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ウイスキーグラスの選び方|種類別の形・容量と使い分け

ウイスキーグラスはテイスティング、ショット、ロック、タンブラー、耐熱の5種類を飲み方で使い分けます。コピタ型やグレンケアン型の違い、香りを取るための注ぐ量の目安、ハイボール向きの容量まで、1脚目選びに役立つ基準を解説します。

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ウイスキーグラスの種類と特徴|テイスティング・ショット・ロック・タンブラー・耐熱

グラスは飲み方で決まります。ストレートや加水で香りを確かめるならテイスティンググラス、氷で飲むなら口の広いロックグラスを選びます。ハイボールや水割りは300ml前後のタンブラー、お湯割りは耐熱ガラスです。迷ったら1脚目はテイスティンググラスにします。

ウイスキーグラスは、形によって「香りをどう集めるか」「氷やソーダがどれだけ入るか」「熱に耐えられるか」が変わります。まず区別しておきたいのは、グラスの全容量(縁まで満たした量)と、実際に注ぐ量です。この2つは別物です。香りを取るグラスは、液面の上に香りがたまる空間を残すため、全容量よりずっと少なく注ぐ前提で作られています。注ぐ量の基準は、次の表のあとにまとめます。

主な5種類の比較

種類形口径高さ容量の目安向く飲み方
テイスティングボウルがふくらみ、口がすぼまるチューリップ形狭い中〜高め(脚付きは高い)製品差が大きい(第3章参照)ストレート、少量の加水、ノージング
ショット/ストレート小さな筒形狭い〜中低い60ml前後が中心。シングル(30ml)・ダブル(60ml)を注ぐ器バーでチェイサーを添えて出す、少しずつ飲むストレート
ロック(オールドファッションド)背が低く口が広い。底が厚い広い低い200〜300ml程度が一般的オン・ザ・ロック
タンブラー背の高い筒形中高い240〜360ml程度(8〜12オンス)ハイボール、水割り
耐熱形はさまざま。耐熱ガラス製製品による製品による製品によるお湯割り、ホットウイスキー

注ぐ量の基準

日本のバーでは、シングル30ml、ダブル60mlが一般的です。香りを取るときは、液面がボウルの最も膨らんだ位置より下に収まる量にします。膨らみより上まで注ぐと、香りがたまる空間が狭くなります。この記事で注ぐ量に触れるときは、この基準を使います。

テイスティンググラスとショットグラスは役割が逆

テイスティンググラスはノージング(香りを嗅ぐこと)のための道具です。ふくらんだボウルで液面を広げて香りの揮発を促し、すぼまった口でその香りを鼻先に集めます。発酵由来のエステル(果実のような香り)、ピートを焚いた麦芽に由来するフェノール類(スモーキーさ)、樽由来のバニラ香などを嗅ぎ分けるための形です。

一方、ショットグラスは60ml前後が中心の小さな筒形で、シングルやダブルを注ぐ器です。日本のバーでは「ストレートグラス」と呼ばれ、チェイサー(口直しの水)を添えて、ストレートを少しずつ飲んでもらうために使います。どちらも「ストレート用」と呼ばれますが、ショットグラスは香りがたまる空間をほとんど持ちません。香りを確かめる用途には、テイスティンググラスを選びます。

テイスティンググラスの中の型

  • コピタ型:細い脚の付いたチューリップ形。もとはスペイン・ヘレスでシェリーの試飲に使われるグラスです。シェリー樽とともにスコッチの業界に入り、ブレンダーがサンプルを評価する標準の型になりました。脚を持てば手の熱が伝わりにくく、香りの変化を落ち着いて追えます。
  • グレンケアン型:コピタ型をもとに脚をなくし、底を厚くした形。スコットランドのGlencairn Crystal社が2001年に生産を始め、大手ウイスキー会社5社のマスターブレンダーの協力で形を決めました。倒れにくく洗いやすいため、家庭や試飲会で扱いやすい型です。
  • 口が外に開く型:ボウルで香りをためつつ、口縁を外へ反らせた形。例として、リーデル〈ヴィノム〉シングル・モルト・ウイスキーは脚付きで高さ113mmのクリスタルグラスです。

どの型も香りを集めるための形です。選び分けの基準は度数です。カスクストレングス(樽出しの度数のまま瓶詰めしたもの)のように度数が高いと、すぼまった口ではアルコールの刺激も一緒に集まり、ほかの香りを覆いがちです。その場合は数滴ずつ加水して香りの開き方を比べるか、口の開いた型を使います。グレンケアンの案内でも、香りと味が加水でどう変わるかを見るよう勧めています。

ロックグラスとタンブラーの違い

ロックグラスは背が低く口が広いため、大きな氷を入れやすい形です。底が厚いぶん重心が低く、安定します。タンブラーは背の高い筒形で、割る飲み方に向きます。背が高いと容量のわりに液面が狭くなり、炭酸が抜けにくくなります。

ハイボールの比率はメーカーのレシピでも異なります。アサヒビールのカクテルガイドでは、ウイスキー45ml+ソーダ105ml(ほぼ1:2.3)とし、タンブラーでビルド(グラスの中で直接作る方法)します。サントリーはウイスキー1:ソーダ4(30ml+120ml)を勧めています。どちらも液量は150mlで、氷を入れると300ml前後(10オンス程度)のタンブラーが必要です。作り方は「飲み方・条件別の使い分け」の章にまとめています。

耐熱グラスと強化ガラスを混同しない

お湯割りには、品名が「耐熱ガラス」の製品を使います。強化ガラスは耐熱ではありません(詳しくは素材の章)。

容量はどの種類もメーカーや製品で幅があります。表の数値は目安にとどめ、購入時は製品ごとの容量表記を確認してください。

なぜグラスの形で香りと味が変わるのか|度数・温度・香気成分から考える

ウイスキーのイメージ写真

ボウルで溜め、口で集める|エタノールと香気成分の揮発の違い

グラスの中では、揮発しやすさの違う成分が仕分けられています。液面から立つ気体の大半はエタノールで、速く出ていきます。エステル、フェノール類、樽由来のバニリンなどの香気成分はごく微量です。エタノールに溶け込んだ状態から少しずつ出てきます。ふくらんだボウルは、こうした気体が液面の上にたまる空間をつくります。すぼまった口は、その気体を逃がさずに鼻の前へ送ります。口が狭いほど香りは濃く届きますが、エタノールも同じように濃くなります。

度数が高いボトルは嗅ぎ方で調整する

エタノールは、鼻の粘膜を刺す「ツンとくる感じ」として感じられます。度数が高いほど、この刺激は強くなります。グレンファークラス 105は、度数60%で瓶詰めされるカスクストレングスです。口のすぼまったグラスに顔を近づけると、シェリー樽熟成らしいドライフルーツの香りより先に刺激が来ます。次の順で試してください。

  1. 注ぐ量は冒頭の章の基準どおり、液面がボウルの最も膨らんだ位置より下に収め、グラスを静かに回して内側に液の膜を作る
  2. 鼻を縁から数cm離し、口を少し開けたまま短く嗅ぐ。刺激が弱ければ少しずつ近づける
  3. 常温の軟水を数滴加え、軽く回してから1分ほど置いて嗅ぎ直す
  4. 香りの変化が止まるまで数滴ずつ繰り返す。足した水は戻せないので、一度に多く入れない

数滴ずつ加えるのは、家庭で自分の好みの濃さを探す方法です。複数のサンプルを同じ条件で比べる評価では、ブレンダーが20%前後まで薄めて嗅ぐことが多くあります。40%のボトルならウイスキーと水を1:1にする、つまりトゥワイスアップで約20%になります。60%のグレンファークラス 105なら、ウイスキーの2倍量の水が目安です。家で試すときも一度に入れず、数滴ずつこの濃さに近づけていきます。

加水で香りが開く理由と、白い濁り

加水で香りが開くのは、アルコール濃度が下がるためです。水になじみにくい香気成分が液中にとどまりにくくなり、液面へ出てきやすくなります。同時に、鼻を覆っていたエタノールの刺激も弱まります。ただし水を足しすぎると全体が薄まり、香りも味も平板になります。

冷却濾過(低温で濁りの成分を取り除く処理)をしていないボトルは、加水や氷で白く濁ることがあります。正体は脂肪酸エステルなどの成分です。度数や温度が下がると溶けきれなくなり、細かく析出します。品質の問題ではありません。こうした成分も香味の一部として残すために、濾過を省いています。冷却濾過をしないボトルは、46%以上なら常温のストレートで濁りにくいとされ、この度数で瓶詰めする蒸溜所が多くあります。

冷やしても残る香り、消えやすい香り

麦芽をピートの煙で乾燥させると、煙に含まれるフェノール類が麦芽に付きます。ピートの強さは麦芽のフェノール値(ppm)で表します。ただしこれは麦芽で測る値で、糖化・発酵・蒸溜の各段階で大きく減り、蒸溜後の原酒に残るのはその一部です。ニューメイク(蒸溜したての原酒)に残る量と種類は、ミドルカット(製品として取る中間留分)の取り方で変わります。グアイアコールやクレゾールなどの重いフェノール類はカットの後半に多く出るため、後半寄りまでカットを取ると多く残ります。フェノール類は、ごく低い濃度でもにおいとして感じ取れます。そのため、冷えて揮発が鈍っても存在感が残ります。

一方、繊細な果実香の主役であるエステルは、主に酵母の発酵で生まれます。原酒にどれだけ残るかは、発酵時間や、蒸溜時の還流(蒸気が冷えて釜へ戻ること)の多さ、カットの取り方で決まります。熟成中にもエステル化は進みますが、その歩みはゆっくりです。樽由来の甘い香りの中心は、バニリンやオークラクトンです。エステルは温度が下がると立ちのぼりにくくなり、広口のグラスでは鼻に届く前に散ってしまいます。

銘柄香りの主役由来テイスティンググラスでストレートロック・ハイボール
アードベッグ 10年煙、ヨード、焦げピートを焚いた麦芽のフェノール類。多くは蒸溜までに失われ、ミドルカットの取り方で残る量が決まる煙の奥にある柑橘や甘さまで拾えるスモーキーさがはっきり残る
グレンフィディック 12年洋梨、青りんご主に発酵で生じるエステル。蒸溜の還流とカットで軽やかさが決まる果実香を細かく追える果実香が弱まり、軽さとまろやかさが中心になる

果実香が主役のボトルは、テイスティンググラスでストレートか少量の加水で飲むと持ち味が出ます。スモーキーさが主役のボトルは、割っても個性が残ります。

氷が変えるのは香りより口当たり

氷で冷えると揮発が抑えられ、香りは閉じます。低い温度では甘さも感じにくくなり、同じウイスキーがドライで引き締まった印象に変わります。ロックグラスは香りを集める形ではありません。冷たさととろみのある口当たり、そして氷が溶けて度数と温度が少しずつ移る変化を楽しむ道具です。香りも確かめたいときは、氷を入れる前にテイスティンググラスで少量を嗅いでおきます。そうすると、冷やしたあとの変化と比べられます。

脚の有無は目的で選ぶ

  • 脚付き:手の体温が液体に伝わりにくい。開栓直後の香りの確認、複数ボトルの比較、試飲会など、温度条件をそろえたい場面向き
  • 脚なし:ボウルを手のひらで包むと、少しずつ温度を上げられる。冷えて閉じた香りを立たせたいとき、1杯の変化を時間をかけて追うとき向き

冷えた部屋に置いていたボトルを飲むときは、脚なしで温めて香りを起こします。一方、高度数のボトルは温めると刺激も強まります。こちらは脚付きで温度を保つ、と使い分けてください。

代表的なテイスティンググラスを一次情報で比較|グレンケアン・リーデル・ノルラン

グレンケアングラス|ブレンダーの評価用グラスを家庭向けにした形

グレンケアングラスは、1981年創業のGlencairn Crystal社(スコットランドのイースト・キルブライド)の製品です。デザインしたのは、同社のマネージング・ディレクターだったレイモンド・デイビッドソンです。ブレンダーが評価に使うコピタの香りの集め方を、家庭やバーで扱いやすい丈夫な形に移しました。2006年にはクイーンズ・アワード(イノベーション部門)を受賞しています。素材は無鉛クリスタルで、食洗機にも対応しています。

**全容量は約175ml(6oz)とされます。メーカーは、35mlを注いで加水する余地を残す設計だと説明しています。**約35ml注いでも、液面の上には全容量の8割ほどの空間が残ります。ここに香りがたまるため、注ぐ量を増やすほど香りをためる空間は減ります。比較用に何本も注ぐときは、冒頭の章の基準に沿って量をそろえます。

グレンケアン公式は、評価の手順を「色→香り→ボディ→味」の4段階で示しています。家では次のように進めます。

  1. 色:白い紙の前でグラスを傾け、縁の色の濃さと液の透明度を見る。濃い色が着色によるものかどうかは、色だけでは判断できない。スコッチウイスキー規則(SWR 2009)で認められる着色料はスピリットカラメル(E150a)のみで、使っているかどうかはラベルの表記かメーカーの公表で確かめる
  2. 香り:静かに回し、最初の印象を言葉にしてメモする
  3. ボディ:少量を口に含み、重さ、オイリーさ、舌への広がり、粘りで判断する。内壁を伝って落ちる液の筋(レッグ、ティアーズ)は、エタノールと水の表面張力の差(マランゴニ効果)で生じ、主に度数で決まる。ボディの指標にはならず、度数の目安にとどまる
  4. 味:少量を舌全体に行き渡らせ、甘み・刺激・余韻の長さを確かめる。そのあと加水し、香りと味をもう一度たどる

リーデル〈ヴィノム〉シングル・モルト・ウイスキー|脚付きのクリスタル

品番6416/80は、脚付きでクリスタルガラス製、機械製のグラスです。高さは113mmで、食洗機に対応しています。容量は公式サイトでも地域によって表記が食い違っているため、ここでは載せません。参考までに、カナダ公式では2個セットで95.00カナダドルです。脚を持てば手の熱が液体に伝わらないため、何脚並べても温度条件をそろえやすく、試飲会で複数のボトルを比べる場面に向きます。

ノルラン|蒸溜所のマスターディスティラーと詰めた二重構造

ノルランは二重構造のグラスです。内側の形は、デザイナーのスルーリ・レヒトが2014年に、ブルックラディ蒸溜所のマスターディスティラー、ジム・マキューアンと一緒に詰めました。2015年のKickstarterでは目標の1,000%にあたる80万ドル超を集め、当時もっとも資金を集めたドリンクグラスになりました。製品は2016年に発売されています。二重構造なので、手のひらで包んでも体温が内側の液体に伝わりにくくなります。素材はホウケイ酸ガラスで、メーカーは食洗機を避けて手洗いするよう案内しています。推奨の注ぐ量は約20〜40mlです。

3つのグラスの比較

項目グレンケアンリーデル〈ヴィノム〉ノルラン
脚なし(厚い底)ありなし
素材無鉛クリスタルクリスタルガラス二重構造のホウケイ酸ガラス
食洗機対応対応非対応(手洗い)
手で温めやすいかボウルを包めば温まる脚を持てば温まりにくい二重構造で温まりにくい
高さ・容量本文参照高さ113mm。容量は表記が食い違うため記載しない高さ約94mm、全容量約175ml
持ち運び・収納背が低く脚がないため扱いやすい脚があるので梱包に注意が要る背が低く脚がないため収納しやすい

条件別の選び方

  • 最初の1脚で、ストレートも加水も試したい:グレンケアン。温めて香りを起こすこともでき、食洗機でも洗える
  • 複数のボトルを同じ温度で比べたい、試飲会で何脚も並べる:リーデル〈ヴィノム〉。脚を持てば手の熱が伝わらず、温度条件がそろう
  • 高度数のボトルを手の熱で温めず、ゆっくり飲みたい:ノルラン。洗うのは手洗いが前提
  • ウイスキー好きの知人に贈る、海外へ持っていく:脚がなく割れにくい形を選ぶ。グレンケアンは食洗機対応、ノルランは手洗いが前提なので、相手の洗い方に合わせる

飲み方・条件別の使い分け|最初の1脚と買い足す順番

ウイスキーのイメージ写真

飲み方が決まれば、グラスの種類はほぼ決まります。迷いやすいのは同じ種類の中での容量と口径です。下の表では、飲み方ごとのグラスに加えて、買う前に確かめる点を並べました。

飲み方選ぶグラス買う前に確かめる点
ストレートテイスティンググラス注いだあと、液面の上に香りがたまる空間が十分に残るか
トゥワイスアップ(ウイスキーと常温の水を1:1で割る)テイスティンググラスウイスキーと水の合計量が、ボウルの最も膨らんだ位置を超えないか
ロック広口のロックグラス手持ちの大きな氷が口から入り、内壁とのあいだにすき間が残るか
ハイボールタンブラーウイスキー・ソーダ・氷を合わせた量が、縁より下に収まるか
水割りタンブラーウイスキー1:水2〜2.5の液量に氷を足しても、マドラーで混ぜる余白があるか
お湯割り耐熱グラス品名が「耐熱ガラス」で、耐熱温度差(例:120℃)が表示されているか

トゥワイスアップでは、液量がストレートの倍になります。ウイスキーと水の合計量が、ボウルの最も膨らんだ位置を超えない量にします。ストレートと同じ量のウイスキーを注ぐとこの位置を超えやすいため、ウイスキーを減らしてから同量の水を合わせます。

水割りは、サントリーがウイスキー1:水2〜2.5を目安に示しています。ウイスキー30mlなら水は60〜75mlです。この液量に氷が加わる分を見込んで、タンブラーの容量を選びます。

お湯割りは、お湯を先に注ぎ、あとからウイスキーを入れます。温かいお湯の上に注いだウイスキーが対流で自然に混ざり、アルコールの刺激が立ちにくくなります。

ハイボールのタンブラーは液量から逆算する

前の章で触れたメーカーの配合は、アサヒビールが45ml+105ml、サントリーが30ml+120mlです。どちらも液体だけで150mlになります。ここに氷が加わり、ソーダを多めにする配合なら液量はさらに増えます。製品の容量表記は縁まで満たした全容量です。液量と同じ容量のグラスではあふれてしまいます。手持ちのグラスや候補のグラスは、次の手順で確かめます。

  1. 自分がふだん作る比率と、1杯に使うウイスキーの量を決め、液量の合計を出す
  2. グラスに氷を縁近くまで詰め、計量カップで水を注ぐ。マドラーを入れてもこぼれない高さまでに入った量を記録する
  3. 記録した量が手順1の液量以上なら、そのグラスで足りる。足りなければ、ひと回り大きいタンブラーを選ぶ

氷を詰めておくと、注いだソーダが冷えたまま保たれます。炭酸を残すためにも、氷が十分に入る容量を優先してください。作るときは次の順で進めます。

  1. タンブラーに氷を縁近くまで詰め、マドラーで回してグラスを冷やし、溶けた水を捨てる
  2. ウイスキーを注ぎ、マドラーでよく混ぜてウイスキーを冷やす
  3. 混ぜて溶け、減った分の氷を足す
  4. ソーダは氷に直接当てず、内壁に沿わせて静かに注ぐ
  5. マドラーで氷を一度持ち上げる程度に混ぜる。それ以上混ぜると炭酸が抜ける

溶けた水が残ったまま注ぐと、配合どおりに注いでも薄まります。

ロックグラスは氷との相性で選ぶ

  • 口径:製氷器で作る丸氷や大きな角氷の幅を測り、口の内径より小さいかを確かめる。底に向かってすぼまる形は、口から入っても底で引っかかり、氷が傾いて浮くことがある
  • すき間:氷と内壁のあいだにすき間があると、ウイスキーが氷の周りを回り、全体が均一に冷える
  • 高さ:氷の上端が縁から出ないか
  • 底の厚さ:厚い底は重心が低く安定する。ガラスの量が多いぶん、先に冷やしておけば冷たさが続く。逆に常温のまま氷を入れると、グラスの熱で氷が早く溶ける。冷凍庫で冷やす場合の注意は、素材の章の「よくある失敗」を参照

最初の1脚と買い足す順番

  • 1脚目はテイスティンググラス:ストレート、数滴の加水、トゥワイスアップ、香りの確認を1脚でこなせる。ロックやハイボールが中心の人にとっても、銘柄の素の香りを知る基準になる。ロックグラスやタンブラーから始めると香りを集められず、加水による変化も追えない
  • 2脚目はふだんの飲み方で決める:割って飲むことが多ければタンブラー、氷で飲むことが多ければロックグラス。どちらも飲むなら、飲む回数の多いほうを先に選ぶ
  • 3脚目以降:同じテイスティンググラスをもう1脚買うと、2本を並べて比べられる。冬にお湯割りを飲むなら、このタイミングで耐熱グラスを加える

バー・酒販店の試飲グラスは基準が変わる

店では、香りの出方に加えて、洗浄・破損・提供量のそろえやすさが選ぶ基準になります。

  • 食洗機対応:メーカーが対応を明示している製品を選ぶ。洗剤やリンス剤のにおいが残ると香りの比較が乱れるため、提供前に水ですすぎ、においがないかを嗅いで確かめる
  • 割れにくさ:脚がなく底の厚い形が扱いやすい。強化ガラスなら、表示で強化の種類(口部強化/全面物理強化など)を確かめる
  • 収納:重ねて収納できるか。重ねたときに口縁どうしが当たらない形か
  • 注ぐ量:ジガーで量るか、目安線のある製品を使う。注ぐ量が違うと液面の上の空間が変わり、香りの比較が成り立たない
  • 型をそろえる:比べるグラスは同じ型で統一する。型が混ざると、香りの差が銘柄によるものか器によるものか区別できない

素材・表示・手入れで失敗しない|強化ガラス・耐熱・クリスタルの見分け方

グラスの素材は、香りの出方よりも割れ方と熱への強さを左右します。見た目が同じ透明なグラスでも、素材によって耐えられる扱いが変わります。購入前に素材ごとの性質を知り、パッケージや本体の表示を確かめてください。

4つの素材の違い

素材透明度・輝き重さ割れにくさ熱への強さ向く使い方
ソーダガラス一般的な透明度。厚みがあると緑や青みを帯びて見えることがある標準標準急な温度変化に弱い普段使いのロック・タンブラー
クリスタルガラス屈折率が高く輝きが強い。薄く引けるので口縁を細くできる鉛を含むものは重い。無鉛クリスタルには軽めの製品もある表面が比較的柔らかく、傷や口縁の欠けが出やすい急な温度変化に弱いテイスティンググラス、贈答
強化ガラスソーダガラスと同程度標準衝撃に強い。全面物理強化品は割れると粒状に細かく砕ける耐熱ガラスではない店での提供、日常使い
耐熱ガラス透明製品による衝撃に強いとは限らない熱による膨張が小さく、温度差に強いお湯割り、ホットウイスキー

鉛やカドミウムの溶出については、食品衛生法でガラス製器具の規格が定められています。

強化ガラスは表示で種類を確かめる

家庭用品品質表示法では、食卓や台所で使う強化ガラスのコップに「強化ガラス製器具」という品名と、強化の種類を表示するよう定めています。あわせて「耐熱ガラスではない旨」と「急激な温度変化を避ける旨」の表示も求めています。種類によって、強い部分と気をつける扱いが違います。

  • 口部強化:口縁だけを強化したもの。胴や底は通常のガラスと同じなので、落としたりぶつけたりすれば割れる前提で扱う
  • 全面物理強化:加熱後に急冷し、表面に圧縮の力を残したもの。深い傷から一気に砕けることがあり、「傷が付くような取扱いを避ける旨」の表示がある。金属のマドラーで内側を強くこすらない
  • 全面イオン強化:表面の成分を薬液で入れ替えて強くしたもの。薄手のグラスに使われる
  • 全面積層強化:性質の違うガラスを重ねて強度を持たせたもの

お湯割りに使う耐熱ガラス製の食器には、品名「耐熱ガラス」と、耐えられる急な温度差を示す「耐熱温度差」が表示されます。お湯割りに使うなら、耐熱温度差120℃と表示された製品が多く出回っています。

よくある失敗と、割れる理由

強化ガラスは耐熱ガラスではありません。割れにくいのは衝撃に対してであり、温度差には通常のガラスと同じく弱いままです。

  • 強化ガラスにお湯を注ぐ:内側だけが急に膨らみ、まだ冷たい外側との間に力がかかって割れる。お湯割りは品名が「耐熱ガラス」の製品で作る
  • 食洗機から出した熱いグラスに氷を入れる:内側が急に縮んで割れる。常温まで冷ましてから使う
  • 冷凍庫で冷やしたグラスに常温の液体を注ぐ:クリスタルも強化ガラスも温度差に弱い。「急激な温度変化を避ける旨」の表示がある製品は冷凍庫に入れず、冷蔵庫で冷やすか、氷を詰めて冷やす

香りを守る手入れの手順

テイスティンググラスは、すぼまった口が香りを集める形です。そのため、残った洗剤や移った匂いも同じように鼻へ届き、香りの評価がずれます。次の順で手入れしてください。

  1. 使い終えたらすぐに水かぬるま湯ですすぐ。糖分や樽由来の成分が乾いて膜になる前に落とす
  2. 洗剤は無香料のものを少量使い、内側をスポンジでなでる。全面物理強化品は研磨剤入りのスポンジを避ける
  3. 洗剤が残らないよう、流水で内側と口縁を念入りにすすぐ
  4. 水切りラックに逆さに置いて自然乾燥させるか、毛羽の出ないグラスタオルやマイクロファイバーの布で内側と外側を磨く。水垢を残さない
  5. 保管は上向きにする。伏せて置くと棚板の匂いがボウルにこもる。上向きだと埃が入りやすいため、扉付きの棚にしまうか、使う前に手順6を必ず行う。コーヒー豆、香辛料、芳香剤のそばには置かない
  6. 使う前に空のグラスを嗅ぎ、匂いや埃があれば水ですすぎ、グラスタオルで水気を取ってから注ぐ

クリスタルのグラスで食洗機対応が明示されていないものは、手洗いにします。洗浄中にグラスどうしが当たると、口縁が欠けやすいためです。

グラスを贈るときの選び方とよくある質問

ウイスキーのイメージ写真

相手の飲み方がわからないときは2脚セット

贈る相手がストレート派かロック派かわからないときは、テイスティンググラスかロックグラスを2脚セットで選ぶと外しにくくなります。2脚あれば、2本のボトルを並べて比べることも、家族や客と同じ型で飲むこともできます。どちらにするかは、相手について分かっていることで決めます。

相手について分かること選ぶグラス理由
シングルモルトを何本も持っているテイスティンググラスストレートも加水も1脚でこなせ、2脚あれば銘柄を比べられる
家飲みで氷を使うことが多いロックグラス大きな氷を入れられる口径なら、ロックにも水割りにも使える
ハイボールしか飲まないタンブラー手持ちの氷とソーダの量に合う容量を選ぶ
何もわからないテイスティンググラスハイボール派にも、銘柄の素の香りを知るための1脚になる

海外の知人や訪日外国人に贈る場合

  • 梱包:1脚ずつ緩衝材で包み、グラスどうしと箱の内壁が触れないようにする。国際配送では外箱との間にもう一層すき間を作る二重箱にする。脚付きは脚の付け根が折れやすいため、脚なしの形のほうが送りやすい
  • 選ぶ意味:相手の国の量販店では手に入りにくい、日本の工房による吹きガラスやカットガラスを選ぶと、日本から贈る理由がはっきりする
  • 食洗機:メーカーが対応を明示しているかを確かめ、相手に伝える。食洗機で洗うのが当たり前の家庭も多いため、未対応なら手洗いを明記する
  • 英語のメモ:素材と扱い方を短く書いて添える

英語のメモは、たとえば次のように書きます。「Material: lead-free crystal / Hand wash only / Not heat-resistant: do not pour hot water / Avoid sudden temperature changes」。素材は購入した製品の表示どおりに書き換えてください。

テイスティンググラスには使い方を一言添える

受け取った人が初日から使えるよう、カードに注ぐ量と加水の手順を書きます。例:「まずシングル(30ml)ほど、液面がボウルのいちばん膨らんだところより下に収まる量を注ぎ、香りを嗅いでから一口。次に常温の水を数滴たらし、香りが変わるのを確かめてください」。ショットグラスのように縁近くまで注がれると、香りがたまる空間がなくなります。

よくある質問

数滴ずつ加水するには、どんな道具を使えばよいですか。

1滴ずつ落とせるスポイト(ピペット)が扱いやすい道具です。グレンケアンもグラスとは別にピペットを出しています。手元にない場合は、ストローを水に差して上端を指でふさぎ、持ち上げてから指を少しずつ緩めると数滴だけ落とせます。水は常温の軟水を別の容器に用意し、水差しからグラスへ直接注がないようにします。

ハイボールを作る前に、タンブラーは冷やしておくべきですか。

冷やしておくと氷が溶けにくく、炭酸も抜けにくくなるので、「飲み方・条件別の使い分け」の章にあるハイボールの作り方の手順1で冷やしてください。冷凍庫を使う場合の注意は、素材の章の「よくある失敗」にまとめています。

ワイングラスで代用できますか。

できます。白ワイン用の小ぶりで口のすぼまった形が、コピタ型に近い働きをします。赤ワイン用の大きなボウルは、少量では液面の上の空間が大きすぎて香りが薄まります。ただし、刺激の強い高度数のボトルでは、かえって嗅ぎやすく感じることがあります。

ハイボールに薄いグラスは向きますか。

向いています。口縁が薄いと液体が唇に直接触れる感覚になり、炭酸の細かさを感じやすくなります。ガラスが少ないぶん冷えるのも早くなります。一方で、氷の衝撃には弱くなります。氷はグラスを傾けて滑らせるように入れ、マドラーは内壁に当てずに回します。

ストレートに添えるチェイサーは、何をどれだけ出せばよいですか。

水を、ウイスキーより多めに用意します。チェイサーは、一口ごとに口の中のアルコールの刺激と前の香味を流し、次の一口を同じ条件で味わうためのものです。香りを追うなら、口の中を刺激する炭酸水より水が向きます。冷やしすぎた水は舌の感覚を鈍らせるため、常温か軽く冷えた程度にします。グラスに加水する水とは別の器で出します。

開栓後のボトルの香りの変化は、グラスで確かめられますか。

確かめられます。条件をそろえることが前提です。開栓直後に、同じ型のグラス、同じ量(シングル30ml)、同じ室温で嗅いだ印象をメモしておきます。その後も一定の間隔で同じ条件で嗅ぎ、メモと比べます。開栓後は、瓶の中の残量が減って空気が増えるほど酸化と揮発が進み、揮発しやすい香りから変わっていきます。残りが少なくなったら小さな瓶に移して空気に触れる量を減らし、直射日光と温度変化を避けて立てて保管します。

試飲会では、何本をどの順に並べればよいですか。

嗅覚は同じ刺激に慣れて鈍るため、本数はメモを取りながら集中できる範囲に絞り、1本ごとに水を口に含んで間を置きます。順番は、香りの穏やかなものから強いものへ並べるのが基本です。度数の低いものから高いもの、ノンピートからピーテッドの順にします。ピートの強いボトルを先に出すと、フェノール類の香りが鼻と口に残り、後に出す果実香を拾えなくなります。グラスの型と注ぐ量は全員でそろえます。量の基準は冒頭の章のとおりです。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。