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ウイスキーの高濃度発酵で省エネ16%?英大学の試算を解説

ウォッシュの度数を8%から10〜14%に上げると発酵・蒸溜のエネルギーはどう変わるのか。ヘリオット・ワット大学のモデル試算を、計算範囲や2つの比較条件、導入前に確認すべき冷却や設備の課題とあわせて解説します。

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ヘリオット・ワット大学の研究は何を試算したのか

以下で扱う削減率は、すべて計算モデルによる試算であり、蒸溜所で確認された実績値ではありません。「スコッチの排出が16%減った」という話ではありません。「ウォッシュの度数を上げると、モデルに含めた発酵・蒸溜工程のエネルギー使用量と、それに伴う排出量がこう変わる」という研究です。モデルの計算範囲は発酵と2回の蒸溜です。製麦、糖化、残液処理、熟成、瓶詰めは含まれていません。

発信元と研究の位置づけ

発信元は、醸造・蒸溜の研究拠点として知られるスコットランドのヘリオット・ワット大学の研究者です。論文は査読付き学術誌『Journal of the Institute of Brewing』第132巻第2号(2026年)に掲載された、スコッチ・モルトウイスキー製造のモデル研究です(DOI:10.58430/jib.v132i2.97)。数値は学術誌の更新版に合わせています(抄録との違いは次の章で説明)。

対象は発酵液「ウォッシュ」の度数

ウォッシュとは、糖化した麦汁を酵母で発酵させた液のことで、ビールに近い状態のものです。スコッチ・モルトでは度数約8%が一般的で、研究はこれを10〜14%へ上げた場合を評価しました。ウォッシュはまずウォッシュスチル(初溜釜)で蒸溜され、ローワイン(初溜の留出液)が取り出されます。ローワインはその後スピリットスチル(再溜釜。ローワインを再蒸溜し、ミドルカットでニューメイクを取る釜)にかけられます。

度数を上げると省エネにつながる理由は単純です。8%のウォッシュは9割以上が水で、初溜ではその水ごと加熱します。同じ量のアルコールをより少ない液量で得られれば、加熱する水が減ります。つまり、同じ純アルコール量に必要なウォッシュが減り、蒸溜の熱負荷が下がるという構図です(発酵槽の冷却負荷との差し引きを含め、仕組みは後の章で説明します)。

比較した2つの条件

基準条件は、度数8%のウォッシュ200ヘクトリットル(2万リットル)です。そのうえで、何を一定にするかで2つの条件に分けて比較しています。

条件一定にするもの計算上の変化(14%の場合)設備への示唆
ウォッシュ量一定ウォッシュ200hL得られるアルコールは基準の1.75倍1回当たりの生産量は増えるが、より大きな再溜釜か追加の蒸溜回数が必要になる可能性
アルコール量一定得られる純アルコール量必要なウォッシュは約114hL処理する液量が減り、より小さな設備で済む可能性

表の「1.75倍」と「約114hL」は、度数の比(14÷8、200×8÷14)から出る算術上の値です。前者は、既存のウォッシュバック(発酵槽)とウォッシュスチルの容量を前提にする条件です。この場合、初溜で出るローワインのアルコール量が増えるため、ボトルネックはスピリットスチル側に移ります。ただし、容量が同じでも、既存の槽で14%まで発酵できるとは限りません。論文は高濃度側に追加の冷却を仮定しており、木製のウォッシュバックでは能動的な冷却が難しいとしています。導入前には、発酵槽の冷却能力、発酵時間、泡立ち、再溜釜の容量を確かめる必要があります。後者は生産量を据え置き、新設や更新の際に設備を小さくする発想です。同じ「高濃度発酵」でも、既存の蒸溜所と新設の蒸溜所とでは意味が変わります。

研究が答えていないこと

糖化方法、酵母と香味、規則との関係、実証の段階は研究の範囲外で、詳しくは「実用化への課題」の章で扱います。

業界の文脈では、スコッチウイスキー協会が操業の脱炭素化を2040年までに、全排出範囲でのネットゼロを2045年までに達成する目標を掲げています。この研究は、その目標に向けて「熱源を替える」以外に「工程の液量を減らす」という選択肢を数字で示したものと位置づけられます。

数値で読む:度数8%→14%で何がどれだけ減るか

ウイスキーのイメージ写真

見出しにある「約16%」は、ウォッシュの度数を8%から14%に上げたモデルで、モデルに含めた発酵・蒸溜工程の純アルコール1リットル当たりのエネルギー使用量と炭素排出量が**15.8〜16.1%**減ったという結果です。研究が示しているのはこの幅であり、「16%」はその丸めた値です。また、エネルギーよりも残液の減り方のほうがはるかに大きいことが、この研究の数字から読み取れます。

4つの指標の削減率

指標削減率(8%→14%)減るもの説明するときの注意
エネルギー使用量(純アルコール1L当たり)15.8〜16.1%主に蒸溜にかかる熱生産量当たりの値。総量の削減ではない
炭素排出量(純アルコール1L当たり)15.8〜16.1%熱源の燃焼などに由来する排出モデル上の試算。蒸溜所の実績ではない
ポットエール55.0%初溜後にウォッシュスチルに残る液4指標で最も大きい削減幅
スペントリーズ30.4%再溜後にスピリットスチルに残る液ポットエールより削減幅が小さい

ポットエール55.0%減が蒸溜所にとって持つ意味

削減幅が指標ごとに違う理由は次の章で説明します。

蒸溜所にとって、ポットエールの55.0%減は小さな話ではありません。ポットエールは排水処理や嫌気性消化、濃縮して飼料用シロップにする処理などに回されており、その輸送と処理にもコストとエネルギーがかかります。研究の16%はモデル内のエネルギーと排出を数えた値であり、残液処理の負担がどこまで軽くなるかは、各蒸溜所の処理方法によって変わります。なお、麦芽に由来する固形分は水を減らしても消えないため、残液は量が減る代わりに濃くなります。処理設備の側で調整が必要になる点も押さえておくと、説明に厚みが出ます。

条件の違いで読み方が変わる点

前の章の表のとおり、研究は「ウォッシュ量一定」と「アルコール量一定」の2条件を比較しています。削減率はどちらも純アルコール1リットル当たりの値です。「ウォッシュ量一定」は1回の仕込みの条件であり、蒸溜所全体の年間総量とは分けて考える必要があります。

  • 同じ回数だけ仕込んで増産する場合:1リットル当たりの排出は減っても生産量が増えるため、年間の総量は別に計算する必要があります
  • 年間の純アルコール生産量を一定にする場合:1回当たりのアルコール量が増える分、仕込み回数を減らせます。論文は、ウォッシュ量一定の条件でも、こうして仕込み回数を減らせばモデル上の年間総エネルギーが減ることを示しています

版による数値の違いと、採用した理由

大学の研究ポータルの抄録には「純アルコール110%」「ポットエール55.9%減」とあります。一方、学術誌の更新版はそれぞれ「100%」「55.0%減」です。この記事の55.0%は、学術誌の出版版(DOI:10.58430/jib.v132i2.97)の数値です。更新版を採用した理由は2つあります。1つは、出版元が公開する更新版が最終的な記録であることです。もう1つは、アルコール量一定の条件では得られる純アルコールが基準と同じ、つまり100%になるはずで、更新版の数値のほうが条件設定と整合することです。海外の業界ニュースには抄録の55.9%がそのまま引用されている例もあるため、POPや会話で数字を使うときは55.0%に統一してください。

数値の正しい書き方

  • エネルギーと排出:「発酵液の度数を8%から14%に上げると、モデルに含めた発酵・蒸溜工程では、純アルコール1L当たりのエネルギー使用量とそれに伴う排出量が15.8〜16.1%減る試算」
  • 残液:「初溜の残液ポットエールは55.0%、再溜の残液スペントリーズは30.4%減る試算」

なぜ度数を上げると省エネになり、残液が減るのか

研究モデルでは総エネルギーの大半を蒸溜が占め、発酵槽の冷却分は小さいという結果です。したがって、約16%の省エネ効果の大半は蒸溜工程から来ると読めます。高濃度発酵で冷却負荷が増えても、全体への影響は小さいということです。

ポットスチルは「釜の中の水」ごと温める

ポットスチルは、釜に張った液全体を一度に加熱して沸かすバッチ式の蒸溜器です。同じ量のアルコールを得るのに必要な熱は、釜に入れる液量、とくに水の量に左右されます。ウォッシュの大半は水なので、効率は「純アルコール1リットルを得るために何リットルの液を温めるか」で決まります。度数ごとの液量は次のとおりです。

ウォッシュ度数純アルコール1L当たりのウォッシュ量8%との比較
8%12.5L基準
10%10.0L20%減
12%約8.3L約33%減
14%約7.1L約43%減

表の数値は度数の逆数から出した算術上の値で、混合による体積の収縮や固形分は考慮していません。14%では温める液が4割以上減りますが、モデルのエネルギー削減は15.8〜16.1%にとどまります。初溜の熱は、ウォッシュを沸点まで上げる熱と、ローワインを留出させる蒸気の熱に分かれます。液量が減って大きく減るのは前者で、後者と再溜の熱はウォッシュ度数の影響を受けにくいため、全体の削減は16%前後になります。なお、ウォッシュの予熱などで熱回収を行っている蒸溜所では、モデルと同じ削減幅になるとは限りません。論文も、熱回収の条件が変わるため、設備全体の正味の効果は別に評価が必要としています。

ポットエールが55.0%も減る仕組み

ポットエールは、初溜でアルコールを取り出した後にウォッシュスチルに残る液です。量は「ウォッシュ量からローワインを差し引いた残り」として決まり、ウォッシュの水分の多くがここに残ります。ローワインの量は取り出すアルコール量に連動する部分が大きく、ウォッシュの度数を上げても同じ割合では縮みません。そのため、ウォッシュ量の減少は差し引きで残るポットエール側に集中します。14%でウォッシュ量の減少が約43%なのに対し、ポットエールの減少が55.0%とそれを上回るのは、この構造によるものです。

スペントリーズの減り方が30.4%にとどまる理由

スペントリーズは、再溜を終えた後にスピリットスチルに残る液です。再溜釜に入るのはウォッシュではなく、ローワインと、前回の再溜で分けたフォアショッツ・フェインツ(前留・後留)です。論文は、ローワインや前留・後留の度数、ニューメイクに対する前留・後留の量の比率、各残液の度数を仮定して計算しています。このモデルでは前留・後留の戻し比率などを固定した結果、スペントリーズは30.4%減りました。実際の蒸溜所でカットの位置や還流の条件が変われば、再溜の仕込み量と残液の量も変わりえます。30.4%は、仕組みの一般則ではなく、この前提のもとでの値として扱ってください。

製造現場で確かめるべき論点(研究の範囲外)

  • ローワインの度数と量:初溜で留出をどこで止めるかという運転基準を、そのまま据え置けるか
  • 再溜釜への仕込み量:ウォッシュ量一定で増産する場合、最初の章の表のとおり再溜側が律速になる。フェインツの戻し量を含めた仕込みの比率をどう組むか
  • ミドルカットの取り方:仕込み液の組成が変わったとき、製品にする中留部分の切り替え点を従来どおりにしてよいか
  • 初溜の運転:高糖度の麦汁に由来する成分が増えたウォッシュで、泡立ちや加熱速度の管理に変化が出るか
  • 残液処理:量が減る代わりに濃くなるポットエールを、既存の処理設備でそのまま扱えるか

省エネと酒質を判断するために、試験仕込みでは次の項目を従来条件と並べて測ることになります。

  • 蒸気・燃料の使用量:初溜と再溜を分け、純アルコール1L当たりで比較する
  • 熱回収の量:ウォッシュの予熱などで回収できる熱が、液量の減少でどれだけ変わるか
  • 収量:麦芽1トン当たりの純アルコール収量(LPA/t)が下がっていないか
  • 酒質:ニューメイクの成分分析と官能評価を、従来条件のニューメイクと並べて行う

これらはいずれも、研究が数値で示した範囲の外にあります。省エネの仕組みとしては、同じ純アルコール量に必要なウォッシュが減り、蒸溜の熱負荷が下がる、と整理できます。既存の熱回収設備を含めた実際の削減幅と、蒸溜の運転方法や酒質の変化は、各蒸溜所での実測と大学の検証を待つ段階です。

実用化への課題:糖化・酵母・香味とスコッチの規則

ウイスキーのイメージ写真

ヘリオット・ワット大学の研究者は、実用化の前に検証が必要な点として糖化方法、酵母の働き、香味の形成、スピリッツの品質の4つを挙げています。海外の業界メディアDRAM Scotland(2026年10月14日)は、研究者が「より広く採用する前に追加の検証が必要」と述べたと伝えています。約16%という省エネの数字は発酵・蒸溜工程の計算から出たもので、酒質はモデルの計算範囲に含まれていません。

大学が残した課題と、発表されていないこと

  • 未発表の事項:実用化の時期と、採用する蒸溜所は発表されていません

高糖度の麦汁が酵母に負荷をかける理由

同じウォッシュ量で14%を得る場合、得るアルコール量は単純計算で8%の1.75倍です。ただし、必要な原麦汁濃度や麦芽量は、発酵度、酵母の収率、残糖、糖化時のエキス回収率で変わるため、1.75倍がそのまま必要な糖の量になるわけではありません。論文は、こうした高度数のウォッシュには21〜27°P(プラート度。麦汁100g中のエキスのグラム数)の麦汁が必要になるとし、その麦汁を得る糖化とエキス回収率を課題に挙げています。発酵の初めは糖濃度が高く、浸透圧によって酵母の細胞が水分を奪われる方向にストレスを受けます。発酵の終盤には、今度は蓄積したアルコールが酵母の活性を落とします。そのため、発酵の立ち上がりが遅れる、終盤で発酵が止まって糖が残る、といった進み方の変化が起こりえます。

エステルや高級アルコールなどの香味成分は、酵母の代謝の副産物です。酵母が受けるストレスの種類と時期が変われば、これらの生成量のバランスも変わりえます。ただし、どの成分がどちらにどれだけ動くかは検証されていません。製造側で確かめることになる項目は、次のとおりです。

  • 酵母の株と投入量:高い糖濃度とアルコール濃度に耐える条件をどう設定するか
  • 発酵温度:発酵が進むほど発熱が増えるため、冷却の運用をどう組むか
  • 発酵時間:通常の発酵時間のなかで発酵を終えられるか
  • 発酵槽の材質:木桶の長時間発酵では後半に乳酸菌が関わるとされます。アルコール濃度の高い環境でその段階がどうなるか

糖化側の制約:麦芽の酵素だけで糖度を上げる

スコッチでは、麦芽由来の酵素で糖化することが定められています。外部の酵素製剤で糖化を補ったり、穀物以外の糖を足して度数を稼いだりすることはできません。スコッチでは糖化槽に湯を数回に分けて入れ、薄い後半の麦汁を次の仕込み湯に回します。高糖度の麦汁を得るには、この湯量を絞ることになります。湯量を絞ると麦芽層に糖が残りやすく、麦芽1トン当たりのスピリッツ収量が下がるおそれがあります。省エネ分と収量の低下を差し引きで評価する必要があります。大学が「糖化方法」を課題に挙げているのは、この部分です。

規則が縛ること、縛らないこと

項目英国政府のスコッチウイスキー技術文書の扱い高濃度発酵への意味
糖化麦芽由来の酵素による外部の酵素や糖で糖度を補えない
発酵酵母を加えて行う負荷への対策は酵母の選択と管理で行う
ウォッシュの度数数値の上限は見当たらない度数の数値で禁じられてはいないが、製法全体の適合確認が必要

ウォッシュ度数の数値上限は見当たりません。ただし、高糖度の麦汁を得る糖化や発酵の具体的な方法は、スコッチウイスキー規則(SWR 2009)と製品仕様、認証の要件に適合するかを個別に確かめる必要があります(英国政府の製品仕様案内)。そのうえで実用化の壁となるのは、麦芽だけで糖度を確保する技術と、酒質を保てるかどうかです。

スコッチウイスキー協会の目標との関係

スコッチウイスキー協会の現行目標は、業界の操業を2040年までに脱炭素化し、全排出範囲で2045年までにネットゼロを達成することです。今回の研究は、この目標に向けた選択肢の1つです。熱源の転換と並べて検討できる「工程で温める液量を減らす」手段を、数値で示しました。目標の達成にどこまで寄与するかは、蒸溜所での採用が進むかどうかと、酒質の検証結果によって決まります。

日本の読者にとっての意味:買える銘柄・価格への影響・説明のしかた

2026年10月22日時点で、今回の研究が評価した14%のウォッシュを採用した市販品の発表は、大学と出版元の公表内容、および前述のDRAM Scotlandの報道の範囲では確認できていません。仮に採用が決まっても、スコッチは3年以上の熟成を経てから瓶詰めされるため、店頭に並ぶまでには時間がかかります。今後のニュースは、次の3点で進み具合を判断できます。

  • 採用が具体的な蒸溜所名で発表されたか
  • 試験的な仕込みか、通常の生産への導入か
  • ニューメイクの酒質評価の結果が公表されたか

価格への影響についても、研究機関や蒸溜所からの発表はありません。店頭で「省エネになるなら安くなるのか」と聞かれたら、**「価格についての発表はない」**と答えれば足ります。値下げや値上げの見通しを店側から補う必要はありません。

今ある定番モルトで、工程の違いを説明する

以下の銘柄は、高濃度発酵の例でも、この研究の実例でもありません。発酵や蒸溜、製麦が香味をどう左右するかを説明するための材料です。工程の特徴は、蒸溜所や輸入元が公式に案内している内容だけを使い、香味もメーカー公式の表現をそのまま紹介してください。

銘柄工程の説明の入口(出典:蒸溜所・輸入元の公式案内)客への話の切り口参考小売価格
グレンフィディック 12年木製の発酵槽(ウォッシュバック)での発酵発酵が香味の土台を作る工程であること3,960円前後(2026年10月22日時点)
グレンファークラス 12年直火で加熱するポットスチル蒸溜の熱をどう得るかが、エネルギーの議論の中心にあること5,880円前後(2026年10月22日時点)
アードベッグ 10年ピートを焚いて乾燥させた麦芽スモーキーさの主な由来はピート乾燥した麦芽。瓶詰め時にどう感じるかは蒸溜と熟成にも左右されること4,980円前後(2026年10月22日時点)
オーヘントッシャン 12年3回蒸溜蒸溜の段数が増えると、加熱と残液の出る工程も増えること3,685円前後(2026年10月22日時点)
クラガンモア 12年ワームタブ(屋外の水槽に浸した蛇管で蒸気を冷やす冷却器)蒸溜器の形と冷却方法も酒質を左右すること4,224円前後(2026年10月22日時点)

発酵時間など、公式に公表されていない数値は表に入れていません。客に数字で答えたい場合は、各銘柄の輸入元の製品ページで確認できた範囲に限ってください。オーヘントッシャン 12年は、初溜の後に中間の蒸溜と再溜を重ねる3回蒸溜です。蒸溜の段数が増えるほど、加熱する工程と残液の出る釜が増えることを示す例として使えます。ただし、この銘柄のエネルギー使用量を示した研究はなく、今回の研究は2回蒸溜のモデルです。省エネ率や残液の削減率の説明には使わないでください。

客に説明するときの3つの要点

  • 蒸溜の熱負荷が下がる:同じ純アルコール量に必要なウォッシュが減り、蒸溜で温める液が少なくなります。実際の削減幅は、熱回収設備を含めた蒸溜所ごとの実測が必要です
  • 16%はモデルの試算:同じ量のスピリッツを造るときの、発酵・蒸溜工程の値で、業界の実績ではありません。「何%減るのか」と聞かれたら「同じ量のスピリッツを造るのに必要なエネルギーが約16%減る試算」と伝えます
  • 香味への影響は検証中:大学が酒質を確かめている段階です

「エコなウイスキーが出た」「16%減らしたスコッチ」「スコッチ業界の排出が16%減った」といった言い方は、製品や実績がすでにあるという誤解につながるため避けてください。POPに書くなら、「発酵液の度数を上げる省エネ研究。製品化は未発表」程度にとどめます。

よくある質問

ウイスキーのイメージ写真

高濃度発酵で造ると、ボトルのアルコール度数も高いウイスキーになるのですか?

なりません。ウォッシュの度数は、蒸溜前の発酵液の度数です。瓶詰めされる製品の度数とは別のもので、多くの製品は熟成後に加水して瓶詰めの度数を決めます。研究が評価したのは製造工程のエネルギーと残液であり、製品の度数や飲み口が変わるという結果は示していません。「強いウイスキーになる」という意味ではありません。

グレーンウイスキーやブレンデッドにも、同じ約16%の省エネが当てはまりますか?

当てはまるとは言えません。研究がモデルにしたのは、ポットスチルで初溜と再溜を行うスコッチ・モルトの製造です。連続式蒸溜機を使うグレーンウイスキーの試算は示されていません。蒸溜方式が違えば熱の使い方も変わります。そのため、15.8〜16.1%という数字をグレーンや、グレーンを含むブレンデッド全体に広げて説明するのは避けてください。

日本のウイスキーにも当てはまりますか?

当てはまるとは言えません。研究はスコッチ・モルトの製造モデルで、日本の蒸溜所についての試算はありません。ポットスチルで2回蒸溜する工程は共通しますが、釜の容量や加熱方式、ウォッシュの予熱などの熱回収の条件が蒸溜所ごとに違います。そのため、15.8〜16.1%やポットエール55.0%といった数値を日本の蒸溜所にそのまま流用しないでください。

熱源を電気や低炭素燃料に替える取り組みと組み合わせると、効果は足し算になりますか?

組み合わせた場合の削減率は、研究では試算されていません。仕組みのうえでは、高濃度発酵は蒸溜に必要な熱の量を減らす手段です。熱源の転換は、熱1単位当たりの排出を減らす手段です。両者は効く軸が違うため、併用を検討できます。ただし、合計で何%減るかを示した数字はないため、単純に足し合わせた値は使わないでください。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。