラインは、健康に配慮した飲酒の仕方として、①自分の飲酒状況を把握する、②あらかじめ量を決めて飲む、③飲酒前・飲酒中に食事をとる、④合間に水(または炭酸水)を飲み、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする、⑤週に飲まない日を設ける、の5つを挙げています。ここではこれらをウイスキーの飲み方に当てはめ、手順にまとめます。②は手順1、①は手順1・2、③と⑤は手順3、④は手順4に当たります。
手順1:飲み始める前に、その日の上限を決める
上限は、飲み始める前に「純アルコール何g」「何杯」の2つで決めます。グラスを手にしてから決めると、上限は甘くなります。換算には前の章の表を使います。たとえば「今日は度数40%のシングル2杯まで、19.2g」と決めます。カスクストレングスを開ける日は、度数が高い分だけ杯数を減らして決めます。このグラム数は、飲んだ量を把握して減らすための目標です。
手順2:メジャーカップで30mlを量る
ボトルから注ぐときは、目分量を避け、メジャーカップ(ジガー。酒を量るための計量カップ)で30mlを量ります。ジガーは製品によって容量が違い、両端で容量が異なる型が多いので、使う前に刻印を確かめてください。注ぐときは縁まで山盛りにせず、水平に満たします。自宅で注ぐ量は多くなりがちです。大きなロックグラスに氷を入れると30mlは少なく見えるため、つい注ぎ足してしまいます。700mlのボトルは、シングルで約23杯分です。開栓日と残量を見れば、1週間に何杯飲んだかも分かります。
手順3:食事をとり、飲まない日をつくる
最初の1杯の前か、飲みながら食事をとります。つまみをナッツだけで済ませず、食事と一緒に飲む流れにします。毎晩の晩酌が習慣になっている人は、まず曜日を決めて、週に飲まない日をつくってください。
手順4:チェイサーを交互に飲む
チェイサーは、ウイスキーの合間に飲む水です。タンブラー1杯の水を、最初から添えておきます。香味を確かめながら飲むなら、水は冷やしすぎず、常温か軽く冷やした程度にします。冷たすぎる水は舌の感覚を鈍らせます。水の代わりに炭酸水でもかまいません。ウイスキーと水は、数口ごと、または1杯ごとに交互に飲みます。水を挟むと、舌に残ったアルコールの刺激とタンニンの収斂感(口がすぼまる感じ)が流れます。そのため次の一口でも、パレット(口に含んだときの味わい)の甘さや、フィニッシュ(飲み込んだ後の余韻)を取りやすいままです。ピーテッド麦芽を使った、フェノール値の高いものや、タンニンの強いシェリー樽熟成のものを何杯か飲み比べるときほど、効果がはっきり出ます。
手順5:加水して、テイスティンググラスで少量をゆっくり飲む
度数が高いままだと、アルコールの刺激が鼻を覆い、ほかの香りが隠れます。数滴の水を加えるか、トゥワイスアップにして度数を下げると、隠れていた果実や穀物、樽由来の香りを取りやすくなります。加水は一度に入れず、スポイトで数滴ずつ足し、香りを確かめながら止めどころを探します。グラスは、口のすぼまったテイスティンググラスを使います。すぼまった口に香りが集まるため、少ない量でもノージング(香りを嗅いで確かめること)が十分にできます。少量を注ぎ、時間をかけて飲みます。
量は、注ぐ原液のml数と杯数で調整してください。
手順6:ハイボールは無糖の炭酸水で割る
ハイボールの割り材は、無糖の炭酸水を基本にします。まずグラスを氷で満たして冷やします。次に、ウイスキーをジガーで30ml量って入れ、マドラーで混ぜてウイスキーも冷やします。冷えた炭酸水を、氷に直接当てないように静かに注ぎます。最後にマドラーで縦に1回だけ混ぜます。混ぜすぎると炭酸が抜けるためです。比率は、サントリーが角ハイボールで勧めているウイスキー1:ソーダ4がひとつの例です。炭酸を増やして薄くしても、純アルコール量は30ml分(度数40%なら9.6g)のままです。ジンジャーエールやトニックウォーター、果汁入りの割り材を使う日は、アルコールに糖質が加わると意識してください。
酒販店・バーの運営者向けの補足
- 客に健康効果を理由に勧めない。「体に良い」「糖質ゼロだから太らない」など、効能をうたう言い方をしない
- 「どの銘柄が体に良いか」と聞かれたら:銘柄による差はなく、差が出るのは注ぐ量と度数だと伝える
- 「糖質ゼロだから太らない」と聞かれたら:食品成分表では炭水化物は0gでも、エネルギーは100g当たり234kcalあると伝える
- 「この病気でも飲んでいいか」「薬を飲んでいるが大丈夫か」と聞かれたら:店側で可否を判断せず、主治医に確認するよう伝える
- 妊娠中・授乳期中の客や、体質的に酒を受け付けない客には、勧めない
- 伝えるのは、量の目安と提供量の情報にとどめる
- メニューやプライスカードに、1杯の容量(ml)と度数を書く。客が自分で純アルコール量を換算できる
- チェイサーの水は、頼まれる前に添え、原液の提供量と度数も伝える。水を飲んでも、注いだウイスキーの純アルコール量は減らない。加水用の水とスポイトも用意しておく
よくある質問

風邪をひいたとき、お湯割りのホットウイスキーを飲むと効きますか?
効くという根拠はありません。お湯で割っても、純アルコール量は注いだウイスキーの量で決まります。はちみつや砂糖を加えれば、そのぶん糖質も増えます。「体を温めて喉に良さそう」と甘味を足すほど、アルコールに糖質が上乗せされる飲み物になります。睡眠への影響は前述のとおりです。注意したいのは薬との飲み合わせです。かぜ薬や解熱鎮痛薬には、アルコールと一緒にとると眠気が強まったり、肝臓への負担が増したりする成分を含むものがあります。体調が悪いときや風邪薬を飲んでいるときは飲まないでください。薬との飲み合わせは医師や薬剤師に確認してください。
テイスティングで口に含んで吐き出す場合も、純アルコール量に数えるべきですか?
品評やテイスティングの場では、口に含んで香味を確かめたあと、スピットン(吐器)に吐き出すことがあります。体に入るのは飲み込んだ分ですが、口の中に残る量は正確に測れません。何種類も確かめる日は、注いだ量の合計で見積もっておくと把握しやすくなります。吐き出したからといって、車の運転はしないでください。
ノンチルフィルタード(冷却濾過していない)のボトルが加水や低温で白く濁るのは、成分が多い=体に良いという意味ですか?
体に良いという意味ではありません。冷却濾過(チルフィルタリング)は、瓶詰め前に原酒を冷やして濾過し、低温で濁りの原因になる成分を取り除く工程です。この工程を経ていないボトルは、冷やしたり加水して度数が下がったりすると、白く濁ることがあります。度数が高いうちは溶けていた脂肪酸エステルなどが、低温や度数の低下で溶けきれなくなり、析出する現象です。こうした成分は口当たりの厚みや香味に関係するとされますが、健康とは無関係です。濁りは品質の劣化ではなく、温度が戻ると消えることもあります。
バーで量を抑えたいとき、ハーフや少量で注文できますか?
ハーフ(シングルの半量)など、少ない量での提供に応じている店もあります。ただし、ハーフやシングルの容量は店ごとに違います。「ハーフで」とだけ頼むより、「15mlで注いでもらえますか」のように、ml数で伝えると確実です。ハイボールや水割りも、「薄めで」ではなく「ウイスキーを15mlで」と原液の量で伝えます。薄めにしてもらっても、原液の量が同じなら純アルコール量は変わりません。対応していない店もあるので、注文時に可否と値段をあわせて確かめてください。
出典・参考にした情報
- 厚生労働省(確認日 2026-10-20)
- WHO(確認日 2026-10-20)
- 厚生労働省・健康日本21アクション支援システム(確認日 2026-10-20)
- 文部科学省(確認日 2026-10-20)
- WHO(確認日 2026-10-20)
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。