印鑑会社「大谷」ウイスキー造りへの挑戦【読売新聞】

新潟市の印鑑製造販売会社「大谷」は、新事業としてウイスキー造りに取り組んでいます。製造開始からわずか2年で、今年3月には世界的なウイスキー品評会で部門最高賞を受賞するなど、早くも成功を収めています。この業界への参入は、「脱ハンコ」の波と人口減少による市場縮小を受けて、新たな事業への挑戦として始まったものです。

「大谷」は1951年の創業以来、全国に約110店舗を展開しています。2代目社長の妻と結婚した同社役員の堂田浩之さんは、ウイスキー愛好家でもあり、ウイスキー造りに深い興味を持っていました。そこで、堂田は自分でウイスキーを造るというアイデアが生まれ、実際に事業化に向けて動き出しました。初期投資額は約3億円で、工場倉庫を改修し、スコットランド製の銅製の釜を取り寄せて蒸留所を設立しました。

スコットランド製の銅製の釜、通称「ポットスチル」は、ウイスキー製造において最も重要な要素の一つで、その品質がウイスキーの風味に大きな影響を与えます。スコットランド製のものは特に評価が高く、堂田さんもその高い品質を認め、自社のウイスキー製造に取り入れることを決定しました。

このポットスチルは、原料の麦芽から抽出したアルコールを蒸留し、純度を高めるための装置です。銅製のため、アルコール蒸気と反応して不純物を除去し、よりクリーンで滑らかな風味のウイスキーを生み出します。また、その形状も独特で、それぞれのポットスチルが生み出すウイスキーの風味に特性をもたらします。

「大谷」が造った最初のウイスキーには、「新潟亀田ニューポット ピーテッド」という名前が付けられました。これは、無色透明の原酒で、フルーティーな香りとピート(泥炭)のスモーキーな香りがバランスよく調和したものです。このウイスキーは、今年3月にロンドンで開催された「ワールド・ウイスキー・アワード」で、うれしいことに部門最高賞を受賞しました。この新事業の成功を受けて、堂田さんは「事業として今後も長く続けていける見込みが立った。ほっとした」と述べています。

しかし、「大谷」の挑戦はまだまだ始まったばかりです。堂田さんは、これからもウイスキー造りを会社の新たな柱として、更なる品質向上と成功に向けて取り組んでいくと語っています。

2023年5月13日(土)「読売新聞」
印鑑会社のウイスキー、世界的品評会で太鼓判…妻のひと言「自分で造れば」から二刀流の道
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230513-OYT1T50144/2/

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