余市ウイスキーの味と特徴 定番と10年の違いを製法から解説
余市の味はピートの香ばしさと果実香・樽の甘さの重なり。定番と10年の公式テイスティングノートを比べ、果実香とピート感の違い、石炭直火蒸溜やポットスチルが香味に与える影響まで整理します。
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余市の味の特徴は「ピートの香ばしさ」と「果実香・樽の甘さ」の重なり。現行2本の香味を整理
余市の味の核は、ピート(泥炭)に由来するスモーキーさと、果実香や樽由来の甘さが同時に感じられることです。メーカーの通常の商品一覧に掲載される全国向けの標準的なシングルモルト(単一の蒸溜所で造ったモルト原酒だけを瓶詰めしたウイスキー)は、年数表記のない定番「シングルモルト余市」と「シングルモルト余市10年」の2本です。蒸溜所限定のシングルモルトなどは、この記事の比較対象に含めません。
定番「シングルモルト余市」:果実と樽の香りに、ピートと香ばしさが重なる
- ノージング(香り):メーカーは「やわらかな樽熟成香と豊かな果実香の調和」と説明しています。香りの段階では、ピートより果実と樽の香りが主役です。
- パレット(口に含んだ味):「しっかりしたピート感と香ばしさ」。ここで煙の要素が前に出てきます。
- フィニッシュ(余韻):「オークの甘さとスモーキーさ」。樽の甘さと煙が長く残ります。
ピート感は、麦芽を乾燥させる際に焚くピートの煙のフェノール類が麦芽に移ることで生まれます。ニッカはヘビーピートタイプの原酒を余市の伝統の一つとしています。一方、よく知られる石炭直火蒸溜は、蒸溜釜を温める熱源です。スモーキーさの出どころではありません。直火では釜底が局所的に高温になるため、香ばしさや重さにつながる要素と考えられています。さらに余市のポットスチルは、ラインアームが下向きのストレートヘッド型です。下向きのラインアームとストレートヘッドは還流を抑え、香味成分を多く含む力強い原酒づくりに寄与します。なお、麦芽のフェノール値(ppm)、樽の構成、冷却濾過や着色の有無はメーカーから公表されていません。ppmの数字を挙げた説明を見かけても、公式値としては扱えません。
「余市10年」:熟した果実香と、力強いピート
メーカーは10年の香味を、熟したバナナのような香り、洋梨のような果実味、燻製を思わせるピート感と説明しています。あわせて、定番に対して「ピートの力強さを高めた」1本と位置づけています。熟した果実香に加え、力強いピートと長い余韻が特徴です。両者の公式テイスティングノートを並べると、違いは次の2点に整理できます。
- 果実香の表現:定番は樽香と調和した「豊かな果実香」で、特定の果物は挙げられていません。10年はバナナと洋梨という熟した果実が、具体的に言葉にされています。
- ピートの表現:定番は「しっかりしたピート感と香ばしさ」、10年は「燻製を思わせるピート感」です。10年もピートが控えめな1本ではなく、メーカーは定番よりピートの力強さを高めたと説明しています。グラスの中で煙をどの程度強く感じるかは、飲み手や飲み方によって変わります。
10年は、定番を長く熟成させただけの上位版と捉えるより、果実香とピートの表現が異なる1本として比べるほうが実用的です。樽熟成香と果実香の調和に、香ばしさを伴うピートが重なる味を軸にするなら定番、熟した果実香と力強いピートの両方を求めるなら10年が判断の目安です。飲み比べるときは、チューリップ型のグラスに同量を注ぎます。まずストレートで確かめ、次に数滴加水して、果実香とピートの開き方の差を見ると違いがつかみやすくなります。
現行2本のスペック
| 項目 | シングルモルト余市 | シングルモルト余市10年 |
|---|---|---|
| 熟成年数表記 | なし | 10年 |
| 容量 | 700ml | 700ml |
| アルコール分 | 45% | 45% |
| 参考小売価格(税別) | 7,000円 | 12,000円 |
| 実勢価格 | ||
| 販売形態 | 定番品 | 数量限定 |
| 香味の軸 | 樽熟成香と果実香、しっかりしたピートと香ばしさ | 熟したバナナ・洋梨、燻製を思わせる力強いピート |
10年は2022年7月26日に北海道で先行発売され、同年11月15日に全国で数量限定発売されました。2本とも2025年10月から順次パッケージが刷新されたため、店頭では新旧のラベルが並ぶことがあります。どちらも日本洋酒酒造組合のジャパニーズウイスキー表示基準に適合すると、メーカーが明記しています。
旧「余市20年」などの香味は、現行品の味ではない
「余市12年・15年・20年」は2015年8月末に販売を終了しています。古いテイスティングノートや二次流通の商品説明で目にする20年などの香味は、現在買える余市の味ではありません。贈答や店頭で説明するときは、現行2本の香味を使ってください。注文や購入の前には、ラベルの年数表記を確認すると取り違えを防げます。
なぜ余市はスモーキーで重厚なのか。ピート麦芽・石炭直火・ストレートヘッドの役割を分けて考える

余市の「スモーキー」と「重厚」は、別々の工程から生まれます。煙の香りは主に原料の麦芽から来ます。厚みやオイリーさは、蒸溜の設備と方法から来ます。この二つを分けて押さえておくと、定番品と10年の違いも、店頭や注文時の説明もすっきり整理できます。
煙香の出どころはヘビーピート麦芽
発芽させた大麦をピート(泥炭)を焚いた煙で乾燥させると、煙に含まれるフェノール類が麦芽に付きます。この成分は糖化・発酵・蒸溜を経ても原酒に残り、燻製や焚き火を思わせる香りになります。ニッカは、ヘビーピートタイプのモルト原酒を余市蒸溜所の伝統の一つと説明しています。
注意したいのは、麦芽のフェノール値(ppm)がそのまま原酒の数値にはならない点です。フェノール類は一括りにできる成分ではなく、種類ごとに揮発のしやすさや水・エタノールとのなじみ方が異なり、蒸溜中の留出の仕方も一様ではありません。どこからどこまでを製品用の中留(ミドルカット)として採るかという蒸溜時の分画に加え、熟成中の変化や、複数の原酒を合わせるブレンドも、最終的な香味に関わります。麦芽の数値だけでスモーキーさの強弱を比べられないのはこのためです。なお、余市のミドルカットの位置は公表されていません。
石炭直火は「熱源」であって煙香の元ではない
余市では、ポットスチルを石炭の直火で加熱し、もろみを2回蒸溜します。石炭の煙が原酒に触れることはなく、石炭直火はスモーキーさの原因ではありません。直火では釜の底が局所的に高温になりやすく、一般に香ばしさや重いボディにつながる要因として語られます。ただし、メーカーはその効果を数値で示していません。どの程度味に効いているかは言い切れない点に注意が必要です。海外の知人に説明するときも、英語の coal-fired を「石炭で燻した」という意味で伝えないようにしましょう。
ストレートヘッドと下向きラインアームが還流を抑える
余市のポットスチルは、首がまっすぐ立ち上がるストレートヘッド型です。蒸気を冷却器へ送る管であるラインアームは、下向きに付いています。首にくびれや膨らみを持つ型と比べると、蒸気が首の途中で冷えて釜へ戻る還流が起こりにくい構造です。さらにラインアームが下向きなので、途中で液化した成分も釜へ戻らず冷却器側へ流れやすくなります。下向きのラインアームとストレートヘッドは還流を抑え、香味成分を多く含む力強い原酒づくりに寄与します。ただし還流の程度は、形状だけでなく、加熱の強さ、蒸気の流れ、冷却の条件、留出液をどこからどこまで採るかにも左右されます。実際にどの成分がどれだけ留出するか、口当たりのオイリーさがどこまで形状に由来するかは、形状だけでは確定できません。2025年の業界資料では、余市のポットスチルは6基とされています。
新樽でも重厚さを失わない原酒
ニッカは、余市モルトには新樽で熟成しても重厚さを失わない原酒があると説明しています。新樽は木の香りやタンニンを強く与えるため、軽い酒質では樽の印象に覆われがちです。ただし、これは余市に蓄えられている原酒の一例です。定番品にこうした新樽熟成の原酒がどの程度使われているかは公表されていません。定番品で「やわらかな樽熟成香」と「しっかりしたピート感」がともに語られる理由を、この原酒だけに求めることはできません。
メーカーが公表していないこと
次の項目は、メーカーの公表資料では確認できません。推測による数値や比率は載せません。
- 定番品の麦芽のピート値(フェノール値ppm)
- 使用樽の構成(ファーストフィル/リフィル、シェリー樽の比率など)
- 冷却濾過の有無
- 着色の有無
「余市は○ppm」「シェリー樽○割」といった情報を見かけても、出典がメーカーでなければ参考程度にとどめるのが安全です。販売や提供の場で説明するなら、確認できる事実に絞ると誤りがありません。確認できる事実とは、ヘビーピート、石炭直火、ストレートヘッド、2回蒸溜の四つです。
| 要素 | 味への役割 | 説明するときの注意 |
|---|---|---|
| ヘビーピート麦芽 | スモーキーさの主な出どころ(フェノール類) | ピート値ppmは未公表 |
| 石炭直火 | 蒸溜釜の熱源。香ばしさや重いボディの一因と語られる | 煙香の元ではない。効果の大きさは数値で示されていない |
| ストレートヘッド・下向きラインアーム | 還流を抑え、香味成分を多く含む力強い原酒づくりに寄与 | 還流は加熱・冷却・カット範囲にも左右される。口当たりを形状だけで説明しない |
| 新樽でも重厚さを失わない原酒 | 余市にある原酒の一例としてメーカーが紹介 | 定番品での使用の程度や樽構成は未公表 |
なお、蒸溜所の正式名称は2026年4月1日に「北海道 余市蒸溜所」へ変わりました。
「ほのかなスモーキー」が分からない、「まずい」と感じる理由。アイラモルトとの違いで確かめる
余市の煙は、アイラ系のようにヨード香(薬品や海藻を思わせる香り)で押してくるタイプではありません。メーカーは定番品を「しっかりしたピート感と香ばしさ」、余韻を「オークの甘さとスモーキー」と説明しています。10年については、熟したバナナや洋梨の果実味とともに「燻製を思わせるピート感」を挙げています。煙が果実香や樽の甘さと重なって感じられるため、焚き火のような煙を探す人は「スモーキーが分からない」と感じやすくなります。反対に、ピートに慣れていない人は同じ香りを焦げや苦みとして拾います。どちらも、同じ香味を別の角度から受け取った結果です。
煙を感じ取る3つの手順
- グラスはチューリップ型を使い、15〜20mlほど注ぎます。鼻はグラスの縁に入れず、指2本分ほど離して、軽く口を開けたまま香りを取ります。近づけすぎるとアルコールが鼻を刺し、果実香もピートも埋もれます。
- 少量を口に含んで舌全体に広げ、飲み込みます。そのあと口を閉じたまま、鼻からゆっくり息を抜きます(レトロネーザル=喉から鼻へ戻る香り)。余市の燻製香は、グラスから立つ香りよりも、飲み込んだ後のこの段階のほうが分かりやすく出ます。
- スポイトやストローで水を数滴加え、①②を繰り返します。加水前と比べて、煙や果実香の感じ方が変わるかを実際に確かめてください。参考までに、エタノール濃度が下がると燻製香の代表的な成分であるグアイアコールが液面近くに集まりやすくなることを、分子シミュレーションで示した研究があります。ただしこの研究は主に45%から27%前後への希釈などを扱ったもので、数滴の加水で余市の燻製香が強まることを実証したものではありません。
「まずい」と感じる典型例と理由
- アルコール分45%をストレートで一気に含む:アルコールの刺激で舌が鈍り、甘さを感じる前にピート由来のフェノール類が苦みとして残ります。最初は小さじ1杯ほどから試してください。
- 冷やしすぎる:香りの成分が揮発しにくくなり、果実香とオークの甘さが先に消えます。苦みと焦げだけが目立つため、ストレートは常温で飲むのが基本です。
- 注いだ直後の刺激を味と取り違える:開栓直後や注いだ直後は、エタノールの揮発が強く出ます。グラスで5〜10分置くと角が取れます。
- 甘口のブレンデッドのつもりで飲む:蜂蜜のような軽い甘さを期待していると、香ばしさや焦げが違和感になります。余市は、甘さより先に香ばしさと煙が来るモルトです。
アイラ系とのスモークの方向性比較
余市は麦芽のピート値(フェノール値、ppm)を公表していません。そのため、ここでは数値ではなく香りの方向で比べます。なお、ppmは麦芽の段階で測る値で、蒸溜と熟成の過程で大きく減ります。数値だけで、グラスの中の煙の強さは決まりません。また、香りの受け取り方には個人差があるため、メーカーの公式表現と、飲み手によって感じ方が分かれる点を分けて示します。比較は、余市を選ぶ判断に必要な範囲に絞ります。
| 銘柄 | メーカーの公式表現 | 飲み手によって感じ方が分かれる点 |
|---|---|---|
| シングルモルト余市 | 「やわらかな樽熟成香と豊かな果実香」「しっかりしたピート感と香ばしさ」、余韻に「オークの甘さとスモーキー」 | 香ばしさを心地よい燻香と取る人もいれば、焦げや苦みとして拾う人もいる |
| シングルモルト余市10年 | 熟したバナナのような香り、洋梨のような果実味、「燻製を思わせるピート感」。定番よりピートの力強さを高めたと説明 | 果実香と煙のどちらを先に強く感じるかは人によって異なる |
| アイラのピーテッドモルト(アードベッグ 10年など) | 銘柄・ボトリングごとに各社の公式ノートで確認する | ヨード香(薬品や海藻を思わせる香り)として受け取る人もおり、余市との違いを感じる入口になりやすい |
アードベッグ 10年の薬品のような香りが苦手だった人は、まずトゥワイスアップ(ウイスキーと常温の水を1対1)で試すと、燻製と果実の重なりを確かめやすくなります。店で勧めるときは「アイラほど薬っぽくない、燻製と果実のモルト」と伝えると、期待と中身のずれが起きにくくなります。
余市を楽しめる人、合わない可能性が高い人
- 楽しめる可能性が高い人:アイラ系の消毒液や海藻の香りは苦手でも、ベーコン、燻製チーズ、深煎りコーヒー、焦がしキャラメルが好きな人。果実香と樽の甘さを求める人。ハイボールで飲むつもりの人(炭酸で香ばしさが立ち、苦みは薄まります)。
- 合わない可能性が高い人:焦げや苦みそのものが苦手な人、蜂蜜のように軽くて甘いブレンデッドを好む人。反対に、アードベッグ 10年のようなヨードと煙の強さを求めるアイラ好きにとっては、余市は穏やかに感じやすいモルトです。
飲み方で余市の味はどう変わるか。ストレート・加水・ハイボールの比率と手順

余市は45%で瓶詰めされています。そのため、どこまで度数を下げ、何度で飲むかによって、ピートの香ばしさと果実香・樽の甘さの見え方が大きく入れ替わります。飲み方ごとに、比率と手順を判断基準つきで整理します。
ストレートと加水:まず香りの輪郭をつかむ
ストレートは15〜30mlを、チューリップ型のテイスティンググラスに注ぎます。ふくらんだボウルで液面を広く取り、すぼまった口で揮発した香気を集める形です。ロックグラスのように口が広いと、香りはすぐ拡散してしまいます。アルコールの刺激も集まるので、鼻はグラスの縁から少し離して嗅ぎ始めます。
加水はスポイトで1滴から始めます。数滴ずつ加えて、その都度香りと口当たりを比べ、好みのところで止めるのが基準です。定番品ならメーカーが挙げる「豊かな果実香」や「樽熟成香」、10年なら熟したバナナのような香りについて、加水で感じ方が変わる場合があります。どこまで足すと香味がどう変わるかに、一律の境界はありません。エタノール濃度によって、燻製香の成分グアイアコールなどが液面付近に集まる度合いが変わることは、分子シミュレーションの研究で示されています。ただしこの研究は特定銘柄の最適な加水量を示したものではなく、適切な希釈度は香気成分の種類や量によるとしています。
トゥワイスアップとロック:温度で香りは開きも閉じもする
トゥワイスアップは、ウイスキーと常温の軟水を1:1で割る飲み方です。度数は約22.5%になり、アルコールの刺激で鼻が麻痺しにくくなります。そのため、ピートと果実香のバランスを落ち着いて確かめられます。原酒の評価でも20%前後に下げて嗅ぐのが一般的です。冷水を使わないのは、温度が下がると香気成分の揮発が鈍り、確かめたい香りが閉じてしまうからです。
ロックには、溶ける速さの遅い大きめの氷を使います。注いだ直後は液温が下がるため、香気成分が揮発しにくくなり、香りは立ちにくくなります。時間がたって氷が溶けると、温度に加えてアルコール濃度も下がり、香りや口当たりの感じ方が変わっていきます。苦みが目立つか、飲みやすく感じるかは、温度や氷の溶け具合、飲み手によって異なります。冷えた直後から氷が溶けていく過程までの変化を追う飲み方だと考えてください。
ハイボールと水割り:食事に合わせて伸ばす
ハイボールは**1:3(約11%)から始め、好みで1:4(約9%)**まで伸ばします。45%あれば、1:4まで割っても麦芽の厚みと樽の甘さの芯が残ります。スモークは炭酸と一緒に鼻へ抜けますが、希釈されて冷えているため、主役ではなく後味のアクセントに変わります。
- グラスに氷を詰めて冷やし、溶けた水を捨てる
- ウイスキー30mlを注ぎ、軽く混ぜて液を冷やす
- よく冷えた炭酸を、氷に当てないようグラスの内側に沿わせて静かに注ぐ
- マドラーで氷を一度持ち上げる程度にとどめ、混ぜすぎない
水割りは**1:2〜1:2.5(約15〜13%)**が目安です。食中酒として飲むなら、日本酒やワインに近いこの度数帯が、料理の味を覆いにくいと考えます。焼き魚、燻製、醤油や味噌を使った料理なら、ピートの香ばしさが焦げや発酵の香りとつながります。刺身や淡い味の料理には1:2.5へ伸ばし、スモークを控えめにします。
| 飲み方 | 比率 | 温度 | グラス | 向く場面 | 香味の変化 |
|---|---|---|---|---|---|
| ストレート | 原液15〜30ml | 常温 | チューリップ型 | 最初の1杯、銘柄比較 | ピートと樽の甘さが最も濃い |
| 加水 | 1滴〜数滴 | 常温 | チューリップ型 | 香りの変化を確かめたい時 | 香りや口当たりの感じ方が変わる場合がある |
| トゥワイスアップ | 1:1(常温水) | 常温 | チューリップ型 | 香りの確認、定番と10年の比較 | 刺激が減り香りの細部が見える |
| ロック | 原液+大きめの氷 | 冷たい | ロックグラス | 食後にゆっくり | 冷えた直後は香りが立ちにくい。氷が溶けると濃度と香味が変わる |
| ハイボール | 1:3〜1:4 | よく冷やす | タンブラー | 食前・食中 | スモークが軽いアクセントに |
| 水割り | 1:2〜1:2.5 | 冷たい〜常温 | タンブラー | 食中酒 | 穏やかで料理に寄り添う |
開栓後の保管
- 立てて保管する。45%の液体に栓が長く触れると、栓の劣化や異臭の原因になる
- 直射日光と高温を避ける。光と熱は香気成分の変質を早めるため、温度変化の少ない暗所に置く
- 残量が減るほど酸化が進みやすい。瓶内の空気が増えるためで、3分の1を切ったら小瓶に移し替えるか、早めに飲み切る
定番か10年か、どう選び、どう勧めるか。購入・贈答・店での提供の判断材料
定番品と10年は、どちらも700ml・アルコール分45%です。容量と度数では差がつかないため、選ぶ基準は「どう飲むか」「誰に渡すか」、そして入手しやすさになります。
条件別の選び方
- 初めて飲む人、ハイボール中心の人:定番品。しっかりしたピート感と香ばしさがあるので、炭酸で割っても味の骨格が残ります。価格が抑えめなぶん、加水や割り方も気兼ねなく試せます。
- 果実香と熟成感を比べたい人:10年。熟したバナナのような香りと洋梨のような果実味に、ピートが重なります。定番品と同じ量をストレートで並べると、ピートと果実の比重の違いがはっきり分かります。
- 贈答用:10年が第一候補です。ただし数量限定で発売された品のため、店頭では見つけにくい場合があります。見つからなければ定番品に切り替えても、後述の説明材料はそのまま使えます。
価格の目安
| 銘柄 | 容量・度数 | 参考小売価格(税別) | 実勢価格の目安 | 向く用途 |
|---|---|---|---|---|
| シングルモルト余市 | 700ml・45% | 7,000円 | 最初の1本、ハイボール、店の定番 | |
| シングルモルト余市10年 | 700ml・45% | 12,000円 | 飲み比べ、贈答、ストレート |
実勢価格は販売店によって差があります。旧12年・15年・20年は2015年8月末に販売を終えた終売品です。二次流通の価格が大きく動くため、ここでは価格を載せず、比較の対象も現行の2本に絞ります。
パッケージ刷新期の確認方法
定番品と10年のパッケージは、2025年10月から順次刷新されました。切り替えの時期には、店頭に旧デザインと新デザインが混在します。中身が同じ品目かどうかは、ボトルの見た目ではなくラベルで確かめます。商品名が「シングルモルト余市」か「シングルモルト余市10年」か、容量が700ml、アルコール分が45%かを照合してください。年数はデザインの新旧から推測せず、商品名の年数表記で確認します。
外国人に勧める・贈るときの説明材料
- 「Japanese Whisky」と名乗れる根拠:日本洋酒酒造組合の表示基準は、国内での糖化・発酵・蒸溜と、700L以下の木樽による国内3年以上の貯蔵などを要件に含みます。アサヒビールは、定番品と10年の双方がこの基準に適合すると明記しています。
- 評価:定番品は2024年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジでGOLDを受賞しています。
- 味の由来:スモーキーさはピートを焚いた麦芽から来ます。石炭直火は蒸溜の熱源で、煙の香りの源ではありません。この区別を添えると誤解を防げます。
店での杯数と値付けの考え方
700ml瓶から取れる理論上の杯数は、30mlのシングルで約23杯、60mlのダブルで約11杯です。1杯の原価は「仕入価格÷杯数」で出しますが、実際に取れる杯数は理論値より少なくなります。
- 計量のぶれ・瓶底の残り・味見の分:理論値から1杯ほど引いた杯数で割ります(シングルなら22杯)。
- 開栓後の香りの変化:残量が減るほど瓶内の空気が増え、香りが変わりやすくなります。回転の遅い10年は、15mlの飲み比べセットなどで開栓から飲み切りまでの期間を縮め、その回転の見込みを価格に反映します。
- ハイボールの手間:炭酸・氷・グラスの冷却にかかる分を上乗せします。「濃いめ」のときにウイスキーを何mlに増やすかを先に決め、追加料金を明示しておきます。
- 10年の補充:数量限定のため、次の1本を定価で仕入れられる前提は立てにくくなります。次回の仕入価格を見込んで値付けします。
カウンターでの注文例
- 「余市をシングル、ストレートでチェイサーを付けて」:30mlを割らずに出し、水は別のグラスで添えてもらう頼み方です。
- 「余市のハイボールを濃いめで」:ウイスキーの量を増やす注文です。追加料金がかかる店もあります。
- 「余市10年をシングルで、加水用の水を少し」:定番品と取り違えないよう、「10年」まで伝えます。
- 英語で伝える場合:「Yoichi Single Malt, neat, with a water chaser」「Yoichi highball, strong, please」
よくある質問

余市ウイスキーはどんな味ですか?
定番の「シングルモルト余市」は、メーカーの表現では、やわらかな樽熟成香と豊かな果実香の調和に、しっかりしたピート感と香ばしさが重なり、余韻にオークの甘さとスモーキーさが続く味わいです。「シングルモルト余市10年」は、熟したバナナのような香りと洋梨のような果実味に、燻製を思わせる力強いピートが加わります。
余市の味が力強いのはなぜですか?
メーカーは余市の重厚さを、主に石炭直火蒸溜などの製法と結びつけて説明しています。直火では釜の底が局所的に高温になりやすく、香ばしさや重いボディの一因と語られますが、効果の大きさは数値で示されていません。また、下向きのラインアームとストレートヘッドのポットスチルは還流を抑え、香味成分を多く含む力強い原酒づくりに寄与します。スモーキーさそのものは、ピートを焚いて乾燥させた麦芽に由来します。
余市はスモーキーですか?
はい。定番品はメーカーが「しっかりしたピート感と香ばしさ」、余韻に「オークの甘さとスモーキー」と表現し、10年は定番よりピートの力強さを高めたと説明されています。煙が果実香や樽の甘さと重なって感じられるのが特徴で、アイラ島の一部の銘柄に感じられるヨード香(薬品や海藻を思わせる香り)とは方向が違うと受け取る人もいます。煙の強さの感じ方には個人差があります。
余市のおすすめの飲み方は?
まずはストレートかトゥワイスアップで、香りと濃厚な味わいを確かめるのがおすすめです。ロックは、注いだ直後は冷えて香りが立ちにくく、氷が溶けるにつれて濃度が下がり、香りや口当たりが変わっていきます。その変化を追いながら飲む方法です。力強さを生かして、少量の水を加える方法や、ハイボールでコクを楽しむ飲み方も向いています。
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。