ニッカ「鶴」終売の理由と現在の価値|竹鶴政孝最後のウイスキー
ニッカ「鶴」は完全な終売ではなく、2015年に一般販売を終えたのは17年表記品で、年数表記なしの700mlは蒸溜所限定で販売中。発売からの年表、容量やボトル材質で手元の鶴の年代を見分ける方法、竹鶴との違い、今の買い方を解説します。
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ニッカ「鶴」は完全な終売ではない|1976年の発売から蒸溜所限定版までの年表
結論から言うと、ニッカ「鶴」は完全には終売していません。2015年8月に一般販売を終えたのは「17年」表記品などで、2016年以降も年数表記のない「鶴」(700ml・43%)が蒸溜所限定品として売られています。「幻になった」「市場から消えた」という理解は正確ではありません。ただし、酒販店で普通に買える銘柄ではなくなったのは事実です。
発売から蒸溜所限定版までの年表
| 時期 | 出来事 | 確認状況 |
|---|---|---|
| 1976年10月 | ブレンデッドウイスキー「鶴」発売。ノリタケ製の陶器ボトル、43%、年数表記なし | 竹鶴政孝が手がけた最後のウイスキーとする資料あり。メーカー公式資料では未確認 |
| 1979年 | 竹鶴政孝(1894年生まれ)が死去。発売から約3年後 | メーカーの創業者紹介で確認 |
| 1992年 | 鶴のレリーフと竹鶴威の書をあしらったガラス製スリムボトルが登場 | — |
| 2006年12月 | 「17年」表記品を発売 | — |
| 2015年8月 | 「17年」表記品などの一般販売が終了 | メーカー公式発表は未確認 |
| 2016年〜 | 年数表記なしの「鶴」(700ml・43%)を蒸溜所限定で販売。価格の推移は後述 | 売り場は資料により異なる |
2015年に終わったものと、終わった理由
2015年に止まったのは、熟成年数を保証した「17年」の一般流通です。スコッチではスコッチウイスキー規則(SWR 2009)で、表記年数は使用原酒のうち最も若いものの熟成年数と定められています。日本では酒税法に年数表記の定めはありませんが、業界ではこの考え方で表示するのが通例で、17年表記ならモルトもグレーンも17年以上の原酒で構成されると読めます。一方、年数表記のないボトルは若い原酒も使えるため、長期熟成の原酒の在庫が少なくても配合を組み直して出荷を続けられます。限定版が年数表記なしで続いているのは、この仕組みの違いによるものです。
終売の理由は、公式には説明されていません(詳細は次章)。なお、2020年3月末に販売を終えたピュアモルトの「竹鶴」17年・21年・25年は、ブレンデッドの「鶴」とは別の銘柄です(違いは後の章で比較します)。
17年表記品と政孝の関係は次章で整理します。
手元のボトルの年代を絞り込む手がかり
容量は760ml→750ml→700mlの順に変わりました。そのため、容量表記はおおよその製造年代を示す手がかりになります。ただし、容量だけで判断しないでください。次の組み合わせで見ると年代を絞り込みやすくなります。
- 陶器ボトルで760ml:発売初期に近い世代
- 陶器ボトルで750ml:760mlより後の世代
- 陶器ボトルで700ml:容量変更後の世代。白い陶器の700mlには17年表記品(2006年〜)もあるため、年数表記の有無で区別する
- ガラスのスリムボトル(鶴のレリーフと書):1992年以降
- 「17年」表記あり:2006年12月〜2015年8月の一般流通品。17年表記品のボトルには白い陶器の700ml・43%があり、2007年頃のボトリングで約1,500本とされる
- 年数表記なしの700ml・43%で、蒸溜所限定と分かるもの:2016年以降の限定版
700mlという容量だけでは、旧ボトルか現行の限定版かを区別できません。ボトルの材質、年数表記の有無、ラベルの表示をあわせて確認してください。
今買えるのか
新品を定価で買う方法は、現在は蒸溜所の売店に限られます。売り場については「余市・宮城峡の両方」とする資料と「余市のみ」とする資料があり、どちらが正しいかは確認できていません。2026年4月には値上げがあったともされています。訪問する前に、各蒸溜所の公式案内で取り扱いの有無と販売価格、1人あたりの購入本数の制限があるかを確認してください。海外の知人への贈り物にする場合や、外国人客に案内する場合も同様です。現地で買えなかったときのために、代わりの銘柄を決めておくと確実です。
なぜ一般販売が終わったのか|原酒不足の業界背景と「最高傑作」という呼び名の実際

なぜ17年表記品から先に続けられなくなるのかを、原酒の在庫の仕組みから説明します。あわせて「最高傑作」という呼び名が何を指すのかを整理します。
長期熟成の原酒の量は、十数年前の仕込みで決まっている
2015年に17年表記品を瓶詰めするには、遅くとも1998年までに蒸溜して樽詰めした原酒が必要です。モルトだけでなく、ブレンドに使うグレーン原酒も同じ条件を満たさなければなりません。仕込み量は当時の需要予測をもとに決められているため、後から需要が増えても過去にさかのぼって増やすことはできません。新しく仕込んだ原酒が17年に達するのは、早くても17年後です。
さらに、樽詰めした量がそのまま使えるわけではありません。熟成中は樽を通して液体が揮発して減り続けます(エンジェルズシェア)。品質の基準に届かず、そのブレンドに使えない樽も出ます。熟成が長いほど、使える量は樽詰めしたときより少なくなります。同じ長期熟成の在庫は年数表記のある他の製品とも取り合いになるため、需要が一気に伸びると最初に足りなくなるのは高年数の表記品です。2015年に「余市」「宮城峡」の年数表記品と「鶴」17年の一般販売がそろって終わったのは、この構造と時期がよく合っています。
年数表記を外すと、ブレンダーは熟成年数の違う原酒を組み合わせて香味の設計をやり直せます。熟成の長い原酒を少量にとどめ、骨格を若い原酒で補うことで、出荷を続けやすくなります。ただし、現行の蒸溜所限定版の原酒の構成はメーカーから公表されていません。17年表記品と同じ香味を目指したものか、別の設計かは分かりません。
| 論点 | 確認できること | 確認できないこと |
|---|---|---|
| 終売の理由 | 同じ2015年に余市・宮城峡の年数表記品が原酒不足で販売終了(日本経済新聞の報道) | メーカーが「鶴」について原酒不足を理由と説明したこと |
| 原酒の構成 | — | 鶴17年のモルトとグレーンの比率、樽の種類 |
| 減産の規模 | — | 「鶴」の具体的な生産量や減産の数値 |
「竹鶴政孝の最高傑作」という呼び名の実際
「最高傑作」は、1976年発売の「鶴」が政孝の最後に手がけたウイスキーとされることからついた通称です。メーカーの公式な表現としては確認できていません。品質を評価した言葉ではなく、「最後の作品」という意味で受け取るのが正確です。
「鶴」という名前は同じでも、中身は大きく3つの世代に分かれます。1976年発売の年数表記のない初代、政孝の死後の2006年12月に出た17年表記品、2016年以降の蒸溜所限定版です。17年表記品は竹鶴威の主導で原酒の構成が変わったとする資料があり、政孝がブレンドしたものとは言えません。初代の世代についても、どのロットまでが政孝の配合を引き継いでいるかは、公開されている情報からは特定できません。
- 売る人:出品文や査定の依頼では「竹鶴政孝が最後に手がけたとされる銘柄(1976年発売)」と書き、17年表記品を「政孝がブレンドした」とは書かない。誤った説明は、後でトラブルになる原因になる
- 買う人:「政孝の最高傑作・17年」のように、政孝の名前と年数を一緒にうたう説明は事実と合わない。出品者の知識の水準を見極める手がかりにして、ボトルの状態や付属品の確認をより丁寧に行う
- 店で外国人客に説明する人:「Tsuru is said to be the last whisky Masataka Taketsuru worked on; this 17-year-old bottling was released after his death.」のように、伝説と事実を分けて伝える。「竹鶴」と取り違えて注文されないよう、ボトルを見せながら説明する
「鶴」と「竹鶴」は別の銘柄|ブレンデッドとピュアモルトの違い、終売時期の比較
「鶴」と「竹鶴」は名前が似ていますが、別の銘柄です。違いは、中身にグレーンウイスキーを含むかどうかです。「鶴」はモルトとグレーンを混ぜたブレンデッドウイスキーです。「竹鶴」はグレーンを含まず、モルトウイスキーだけを混ぜたピュアモルトです。終売の時期も対象の商品も違うため、一方のニュースをもう一方に当てはめないでください。
ブレンデッドとピュアモルトは何が違うのか
モルトウイスキーは、大麦麦芽だけを原料にポットスチル(単式蒸溜器)で蒸溜した原酒です。グレーンウイスキーは、トウモロコシなどの穀物を主な原料に、連続式蒸溜機で蒸溜した原酒です。ニッカは1960年代初めにカフェスチル(カフェ式連続式蒸溜機)を導入しています。連続式で高い度数まで蒸溜すると、ポットスチルの原酒より香味成分が少なく、軽い原酒になります。ブレンデッドは、このグレーンを骨格に使い、個性の強いモルトをまとめる設計です。
「ピュアモルト」は、複数の蒸溜所のモルト原酒を混ぜたものを指す日本での呼び方です。スコッチウイスキー規則(SWR 2009)では、同じ種類のものを「ブレンデッドモルト」と呼びます。「ピュアモルト」という表記は、スコッチには使えなくなりました。そのため、海外の愛好家には「Blended malt」と言い換えると伝わりやすくなります。
| 項目 | 鶴 | 竹鶴 |
|---|---|---|
| 分類 | ブレンデッドウイスキー | ピュアモルト(ブレンデッドモルト) |
| グレーン原酒 | 含む | 含まない |
| 販売終了の内容 | 2015年8月に「17年」表記品などの一般販売が終了 | 2020年3月末に17年・21年・25年の販売が終了 |
| 現在の状況 | 年数表記なし(700ml・43%)を蒸溜所限定で販売 | 2026年6月16日に「竹鶴ピュアモルト エッセンシャルズ2026」(700ml・43%)を数量限定で発売 |
| 取り違えやすい話 | — | 「竹鶴が買えない」「竹鶴12年の終売」は竹鶴の話で、鶴とは関係しない |
「竹鶴 17年 終売」で調べて見つかる2020年の情報は、「鶴」17年のものではありません。同じ17年表記でも、銘柄も終了の年も違います。手元のボトルの価値を調べるときは、銘柄名を先に確定させてから相場を見てください。
ブランド名の由来と、ザ・ニッカとの関係
「鶴」という名前は、竹鶴政孝の名前と、縁起物の鶴の両方にちなむと考えられます。ただし、メーカーが命名の理由を説明した公式な資料は確認できていません。由来を紹介するときは「〜と考えられる」にとどめてください。
「ザ・ニッカ」は2014年にできた別のブランドで、「鶴」の後継品や改名品ではありません。2026年2月3日に「ザ・ニッカ リミテッド」が数量限定で発売されました(当初は2025年11月5日の予定でしたが延期。48%・700ml・税込165,000円・国内4,000本/海外4,000本)。竹鶴は、2030年の30周年に向けて、2026年から2030年まで毎年限定品を出す計画です。その第1弾が「エッセンシャルズ2026」で、43%・700ml・税込27,500円(税別25,000円)、国内1万本・海外1万本です。
外国人客に「Taketsuru」と言われたときの確認手順
- ラベルの銘柄名を見る。「竹鶴/TAKETSURU」なのか、一文字の「鶴」なのかを確認する。漢字が読めない客にはボトルを見せ、どちらを指しているか指で示してもらう
- 分類の表示を見る。「PURE MALT」と書かれていれば竹鶴系。原材料表示にグレーンが含まれていれば、ブレンデッドの鶴などと判断できる
- 年数表記と容量を確認する。竹鶴の17年・21年・25年は2020年3月末に販売を終えた商品なので、新品として扱われていれば流通の経路を確認する
- 客が写真を持っていれば照合する。「Tsuru is a blended whisky with grain; Taketsuru is a pure malt, no grain.」と、違いを一文で伝えてから選んでもらう
贈り物として探している場合は、相手が求めているのが「創業者の名前の付いたピュアモルト」なのか「最後に手がけたとされるブレンデッド」なのかを、先に聞いてください。それによって、勧める銘柄も、入手できる場所(一般の店か蒸溜所限定か)も変わります。
「鶴」の味わいを製法から読む|余市・宮城峡・カフェグレーンの個性と古いボトルの飲み方

最初にお断りしておきます。「鶴」の原酒の構成(どの蒸溜所のモルトとグレーンを、どの比率で使っているか)、樽の種類、冷却濾過(低温で濁りの成分を除く工程)や着色の有無について、メーカーが公表した仕様は確認できていません。ここで書けるのは、ニッカが持つ原酒の性格から言えることに限られます。「余市のスモーキーさが効いている」といった断定は、配合が公表されていない以上、推測です。
ニッカの3つの原酒は、蒸溜器の形で性格が決まる
| 原酒 | 設備の特徴 | 原酒に出やすい性格 |
|---|---|---|
| 余市モルト(1934年設立) | ストレートヘッド型のポットスチル、ラインアーム(蒸気を冷却器へ送る管)は下向き、石炭直火 | 重く力強い。香ばしさ |
| 宮城峡モルト(1969年設立) | バルジ型(首の下が膨らんだ形)、ラインアームは上向き、蒸気で加熱 | 軽く華やか |
| カフェグレーン(1960年代初めに導入) | 旧式の連続式蒸溜機であるカフェスチル | 甘さと厚みがあり、ブレンドの土台になる |
性格の違いは還流(蒸気が冷えて釜に戻り、再び蒸溜されること)の量で説明できます。余市は首がまっすぐで、ラインアームが下を向いています。そのため蒸気は釜に戻りにくく、沸点の高い重い成分まで冷却器に届きます。さらに直火では釜底が局所的に高温になり、メイラード反応などで香ばしい成分が生まれます。蒸溜器だけでなく麦芽側の要因もあり、余市はピーテッド麦芽(ピートを焚いて乾燥させた麦芽)も使うとされますが、フェノール値(ppm)は公表されていません。宮城峡はこの逆です。膨らみで蒸気が冷やされ、上向きのアームでも蒸気が戻ります。銅と触れる時間が長くなり、軽い成分が選ばれて出てきます。
カフェスチルは、前の章で触れた連続式蒸溜機の一種です。ただし、効率の高い新しい連続式に比べると、原料に由来する香味成分が残りやすい点が違います。「グレーン=無個性なつなぎ」という通説は、カフェグレーンには当てはまりません。穀物由来の甘さと口当たりの厚みが、モルトの角を包む役割を担います。
同じ「鶴」でも、時期ごとに別物として扱う
年数表記の意味(前述)のとおり、17年表記品は熟成年数の下限が決まっていますが、NAS(年数表記なし)の蒸溜所限定版は若い原酒も含めた広い幅で組まれています。熟成年数の幅が違えば、樽由来の香りの強さも、アルコールの刺激の出方も変わります。初代と17年表記品の間でも、原酒の構成が変わったとする資料があります。飲み比べの記録や査定では、「鶴の味」とひとまとめにせず、陶器・スリム・17年・限定版の世代ごとに分けて書いてください。
古いボトルを開けたときの評価手順
- コルクの状態を確かめる。長期保管品はコルクが崩れることがあるため、茶こしと無漂白のコーヒーフィルターを用意してから開ける。破片が落ちたら、茶こしで大きな破片を除いたあと、コーヒーフィルターで細かな粉を漉す。紙の匂いが移るのを避けるため、フィルターは一度湯通しして乾かしておく。陶器ボトルは液面が見えないので、開栓後に残量を確認する
- チューリップ型のグラスに15〜20mlを注ぎ、ストレートで香りを取る。カビ臭や湿った段ボールのような匂いが出たら、コルクの劣化を疑う
- スポイトで水を1〜2滴ずつ加え、その都度香りを確かめる。度数が43%と比較的低く、古酒は香りが弱っていることもあるため、一度に多く加えると香りが薄まって判断しにくくなる
- 数滴で香りが開くのを確かめてから、比較のためにトゥワイスアップ(1:1)を試す。たとえば15mlに常温の水15mlを合わせる。香りの変化を正しく見るため、水は軟水のミネラルウォーターを使う。アルコールの刺激が下がり、隠れていた果実や穀物の香りが拾いやすくなる
ハイボールは最後に回します。炭酸の泡は揮発する香り成分を一緒に運び去ります。43%で繊細な古酒は、炭酸水で薄まったうえに香りも飛び、ボトルの個性が判断できなくなります。判断の基準は次のとおりです。手順2〜4で香りが開き、ストレートで余韻まで楽しめるなら、ストレートか少量の加水で飲み切ります。手順2の時点で香りが平板になっているボトルに限り、ハイボールで飲むことを検討してください。コルク由来のカビ臭がはっきり出ているものは、炭酸で割っても臭いは消えないため、飲用は見送ります。
ハイボールにする場合の手順は次のとおりです。
- グラスに氷を入れてかき混ぜ、グラスを冷やしてから溶けた水を捨てる
- ウイスキーを注ぐ
- よく冷えた炭酸水を、氷に当てないようにグラスの縁から静かに注ぐ
- マドラーを底まで差し入れ、縦に1回だけ持ち上げる。混ぜすぎると炭酸が抜ける
開栓後の保管
- 立てて保管する。横に寝かせると、高い度数の液体がコルクに触れ続けて劣化を早める
- 直射日光と温度変化を避ける。冷蔵庫に入れる必要はない
- 残量が半分を切ったら、小瓶への移し替えを検討する。残量が減るほど瓶内の空気が増え、酸化で香りが抜けていく。満量近くまで入る容量の遮光瓶を選ぶ
- 移し替えた小瓶には、元のボトルの世代(陶器・スリム・17年・限定版)と開栓日を書いておく
ニッカ「鶴」の現在の価値|買取実績と、ボトル別に値段が分かれる理由
手元の「鶴」の価値は、ボトルの世代と状態によって大きく変わります。酒類買取店(Five Needs)が公開している買取実績では、同じ700mlでもスリムボトルと白い陶器ボトルで2倍以上の差がつきました。ただし、買取実績は売る人の手取りの目安で、買う人が払う相場とは別のものです。
| ボトル | 価格 | 時期 | 種別 |
|---|---|---|---|
| スリムボトル 700ml | 13,500円 | 2025年10月 | 買取実績 |
| 白い陶器ボトル 700ml(年数表記の有無は未確認) | 5,000円 | 2025年5月 | 買取実績 |
| 17年 50ml | 3,000円 | 2025年4月 | 買取実績 |
| 蒸溜所限定版(年数表記なし)700ml | 14,000円(税区分不明)→税込19,000円→税込25,000円 | 2016年→(時期不明)→2026年4月 | 小売価格(25,000円への値上げは公式発表未確認) |
買取価格には、業者の利幅と在庫を抱えるリスクが差し引かれています。そのため、買取価格を新品の小売価格と並べても、市場での評価の高さは測れません。価値を見るときは、次の2つを分けて考えてください。
- 売る人の手取りの目安:上の表の買取実績。業者や時期で変わる
- 買う人が払う相場:古酒店の販売価格や、オークションの落札価格。同じ世代・同じ容量・同じ状態の事例で確かめる
上の表の旧ボトルは買取実績だけで、販売価格や落札価格は含みません。17年の50mlはミニボトルで、コレクション需要や容器の希少性から1mlあたりの単価が高く出やすいため、700mlの価値に換算しないでください。17年表記の700mlは上の実績に含まれていないので、売る場合も買う場合も、同じ仕様の買取実績と販売相場を別に確かめてください。
陶器ボトルの査定が低くなりやすい理由
陶器は光を通さないため、外から液面が見えません。数十年保管すると、コルクの隙間から中身が少しずつ揮発して減っていることがあります。度数が落ちていても、香りが劣化していても、開けるまで分かりません。コルクが乾いて縮んでいないか、崩れかけていないかも、キャップシールの上からは確かめられません。買い手はこうした不確かさをリスクとみなし、その分を価格から差し引きます。そのため、実際の状態にかかわらず査定は低めになります。ガラスのスリムボトルは液面と色を目で確かめられるので、このリスクの分だけ評価が下がりにくくなります。
査定額を左右する6つの要素
- 年数表記:「17年」表記があるかどうか。世代の判別に直結する
- 容量表記:760ml・750ml・700mlのどれか。ラベルの表記をそのまま業者に伝える
- 液面の高さ:ガラス瓶では肩より下がっていないか。下がっているほど揮発や酸化が進んでいるとみなされる
- コルク・キャップ:シールの破れ、液漏れの跡、キャップの錆がないか
- 箱と付属品:化粧箱や冊子がそろっていると評価が上がりやすい
- ラベルの状態:汚れ、剥がれ、日焼け。強くこすって傷めないよう、拭く前に写真を撮っておく
売る・飲む・保管するの判断基準
- 査定額(手取り)が、蒸溜所の公式案内で確認できる最新の限定版の小売価格を下回る場合:売ったお金では同じ「鶴」を買い直せません。飲むつもりがあるなら、手元で開けるのが合理的です。限定版を1本買い足して、世代違いを飲み比べる使い方もあります。公式に確認できない価格は、この判断の基準にしないでください
- ガラス瓶の液面が下がり始めている場合:揮発は保管中も止まらず、待つほど条件は悪くなります。売るか開けるかを早めに決めてください
- 17年表記・箱付き・液面良好の場合:評価が業者によって分かれやすいボトルです。複数の業者で査定を取り、同じ仕様の販売相場や落札価格とも見比べてから判断してください
- 保管を続ける場合:前述のとおり立てて置き、直射日光と温度変化を避けてください。陶器ボトルは年に一度重さを量って記録しておくと、目減りしているかどうかの目安になります
買取価格は、時期や業者によって変わります。上の実績は2025年時点の一例で、現在の相場を保証するものではありません。見積もりは少なくとも2〜3社から取ってください。どの業者にも同じ写真と、世代・容量表記・液面・付属品の有無を同じ内容で伝えると、条件をそろえて比べられます。
今から「鶴」を手に入れる方法と注意点|蒸溜所限定版・古酒市場・贈り物にする場合

新品を定価で買えるのは、前の章で触れたとおり蒸溜所の売店だけです。旧ボトルは古酒店、オークション、フリマで探すことになります。この章では、買う人、仕入れる店、海外へ贈る人のそれぞれについて、事前に確かめることを順に挙げます。
蒸溜所限定版を買うときの段取り
- 売り場が余市・宮城峡の両方なのか余市だけなのかは、資料によって異なります。訪問先の蒸溜所の公式案内で、取り扱いの有無を確かめる
- 販売価格(2026年4月以降は税込25,000円とされる。公式未確認)と、1人あたりの購入本数の制限(1人1本とする資料あり)を確認する
- 見学の予約が必要か、売店だけ利用できるかを確認する。予約制の時期は売店に入れない場合がある
- 持ち帰る方法を決めておく。現地から発送できるかを確かめ、手持ちで運ぶならボトルを包む緩衝材を用意する
古酒店・オークション・フリマで買うときの確認点
査定で見る項目は前の章で挙げました。ここでは、買う側が特に注意すべき点に絞ります。
- 年代の整合:容量表記、年数表記、ボトルの材質が、前の章で示した世代の組み合わせと合っているか。組み合わせが世代表と合わない場合は説明を求める
- 詰め替えの痕跡:キャップシールに破れや貼り直しの跡がないか。シールの縁と首の境目を、複数の角度から撮った写真で見せてもらう
- 液面と液色:ガラス瓶は肩の位置と色を写真で確認する。陶器ボトルは中身を確かめる手段がないため、詰め替えや目減りのリスクを価格に織り込む
- 説明文の正確さ:17年表記と政孝の関係(前述)を取り違えた出品は、知識の水準を疑う
- 送料と補償:陶器は輸送中に割れやすい。梱包の方法、配送時の補償の有無、破損したときの返金条件を、落札や購入の前に確定させる
酒販店・バーが仕入れて値付けするときの考え方
基準は2つあります。上限は現行の限定版の小売価格(公式発表で確認できる最新の価格)、下限は買取実績の幅です。年数表記のない旧ボトルを限定版の新品より高く売るには、世代の違いを客に説明できなければなりません。仕入れ値の上限は、販売予定価格から、確保したい粗利と、開栓してみたら劣化していたときの損失分を引いて決めます。陶器ボトルは開栓まで中身を確認できないため、この損失分を大きめに見積もります。
バーで量り売りする場合、700mlから30mlのショットを取ると約23杯です。古酒はコルクが崩れて出る損失や、試飲に使う分があるため、実際に売れる杯数を20杯前後と見込んで1杯の価格を決めます。計算式は次のとおりです。
- 1杯の価格 = 仕入れ値 ÷ 販売可能杯数 ÷ 目標原価率
- 仕入れ値の上限 = 想定する1杯の価格 × 販売可能杯数 × 目標原価率
たとえば仕入れ値15,000円、販売可能杯数20杯、目標原価率30%なら、15,000÷20=750円、750÷0.3=2,500円が1杯の価格です。陶器ボトルはロスを多めに見て18杯で計算すると、15,000÷18≒833円、833÷0.3≒2,780円となり、約2,800円が目安になります。逆に1杯2,500円で出したい陶器ボトルなら、2,500×18×0.3=13,500円が仕入れ値の上限です。目標原価率は店の方針によって変わるため、自店の数字に置き換えて計算してください。
海外の知人へ贈る・外国人客に勧めるときの注意
- 陶器ボトルは衝撃に弱い。預け荷物に入れるなら、ボトルを個別に厚く包み、硬いケースに入れる
- 機内持ち込みの液体制限、預け荷物に入れられる酒類の量、入国時の免税範囲は国によって違う。渡航先の税関と、利用する航空会社の規定を必ず確認するよう伝える
- 酒類の輸入を厳しく制限している国もある。郵送で贈る前に、相手国が酒類を受け入れるかを確かめる
- 外国人客には、蒸溜所限定版はその場でしか買えないこと、旧ボトルは中古品であることを分けて伝える
よくある質問
古い「鶴」に澱や濁りが見えたら、飲んでも大丈夫ですか
低温で保管すると、原酒に含まれる脂肪酸エステルなどが析出し、白く濁ったり細かな浮遊物が出たりすることがあります。「鶴」の冷却濾過の有無は公表されていないため断定はできません。常温に戻して濁りが消えるなら、香味への影響は小さいと考えられます。コルク片が混じっていれば、茶こしで大きな破片を除いたあと、湯通しして乾かした無漂白のコーヒーフィルターで漉してください。カビ臭を伴う場合は劣化を疑ってください。
開栓後、香りが落ちてきたかどうかはどう見極めればよいですか
何か月で変わるとは一律に言えません。残量(瓶内の空気の量)や保管温度で、変化の進み方が違うためです。開栓直後に、同じグラス・同じ量・ストレートで香りを記録し、注ぐたびに比べるのが確実です。最初は角が取れて香りが開くことが多いです。その後、果実の香りが弱まって平板になってきたら、飲み切るか小瓶へ移す目安です。
バーで世代違いの「鶴」を飲み比べたいときは、どう頼めばよいですか
「鶴」とだけ伝えると、どの世代が出てくるか分かりません。まず陶器・スリム・17年・限定版のどれがあるかを聞き、「陶器と17年を各15mlずつ、同じ形のグラスで並べてもらえますか」のように、世代と1杯の量を指定して頼んでください。量を半分にすると、古酒でも1杯あたりの負担を抑えて複数の世代を試せます。古酒は1杯の価格が高めになりやすいので、注文前に各15mlでの価格を確認しておくと安心です。香りの取り方と加水の順序は、前述の評価手順を参照してください。
古いボトルのコルクが開栓中に折れたら、どうすればよいですか
無理に引き抜かないでください。残った部分にコルクスクリューを斜めに浅く刺し、少しずつ回しながら持ち上げます。破片が中に落ちた場合は、前述の二段階の手順(茶こし→湯通しして乾かしたコーヒーフィルター)で漉しながら清潔な瓶へ移します。元のコルクは再使用せず、口径に合う替え栓に替えてください。陶器ボトルは口元が欠けやすいので、作業中はボトルをしっかり固定し、横から力をかけないことが大切です。栓を替える前に口元の内側に欠けやひびがないかを確かめ、欠けがあれば陶器のまま保管せず、遮光瓶へ移し替えてください。
17年の再販はありますか
メーカーからの公式発表は確認できていません。「再販」とうたう出品は、商品の中身と出どころを確かめてください。
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。