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ウイスキーグラスの選び方とおすすめ|飲み方別に容量と形で比較

ウイスキーグラスはストレート・ロック・ハイボールの飲み方で選ぶのが基本。香りをためる180〜200mlのテイスティンググラス、氷が収まる280ml以上のロックグラス、300ml以上のタンブラーなど、容量と形の目安を購入例と価格つきで比較します。

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まず飲み方で決める:ストレート・ロック・ハイボール別のグラスの種類と役割

グラスは銘柄より先に、どう飲むかで決めます。最初に、飲み方ごとに選ぶ形、確認する寸法、購入例を示します。価格は後の比較表と同じ時点の表示です。

1個目に買うグラスの決め方

  • ストレート(銘柄ごとの香りの違いを確かめたい人):膨らんだボウルの上で口がすぼまるテイスティンググラスか、飲み口が緩やかに開くチューリップ型を選びます。寸法は、30〜60mlを注いでも上部に空間が残る180〜200ml前後かを確認します。購入例はグレンケアン 標準グラス(1個2,310円)です。ロックや割り方の検討は、このグラスでストレートの香りを確認してからで十分です
  • ロックが中心の人:背が低く口が広いロックグラスを選びます。容量は280ml以上を目安にし、使う氷の寸法がグラスの内径に収まるかも確認します。購入例は東洋佐々木ガラス 薄づくり ロックグラスセット(340ml、2個組1,100円)、リーデル ロック・グラス(283ml、2個組6,050円)です
  • 晩酌の大半がハイボールの人:300ml以上の背の高いタンブラーを先に選び、テイスティンググラスは後から買い足します。購入例は薄づくり タンブラーセット(360ml、2個組990円)、リーデル ハイボール・グラス(310ml、2個組6,050円)です
  • 店で使う人:洗浄方法を先に確認します(洗浄方法は後述)

グラスの種類と役割

バーの標準量はシングル30ml、ダブル60mlです。ストレートではこの少量の液体の上にできる空間が、香りをためる「部屋」になります。ロックやハイボールでは、グラスの中身の大半を氷と割り材が占めます。同じ30mlでも、飲み方によってグラスに求められる仕事がまったく違います。

種類形の特徴向く飲み方容量の例(メーカー表示)
テイスティンググラス/コピータ型膨らんだボウルと、すぼまった口ストレート、少量の加水、ノージンググレンケアン 標準グラス 200ml(本国公式)
チューリップ型ボウルが膨らみ、飲み口が緩やかに外へ開くストレート、トゥワイスアップリーデル「ヴィノム シングル・モルト・ウイスキー」189ml
ストレート提供用の小型グラス背が低く小ぶりストレートの提供リーデル「ニート・グラス」174ml
ロックグラス(オールドファッションド)背が低く口が広い。底を厚くして安定させた製品が多いオン・ザ・ロック、ミストリーデル「ロック・グラス」283ml、薄づくりロック340ml
タンブラー背が高く、上部が開いた筒形ハイボール、水割りリーデル「ハイボール・グラス」310ml、薄づくりタンブラー360ml
ショットグラス小容量。形や容量には幅がある少量のストレート(香りの比較には不向き)—

ストレート:液面の上の空間で香りを取る

サントリーは、ストレートで香りを楽しむグラスとして、ボウルに膨らみがあり、飲み口が緩やかに開く形を勧めています。選ぶ基準は、180ml前後のグラスに30mlを注いだとき、上部に空間が残る形であることです(香りが集まる仕組みは次章)。

**ショットグラスは、香りを比べる目的には向きません。**液面より上の空間が少ない製品が多く、香りを比べる目的では、十分な空間のあるノージング用グラスのほうが扱いやすいからです。

ロック・ハイボール:氷と割り材の体積で容量を決める

ロックでは、溶けにくい大きな氷を入れても、その上にダブル60mlを注げる余裕が必要です。容量の目安は280〜340ml程度ですが、大きな氷が入るかどうかは容量だけでは分かりません。グラスの内径と氷の寸法も確かめます(詳しくは次章)。底が厚い製品は卓上で安定し、ステアしても倒れにくくなります。

ハイボールには、サントリーが勧める背が高く上部が開いたタンブラーの中から、容量300ml以上のものを選びます(理由と容量の計算は次章)。

なぜグラスで香りと味が変わるのか:ボウル、すぼまり、リム、容量の仕組み

ウイスキーのイメージ写真

ノージングの仕組み:ボウルで揮発させ、すぼまりで集める

ノージングとは、口に含む前に香りを嗅いで評価することです。グラスの形は、この工程を二段階で支えています。下半分の膨らんだボウルは、香気成分を揮発させる部分です。香気成分は、液体と空気が接する面から揮発します。液面の広さに加え、グラスを回したときに内壁へ広がる液膜も揮発の面になります。こうして、エステル由来の果実香や、樽熟成で生まれるバニリン系の甘い香りが空間にたまります。上半分のすぼまりは、立ち上った香気を拡散させずに鼻先へ集める部分です。テイスティンググラスの口が狭いのはこのためです。

ただし、液面から最も多く揮発するのはエタノールです。カスクストレングス(樽出しの度数のまま加水せずに瓶詰めしたもの)のように度数が高い原酒では、すぼまりの強いグラスがエタノールまで濃縮します。その刺激が先に鼻を刺し、果実香や樽香を感じ取れなくなることがあります。嗅ぎ始めは鼻を縁から少し離し、刺激の強さを確かめてから近づけるのが基本です。刺激が強いときは、次の順で対処します。

  • まず鼻をグラスから離し、口を軽く開けて嗅ぐ
  • それでも刺す場合は、飲み口が緩やかに開くチューリップ型に替えて香気の濃縮を弱める
  • 度数そのものを下げたい場合は、次に示す方法で水の量をmlで量って加水する

リム:唇の当たりと一口の量

リム(飲み口)は、唇への当たりと、飲みやすい一口の量を確かめる部分です。厚いリムは唇に段差として当たります。薄いリムは唇への当たりが小さく、液体の流れを妨げにくい形です。外へ反ったリムか、内へすぼまったリムかによっても、傾けたときに口へ入る量の感覚が変わります。

ただし、液体が舌のどこに触れ、どう感じられるかは、グラスの傾け方や一口の量で変わります。リムの形だけで決まるものではありません。なお、「甘味は舌先、苦味は奥」という舌の味覚地図は誤りで、味蕾は舌全体で各味を感じます。香味の印象の違いは、同じウイスキーを同じ量だけ注ぎ、グラスを替えて飲み比べて判断してください。

加水の手順:数滴で香りの変化を試し、度数を下げるならmlで量る

加水で度数が下がると、液面から立つ香気成分の割合が変わります。強まる成分も弱まる成分もあり、どこで香りが最も開くかは原酒によって違います。そのため、少しずつ足して確かめます。

  1. 常温の軟水を用意し、スポイトかストローで1滴ずつ落とせるようにする
  2. ボウル型のグラスに30mlを注ぎ、加水前の香りと味を確認する
  3. 水を数滴加えて軽く回し、30秒ほど置いてから嗅ぐ
  4. 3を繰り返し、足した量を記録する。止めどきの判断は、後述の高度数の節を参照する

数滴の加水は、香りの変化を試すための手順です。30mlに1〜2滴を加えても、度数はほとんど下がりません。飲みやすい度数まで下げたい場合は、水の量をmlで量ります。たとえば60%の原酒30mlを約40%にするには、概算で15mlの水が要ります(30ml×60%÷40%=45mlから、元の30mlを引いた量)。水とエタノールは混ぜると体積がわずかに縮むため、この数字は目安として扱います。

ボウル型のグラスは液面の上の空間が毎回ほぼ同じ形で残るため、加水の前後で香りを同じ条件で比べられます。また、冷却濾過をしていない原酒は、加水や冷却によって白く濁ることがあります。これは脂肪酸エステルなどが析出したもので、品質の劣化ではありません。

ロック:氷を出し入れできる口径と、冷えの影響

ロックグラスに必要なのは、容量だけではありません。溶けにくい大きな氷をアイストングで入れられ、氷とグラスの壁の間にバースプーンを差し込んでステアできる口径が要ります。容量が足りていても、内径が氷の寸法に近いと、氷を入れにくく、ステアもできません。購入前に、使う氷の寸法とグラスの内径を比べます。底に向かってすぼまる形なら、底近くの径も確かめます。そのうえで、氷を入れた状態でダブル60mlを注ぎ、飲み口までの余白が残るかを確認します。

液温が下がると香気成分の揮発量が減るため、ロックでは香りの立ち方が穏やかになります。代わりに、冷たさによる口当たりの締まりと、氷が溶けて徐々に加水されていく味の変化を楽しむ飲み方になります。

ハイボール:容量の逆算と、背の高い形が向く理由

ウイスキーとソーダの目安は1対3〜4です。30mlのウイスキーなら、液体は1対3で120ml、1対4で150mlになります。氷を縁近くまで詰めると、液体は氷の隙間を満たしながら上がっていきます。1対4(液体150ml)で氷を詰めるなら、300ml以上のタンブラーが目安です。ただし、氷が占める体積は大きさ、形、個数で変わります。普段使う氷を詰めた状態で水を注ぎ、必要な液量が入って、飲み口まで余白が残るかを一度確かめておくと確実です。

背の高い形が向く理由は、次の2つです。

  • 容量:口径を広げずに300ml以上を確保できるため、氷を詰めてもソーダの量を削らずに済む
  • 持ちやすさ:胴が細いので片手で握りやすく、氷とソーダで重くなっても安定して持てる

炭酸の抜け方は、グラスの形だけでなく、注ぐときの勢い、氷やガラス面での発泡、温度、混ぜ方でも変わります。実際の手順は次の3点に絞ります。

  • 冷えたソーダを使う
  • 氷に直接当てないよう、静かに注ぐ
  • バースプーンで縦に1回持ち上げる程度にとどめ、混ぜすぎない

おすすめグラスを容量と価格で比較:グレンケアン、リーデル、ナハトマン、東洋佐々木ガラス

前の章で決めた飲み方に合わせて、4ブランドの現行品を容量と価格で並べます。価格と容量は2026年10月時点のメーカー公式販売ページ、メーカー資料、国内販売店の表示によるもので、改定されることがあります。購入前に販売ページで最新の表示を確認してください。購入額は販売単位の価格で示し、1脚あたりの額は比較用の参考値です。

商品(型番)容量(表示)販売単位と税込価格(購入額)1脚あたり(比較用)主な用途
リーデル ヴィノム シングル・モルト・ウイスキー(6416/80)189ml2個 13,200円6,600円ストレート、トゥワイスアップ
リーデル ニート・グラス(6417/01)174ml2個 6,050円3,025円ストレートの提供
リーデル ロック・グラス(6417/02)283ml2個 6,050円3,025円ロック
リーデル ハイボール・グラス(6417/04)310ml2個 6,050円3,025円ハイボール
グレンケアン 標準グラス本国公式200ml/国内販売店190ml1個 2,310円(国内販売店)2,310円ストレート、加水の比較
ナハトマン ノブレス タンブラー(89207)295ml4個 7,700円1,925円ロック、1対3のハイボール
東洋佐々木ガラス 薄づくり ロックグラスセット(G101-T291)340ml2個 1,100円550円ロック(口当たり優先の家庭用)
東洋佐々木ガラス 薄づくり タンブラーセット(G101-T292)360ml2個 990円495円ハイボール、水割り

グレンケアン:容量の表示は2通りある

グレンケアンの標準グラスは、本国公式の表示では容量200mlです。国内販売店には190ml、税込2,310円と表示されています。どちらかに統一された値はないため、両方の表示があると理解しておくのが正確です。どちらの表示でも、30〜60mlを注いだときに液面の上に十分な空間が残る点は変わりません。素材は無鉛クリスタルです。グレンケアン社は、このグラスで2006年にQueen’s Award、2025年にKing’s Awardを、いずれもイノベーション部門で受賞したと公表しています。1脚から買えて価格も抑えられているため、銘柄の比較や加水の検証に使う「基準のグラス」として最初の1脚に向きます。

リーデルとナハトマン:型番で用途が分かれる

リーデルの6417系は、ニート、ロック、ハイボールの3型がいずれも2個組6,050円です。飲み方ごとに同じシリーズで揃えられます。このうちニート・グラスは背の低いストレート提供用で、口のすぼまったノージンググラスではありません。香りを比べる用途なら、グレンケアンのように口がすぼまるグラスを使います。ヴィノム 6416/80は2個組13,200円と高価です。ただし、ニート・グラスの174mlに対して189mlあり、飲み口が開くチューリップ型なので、カスクストレングスの刺激を和らげたいときの持ち替え先になります。古い価格表には現行と異なる数字が残っているため、価格は公式販売ページの表示で判断してください。ナハトマン ノブレス タンブラーは295mlで、ロックに使えます。ハイボールでも、ソーダを1対3に抑えれば(液体120ml)収まる容量です。4個組7,700円(1脚あたり1,925円)なので、人数分を揃える家庭や店に向きます。なお、ノブレス ゴールド ウイスキータンブラー104025は公式で廃盤品と表示されています。おすすめからは外しており、店頭に残っていても在庫限りです。

薄づくり:1脚500円台の割り物用

東洋佐々木ガラスの薄づくりは、2025年10月のメーカー資料による価格です。ロックが340ml、タンブラーが360mlで、前の章で示したロックとハイボールの容量の目安を、1脚あたり550円と495円で満たします。割れても買い直しやすいため、日常のハイボール用や店の回転用に向きます。ロックグラスは、口当たりを優先する家庭用と考えてください。大きな氷は落とし入れず、グラスの内側に沿わせて滑らせて入れます。洗浄方法は後述します。

予算別:最初の1脚と買い足す1脚

  • 合計3,500円以内:最初にグレンケアン(1個2,310円)を買い、ストレートの香りを確かめます。買い足しは、飲み方に合わせて薄づくりのタンブラー(2個組990円)かロック(2個組1,100円)です。合計は3,300〜3,410円です
  • 合計1万2,000円前後:最初にリーデル ニート・グラス(2個組6,050円)を選び、同じ6417系のハイボールかロック(2個組6,050円)を1組買い足すと、合計12,100円で口当たりが揃います
  • ハイボール中心で予算を抑える:最初は薄づくりタンブラー(2個組990円)、買い足しにグレンケアン(1個2,310円)を選び、ストレート用を1脚だけ持ちます。合計は3,300円です
  • 香りの比較を突き詰める:最初にヴィノム(2個組13,200円)、買い足しにグレンケアン(1個2,310円)を選びます。開いた口とすぼまった口で、同じ原酒の香りを比べられます
  • 店で人数分を揃える:ロックとハイボールの兼用にノブレス タンブラー(4個組7,700円)、ストレート用にグレンケアンを用意し、補充しやすい現行品で揃えます

銘柄のタイプ別に合わせる:ピート、シェリー樽、高度数、バーボンでグラスをどう変えるか

ウイスキーのイメージ写真

飲み方でグラスの大枠を決めたら、次は銘柄の香りの性質に合わせて微調整します。香りがどの工程で生まれ、どれだけ揮発しやすいかによって、合うグラスと注いでからの扱いが変わります。

銘柄のタイプ例合うグラス扱い方の要点
ピートの強いものアードベッグ 10年、カリラ 12年テイスティンググラス距離を取って嗅ぎ、少量の加水で煙の下を探る
シェリー樽熟成グレンドロナック 12年膨らんだボウルのチューリップ型時間を置いて香りの変化を試す
高度数グレンファークラス 105口が開き気味のグラス数滴ずつ加水し、香りが開く点で止める
バーボンウッドフォードリザーブ飲み方による(ストレートならテイスティンググラス、ロックなら厚底のロックグラス)ロックでは大きい氷で溶ける速さを抑える
ハイボール向きカティサーク300ml以上のタンブラー容量と比率を優先する

ピート:煙の香りの下にある果実と潮を探る

スモーキーさは、麦芽を乾燥させる工程でピート(泥炭)を焚き、その煙に含まれるフェノール類を麦芽に吸着させることで生まれます。ピートの強さは麦芽のフェノール値(ppm)で示します。ただし、これは麦芽の値で、製品に残るのはその一部です。フェノール類は、蒸溜と熟成の過程で大きく減ります。重いフェノール類は蒸溜の後半に多く出るため、製品に使うミドルカット(ハートとも呼ぶ)から、再蒸溜に回すフェインツ(後留)への切り替えを遅らせるほど、製品に残ります。同じフェノール値の麦芽を使っても、蒸溜所ごとに製品の煙の強さが違うのはこのためです。アードベッグ 10年は煙と薬品的な香りが太く、カリラ 12年は煙が軽めで柑橘や潮の香りが前に出ます。すぼまったテイスティンググラスでは、どちらも煙が鼻先に集まり、その下の要素が隠れがちです。次の順で嗅ぎ分けます。

  • 注いだ直後は、煙の強さだけを先に確認する
  • 徐々に近づけ、煙が弱まったところで果実や潮の香りを探す
  • 少量ずつ加水して変化を確かめる。香りの変化や必要な水量は銘柄によって異なる

シェリー樽:膨らんだボウルで時間を味方にする

スコッチの熟成に使うシェリー樽の多くは、ボデガでシェリーの熟成に長年使われた樽ではありません。樽工房でシェリーを一定期間詰めて木に染み込ませた「シーズニング樽」が主流です。シェリー樽由来の香りは、ひとつの性質にまとめられません。樽材、シーズニングに使ったシェリーの種類と期間、ファーストフィル(ウイスキーの熟成に初めて使う樽)かリフィル(再使用の樽)か、さらにどの原酒を組み合わせるかで変わります。グレンドロナック 12年は、メーカーによれば、ペドロ・ヒメネスとオロロソのシェリー樽で熟成させた原酒で構成されています。こうした銘柄は、膨らんだボウルのグラスに注ぎ、時間を置いて嗅ぎ直すと、香りの変化を試せます。どんな香りが現れるか、どれだけ置けば変わるかは銘柄やボトルによって違います。5分後、15分後のように間隔を決めて記録しておくと比べやすくなります。すぼまりの強いグラスで注いですぐ嗅ぐと、エタノールの刺激が先に来て、変化を取り逃しがちです。

高度数:加水を止める点の見極め方

グレンファークラス 105の名は英国式のプルーフ表記105(約60%)に由来し、エタノールの刺激が先に立ちます。前の章で触れたとおり、すぼまりの弱いチューリップ型に持ち替えます。まず数滴ずつ加えて香りの変化を試し、度数を下げたい場合は、前の章で示したように水をmlで量って少量ずつ足します。止めどきは、次の変化で判断します。

  • 香り:鼻を刺す熱さが引き、果実や樽の香りが個別に分かれて感じられる
  • 口当たり:甘さが前に出て、舌に油分のような厚みが残っている
  • 止める合図:余韻が急に短くなる、液体が水っぽく軽くなる。この1つ手前の加水量が適量

バーボン:飲み方を先に決め、グラスを合わせる

バーボンは、米国の規則で、内側を焦がした(チャー)新しいオーク樽での熟成が定められています。焦げた層の下で熱を受けた木材から、バニリンなどの甘い香りの成分が溶け出すのは、この製法によるものです。ただし、グラスは原酒の区分ではなく、飲み方で決めます。ウッドフォードリザーブのような銘柄でも、ストレートで香りを比べるならノージング用のテイスティンググラス、ロックなら大きな氷が入るロックグラスです。冷やしたときの甘さの感じ方は好みが分かれるため、ストレートとロックを同じ量で飲み比べて決めてください。ロックグラスを厚底にすれば、卓上で安定し、氷を入れる衝撃にも強くなります。大きい氷は体積に対して表面積が小さいぶん、溶けて薄まる速さを抑えます。

ハイボール用:グラスの形より容量と比率

カティサークのようにライトなブレンデッドを割る場合、香りを集める形を気にする必要はほぼありません。前の章で示した比率で作れる300ml以上のタンブラーを選べば十分です。

飲み比べはグラスを揃えないと成立しない

同じ銘柄のロット差や、ボトリング違い、年数違いを比べるときは、同じ形のグラスを並べるのが前提です。グラスが違うと、香りの差が原酒によるものかグラスによるものか切り分けられません。注ぐ量、注いでから嗅ぐまでの時間、液温も揃えます。ブランド名の分かる瓶は伏せ、グラスの底にラベルを貼っておくと、先入観なく評価できます。

素材・手入れ・贈り物の判断基準と、よくある失敗

素材:ソーダガラスとクリスタルガラスの違い

ウイスキーグラスの素材は、主にソーダガラスとクリスタルガラスに分かれます。ソーダガラスは窓や瓶にも使われる一般的なガラスです。クリスタルガラスは、鉛や、無鉛の場合はバリウム・亜鉛・カリウムなどの酸化物を加えて、屈折率と加工性を高めたガラスです。グレンケアンの標準グラスは無鉛クリスタル製です。

項目ソーダガラスクリスタルガラス
割れにくさ厚手に作れば日常使いに強い。熱湯から氷水のような急な温度差には弱い素材より薄さで決まる。薄く引いたリムは欠けやすい
重さ軽め同じ厚みなら重い。鉛を含むものほど重い
透明度断面がわずかに緑がかることがある屈折率が高く、液色の輝きが出やすい
価格安い高い
向く場面ハイボール、店の回転用ストレートでの香りと色の確認、贈り物

鉛クリスタルのデキャンタにウイスキーを長期間入れておくと、鉛が溶け出すことが知られています。長期保管には使わないでください。短時間の使用でも鉛の溶出はゼロではなく、量は製品や飲料、使用条件によって変わります。日常使いや贈り物では、無鉛の製品を選ぶこともできます。

手入れ:食洗機の可否とグレンケアンの洗い方

食洗機を使えるかどうかは、製品ごとの表示で判断します。東洋佐々木ガラスは、食洗機の使用を「家庭用食器洗い乾燥機OK」と表示した製品に限っています。グレンケアンの標準グラスは、本国公式で食洗機対応とされています。ただし、対応品でもリンス剤が膜状に残ると、ノージングのときに香りへ混ざることがあります。香りを評価する用途なら、次の手洗いが確実です。

  1. 使い終わったらすぐにぬるま湯ですすぎ、乾いて残った糖分や樽由来の成分を落とす
  2. 無香料の中性洗剤を少量だけ使い、柔らかいスポンジで内側を洗う
  3. 洗剤の泡が見えなくなってからも、2〜3回すすぐ
  4. 水切りかごで自然乾燥させ、最後に糸くずの出ないマイクロファイバーで拭く
  5. 次に使う前に空のグラスを嗅ぎ、洗剤や棚の匂いがしないことを確かめる

よくある失敗とその理由

  • ハイボールをロックグラスで作る:氷を詰めると、1対3〜4の比率どおりにソーダを注げる容量が残らない。ソーダを減らすと濃くなり、氷を減らすとすぐぬるくなる
  • 薄いグラスを乱暴に扱う:氷を落とし入れる、バースプーンを壁に当てる、熱湯で洗った直後に氷を入れる。こうした扱いは、リムの欠けやひびにつながる
  • 洗剤や布の繊維を残す:洗剤の香料は、果実香やフローラル系の香りと混ざって判別を誤らせる。繊維は液面に浮き、色の確認を邪魔する

贈り物:外さないための確認項目

  • 飲み方:相手の主な飲み方が分からないときは、テイスティンググラスを選ぶ。予算に余裕があればヴィノム。ハイボール専用のタンブラーは用途が限られる
  • 現行品かどうか:公式ページで廃盤品と表示されたものは、割れたときに同じ形を買い足せない
  • 個数:夫婦や来客と使う相手には2個組、家族や人数分を揃える相手には4個組
  • 箱:化粧箱付きか、簡易包装か。ギフト箱が別売りの製品もある

店で使う:単価、破損率、提供量で決める

店では、1脚の単価を、割れるまでに提供できる回数で割った額が実質の原価になります。高いグラスでも割れにくければ1杯あたりの負担は小さくなり、安いグラスでも頻繁に欠ければ補充の手間がかさみます。導入前に、次の3点を確認します。

  • 破損率:1か月の破損数を記録し、補充額を提供杯数で割る。薄いグラスは、洗い場とカウンターで破損数を分けて記録すると原因が分かる
  • 提供量と容量:ストレートはシングルでもダブルでも、180〜200ml前後のグラスなら液面の上に空間が残る。ロックのダブルは、大きな氷を入れて280ml以上が目安
  • 補充性:同じ型番を継続して買えるか。現行品で揃えると、欠けた分だけを補充でき、卓上の見た目もそろう

よくある質問

ウイスキーのイメージ写真

ハイボールのグラスは、冷凍庫で冷やしておくべきですか?

冷凍庫で冷やさなくても、氷で十分に冷やせます。グラスに氷を詰めてバースプーンで回し、溶けた水を捨てます。続けてウイスキーを注ぎ、ステアしてウイスキーも冷やします。減った分の氷を足してから、冷えたソーダを静かに注ぎます。

ストレートのとき、グラスはボウルを手で包んで持つべきですか?

基本は底の近くを持ち、液温を変えないようにします。手の熱で温まると香気成分がよく揮発しますが、最も揮発しやすいエタノールの刺激も強まるためです。冷えて香りが閉じている原酒の香りを早く引き出したいときだけ、ボウルを短く包んで変化を確かめます。飲み比べでは、持ち方も揃えます。

チェイサーの水は、どんなグラスでどう使えばよいですか?

ウイスキーとは別のタンブラーなどに、常温か少し冷たい程度の水を用意します。一口ごとに飲んで口に残ったアルコールの熱と香味を流すと、次の一口や次の銘柄を同じ条件で味わえます。氷水のように冷たすぎる水は舌を冷やし、香味を感じにくくします。加水用と同じ軟水を使えば、用意する水を1種類にまとめられます。

飲み終えた空のグラスを嗅ぐと、何が分かりますか?

空のグラスでは、揮発しやすいエタノールや軽い香りが先に抜け、壁に残った重い香気成分を感じ取れます。バーボンのバニリン系の甘さや、シェリー樽由来のドライフルーツやカカオなど、樽熟成の要素を確かめるのに向いています。膨らんだボウルのグラスは壁の面積が広く、残り香を拾いやすい形です。

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。