ウイスキーニュース2026年10月|新発売・オークション・酒税
2026年10月のウイスキーニュースを整理。コンパスボックス、山鹿 2026 Edition、高藏 the Firstなどの発売日・価格・本数、マッカラン1926の史上2番目の落札額、酒税改正でもウイスキー税率は変わらない点がわかります。
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この記事で紹介した銘柄:クライヌリッシュ 14年・コンパスボックス 価格と購入先へ ↓
2026年10月のウイスキーニュース一覧|発売日・価格・本数を時系列で整理
2026年10月は、酒税改正の最終段階、限定品の発売、記録的な落札が同じ月に重なりました。表では、10月に店頭へ並んだものと、10月に発表されたが発売や実施は11月以降のものを列で分けています。価格はメーカーの表記に合わせ、税込と税別を別の列にしています。9月分(富士12年、ボウモア9年など)は「ウイスキーニュース2026年9月」の記事にまとめています。
| 日付 | ニュース | 10月発売 | 発売・実施が11月以降 | 容量・度数 | 価格(税込) | 価格(税別) | 本数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10/1 | 2017年改正による酒税の段階的見直しが最終段階に(2020・2023・2026年の各10月1日の3段階)。ウイスキーの税率は据え置き | — | — | — | — | — | — |
| 10/1 | 古川酒造 磯の浜蒸溜所(茨城県大洗町)の計画を発表。銅製ポットスチルを導入 | — | 2027年春に始動予定 | — | — | — | — |
| 10/5 | コンパスボックス「This is a 10-Year-Old Whisky」を日本で順次販売 | ○ | — | 700ml・50.5% | 5,148円前後(2026年10月31日時点) | — | 世界で3,610本 |
| 10/8 | 山鹿 2026 Editionを全国発売 | ○ | — | 700ml・55% | 11,000円 | — | 8,500本 |
| 10/9 | マッカラン 1926 ファイン&レアがサザビーズで2,125,000ポンドで落札(マッカラン・エステート) | — | — | — | — | — | — |
| 10/16 | 高藏 the First(通常版)を発売 | ○ | — | 700ml・48% | — | — | 5,800本 |
| 10/16 | 高藏 the First CASK STRENGTHを発売 | ○ | — | 700ml・61% | — | — | 500本 |
| 10月 | YUZA Special Blendを発売(カートンなし/カートン付き) | ○ | — | 700ml・46% | —/— | — | 記載なし |
| 10/20 | メーカーズマーク「スターヒルファームウイスキー2026」の発売を発表 | — | 12/8発売 | 700ml・58% | — | — | 数量限定(本数は未確認) |
| 10/21 | JWICが第24回ウイスキー検定の実施を告知 | — | 2027年2月実施 | — | — | — | — |
| 10/23 | JWICが「ウイスキー&スピリッツフェスティバル2027 in 横浜」の開催決定を告知 | — | 2027年開催 | — | — | — | — |
| 10/28 | サザビーズ香港の日本ウイスキーセール(山崎50年の3リリースを出品) | — | — | — | — | — | 落札結果は未確認 |
| 参考 | 山崎 リフィルスパニッシュオーク(数量限定) | — | 11/24発売 | 700ml・48% | — | 27,000円 | 未確認 |
酒税の最終段階と店頭価格の値上げは別の話です
10月1日は2017年度改正の最終段階ですが、ウイスキー(ボトル)の税率は対象外で変わっていません。10月に店頭価格が動いた銘柄があれば、それはメーカーごとの出荷価格改定などによるもので、見分け方は酒税の章で整理しています。
10月発売品の読み方と仕入れの判断
- コンパスボックス:3原酒すべてファーストフィル・バーボン樽で「ちょうど10年」熟成したブレンデッドモルト。無濾過のため加水すると濁ることがある(製法と香りの読み方は次章)
- 高藏 the First:主な原酒は3年熟成で、百年梅酒の熟成に使った樽が中心。通常版48%、CASK STRENGTH 61%(樽構成と加水の目安は次章以降)
- 山鹿 2026 Edition:ノンピートで、バーボン樽由来の甘みがあると案内。55%で少量の加水向き。8,500本、11,000円(税込)(詳細は次章)
- YUZA Special Blend:モルトとグレーンを使った46%のブレンデッド。カートンなしとカートン付きの2種類(ハイボールの手順は次章)
マッカラン 1926の落札額の位置づけ
2,125,000ポンドは、オークションに出たウイスキーとして史上2番目の額です。最高額は、2023年11月にサザビーズ・ロンドンで落札された「マッカラン 1926 アダミ」の2,187,500ポンドです。両者は同じ樽の原酒で、1926年に蒸溜され、1986年に60年熟成で瓶詰めされた全40本の一部です。今回の額は、ファイン&レアのラベルとしては最高額になりました。2,125,000ポンドは買い手手数料込みの額で、ハンマープライス(手数料を含まない落札価格)は170万ポンドです。アダミの2,187,500ポンドもサザビーズが公表した手数料込みの額なので、両者は同じ条件で比べられます。
未確認の項目(11月以降に確定し次第追記)
- 山崎 リフィルスパニッシュオークの発売本数
- サザビーズ香港(10/28)の落札結果
- ペルノ・リカールの10月の終売品目(シーバスリーガル アルティス 20年など)
- サントリーの次の価格改定の有無
10月発売の新商品を製法から読む|コンパスボックス・山鹿・高藏・YUZA

コンパスボックス:樽をそろえて、原酒の違いを見せる設計
「This is a 10-Year-Old Whisky」は、ブレンデッドモルト・スコッチで度数は50.5%、価格は5,148円前後(2026年10月31日時点)、世界で3,610本の限定です。原酒はクライヌリッシュ1種と、アードナムルッカンのピーテッドとアンピーテッドの2種です。3種ともファーストフィル・バーボン樽で、ちょうど10年熟成させています。原酒ごとの配合比率は公表されておらず、未確認です。SWR 2009の区分では、ブレンデッドモルトは2つ以上の蒸溜所のシングルモルトだけを混ぜたもので、グレーンは使いません。表示できる年数は使った原酒のうち最も若いものの年数なので、全原酒がちょうど10年のこの品では、ラベルの「10年」がそのまま中身の年数です。
ファーストフィル(その樽で初めてスコッチを詰めたもの)のバーボン樽には、バーボン熟成に使った新樽のチャー(内側を焦がした層)の影響がまだ濃く残っています。加熱でオークのリグニンが分解するとバニリンができ、これがバニラ香になります。オーク由来のウイスキーラクトンは、ココナッツのような香りを与えます。この品は樽タイプをそろえているため、樽の違いによる香りの振れ幅は小さく、グラスの中で原酒の個性を拾いやすい設計です。ただし、同じファーストフィル・バーボン樽でも、元のバーボン銘柄、チャーの等級、樽の再組立の有無、倉庫と保管位置によって抽出量は変わります。クライヌリッシュ(北ハイランド)とアードナムルッカン(西海岸)では熟成環境も異なり、こうした個々の樽差や環境の差は残ります。
ノージングでは、まずバニラとココナッツを樽に共通する香りとして差し引きます。そのうえで残る香りを拾います。1つはクライヌリッシュのワクシー(蝋のような質感)です。これは蒸溜所の受け器に溜まる油性の沈着物と結びつけて説明されることが多い個性です。もう1つは、アードナムルッカンのピーテッド原酒が持つ煙香です。ピートの煙に含まれるフェノール類(グアヤコール、クレゾールなど)が乾燥中の麦芽に付き、その量を麦芽のフェノール値(ppm)で示します。フェノール類は蒸溜で多くが失われ、ミドルカット(製品にする中留部分)を後ろまで取るほど残りやすくなります。最終的な煙香の強さは、麦芽の仕様、カット位置、アンピーテッド原酒との配合比の掛け算で決まります。クライヌリッシュの個性を単独で確かめたいときは、オフィシャルの「クライヌリッシュ 14年」を並べて飲むと、蝋の質感がどちらの原酒から来ているかを判断しやすくなります。
冷却濾過は、0℃前後から氷点下まで冷やして脂肪酸エステル(ラウリン酸エチル、パルミチン酸エチルなど)を固まらせ、濾し取る工程です。この品はその工程を省いているので、これらの成分が残り、口当たりに厚みが出ます。一方で、これらの成分は度数がおよそ46%を下回るか温度が下がると溶けきれなくなります。50.5%のボトルの中では透明でも、加水や氷で白く濁るのはこのためで、品質の劣化ではありません。ロックで出すときは、注ぐ前に「濁るのは無濾過の証拠です」と一言添えておくと、交換を求められるのを防げます。
山鹿・高藏・YUZA:確認できた事実から読む
山鹿 2026 Editionは、10月8日に全国で発売されました。700ml・55%、8,500本で、参考小売価格は11,000円(税込)です。メーカーはノンピート・バーボン樽由来の甘みと案内しています。今回のリリースについて、スチル形状、発酵時間、冷却濾過・着色の有無は確認できていないため、甘みのうち原酒側(エステル)と樽側(バニリン等)の寄与の比重はまだ判断できません。グラスでは、バニラや焼き菓子のような甘さ(樽由来のバニリン)と、洋梨や青リンゴのような果実系の甘さ(発酵で生じるエステル)を分けて拾います。数滴の加水で果実系が前に出てくるかを見ると、原酒側の甘さの厚みを読む手がかりになります。
高藏 the Firstは、主な原酒が3年熟成です。PLUM WINE CASK(百年梅酒の熟成に使った樽)を中心に、バーボンカスクとピノ・デ・シャラントカスクを混ぜています。ピノ・デ・シャラントは、ブドウ果汁にコニャックを加えて造る甘口の酒精強化酒です。梅酒樽のように前の液体が木材に浸み込んだ樽からは、浸み込んだ糖や酸、香りが熟成の初期から溶け出すため、香りが強く移ります。3年という短い熟成で厚みを出すには有利ですが、樽香が原酒の骨格を覆い隠しやすくもなります。注目したいのは、梅の香りが前に出たあと、フィニッシュに麦芽の甘みが残るか、樽香だけで終わるかです。
YUZA Special Blendは、モルトとグレーンを使ったブレンデッドで46%です。グレーン原酒が自社で蒸溜したものか、外部・輸入の原酒かは確認できていません。価格も確認できていないため、常備するかは価格が分かってから判断します。ハイボールで出す場合の手順は次のとおりです。
- グラスと炭酸を冷やしておく
- 氷をグラスいっぱいに入れる
- ウイスキー30mlを入れ、ステアして冷やす。溶けて沈んだ分の氷は足す
- 炭酸を1:3〜1:4(90〜120ml)、氷に当てないようグラスの内側に沿わせて注ぐ
- マドラーで縦に1回だけ持ち上げる。混ぜすぎると炭酸が抜ける
冷却濾過の有無は未確認なので、氷と冷えた炭酸で濁るかどうかは、店に置く前に1杯作って確かめてください。
仕入れと購入の判断基準
| 銘柄 | 本数と入手難度 | 度数とバーでの提供 | 贈答への向き |
|---|---|---|---|
| 高藏 the First CASK STRENGTH | 500本。最も入手が難しい | 61%。加水を前提にし、ストレートは少量 | 初リリースの記念性が高い。— |
| コンパスボックス | 世界で3,610本。日本の割当は限られる | 50.5%。加水すると濁ることを先に伝える | 海外の知人にも銘柄の説明がしやすい |
| 高藏 the First(通常版) | 5,800本 | 48%。ストレートで出しやすい | 初リリースの記念性がある。— |
| 山鹿 2026 Edition | 8,500本 | 55%。加水を前提にする | 11,000円(税込) |
| YUZA Special Blend | 記載なし | 46%。ハイボールは30mlに炭酸90〜120ml | カートン付きを選ぶ |
- 酒販店:本数の少ない順に予約枠を確保します。CASK STRENGTHとコンパスボックスは入荷後すぐ売り切れる前提で判断します
- バー:度数の高い61%と55%は、少量ずつ加水して出す前提で、1杯の量と値付けを決めます
- 贈答:形を整えたいならYUZAのカートン付き、外国人客への説明を重視するなら国産の高藏・山鹿を選びます
10月に発表された11〜12月発売の限定品|山崎 リフィルスパニッシュオークとスターヒルファーム2026
10月に発表された2本は、どちらも店頭に並ぶのが11月以降です。山崎 リフィルスパニッシュオークは11月24日(火)、スターヒルファームウイスキー2026は12月8日(火)の発売で、10月の新商品ではありません。メーカーの価格表記は、山崎・スターヒルファームとも税別です。店頭の税込価格と比べるときは、どちらも消費税10%を加えて税込に直してから比べてください(山崎は税込29,700円)。
| 項目 | 山崎 リフィルスパニッシュオーク | スターヒルファームウイスキー2026 |
|---|---|---|
| 発売日 | 11/24(火) | 12/8(火) |
| 容量・度数 | 700ml・48% | 700ml・58% |
| 希望小売価格 | 27,000円(税別) | —(税別) |
| 製法の要点 | スパニッシュオークのリフィル樽のみで熟成 | 再生農業で育てた3種の小麦が主原料。樽を動かさず7〜8年熟成 |
| 本数 | 未確認 | 数量限定(本数は未確認) |
| 年末の贈答 | 発売から年末まで日数があり、日程を組みやすい | 発売直後に贈ることになり、入荷が遅れると間に合わない |
山崎:リフィル樽で、スパニッシュオークの強さをどう抑えるか
リフィルは、2回目以降に原酒を詰める樽です。ファーストフィル(前の章で触れたとおり)と比べると、木の表層に残っていた溶け出しやすい成分が前の充填で減っています。そのため樽からの成分の抽出が穏やかになり、原酒そのものの性格や熟成年数が前に出やすくなります。
スパニッシュオークは、タンニンやスパイス感が強い材とされます。ファーストフィルなら前に出やすいその渋みが、リフィルでどこまで丸くなっているかが読みどころです。パレット(口に含んだときの味)の中盤で渋みが舌を締めつけるか、その奥から原酒の果実味が見えるか。フィニッシュ(飲み込んだ後の余韻)が乾いて終わるか、甘く長く残るか。この2点を確かめると、樽の効き方を判断できます。
スパニッシュオークとシェリー樽は別の概念です。 スパニッシュオークは材の種類を指し、シェリー樽は前に入っていた中身による呼び名です。シェリー樽にはアメリカンオーク製のものもあり、逆にスパニッシュオークの樽がシェリー以外の熟成に使われることもあります。この商品で確認できたのは「スパニッシュオークのリフィル樽のみで熟成」という点だけです。前にシェリーが入っていたかどうかは確認できていません。シェリー樽熟成の山崎と同じ味を期待して予約するのは避けてください。
スターヒルファーム:小麦が主原料だと口当たりが柔らかくなる理由
スターヒルファームウイスキー2026は、小麦が主原料のアメリカンウィートウイスキーです。米国の連邦規則では、ウィートウイスキーは原料穀物の51%以上が小麦で、内側を焦がした新しいオーク樽(ニュー・チャード・オーク)で熟成させることが要件です。この品は再生農業で育てた3種の小麦を原料としていますが、小麦100%かどうかは日本での発表では確認できていません。混同されやすい言葉に「ウィーテッド・バーボン」があります。こちらはトウモロコシが主原料で、副原料にライ麦ではなく小麦を使うバーボンを指します。この品は、小麦そのものが主原料という点で違います。ライ麦は胡椒のようなスパイシーさをもたらす穀物です。その代わりに小麦を使うと、スパイシーさが弱まり、柔らかい口当たりになります。比べる相手はライ麦だけではありません。バーボンの主原料であるトウモロコシは、厚くとろりとした甘みの土台になります。小麦が主体でトウモロコシの比率が低ければ、その土台が薄いぶん、甘みは新樽のチャー層から出るバニリンやカラメルのような香りに頼る比重が高くなります。
熟成中に樽を動かしていない点も読みどころです。メーカーズマークは通常、熟成の途中で樽を熟成庫の上段と下段で入れ替え(ローテーション)、置き場所による熟成の差を均しています。この品はそれをしていません。ケンタッキーの熟成庫(リックハウス)では、上段の樽ほど温度が高く温度変化も大きいため、樽材からの抽出が進み、水分が先に抜けて度数が上がりやすくなります。樽を動かさなければ、こうした置き場所による差がそのまま残ります。樽の置き場所の内訳や加水の有無は確認できていないため、58%が樽出しに近い度数かは判断できませんが、上段の樽の比率が高いほど度数と樽香は強く出る方向に働きます。7〜8年という熟成年数と58%の度数を合わせて見ると、樽の甘みと小麦の柔らかさがどう釣り合っているかが評価の軸になります。
58%をバーで出す手順
10月の高度数の品に共通する加水の手順を、ここにまとめます。加水には、香りを確かめる滴下と、提供時の度数調整という目的の違う2つの段階があります。
- テイスティング用の滴下(香りの開き方を確かめる):最初は常温のストレートを10〜15ml、テイスティンググラスで出す。スポイトで水を2〜3滴ずつ加え、加えるたびに香りの開き方を確かめてもらう
- 提供時の度数調整:シングル30mlを約45%に下げる水の目安は、48%→約2ml、50.5%→約4ml、55%→約7ml、58%→約9ml、61%→約11ml(混ぜたときの体積の縮みは無視した目安)。一度に入れず、数回に分けて加える。トゥワイスアップ(同量の常温の水で割る飲み方。61%なら約30%)は香りの比較用で、提供の標準は約45%への調整とする
- 冷却濾過の有無は未確認。氷を使う前に、加水や冷却で濁るかを開栓時に1杯で確かめておく
- 度数が高く少量で満足度が出るため、15mlのハーフ量の値付けも用意する
予約・抽選に参加するかの判断
- 酒販店:どちらも本数は未確認です。割当数が示されてから予約の受付数を決めます。店頭POPは、税込と税別のどちらかに表記をそろえて掲示します
- 愛好家・コレクター:リフィル樽で山崎の原酒の性格を見たいなら山崎を、ライ麦を使わない穀物の違いを知りたいならスターヒルファームを選びます
- 贈答(お歳暮・クリスマス):12月中旬までに贈るなら、11月発売の山崎のほうが日程に余裕があります。スターヒルファームは、年末から年始の手土産向きと考えて計画します
- 外国人客への案内:日本で買う意味を伝えやすいのは山崎です。スターヒルファームは日本限定品ではないため、小麦主体という原料の珍しさで説明します
マッカラン 1926が212万5千ポンドで落札|「史上最高額」ではない理由と記録の整理

今回の落札額は2,125,000ポンド(約2,807,975ドル)で、ポンド建てでは史上2番目です。順位と同じ樽の来歴は前の章で触れたとおりです。ここでは、前の章で扱わなかった3つの点を整理します。通貨換算によって「最高額」の表現が変わる理由、同じ中身でもラベルによって値が分かれる理由、そして10月28日の香港セールの扱いです。
| 対象 | 開催 | 落札額 | 記録上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| マッカラン 1926 アダミ | 2023年11月・サザビーズ・ロンドン | 2,187,500ポンド(手数料込み) | オークションに出たウイスキーとして最高額(ポンド建て) |
| マッカラン 1926 ファイン&レア | 2026年10月9日・サザビーズ(マッカラン・エステートで初開催) | 2,125,000ポンド(手数料込み。約2,807,975ドル) | ポンド建てで史上2番目。ファイン&レアのラベルとして最高額。ハンマープライスは170万ポンド |
| マッカラン 1926 ファイン&レア | 2019年10月・サザビーズ・ロンドン | 1,452,000ポンド(手数料込み) | 今回の落札まで、このラベルの最高額 |
| 山崎50年(3つのリリース) | 2026年10月28日・サザビーズ香港 | 未確認 | 落札結果は未確認 |
「史上最高額」と書けない理由:通貨と換算日で順位が変わる
ドル換算では今回が最高額だとする報道がありますが、確認できていません。そのため本文では「史上最高額」とは書きません。異なる時期の落札額を比べるとき、どの通貨で、いつの為替レートで換算したかによって順位が入れ替わることがあります。アダミの落札額を2023年当時のレートでドルに直すか、今日のレートで直すかによっても、ドル建ての金額は変わります。記録の順位を書くときは、次の2点を守ると誤りを避けられます。1つ目は、落札時の通貨(今回はポンド)のまま比べることです。2つ目は、手数料込みの額どうしかを確認することです。ドルや円の金額は、換算の目安として添えるだけにします。
中身が同じでも値が分かれる:ラベル・来歴・状態
1926年蒸溜・60年熟成の全40本は、どれも同じ樽の原酒です。そのうち14本が、2002年にファイン&レアのラベルで出ました。瓶詰め後のウイスキーは、ガラスの中で熟成が進みません。中身の評価軸がそろっているぶん、オークションの値は次の3点で分かれます。
- ラベル:どのシリーズのラベルで出たか。同じ原酒でも、ラベルの版ごとに現存数と市場での認知が違う
- 来歴:最初の購入者からの所有の流れと、それを裏づける書類。来歴の切れ目は真贋への疑いにつながる
- 状態:液面の高さ(コルクを通じた長年の蒸散で下がる)、キャップシール、ラベルの傷み。数十年単位で保管されたボトルほど個体差が大きい
同じ原酒のアダミとファイン&レアについた約62,500ポンドの差には、ラベルの版、開催時期と会場(2023年のロンドンと2026年のマッカラン・エステート)、入札者の顔ぶれ、個体の状態が重なっており、どれが効いたかは切り分けられません。ラベルの違いだけでは説明できない差です。個々のボトルの状態が落札額にどれだけ影響したかも公表されていません。
サザビーズ香港の山崎50年は結果待ち
10月28日のサザビーズ香港の日本ウイスキーセールには、山崎50年の3つのリリースが同じセールに出品されました。落札結果は確認できていません。予想額や推定落札額も書きません。結果が確定したら、同じ銘柄でリリースごとに値がどう分かれたかを、前述の3つの評価軸で読み解く予定です。
高額落札を自分の判断にどうつなげるか
60年熟成・全40本という条件のボトルの記録は、店頭で抽選販売される限定品の値上がりを保証するものではありません。転売や資産として持つことを考える場合は、次のコストを先に差し引いて考えます。買い手手数料と出品手数料、輸送と保険、温度変化と直射日光を避けた保管、真贋の鑑定です。
- 酒販店・バー:落札ニュースを理由に、同じ蒸溜所の現行品の棚価格を上げない。値付けは仕入れ値とメーカーの改定通知で決める
- 愛好家・コレクター:将来売ることを考えるなら、購入時の領収書と外箱を残し、ボトルを立てて保管して液面の低下を記録する
- 贈答:記録的な落札額の話題は贈る理由になるが、贈るのは現行の市販品であり、資産価値の説明には使わない
- 外国人客への案内:「史上最高額」ではなく「同じ1926年の原酒で、ポンド建て史上2番目」と正確に伝える
2026年10月1日の酒税改正の最終段階|ウイスキーの値上げと増税を切り分ける
国税庁の資料によると、2017年の酒税法改正による税率の見直しは、一度ではなく3段階で進められてきました。2020年10月1日、2023年10月1日、2026年10月1日の3回で、今回の10月1日が最後の段階です。結論から言うと、ウイスキー(ボトル)は今回の見直しの対象外で、税率は据え置きです。段階的な見直しの対象は、ビール系飲料、清酒・果実酒などの醸造酒、チューハイなどの低アルコール飲料でした。
ウイスキーの税率は、アルコール分37度未満が1klあたり370,000円で、37度以上は37度を超える1度ごとに10,000円が加算されます。40%・700mlなら1klあたり400,000円で、1本あたり約280円です。度数で税額が変わるため、50.5%や61%のボトルは、同じ700mlでも37%の品より酒税額が大きくなります(61%・700mlなら約430円)。
読者に関係する増税は、ハイボール缶などのRTD(缶や瓶に入ってそのまま飲める酒)のほうです。チューハイやハイボール缶の多くが該当する低アルコールのスピリッツ・リキュールなどの税率は、10月1日に1klあたり28,000円から35,000円に上がりました。350ml缶なら1本あたり約9.8円から約12.3円への増税です。
酒税の仕組みから見る、増税と値上げの見分け方
酒税は、出荷される酒の量に対してかかる税です。国産品は製造場から出荷されるとき、輸入品は保税地域(関税を払う前の貨物を置いておく場所)から引き取るときに課税されます。価格に比例する税ではないため、税額が変わる場合は、容量と度数が同じなら銘柄によらず同じ額だけ動きます。
一方、メーカーの出荷価格の改定は、銘柄ごとに改定の幅も適用日も違います。ウイスキーの税率は10月1日に変わっていないので、10月にボトルの値上がりがあれば、それはメーカー・輸入元の改定か卸の価格調整によるものです。値上げの幅が銘柄によってばらばらなら、増税ではなくメーカーの改定が原因だと判断できます。
| 確認する項目 | 酒税の変更 | メーカーの出荷価格改定 |
|---|---|---|
| 確認先 | 国税庁の税率表 | メーカー・輸入元の「価格改定のお知らせ」 |
| 対象 | 同じ品目区分の酒すべて | 発表に記載された品目だけ |
| 値上げの額 | 容量と度数が同じなら同じ額 | 銘柄ごとに異なる |
| 適用日 | 法令で定めた日 | 「◯月◯日出荷分から」などメーカーが指定 |
| 10月の状況 | ウイスキーの税率は据え置き。RTDなど低アルコール飲料は増税 | 対象銘柄は各メーカー・輸入元の発表で確認 |
値札を変えるときの確認手順
- 卸から値上げの連絡が来たら、メーカー・輸入元の公式サイトに改定のお知らせが出ているかを確認する
- お知らせで、対象の品目、容量、改定前後の価格、適用日(出荷分からか、納品分からか)を照らし合わせる
- 改定前の価格で仕入れた在庫は、仕入れ値をもとに値付けする。適用日より前に入荷したボトルの値札まで、一律に上げない
- お知らせに載っていない銘柄が値上がりしている場合は、卸の価格調整や為替の影響かを卸に確かめる。増税として扱わない
客に値上げの理由を聞かれたときの答え方
- メーカーの改定が確認できた場合:「メーカーが◯月から出荷価格を改定したためです」と、改定した主体と時期をそろえて伝える
- 確認できていない場合:「酒税が上がったから」とは言わず、「仕入れ値が変わったためです。理由はメーカーの発表を確認中です」と答える
- 外国人客の場合:税の話を持ち出さずに「The producer raised its price this month.」と伝える。日本の酒税の仕組みを説明しなくて済み、誤解も生みにくい
- 店頭POP:改定した銘柄だけに掲示する。棚全体に「酒税改正のため」と貼らない
終売や値上げの噂だけで動かない
ペルノ・リカールの10月の終売品目(シーバスリーガル アルティス 20年など)と、サントリーの次の価格改定の有無は、メーカーの公式発表ではまだ確認できていません。終売品はたいてい在庫限りで静かに出荷が止まるため、噂が先に広がり、店頭在庫が一時的に消えて流通価格だけが上がる、ということが起きがちです。
- 酒販店:噂を理由に発注を増やしたり、「終売品」と書いて値札を上乗せしたりしない。輸入元が終売を発表してから、残りの在庫の値付けを決める
- バー:終売が確定する前に、ボトルの1杯の値段を上げない。確定したら、残量から何杯出せるかを数えて提供の計画を立てる
- 愛好家・コレクター:噂の段階で、流通価格を上乗せした出品を買わない。公式発表を待っても、通常価格の在庫が残っていることは多い
- 贈答:終売の話題を贈る理由にしない。現行品として買えるかを確かめてから選ぶ
新蒸溜所・検定・イベントの告知と、10月のニュースを踏まえた選び方

磯の浜蒸溜所(茨城県大洗町):2027年春の始動予定
株式会社古川酒造 磯の浜蒸溜所は10月1日、茨城県東茨城郡大洗町で「磯の浜蒸溜所」を2027年春に始動させる予定だと発表しました。木内酒造、メキシコのFraternity Spirits World SA、大里愛氏による合弁で、この蒸溜所のために設計した銅製ポットスチルを導入します。スチルの数は未確認です。10月に水戸市の高藏蒸留所が初のシングルモルトを出したことと合わせると、茨城県内で蒸溜所が増えていることが分かります。
銅製のスチルを使うのは、酒質に直接影響するからです。蒸溜中、銅は発酵で生じた硫黄化合物と反応し、それを取り除きます。硫黄化合物はゆで卵やゴムのような重い香りの元なので、銅との接触が多いほど軽く澄んだ酒質に近づきます。銅に触れる量を左右するのが還流(蒸気が冷えて液体に戻り、釜に落ちる量)です。首の高いスチルや、ラインアーム(スチル上部から冷却器へ蒸気を送る管)が上向きのスチルでは還流が増え、軽い酒質になります。逆に、首が低くラインアームが下向きなら還流が減り、重く油性の強い酒質になります。仕様が公開されたら、スチルの数、首の形、ラインアームの角度を確認してください。軽やかなスタイルを狙うのか、厚みのあるスタイルを狙うのかが読み取れます。
JWICの告知:ウイスキー検定とフェスティバル
- 10月21日:「第24回ウイスキー検定」を2027年2月に実施すると告知
- 10月23日:「ウイスキー&スピリッツフェスティバル2027 in 横浜」の開催決定を告知
- 11月の東京のフェスティバル:日程と会場は、出かける前にJWICの公式サイトで確認する
10月のニュースを踏まえた、条件別の選び方
| 条件 | 判断基準 | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 店で提供する(46%) | 加水しなくても香りが開いている | YUZAはストレートかハイボールで出す |
| 店で提供する(48〜55%) | 数滴の加水で香りが変わる | 手順は「58%をバーで出す手順」参照。シングル30mlを約45%にする水:48%→約2ml、50.5%→約4ml、55%→約7ml |
| 店で提供する(61%) | 加水を前提に設計する | 手順は「58%をバーで出す手順」参照。シングル30mlを約45%にする水:61%→約11ml |
| 贈答で形を整えたい | カートンの有無 | 価格表でカートン付きを区別しているのはYUZAのみ。ほかの銘柄は箱の有無を販売店に確かめる |
| 贈答の予算が1万円台 | 価格帯 | 価格が確認できているのは山鹿(11,000円・税込)。コンパスボックス(5,148円前後・2026年10月31日時点)は予算内かを確かめてから候補に入れる |
| 贈る時期が決まっている | 発売時期 | 10月発売の品はすぐ手に入る。山崎は11/24、スターヒルファームは12/8の発売なので、贈る日から逆算する |
外国人客や海外の知人には、ジャパニーズウイスキーの表示について業界団体(日本洋酒酒造組合)が自主的に定めた基準があることを伝えると、日本で造られた意味を説明しやすくなります。基準は、麦芽を必ず使い日本国内で採水した水を使うこと、糖化・発酵・蒸溜を日本国内の蒸溜所で行うこと、700L以下の木樽に詰めて日本国内で3年以上貯蔵すること、日本国内で瓶詰めしアルコール分40%以上であることなどを求めており、2024年4月から完全適用されています。ブレンデッドで特に問われるのは、輸入原酒、とくにグレーン原酒が混ざっているかどうかです。ただし、高藏・山鹿・YUZAがその基準に適合しているかは確認できていません。高藏は主な原酒が3年熟成とされていますが、全原酒が3年以上かは未確認です。YUZAはグレーン原酒の出どころが確認できていません。「基準に適合した日本産」とは言い切らず、銘柄ごとに確認できた区分だけで紹介してください。高藏は「高藏蒸留所(水戸市)の初のシングルモルト」、山鹿は「山鹿蒸溜所の新リリース」、YUZAは「YUZA(遊佐蒸溜所)の新しいブレンデッド」と伝えるのが確実です。コンパスボックスはスコッチ、スターヒルファームはアメリカンウイスキーなので、この基準とは関係ありません。
よくある質問
開栓した高度数の限定品は、どう保管すれば香りを保てますか
栓をしっかり閉め、温度変化と直射日光を避けて立てて保管します。残量が減るほどボトル内の空気が増え、酸化と揮発で最初に立つ香りが弱まりやすくなります。半分を切ったら小瓶に移し替え、空気に触れる量を減らすと、開栓時の印象を長く保てます。残量と香りの変化を記録しておくと、提供の計画も立てやすくなります。
加水にはどんな水を使えばよいですか
常温の軟水を使います。硬水はミネラル分が多く、口当たりが硬くなったり、香りの印象が変わったりしやすいためです。冷えた水は香りを閉じさせ、冷却濾過をしていないボトルでは濁りの原因にもなります。カルキ臭のある水道水は香りに混ざるので避けます。加水前と加水後を同じ水で比べると、香りの変化を正確につかめます。
高藏 the First(通常版)はハイボールにも向きますか
ハイボールにもできますが、まずストレートと少量の加水で味を確かめてから判断します。主な原酒は3年熟成で、梅酒樽由来の甘酸っぱさが特徴です。炭酸で割ると、フィニッシュに麦芽の甘みが残るかどうかが分かりにくくなります。初リリースの個性を伝えたいなら高藏はストレートで出し、ハイボールには常備しやすいYUZAを使う分け方が無難です。
50%を超えるボトルを出すとき、グラスは何を選べばよいですか
口がすぼまったテイスティンググラスを使います。香りが集まりやすく、加水による変化も伝わりやすいからです。ただし、度数が高いとアルコールの刺激も一緒に集まります。注ぐ量は少なめにし、鼻をグラスに近づけすぎないよう客に一言添えます。ロックグラスは香りが広がって逃げやすいので、香りを比べる目的には向きません。
抽選・割当品を店で出すとき、1本を何杯で原価回収する設計にしますか
700mlをシングル30mlで割ると計算上は23杯ですが、注ぎの誤差、スタッフの試飲、最後に残る量を見込み、それより少ない杯数で原価を割り戻します。1杯の原価は「仕入れ値÷想定杯数」で出し、そこに店の原価率の方針を当てて値付けします。15mlのハーフ量も出す場合は、ハーフで何杯分になるかを同じ式で計算します。割当品は追加で仕入れられないため、開栓前に「何杯目で原価を回収し、残りを利益にするか」を決めておくと、途中で値付けがぶれるのを防げます。
税別表記の品をPOPで税込表示にするとき、端数はどう処理しますか
消費者向けの値札やPOPでは、税込の総額表示が求められます。税別の価格に10%を加えて1円未満の端数が出た場合、切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを選ぶかは事業者に任されています。店内で処理方法を1つに決め、すべてのPOPとレジの会計でそろえてください。山崎 リフィルスパニッシュオークの希望小売価格27,000円(税別)は税込29,700円で、端数は出ません。
出典・参考にした情報
- ジャパニーズウイスキー情報サイト jpwhisky.net(確認日 2026-10-31)
- PR TIMES(確認日 2026-10-31)
- ベストカレンダー(確認日 2026-10-31)
- 遊佐蒸溜所(確認日 2026-10-31)
- The Spirits Business(確認日 2026-10-31)
- 国税庁(確認日 2026-10-31)
この記事で紹介した銘柄
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