飲み方の基本

ウイスキーテイスティングのやり方|加水と香りの取り方を解説

ウイスキーテイスティングの手順を、グラス選び・注ぐ量・環境の準備から解説。チューリップ形グラスに15〜20mlを注ぎ、色・香り・味・余韻の順に確かめ、常温の水を加えて香りの変化を比べる方法がわかります。

本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)が含まれます。 掲載している商品の価格・在庫は変動するため、最新の情報は各販売サイトでご確認ください。

テイスティングの準備:グラス・水・注ぐ量・環境を整える

テイスティングの流れは次のとおりです。チューリップ形のグラスにウイスキーを15〜20ml前後注ぎ、色→香り(ストレート)→味→余韻の順に確かめます。最後に常温の水を数滴から同量まで加え、もう一度香りをとって変化を比べます。手順の詳細は次の章、加水はその次の章で扱います。この章では、毎回同じ条件で比べるための準備を整えます。

サントリーは公式コンテンツ『YAMAZAKI BRAND STORY vol.7』で、テイスティングを「五感を使ってウイスキーの香りと味わいをじっくり確かめること」と説明しています(出典:サントリー公式サイト)。目的は、飲んで楽しむことではなく、香りと味を確かめることです。そのため、香りを邪魔するものを取り除いて準備します。

用意するのは3つ:グラス、常温の水、ウイスキー

  • テイスティンググラス:無色透明で、カットや色、装飾のないもの。カットガラスや色付きガラスは光を屈折させるため、樽や熟成年数で変わる液色を正しく見られません
  • 常温のミネラルウォーター:加水用。味や匂いの少ない軟水が扱いやすいです
  • ウイスキー:比べるなら、度数や樽の種類が分かるボトルを選ぶと、香りの違いを製法と結びつけやすくなります

水は常温のものを使います。冷水は香りが立ちにくく、白く濁る原因にもなります(加水の章で説明)。

グラスの形で香りの集まり方が変わる

テイスティングでは、胴が膨らみ口がすぼまったチューリップ形のグラスを使います。胴の広い液面から揮発した香りが、すぼまった口元に集まるためです。ロックグラスは口が広く、香りが鼻に届く前に逃げます。また、チューリップ形は香りと一緒にエタノールの蒸気も集まるため、度数の高いボトルでは鼻を縁に近づけすぎず、少し離した位置から香りをとるほうが刺激に負けません。

グラス形状香りの集まり方テイスティングへの向き不向き
グレンケアン・グラス胴が膨らみ口がすぼまる。脚がなく底が厚い口元に集まる向く。持ちやすく回しやすい
脚付きのノージンググラス(コピタ形)チューリップ形で脚が付く口元に集まる向く。脚を持つので手の温度が液に伝わりにくい
ロックグラス口が広い円筒形広がって逃げる向かない。氷やロック向き
タンブラー背が高く口が広い広がって逃げる向かない。ハイボールや水割り向き

グレンケアン・グラスは、蒸溜所や試飲会で広く使われている標準的なグラスです。同じグラスを使えば、他者の評価と条件をそろえやすくなります。

注ぐ量は少なく

テイスティングで注ぐ量の目安は15〜20ml前後です。グレンケアン・グラスなら、胴がいちばん膨らんだところより下に収まります。日本のバーではシングル30ml、ダブル60mlが一般的です(店により異なります)。ただ、これは飲む量を決めるための単位で、香りを確かめる量とは目的が違います。テイスティングではシングルと同じかそれ以下にし、比べるすべての銘柄で同じ量をメジャーカップで量って注ぎます。量をそろえると、度数や香りの強さを公平に比べられます。量が多いと、揮発するアルコールが増えて刺激が強くなり、香りの奥にある成分をとりにくくなります。また、液がこぼれそうでグラスを回せず、内側を濡らして香りを立たせることもできません。

香りを邪魔しない環境をつくる

  • 強い匂いを持ち込まない:香水、柔軟剤、ハンドクリームは避けます。グラスを持つ手の匂いが鼻に届きます
  • 直前に味の濃いものを口にしない:コーヒー、香辛料の強い料理、ミントの歯みがき粉は舌と鼻に残ります。口をすすぐなら常温の水を使います
  • グラスの匂いを確かめる:洗剤の残り香や布巾の匂いが香りに混ざります。注ぐ前に空のグラスを嗅ぎ、匂いがあれば水でよくすすいで自然に乾かします
  • 室内の匂いにも気を配る:芳香剤や調理中の匂いがある場所は避けます。試飲会なら換気のよい部屋を選びます

基本の手順:色→香り→味→余韻を順番に確かめる

ウイスキーのイメージ写真

テイスティングは色→香り→味→余韻の順に進めます。目で得た情報を先に整理し、鼻が疲れる前に香りをとり、最後に口と喉で確かめます。順番を崩すと、強い刺激に先に慣れてしまい、繊細な要素を拾えません。

段階英語何を見るか
色Colour / Appearance色調、濃さ、透明度、濁り
香りNose第一印象、グラスを回したあとの変化、香りの層
味Palate甘味・酸味・苦味・塩味、口当たり、アルコールの熱感
余韻Finish残る長さ、途中で出てくる香味の変化

色:濃さは熟成年数の証明にならない

白い紙や壁を背景にグラスを傾け、色調(淡い麦わら色、黄金色、琥珀色、赤みのある褐色など)と透明度を見ます。液色は樽材から溶け出す成分で決まるため、樽の種類や熟成年数で変わると説明されます。サントリーもそう案内しています。

ただし、色の濃さから年数やシェリー樽の使用は判断できません。理由は2つあります。1つ目は、スコッチウイスキー規則(SWR 2009)が無味のカラメル色素(E150a)による色調整を認めていることです。ロットごとの色のばらつきをそろえる目的で使われます。2つ目は樽の履歴です。ファーストフィル(バーボンやシェリーを入れたあと、スコッチの熟成に初めて使う樽)は色が早く濃くなります。リフィル(スコッチの熟成に2回目以降に使う樽)を何度も使ったものは、長く熟成しても淡い色に留まります。

ラベルの「ノンカラー(Natural Colour)」は、着色していないという表示です。色が樽由来のものだと分かるだけで、濃い色ほど長期熟成という意味にはなりません。

脚(レッグス/ティアーズ):品質の指標ではない

グラスを回すと、内側を伝って液が筋になって落ちます。これが脚(英語でlegsやtears)です。グラス壁の薄い液膜からエタノールが先に揮発し、膜の水の割合が上がって表面張力が強くなります。その差で液が引き上げられ、重くなって落ちる現象です。筋の出方はおもに度数と温度、回し方で変わります。「脚がゆっくり落ちるのは長期熟成で高品質」という通説は誤りです。見るとしても、度数の高さを推し量る目安にとどめます。

香り:鼻に届くまでの距離を段階的に縮める

いきなり鼻をグラスの口に入れると、エタノールの刺激で嗅覚が一時的に鈍ります。次の手順で距離を縮めます。

  1. グラスを胸の高さに持ち、香りが届くか確かめます
  2. あごの高さ、鼻先へと少しずつ近づけます
  3. 口を少し開けて嗅ぎます。息の流れが分かれ、鼻に入るエタノールの刺激がやわらぎます
  4. 片方の鼻だけで嗅ぎ、反対側でも嗅ぎます。左右で拾いやすい香りが違うことがあります
  5. グラスを回して内側を濡らし、もう一度嗅ぎます

グラスを回すと液が内壁に薄く広がり、揮発する面積が増えて香りが立ちます。サントリーの案内でも紹介されている方法です。最初の印象と、回したあとに出てくる香りを分けて記録すると、香りの層が見えてきます。強く何度も吸い込むと鼻が慣れてしまうため、短く数回に分け、間に顔を離して休ませます。加水の手順は次の章で扱います。

味:少量を口全体に行き渡らせる

小さじ1杯ほどを口に含み、舌の上で転がして先端から奥、側面まで行き渡らせます。数秒間とどめてから、次の3つを分けて捉えます。

  • 基本の味:甘味、酸味、苦味、塩味がどの順で、どこで感じられるか
  • 口当たり:オイリーさ、とろみ、さらりとした軽さ。冷却濾過をしていないボトルは厚みが出やすくなります(加水の章を参照)
  • 熱感:アルコールの刺激がどこで、どれくらい強く出るか。度数が高いほど味の要素を覆いやすくなります

一口目は強い刺激に舌が驚くため、評価は二口目以降で行います。

余韻:長さと変化を時間で追う

飲み込んだあと、口を閉じて鼻から息を吐きます。喉の奥から鼻へ抜ける香りで、余韻を確かめます。見るのは、香味が消えるまでの長さと、その間の変化です。たとえば甘さが先に引き、樽由来のスパイスやピートのスモークが遅れて残る、といった移り変わりを追います。

海外の評価記事やボトルの解説は、Nose・Palate・Finishの3項目で書かれることが多いです。

加水で香りが開く理由と、度数別の水の量

加水は、ストレートで香りをとったあとに行う2段階目の手順です。まずストレートで、第一印象とグラスを回したあとの香りを記録します。次に水を加え、何が強まり、何が引っ込んだかを比べます。順番を逆にすると、加水前の香りには戻れません。液色の観察も加水前に済ませておきます。

本記事は、このストレート→加水の2段階で進めます。最初から1対1に割って嗅ぐ方法もあり、度数の違う銘柄を同じ条件で並べる場合はこちらが向きます。

なぜ水を加えると香りが開くのか

理由は、鼻の側と液の側の2つから説明できます。

鼻の側:エタノールの蒸気は、嗅覚だけでなく鼻の粘膜の痛覚や刺激を伝える神経(三叉神経)にも働きます。度数が高いほど、このツンとする刺激がほかの香りを覆います。加水すると液面から出るエタノール蒸気が減り、この覆いが外れます。

液の側:エステル類やピート由来のフェノール類など、多くの香り成分は水より油になじむ性質を持ちます。エタノールが多い液ほどよく溶け込み、液中にとどまります。エタノール濃度が下がるとこれらの成分が溶けにくくなり、液面から空気中へ出やすくなります。

ただし、水を足せば香り成分そのものも薄まります。加水は、刺激の強さと香りの量のつり合いを動かす操作です。足すほど良くなるわけではありません。軽い酒質の繊細な香りは、加えすぎると平板になります。

1対1と少量加水は、目的で使い分ける

同量の水で1対1に割る飲み方はトワイスアップ(Twice Up)と呼ばれ、バーでも注文できます。度数はおよそ半分になり、40%のボトルなら約20%です。ブレンダーの官能評価で、度数を20%前後まで下げて嗅ぐ方法として広く知られています。サントリーも公式コンテンツで、同社のブレンダーが行う方法として紹介しています。度数の違う銘柄も、刺激の弱い低い度数帯にまとめて並べられるのが利点です。

  • 1対1:条件をそろえて比べるための方法です。度数の違う複数の銘柄を、刺激の弱い低い度数帯にまとめて並べられるため、試飲会に向きます。計量カップやピペットで量を正確に合わせます
  • 少量加水:1本の開き方を追うための方法です。スポイトで数滴ずつ加え(1滴は約0.05ml)、軽く回して少し置いてから嗅ぎます。滴数を記録し、香りが平板になり始める手前を、その銘柄がいちばん開く量の目安とします

度数の高いボトルほど、加水で刺激が引いたときの香りの変化が大きく出ます。

度数別、1対1で割ったあとの目安

ボトルの度数よくある例1対1加水後の目安加水で見るポイント
40%SWRが定める最低度数で詰めた製品約20%香りが薄くなりやすい。少量加水と並べて確かめる
46%冷却濾過をせずに詰める製品でよく見られる度数約23%白く濁ることがある(次項参照)
50〜60%台が多い(蒸溜所や樽で異なる)カスクストレングス(樽出しの度数のまま詰めたもの)約25〜35%1対1でも刺激が残る。さらに数滴ずつ足して変化を追う

表の数値は単純な計算による概算で、アルコールと水を混ぜたときに起きる体積の収縮は考えていません。

加水で白く濁るのは品質の問題ではない

冷却濾過(液を低温にして、濁りの元になる成分を濾し取る工程)をしていないボトルは、加水で白く濁ることがあります。原因は、原酒に含まれる脂肪酸エステルなど、油に近い成分です。これらは度数が高いうちは溶けていますが、度数が下がると溶けきれなくなり、細かな粒として出てきます。これが濁りの正体で、劣化や異物ではありません。口当たりの厚みにつながる成分が残っていることを示しています。冷却濾過は、46%未満で詰める製品が冷えたときや加水したときに濁るのを防ぐために行われます。冷却濾過をしない製品が46%以上で詰められることが多いのは、このためです。水温が低いほど濁りやすいため、水は常温のものを使います。

水は常温の軟水を選ぶ

  • 常温:冷たい水は香りの揮発を抑え、濁りも強めます
  • 香りと味の少ない軟水:ラベルの硬度表示が低いものを選びます。カルシウムやマグネシウムの多い硬水は苦味やミネラル感が加わり、味や口当たりの評価が狂います
  • 塩素臭のある水道水は避ける:日本の水道水は、消毒のため蛇口の水にも塩素を残す決まりがあります。塩素の匂いはウイスキーの香りに混ざり、ピート由来の薬品のような香りと紛らわしくなります
  • 試飲会では全員に同じ銘柄の水を配る:水の違いが比較の誤差にならないようにします

感じた香りを言葉にする:香味を製法に結びつけて読む

ウイスキーのイメージ写真

「スモーキー」「フルーティー」は入口の言葉です。その香味がどの工程で生まれたかまで考えると、表現が具体的になり、銘柄を比べる軸もできます。テイスティングノートは「香り:レーズン、カカオ(推定:シェリー樽)」のように、感じた香りと推定した由来を並べて書きます。後で製法の情報と照らし合わせて、推定が合っていたか確かめられます。

ピート香:ppmは麦芽の値で、製品のスモーキーさとは別

ピート香は、麦芽を乾かす工程(キルニング)で焚くピートの煙から来ます。煙に含まれるフェノール類が、湿った麦芽の表面に付きます。ppmは、この麦芽に含まれるフェノール類の濃度です。製品に残る量は、その後の工程で変わります。フェノール類は揮発しにくく、再溜の後半に多く出てきます。そのため、ミドルカット(蒸溜液のどの部分を製品に回すか)を低い度数まで取る蒸溜所ほど、スピリッツに多く残ります。熟成が長くなると、煙の印象は穏やかになります。ppmの数字だけで、製品のスモーキーさは決まりません。

煙の香りは、フェノール類の種類によって2つの系統に分けて捉えられます。

  • グアイアコール類が多い:焚き火、燻製、ベーコン
  • フェノール、クレゾール類が多い:消毒液、タール、海藻、ヨード

「ヨード」と表現されますが、ヨウ素そのものの香りではありません。どちらの系統が強く出るかは、ピートの植物組成、焚き方、カットの位置で変わります。

樽の香り:シェリー樽とバーボン樽

シェリー樽からは、レーズンやプルーンなどのドライフルーツ、くるみ、カカオの香りが出ます。ヨーロピアンオークはタンニンが多く、渋みとドライさも加わります。ただし、市場に出るシェリー樽の多くは、シェリーの醸造や熟成に使った樽ではありません。ウイスキーの熟成用に、オロロソやペドロ・ヒメネスを一定期間入れて味を付けた樽で、これをシーズニング樽と呼びます。

バーボン樽からは、バニラ、ココナッツ、キャラメルの香りが出ます。米国の規則では、バーボンは内側を焦がした新樽で熟成させます。そのため、一度使った樽がスコッチの熟成に回ります。ココナッツの香りは、アメリカンオークに多いオークラクトン(ウイスキーラクトン)から来ます。バニリンは、木材のリグニンが熱で分解してできます。キャラメルの香りは、ヘミセルロースが熱で糖に分解され、焦げてできた成分から来ます。チャー(内側を炎で焦がす処理)を深くすると、炭化した層の下に、熱で分解された層が厚くできます。この層から甘い樽香が溶け出します。炭化した層には、硫黄系の未熟な香りを吸着する働きもあります。

ファーストフィルは樽の成分が多く溶け出し、樽香が前に出ます。リフィルは樽の影響が弱いぶん、蒸溜所の個性が出やすくなります。

スピリッツ由来の個性

  • 軽さ:3回蒸溜では蒸溜を重ねて高い度数で取るため、重い成分が残りにくくなります
  • 華やかさ:背の高い蒸溜器、上向きのラインアーム、ボイルボール(首の膨らみ)は還流(蒸気が冷えて釜に戻ること)を増やし、軽く華やかな酒質にします。発酵時間を長くすると、エステル由来の果実香が増えやすくなります
  • ワキシー:蝋のような質感です。クライヌリッシュでは、ローワインやフェインツをためる槽の沈着物が関係するとされます
  • 潮っぽさ:海辺の熟成庫と結びつけて語られますが、海風が液に塩分を移すことは確かめられていません。塩味の印象として記録し、由来は断定しません

練習用の銘柄:香味の軸ごとに並べる

軸銘柄探す香味製法との結びつき
ピートアードベッグ 10年消毒液、タール、レモンフェノール系の煙。バーボン樽由来のバニラが下支えする
ピートカリラ 12年燻製、オイル、レモンリフィル樽が中心で、スピリッツと煙が前に出る
ピートキルホーマン マキヤーベイ焚き火、バニラ、ドライフルーツバーボン樽主体にオロロソシェリー樽を合わせている
シェリー樽グレンドロナック 12年レーズン、カカオ、くるみペドロ・ヒメネスとオロロソのシェリー樽で熟成
シェリー樽アベラワー 12年 ダブルカスクマチュアード赤い果実、スパイス、バニラアメリカンオーク樽とシェリー樽の原酒を合わせている
バーボン樽グレンフィディック 12年洋梨、バニラ、軽いオークアメリカンオーク主体。ヨーロピアンオーク樽の原酒も使う
スピリッツオーヘントッシャン 12年軽さ、柑橘、トースト3回蒸溜
スピリッツクライヌリッシュ 14年蝋、蜂蜜、オレンジピールワキシーな酒質
スピリッツオールドプルトニー 12年塩気、バニラ、蜂蜜バーボン樽熟成。独特な形の蒸溜器を使う

練習では、まず同じ軸の2本を並べて違いを言葉にします。そのあと、別の軸の1本を加えます。たとえばアードベッグ 10年とカリラ 12年を並べて、消毒液系と燻製系の比率を比べます。次にグレンフィディック 12年を加えると、ピートのない状態でバーボン樽由来のバニラがどう出るかが分かり、煙の陰にあった樽香も拾えるようになります。

比べて上達する:飲み比べの組み方と、ラベルで先に確かめること

1本だけでは、感じた香りが蒸溜所の酒質から来るのか、樽や度数から来るのかを切り分けられません。条件をそろえ、違いを1つに絞った2〜3本を並べると、香りの差をその違いの効果として読めます。

違いを1つに絞った組み合わせ

型組み合わせ(飲む順)違う条件見るポイント
樽違いオーヘントッシャン 12年 → オーヘントッシャン スリーウッド樽構成。スリーウッドはバーボン樽、オロロソ、ペドロ・ヒメネスの3種3回蒸溜の軽い酒質に、ドライフルーツの香りがどこまで重なるか
後熟違い(ピートあり)カリラ 12年 → カリラ ディスティラーズエディションモスカテル(甘口ワイン)樽での後熟の有無甘い樽香が燻製香とオイリーさをどう包むか
度数違いグレンファークラス 12年 → グレンファークラス 105度数。12年は43%、105はカスクストレングスで60%105を12年と同じ43%前後まで割って並べる(105の10mlに水約4ml、概算)。度数をそろえても残る差は、樽構成やロットの違いとして読む
年数表記の有無グレンスコシア ダブルカスク → グレンスコシア 15年年数表記と樽構成の2つ樽由来の甘さと、熟成由来の深みを分けて記録する
ピートあり・なしオーヘントッシャン 12年 → カリラ 12年ピートのほか、地域と蒸溜回数違いが多いため、煙以外の差は由来を断定しない

地域差だけを切り出せる組み合わせは少ないため、地域の違う銘柄を並べたときは、差の由来を断定しません。

飲む順番:ピートは最後、同じ水準なら度数の低い順

フェノール類は揮発しにくい成分です。口と鼻に残りやすいため、カリラを先に飲むと、次の銘柄の果実香やバニラが煙に隠れます。度数の高い銘柄を先にした場合も、エタノールの刺激で舌と鼻が鈍ります。並べるときは、まずピートの弱いものから強いものへ進めます。ピートの強さが同じなら、度数の低いものから高いものへ進めます。例として、オーヘントッシャン 12年→グレンファークラス 12年→カリラ 12年の順にします。慣れてきたら、4本目としてカスクストレングスのグレンファークラス 105を、グレンファークラス 12年とカリラ 12年の間に加えます。

よくある失敗と、その理由

  • 量を注ぎすぎる:1本ごとの量に本数を掛けた分だけアルコールを摂ることになり、後半の銘柄ほど感覚が鈍ります
  • 冷たい水や氷を使う:香りが立たないうえ、銘柄ごとに温度がずれて比較の条件が崩れます
  • 強いピートの銘柄から始める:煙が残り、後の銘柄を正しく評価できません
  • 一度に本数を増やしすぎる:嗅覚は同じ匂いに慣れて感度が下がります。初めは3本までにし、銘柄の間に数分あけます。鼻が慣れたと感じたら、グラスから顔を離して自分の手首や袖の匂いを嗅ぎ、感覚を戻してから次に進みます
  • 口直しの水を飲まない:前の銘柄のエタノールと香味が残り、次の銘柄の熱感と区別できません。一口ごとに常温の水を飲みます

飲む前にラベルで確かめる4項目

  • 度数:46%以上やカスクストレングスは、最初の刺激が強く、加水で大きく変わると予想できます。比べるときは加水の条件をそろえます
  • 熟成年数表記:SWRでは、表示する年数は使った原酒のうち最も若いものの年数です。ノンエイジ(年数表記なし)は年数を表示していないという意味で、若い原酒だけで造られているとは限りません。グレンファークラス 105もノンエイジです
  • 冷却濾過の有無:Non Chill-Filteredの表記があれば、口当たりの厚みと、加水での白濁を予想できます(加水の章を参照)
  • 着色の有無:Natural Colourの表記がなければ、液色から樽を推し量りません

ジャパニーズウイスキーを比べるときの注意

日本洋酒酒造組合の自主基準は2021年2月に定められ、2024年4月に本格施行されました。法律ではなく、業界の自主基準です。基準に合わない例として、海外原酒を使った製品、貯蔵3年未満の製品、スピリッツを加えた製品が挙げられています。組合は2025年3月27日に「JW」のロゴマークを発表し、同月に商標登録を出願しました。要件の細部は、組合が公表している基準の本文で確かめてください。比べる前に、表示とメーカーの製品情報で原酒の産地を確かめます。基準に合う製品と合わない製品を混ぜて比べると、差の由来を読み違えます。

練習に高価なボトルは要らない

比べる練習で大事なのは、条件のそろった組み合わせです。値段の高さは関係ありません。練習用の銘柄表にあるような、比較的手に入れやすい定番品で十分です。少量ずつ試すなら、30mlほどの小瓶を集めたテイスティングセットも手軽です。セットの選び方は別記事で紹介しています。

テイスティングのよくある疑問

ウイスキーのイメージ写真

吐き出してもよいか

コンペティションの審査や仕入れのための試飲など、評価が目的の場では吐き出すことがあります。何本も飲み込むと血中のアルコールが増え、後半の銘柄ほど判断が鈍るためです。吐き出す場合も、口に含んで舌の上で転がすまでは同じです。吐いたあと口を閉じて鼻から息を吐くと、喉を通さなくても余韻の一部は確かめられます。家で1〜2本を楽しむなら、飲み込んで喉越しから余韻まで確かめてかまいません。試飲会では、吐き出し用の容器(スピットン)を各席に置くと、参加者が吐き出しを選びやすくなります。

開栓後に香りは変わるか

変わります。飲み進めると瓶の中の空気の層が増え、液が空気に触れて酸化が進みます。また、栓を開けるたびに、揮発しやすい軽い香り成分から先に抜けていきます。開栓直後は閉じていた香りが少しずつ開くこともありますが、残量が減るほど変化は早まり、華やかな果実香から先に弱まります。

  • 残量が半分を切ったら、口まで満たせる小瓶に移して空気の層を減らします
  • 瓶は立てて保管します。度数の高い液がコルクに触れ続けると、コルクが傷みやすくなります
  • 直射日光と高温を避け、温度の変化が少ない場所に置きます
  • 比較のためのノートには開栓日を書き、変化が開栓後の経過によるものか見分けられるようにします

ハイボールや水割りでもテイスティングできるか

銘柄の特徴をつかむ目的には向きません。冷やすと香り成分が揮発しにくくなり、甘味も感じにくくなります。炭酸ガスは泡が弾けるときに香りを持ち上げる一方で、舌への刺激が味の細部を覆います。水や氷の量によって度数と温度も大きく変わるため、銘柄どうしを同じ条件で比べられません。特徴はストレートと加水で確かめ、ハイボールは別の楽しみ方として分けて考えます。気に入った銘柄がハイボールでどう変わるかを比べるのは、そのうえでの楽しみ方です。

バーでテイスティングしたいときの頼み方

量を抑えたいときは、ハーフで注文できるか先に尋ねます。対応しているか、料金をどう計算するかは店によって違います。あわせて、口直し用のチェイサーと、加水用の常温の水を頼みます。加水用には、小さなピッチャーかスポイトがあるか聞くと、数滴ずつ加えられます。グラスは、ロックグラスではなくテイスティンググラスで出してもらえるか確かめます。

海外のバーや、英語での試飲会では、次の言い方が役に立ちます。

場面英語の言い方
少量で頼みたいCould I have a half pour?
チェイサーを頼むA glass of still water on the side, please.
加水用の水を頼むSome room-temperature water for adding a few drops, please.
グラスを指定するCould you serve it in a nosing glass?

テイスティングノートは何を書けばよいか

最初は次の最小の項目だけで十分です。味の欄は「甘いか苦いか、濃いか薄いか」から始め、言葉が増えてきたら香りの名前や推定した由来を足していきます。

項目書く内容の例
銘柄蒸溜所名、年数表記、ボトリングの種類
度数ラベルの表記どおり
日付飲んだ日と開栓日
加水なし/数滴/1対1
香り(Nose)甘い、スモーキー、果物っぽい
味(Palate)甘いか苦いか、濃いか薄いか
余韻(Finish)短い・長い、最後に残るもの
評価点数、または好き・普通・苦手

度数と加水の有無を必ず書くのは、同じ銘柄でも条件が違えば印象が変わるためです。この2つが残っていれば、後で読み返したときに、印象の違いが銘柄によるものか、条件によるものかを見分けられます。

よくある質問

注いでから時間がたつと、グラスの中で香りは変わりますか

変わります。揮発しやすい軽いエステル類の果実香が先に立ちます。時間がたつとそれらが抜けて、樽由来のバニラや木の香り、穀物の香りが前に出ます。注いだ直後と数分後の印象を分けて記録すると、香りの層が見えます。飲み終えた空のグラスには揮発しにくい樽由来の甘い香りが残ることがあり、嗅ぐと樽の影響を確かめる手がかりになります。

グラスを手で包んで温めてもよいですか

温めると香りは立ちますが、エタノールの刺激も強まります。評価は常温のまま済ませ、温めたときの香りを見たいときは、そのあと別の段階として試します。ノートにも、常温での記録とは分けて書きます。

同じ銘柄なのに、前に飲んだときと印象が違うのはなぜですか

多くの銘柄は複数の樽の原酒を合わせて造られます。ブレンダーが香味をそろえても樽ごとの差は残るため、瓶詰めの時期によってロット差が出ます。シングルカスクは1樽ごとの製品なので、差がさらに大きくなります。開栓後の経過や加水の条件でも印象は変わります。ラベルのロット番号や瓶詰め年、開栓日をノートに残すと、どれが原因か見分けられます。

テイスティンググラスがないときは、何で代用できますか

口がすぼまった小ぶりの白ワイン用グラスなら、香りが口元に集まるので代用できます。ショットグラスは胴がまっすぐで液面が小さく、回して内側を濡らせないため向きません。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。