スコッチとインドモルトの協力協定 関税協定との違いと定義比較
IMWAとSWAが2026年10月に結んだ協力協定は関税を動かさない協会間の枠組みです。英印CETAとの違い、署名者と協力分野、インド向け輸出の数量と金額の差、スコッチとインドのモルト定義比較を整理し、売り場での説明に役立つ要点をまとめます。
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協力協定の要点を時系列で整理:2023年の定義改正から2026年10月の署名まで
IMWAとSWAの協力協定は、協会どうしの協力の枠組みです。関税や商品基準をすぐに改める合意ではありません。具体策と実施期限も、2026年11月7日時点で公表されていません。この章では、法規、業界団体、国家間協定という性質の違う出来事を時系列に並べ、日本の売り場とカウンターで判断に使える情報に絞って整理します。関税を動かした英印の貿易協定との関係は、関連記事(/indian-scotch-malt-whisky-trade-26114464/)でも扱っています。
2023年から2026年10月までの流れ
| 時期 | 出来事 | 主体 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 改正食品規則で「シングルモルトウイスキー」を定義 | インド食品安全基準庁 | 国内法規 |
| 2024年7月8日 | インド・モルト・ウイスキー協会(IMWA)設立 | インドの造り手 | 業界団体 |
| 2026年7月15日 | 英印包括的経済貿易協定(CETA)発効 | 英国・インド両政府 | 国家間協定 |
| 2026年10月 | IMWAとスコッチウイスキー協会(SWA)がニューデリーで協力協定に署名 | 両協会 | 業界団体間の合意 |
関税を下げたのは国家間のCETAで、協会間の協力協定は関税を動かしません(税率の推移と店頭価格への影響は次章で扱います)。
署名日は、両協会の共同声明で確認できる範囲では「2026年10月」までです。
署名者と協力分野
両協会の共同声明によると、署名したのはIMWAのラジェシュ・チョプラ事務局長と、SWAのイアン・ダディ(Ian Duddy)国際部長です。協力分野は次のとおりです。共同声明に具体策や数値目標は示されていません。
- 情報・業界慣行の交換
- 持続可能性
- 双方の製品の保護・振興
- 共通の規制課題の協議
- 法的保護
- 製品の真正性
- 知的財産権の侵害
- 責任ある飲酒
IMWAの会員企業は、アムルット、ジョン・ディスティラリーズ(ポール・ジョン)、ラディコ・カイタン(ラムプール)、ピカディリー・アグロ(インドリ)、ディアジオ・インディア、アルコブリューです。インド産シングルモルトの主要な造り手が1つの協会にまとまったため、SWAにとっては定義と真正性を話し合う相手が一本化されました。英語圏の業界紙は、SWAがこの協定を、インドでシングルモルトの明確な定義づくりを進めるものと位置づけていると伝えています(The Spirits Business、2026年10月30日)。
数字が示す背景
SWAによると、2025年のインド向けスコッチ輸出は70cl瓶換算で2億2000万本となり、輸出先別の数量で1位でした。一方、金額は2億8600万ポンドで3位にとどまります。数量1位・金額3位という差からは、インドで瓶詰めされるブレンド用のバルク原酒や、価格帯の低い製品の比率が高いことがうかがえます。ただし、その比率を示す数値は出典にありません。量販品との違いは4章で扱います。
日本の売り場とカウンターでの使い方
- 定義と熟成年数:定義の比較は3章で、熱帯熟成で年数の意味が変わる理由は4章で扱います。
- インド出身の客や贈答先への案内:インドではスコッチの関税が下がり始めたこと、自国のモルトの定義づくりにスコッチ側が協力していることの2点を押さえておくと、会話の糸口になります。銘柄を選ぶときは、蒸溜所がIMWA会員かどうかだけで判断しないでください。製品ごとの認証表示と裏ラベルを確かめます(手順は3章)。
協会間の協力協定と英印CETAは別の合意:関税150%→75%→40%の意味と、店頭価格が半額にならない理由

日本での価格への影響は下の表のとおりです。そのうえで、性質の違う2つの合意を分けておきます。協力協定は業界団体どうしの合意です。関税を変えたのは、英国政府が発表した英印包括的経済貿易協定(CETA)という国家間の協定です。
| 項目 | IMWA・SWAの協力協定 | 英印CETA |
|---|---|---|
| 当事者 | インド・モルト・ウイスキー協会とスコッチウイスキー協会 | 英国政府とインド政府 |
| 性質 | 業界団体間の合意 | 国家間の貿易協定 |
| 時期 | 2026年10月にニューデリーで署名 | 2026年7月15日発効 |
| 主な中身 | 真正性、法的保護、知的財産、定義づくりなどの協力 | スコッチのインド輸入関税を150%→75%→40%へ引き下げ |
| 関税への影響 | なし | あり(原産地規則を満たすものに限る) |
| 日本の価格への影響 | 発表なし(2026年11月7日時点) | 直接の影響なし(英印間の協定で、日本に入るスコッチやインド産モルトの関税は変わらない) |
150%→75%→40%の読み方
英国政府によると、対象となるスコッチのインド輸入関税は、CETA発効時に150%から75%に下がりました。その後10年間で段階的に40%まで下がります。途中の年ごとの税率は、今回の出典では確かめていません。
関税は輸入時の課税価格にかかります。課税価格を100とすると、関税込みの額は150%で250、75%で175、40%で140です。関税込みの原価は、75%の段階で約3割、40%に達した段階で4割強下がる計算です。関税率が半分になっても、関税込みの原価は半分になりません。しかもこの計算は、店頭価格を構成する層のうち、最初の1層だけを見たものです。
さらに、優遇関税は自動では適用されません。英国政府は、原産地規則を満たすこと、輸入者が原産地申告に基づいて優遇を申請することの2点を条件に挙げています。どちらかを欠く輸入には優遇税率が使われません。インド市場の「スコッチ」が、すべて一律に安くなるわけではありません。
店頭価格が半額にならない仕組み
インドの店頭価格は、次の層が重なって決まります。州税の具体的な税率は今回の出典で確かめていないため、ここでは仕組みだけを示します。
- 関税:CETAで下がったのはこの層です。課税価格に対してかかります
- 州ごとの物品税:インドでは酒類の課税を州が担い、州によって制度と負担が異なります。関税が下がっても、この層は変わりません
- 流通マージン:輸入者、卸、小売がそれぞれ上乗せします
- 価格改定の判断:関税の下げ分を店頭価格に反映するか、販促や利益に回すかは、ブランドと輸入者が決めます
このため、関税の引き下げ幅がそのまま店頭価格に表れるとは限りません。具体的な値下げ幅は、2026年11月7日時点で確かめられていません。
日本の読者が押さえる判断基準
- 日本での仕入れ・値付け:CETAを理由に、国内の仕入れ値が下がると見込まないでください。価格表の改定は、輸入元の正式な通知で確かめます
- インドへの贈答・案内:「インドではスコッチが半額になった」とは伝えないでください。正確に言えるのは「関税が150%から75%に下がり、10年かけて40%まで下がる」までです
- インド出身の客や取引先との会話:関税の話は国家間のCETA、定義や真正性の話は協会間の協力協定と、分けて話します。2つを混ぜると、協会が値下げを決めたかのような誤解を招きます
- 今後の確認点:段階的な税率の推移、主要ブランドのインド国内での価格改定の発表、協力協定から出てくる定義・表示の具体策の3つです。これらは別々に追います
『シングルモルト』の定義を4つの基準で比べる:SWR 2009、インド2023年改正規則、IMWA基準、日本の自主基準
4つの基準は、原料、蒸溜、熟成、瓶詰め地のうちどこを縛るかが違います。下の表の「—」は、その文書の公表された要件として確かめられなかった項目です。規制がないという意味ではありません。
| 項目 | SWR 2009(シングルモルト・スコッチ) | インド2023年改正規則 | IMWA基準 | 日本洋酒酒造組合(ジャパニーズウイスキー) |
|---|---|---|---|---|
| 性質 | 英国の法令 | インドの国の規則 | 業界団体の自主基準 | 業界団体の自主基準 |
| 原料 | 麦芽大麦と水のみ | ほかの穀物を加えない麦芽大麦 | — | 麦芽を必ず使い、ほかの穀類と日本国内で採水した水 |
| 蒸溜所 | 単一蒸溜所 | 単一蒸溜所 | 単一蒸溜所 | 日本国内の蒸溜所で糖化・発酵・蒸溜(単一の要件なし) |
| 蒸溜器 | ポットスチルによる回分蒸溜 | ポットスチルのみ | 銅製ポットスチル | 指定なし(留出時95度未満) |
| 熟成 | スコットランドで700リットル以下のオーク樽、3年以上 | —(シングルモルトの個別定義に明記なし) | 700L未満のオーク樽、3年以上(公表資料に「最大700L」の表記もあり) | 700リットル以下の木製樽、日本国内で3年以上 |
| 瓶詰め地 | スコットランド | —(シングルモルトの個別定義に明記なし) | インド国内 | 日本国内 |
| 最低度数 | 40% | 36~50%(アルコール飲料規則の共通表) | — | 40度(瓶詰め時) |
| (参考)ブレンデッドモルト | 複数の蒸溜所のシングルモルト・スコッチを混ぜたもの | 中性・精留スピリッツとの混合を認める(FSSAI規則) | — | — |
根拠:SWR 2009の条文、FSSAIのアルコール飲料規則(2026年版)、同規則(2026年版)、IMWA公式サイト
表の細部に出る差
- 樽容量の境界:SWRは「700リットル以下」と定めています。IMWAは、公式サイトでは「700リットル未満」としています。一方、IMWAが掲載する事務局長の説明では「最大700リットル」と述べています。公表資料の表現が「未満」と「以下」で揺れているため、ちょうど700リットルの樽の扱いは断定できません。ホグスヘッド(約250L)やバット(約500L)のような一般的な樽では、この揺れは問題になりません
- 蒸溜器の材質:SWRとインドの規則はポットスチルを求めていますが、材質までは定めていません。IMWA基準は「銅製」と明記しています(銅の働きは4章で扱います)
- 瓶詰め地:SWRは、シングルモルト・スコッチをスコットランドで瓶詰めするよう義務づけています。IMWA基準もインド国内での瓶詰めを求めています。原酒を国外へ出して詰める方法を、どちらも認めていない点は同じです
- 熟成要件と表示条件:インドの規則のうち、シングルモルトの個別定義には、3年熟成とインド国内での瓶詰めが明記されていません。度数は、アルコール飲料規則の共通表で36~50%と示されています。このほか、酒類一般の要件や「matured」などの表示条件は、個別定義とは別の箇所で定められています。インド産で「3年以上」「オーク樽」を裏づけるのは、現時点ではIMWAの自主基準と、それに基づく製品ごとの認証です
拘束力の違い
SWRは英国の法令で、2023年改正規則はインドの国の規則です。それぞれ自国での製造・表示・販売に適用されます。他国の市場で表示や販売にどう効力を持つかは、その市場の制度と執行しだいで、英国法やインド法だけでは決まりません。日本での表示は、酒税法・酒類業組合法に基づく表示の基準や景品表示法など、国内の規則に照らして判断します。SWRの条文だけでは結論を出せません。
一方、IMWA基準と日本洋酒酒造組合の基準は、業界団体の自主基準です。守るのは加盟・賛同する造り手で、非会員の製品は縛れません。IMWAは、基準を満たした製品に付ける認証マークも設けています(IMWAの認証情報、規則・方針)。日本の基準も、酒税法上のウイスキーの定義とは別に、業界が設けた表示ルールです。
協定の「真正性」「知的財産権の侵害」との関係
定義に合わない表示をめぐる問題は、性質の違う3つに分けて考えます。
- 虚偽・誤認表示:「シングルモルト」のような製法を表す一般的な用語を、定義や実態に合わない製品に使う問題です。それだけで直ちに知的財産権の侵害になるわけではなく、各市場の表示規制の問題として扱われます
- 認証基準の違反:IMWAのような業界団体の認証を、基準を満たさない製品に表示する問題です
- 地理的表示・商標の侵害:「スコッチ」は保護される地理的表示です。スコットランド産でない製品に使えば、知的財産の問題になります
協定は、真正性、法的保護、知的財産権の侵害についての協力を掲げています。ただし、上のどの問題にどう取り組むかは、共同声明に示されていません。前の章で触れたSWAの位置づけからは、定義と表示が協力の論点になると読めます。一方で、共同声明は両国の定義を共通化するとは述べていません。
日本で買う・売るときの読み方
- インド産シングルモルト:インドの規則のシングルモルトの個別定義で確かめられるのは、原料と蒸溜の要件です。熟成年数や瓶詰め地は、蒸溜所がIMWA会員かどうかでは判断できません。製品ごとに、①ボトルにIMWAの認証表示があるか、②メーカーが公表する銘柄の仕様(熟成年数、樽、瓶詰め地)、③裏ラベルの原産国・瓶詰め地・輸入者表示、の順で確かめます
- ブレンデッドモルト:同じ表記でも、スコッチでは複数の蒸溜所のシングルモルトを混ぜたものを指します。インドのFSSAI規則では、中性・精留スピリッツとの混合も認められています。産地を添えずに、まとめて説明しないでください
- スコッチ:SWR上、日本で瓶詰めした製品は「シングルモルト・スコッチ」を名乗れません。日本詰めのプライベートボトルを扱うときは、ラベルの瓶詰め地と原酒の表記を確認します
- ジャパニーズとの比較:日本の基準は「ジャパニーズウイスキー」と名乗るための条件で、シングルモルトの区分を定めたものではありません。単一蒸溜所やポットスチルは要件に入っていないため、国産の「シングルモルト」表記は各社の表示に基づくものとして読みます
- 客への説明:3つの国の「シングルモルト」を同じ棚で比べるときは、その表記が法令によるものか、自主基準によるものかを一言添えます。出どころを伝えると、説明の精度が上がります
なぜ定義がそこまで重視されるのか:インドの『ウイスキー』の実態と、熱帯熟成が3年の意味を変える仕組み

インドの「ウイスキー」という名称は、麦芽100%の原酒にも、糖蜜由来の中性スピリッツを主体にした量販品にも使われてきました。シングルモルトの定義は、この2つを製法で分けるための線引きです。さらに熟成年数の要件は、熱帯ではスコットランドと同じ「3年」でも中身が変わることを前提に読む必要があります。
糖蜜由来の量販品とシングルモルトを分けるもの
インドで大量に売られる「ウイスキー」には、サトウキビの糖蜜(砂糖を精製した後に残る液)を発酵・蒸溜した中性スピリッツに、モルト原酒を混ぜた製品が多くあります。違いは原料だけではありません。蒸溜の方式が違うため、液に残る香味成分の量そのものが変わります。
| 項目 | 連続式で精留した中性スピリッツ | 銅製ポットスチルの回分蒸溜 |
|---|---|---|
| 取り出す度数 | 高い度数まで精留 | 低い度数で取り出す |
| エステル・高級アルコール | 多くが除かれる | 原料と発酵由来の成分が残る |
| 酒質を決める操作 | 精留の度合い | ミドルカット(スピリットスチルの蒸溜で、前留=ヘッドと後留=テールを除き、中間のハートだけを取ること)の幅 |
| 原料の個性 | 表に出にくい | 麦芽と発酵の違いが残る |
ポットスチルでは、ミドルカットを早めに切り上げると軽い酒質になります。カットの位置は留出液のアルコール度数で決め、後留側に下げるほど、高沸点の油性成分やフェノールが増えます。同じ麦芽からでも、どの留分を取るかで酒質が変わります。
「銅製」と明記されていることの意味
銅は蒸溜中に硫黄化合物と反応し、肉様・ゴム様の重い香りのもとを減らします。その効果を左右するのは、蒸気と液が銅の表面に触れる量です。還流(蒸気が蒸溜器の中で凝縮して釜へ戻る現象)が多いほど、銅に触れる回数と時間が増えます。
還流に影響する要素の一つは、ネックの長さやラインアームの角度といったスチルの形状です。ただし、形状だけで還流が決まるわけではありません。加熱の強さや充填量などの運転条件も関わります。ゆっくり蒸溜するほど、還流と銅との接触は増えます。
冷却器の方式も効きます。シェル&チューブ型の冷却器は、蒸気が銅管に触れる面積が大きく、ワームタブ(蛇管式の冷却器)より軽い酒質になりやすくなります。蒸溜の合間に銅を休ませて表面を回復させる運用も、銅の働きを保つ要素です。
とはいえ、銅との接触量は酒質を決める要素の一つにすぎません。実際の香味は、発酵、カット、熟成も含めて決まります。IMWAが材質を「銅製」と定めた理由は、協会の公表資料では確かめられていません。上で述べた銅の作用を踏まえた推測にとどまります。
熱帯熟成で「3年」の中身が変わる仕組み
- 樽成分の抽出:高温では原酒が樽材に深く浸み込み、温度差で出入りを繰り返すため、木由来の色や成分が短い期間で溶け出します
- 蒸発による損失:エンジェルズシェア(熟成中の蒸発による目減り)は、スコットランドより多い傾向があります。年数を重ねるほど瓶に詰められる原酒が減るため、長期熟成は造り手にとって採算面でも成り立ちにくくなります
- 度数の変化:湿度などの保管条件によって、蒸発する水とアルコールの割合が変わります。そのため、度数は上がる場合も下がる場合もあります。温度、通気、樽材、倉庫内の置き場所も関わり、同じ地域でも樽ごとに違います
- 樽容量:容量が小さいほど、原酒の量に対して木と接する面積の比率が大きくなります。ただし、抽出の速さは樽の履歴、材、保管環境でも変わります。IMWA基準の容量の上限(3章の表)は、使える樽の大きさを定める要件として読みます
このため、「年数が長いほど良い」という通説は、熱帯の熟成にはそのまま当てはまりません。樽の成分が先に出きってしまうことがあり、原酒の量も年ごとに減っていきます。熱帯熟成では抽出と蒸発が速くなりえますが、香味の成熟がスコットランドの何年分にあたるかを換算することはできません。年数表記の有無も、原酒の配合や販売上の判断で決まることがあり、熟成環境だけでは説明できません。
日本で選ぶ・出すときの判断基準
- 年数で比べない:インド産の3年を、スコッチの3年と同列に並べないでください。比べるときは、樽の種類(バーボン樽かシェリー樽か、ファーストフィルかリフィルか)とボトリングの度数で並べます
- 高温熟成どうしで並べる:同じ樽の種類(例:バーボン樽どうし)のインド産と台湾のカバランを並べます。年数表記ではなく、樽由来の色・甘さ・タンニンの出方を比べます
- 香味の説明は公式の表現を使う:客に伝える香味は、各蒸溜所が公表している表現をそのまま引き、出どころを添えます
- 量販品との混同を防ぐ:インドの知人に贈るときは、ラベルの「シングルモルト」表記と単一蒸溜所名を確かめます
日本の酒販店・バー・贈る人にとっての意味:入手、価格、比べられる定番銘柄、ラベルの確かめ方
協力協定を理由にした表示・価格の変更は、2章のとおり発表されていません。変わるのは、ラベルの読み方と説明の組み立て方です。
日本で買えるか:輸入元の公式情報で確かめる
アムルットは、ガイアフローの公式ブランドページと同社の販売ページで、国内での取扱いを確認できます。ポール・ジョンは、国分グループの商品情報と現行商品一覧で、国内での取扱いを確認できます。ほかの会員企業の銘柄(ラムプール、インドリなど)は、輸入元の公式情報で個別に確かめてください。店頭や通販で見かけたボトルが正規品かどうかは、裏ラベルの輸入者表示を、これらの公式取扱情報と照合して判断します。
ポール・ジョンを軸にした飲み比べ
国内で取扱いを確認できるポール・ジョンを軸に、条件をそろえたスコッチと並べます。どのボトルが取扱い中かは、国分の商品情報で確かめてください。ピートの有無、樽の履歴、度数は、各社の公表仕様とボトルのラベルで確認します。香味の説明には、各蒸溜所の公式テイスティングノートを、出どころを添えて引用します。
| 組み合わせ | ポール・ジョン側 | スコッチ側 | そろえる条件 | 見るところ |
|---|---|---|---|---|
| ノンピートどうし | ピートを使わないボトル | グレンキンチー 12年(4,290円前後・2026年11月7日時点) | ピートなし。樽の履歴は公表仕様で確かめ、バーボン樽主体どうしにそろえる | ピートの影響を外し、熱帯熟成による樽由来の色・甘さ・タンニンの出方を比べる |
| ピーテッドどうし | ピートを焚いた麦芽を使うボトル | カリラ 12年(5,478円前後・2026年11月7日時点) | ピートあり。フェノール値(ppm)は公表値がある場合だけ比べる | 煙の香りは麦芽乾燥でピートを焚く段階で付く。煙の強さではなく、その下にある麦芽と樽の香りの出方を比べる |
度数がそろわない場合は、高い側に少量ずつ加水して、低い側の度数に近づけてから並べます。
メニューとPOPの書き方
- カテゴリー:ラベルの表記どおりに「シングルモルト」「ブレンデッドモルト」「ウイスキー」を書き分けます。「ブレンデッドモルト」には必ず産地を添えます。スコッチでは複数の蒸溜所のシングルモルトを混ぜたものですが、インドのFSSAI規則では中性・精留スピリッツとの混合も認められており、同じ言葉でも中身が違うためです。「ウイスキー」とだけ表記された製品は糖蜜由来の原酒を含みうるため、「インドのモルト」とまとめて書かないでください
- 表示の確認:原産国、瓶詰め地、輸入者の3点を裏ラベルで確かめてから載せます
- 年数の表記:インド産に年数表記がない場合も、スコッチと年数をそろえたように見える並べ方はしないでください
バーで並べて出す手順
- 量をそろえます。日本では一般にシングル30ml、ダブル60mlが目安で、飲み比べは同量で出します
- 同じ形のグラスを使います。チューリップ型でそろえると、香りの立ち方の差がグラスによるものでなくなります
- 説明は、原料、蒸溜方式、熟成地の3点で組み立てます。「何年もの」から話を始めないでください
- 度数の高いボトリングは、まず加水せずに香りを取ります。次に、スポイトで常温の軟水を数滴ずつ加え、そのたびに香りを確かめます。加水するとアルコールの刺激が和らぎ、液面に出てくる香気成分の量も変わるため、香りの出方が変わります
インド在住の知人に贈る場合
日本からインドへ酒類を持ち込む、または送る場合の具体的な規則は確かめられていません。インドでは州ごとに酒類の規制が異なるため、手配の前に、送り先の州を含めて現地の規制を確認することが必要です。国際郵便や宅配便の会社ごとの取扱条件も、事前に確かめてください。
並行輸入品と越境ECで確かめること
協定の協力分野には、「製品の真正性」と「知的財産権の侵害」が含まれています。インド産とスコッチのどちらでも、名称を偽った製品が問題として意識されていることの表れです。並行輸入品や越境ECで買うときは、販売者の所在地と仕入れ経路、ラベルの原産国・瓶詰め地・蒸溜所名を確認してください。日本語の輸入者表示がない場合は、出所の説明を販売者に求めます。
この記事で紹介した銘柄
よくある質問

署名日は10月21日と報じられていますが、どの日付を使えばよいですか。
英語圏の業界紙The Spirits Business(2026年10月30日)は、ニューデリーでの署名日を2026年10月21日と伝えています。一方、両協会の共同声明で確かめられるのは「2026年10月」までです。POPや社内資料には「2026年10月」と書き、日付まで示すときは業界紙の報道に基づくことを添えるのが確実です。
この協定で、ジャパニーズウイスキーの基準や国内の表示は変わりますか。
協定はIMWAとSWAの2団体による合意で、日本の業界団体は当事者ではありません。共同声明も、両国の定義を共通化するとは述べていません。日本洋酒酒造組合の基準や国内の表示に関わる変更は、2026年11月7日時点で発表されていません。3か国の銘柄を並べるときは、基準の出どころを国ごとに分けて説明します。
開栓したインド産モルトは、店でどう保管すればよいですか。
開栓後に香りが変わる主な要因は、瓶の中の空気と液体が触れることです。瓶は立てて保管し、コルクが傷むのを防ぎます。直射日光と高温も避けてください。残量が減ると瓶内の空気が増えて香りが変わりやすくなるため、小瓶に移して空間を減らします。変化の速さは銘柄によって違うので、開栓日を瓶に書いておき、定期的に香りを確かめます。
出典・参考にした情報
- Scotch and Indian whisky associations pen coop agreement(確認日 2026-11-07)
- Indian Malt Whisky Association signs pact with Scotch Whisky Association(確認日 2026-11-07)
- 両協会の共同声明を掲載したHospitality Lexis(確認日 2026-11-07)
- 英国政府(確認日 2026-11-07)
- SWA(確認日 2026-11-07)
- IMWA(確認日 2026-11-07)
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。