マッカラン12年の評価レビュー|2種の味・飲み方・価格の判断基準
現行のマッカラン12年はシェリーオークとダブルカスクの2種。樽のオーク種の違いによる味の傾向、共通仕様、希望小売価格の税別3,600円差を整理し、甘く穏やかな味ならダブルカスク、ドライフルーツとスパイス重視ならシェリーオークという選び方を示します。
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評価を読む前に:現行のマッカラン12年は「シェリーオーク」と「ダブルカスク」の2種、それぞれの仕様と価格
甘く穏やかな味で価格を抑えたいならダブルカスク12年、ドライフルーツとスパイスを重視するならシェリーオーク12年を選んでください。根拠は、メーカーが公表する樽構成と風味表現、そして税別3,600円の希望小売価格の差です。以下で順に示します。
評価を読む前に、まず「どの12年の話か」を確かめてください。サントリーの現行製品一覧に掲載されている12年物は、シェリーオーク12年とダブルカスク12年の2種です。ネット上の評価には、旧ボトルや別の12年物の感想が混ざっていることがあります。「甘くて軽い」と「重くてスパイシー」という正反対の感想が、実は別のボトルについて書かれていることも珍しくありません。口コミを読むときは、ラベルの英語表記「SHERRY OAK」「DOUBLE CASK」を見て、どちらの感想かを確認してから参考にしてください。
共通する仕様:モルト、700ml、40%
国内向けの2本は、原材料がモルト、容量が700ml、アルコール度数が40%で共通しています。公表されている大きな違いは樽構成です。ただし瓶詰め度数が同じでも、加水前の原酒の度数や配合比率まで同じとは限りません。年数表示は、スコッチウイスキー規則(SWR 2009)の年数表示規定により、瓶詰めした原酒のうち最も若いものの樽熟成年数を表示します。「12年」は下限を示す数字で、平均年数ではありません。12年を超える原酒が含まれている可能性はありますが、その比率は公表されていません。色について、メーカーはどちらも樽熟成に由来する自然な色だと説明しています。
樽構成の違い:差は「シェリー樽かどうか」ではなくオーク種
シェリーオーク12年は、シェリー酒で風味づけしたヨーロピアンオーク樽を主体に、最低12年間熟成させます。ダブルカスク12年は、シェリー酒で風味づけしたアメリカンオーク樽とヨーロピアンオーク樽の原酒を使います。
「ダブルカスク=バーボン樽とシェリー樽」は誤解です。 2種類の樽は、どちらもシェリーで風味づけされています。違うのは樽材のオーク種です(成分の違いと香味への表れ方は次章で説明します)。
| 項目 | シェリーオーク12年 | ダブルカスク12年 |
|---|---|---|
| ラベル表記 | SHERRY OAK | DOUBLE CASK |
| 樽構成 | シェリーで風味づけしたヨーロピアンオーク樽が主体 | シェリーで風味づけしたアメリカンオーク樽とヨーロピアンオーク樽 |
| メーカーの風味表現 | ドライフルーツ、ナツメグ、オークスパイス、ジンジャーの余韻 | ファッジ、柑橘類、バニラ、穏やかなスパイス |
| 原材料・容量・度数 | モルト・700ml・40% | モルト・700ml・40% |
| 希望小売価格 | 税別13,500円(税込14,850円) | 税別9,900円(税込10,890円) |
| 実売の例(2026年10月) | 高島屋:税込14,850円 | カクヤス(箱入り):税込9,548円 |
価格:定価の差と、実売価格の比べ方
希望小売価格は、税別で3,600円の差があります。改定の経緯と口コミの読み方は第3章で整理します。最新の実売の目安は、シェリーオークが 4,530円前後(2026年10月13日時点)、ダブルカスクが 4,530円前後(2026年10月13日時点) です。
- 税込か税別か:希望小売価格は税別で示されることが多く、通販の掲載価格は税込が中心です。比べる前に、どちらかにそろえます
- 箱の有無:贈答用なら箱入りかどうかを必ず確認します。上のカクヤスの例は箱入りの価格です
- 参照した日付:改定をまたいだ口コミの「安い・高い」は、当時の価格を前提にしています
トリプルカスク12年の扱い
トリプルカスク12年は、サントリーの現行製品一覧に載っていません。ただし、正式な終売の発表は確認できないため、終売とは断定できません。店頭や通販で見かけた場合は、在庫品の可能性も含めて扱ってください。3種の仕様の比較は、/macallan-12-year-comparison-sherry-oak-double-cask-triple-cask-guide/ で扱っています。
テイスティングレビュー:2種の香り・味・余韻と、その違いを生む樽と蒸溜の理由

下の表は、第1章で挙げたメーカーの風味表現の語だけで構成し、それをグラスで確かめる手順を添えたものです。段階ごとのメーカーの原文は、各商品ページのテイスティングノートで確認できます。グラスでは3段階で確かめます。ノージングは香りを嗅ぐ段階、パレットは口に含んだときの味と質感、フィニッシュは飲み込んだ後の余韻です。メーカーが挙げる語が自分のグラスでどれだけはっきり感じられるかを見ると、2本の差がつかみやすくなります。
| 項目 | シェリーオーク12年 | ダブルカスク12年 |
|---|---|---|
| メーカーの風味表現 | ドライフルーツ、ナツメグ、オークスパイス、ジンジャーの余韻 | ファッジ、柑橘類、バニラ、穏やかなスパイス |
| ノージングの確かめどころ | まず揺らさずに嗅ぎ、次に軽く回して、ドライフルーツのあとにナツメグなどのスパイスが加わるかを見る | 同じ手順で、ファッジやバニラの甘さと、柑橘類の明るさのどちらが先に来るかを見る |
| パレットの確かめどころ | 果実の甘さとオークスパイスのどちらが前に出るか | 甘さとスパイスのどちらが前に出るか |
| フィニッシュの確かめどころ | 余韻の長さより、ジンジャーなどのスパイスがどれだけ残るか | 余韻の長さより、甘さとスパイスのどちらが残るか |
樽材の成分と香味の方向
前の章で触れたオーク種の違いは、一般に次のような傾向として説明されます。ヨーロピアンオークはタンニン(渋みのもとになるポリフェノール)が多く、渋みやスパイスの方向に寄りやすい樽材です。アメリカンオークはウイスキーラクトン(ココナツのような香り成分)とバニリン(バニラの香り成分)が多く、甘い木香を出しやすい樽材です。シェリーオークのナツメグやジンジャー、ダブルカスクのファッジやバニラというメーカーの表現は、この傾向と矛盾しません。ただし、製品の香味に樽材がどれだけ寄与しているかは測定値が公表されていません。ダブルカスクで甘さが先に立つのはアメリカンオーク由来の香りによる可能性がある、という説明にとどまります。香味はほかにも、シーズニングに使ったシェリーの種類、樽の使用履歴(初めてウイスキーを詰めるファーストフィルか、再使用のリフィルか)、樽内側の焼き方(トーストやチャー)、樽ごとの原酒の選び方と配合比率の影響を受けます。
「シェリー樽」の実態:古樽ではなくシーズニング樽
「シェリー樽」と聞くと、ボデガ(シェリーの熟成蔵)で長年シェリーを育てた古樽を思い浮かべる人が多いはずです。しかしメーカーの説明は「シェリー酒で風味づけした樽」です。これはシーズニング樽を指します。ウイスキー熟成用に新しく組んだ樽にシェリーを一定期間入れてなじませ、シェリーを抜いた後でウイスキーを詰める方式です。メーカーは、スペイン・ヘレスの樽工房で、オロロソ・シェリー(酸化熟成させた辛口のシェリー)を使ってシーズニングしていると公表しています。一方、シーズニングの期間、ファーストフィルとリフィルの比率、樽のサイズ(約500Lのバットか約250Lのホグスヘッドか)の内訳は、公表値を確認できないため書きません。古いボデガ樽は木の成分が出尽くしていることが多く、シーズニング樽とは樽材から出る成分の量が異なります。「シェリー樽だからシェリーの味がする」と単純に言えないのは、香味が、樽材からの抽出、樽にしみ込んだシェリー由来の成分、そしてそれらと原酒の反応が重なって生まれるためです。それぞれがどれだけ寄与しているかは公表されていません。
蒸溜:小型スチルと狭いカット
2018年に開設された現蒸溜所には、小型の銅製スピリットスチル(2回目の蒸溜を行う釜)が24基あります。メーカーはスチルの小ささを特徴に挙げ、銅との接触にも触れています。スチルの形と大きさは、還流(蒸気が釜の上部で冷えて液体に戻り、釜へ落ちること)の量や、蒸気が銅に触れる度合いに関わります。銅との接触は、硫黄化合物などの重い成分を取り除く方向に働きます。ただし原酒のスタイルは、スチルの形状だけでは決まりません。ラインアーム(蒸気を冷却器へ導く管)の角度、加熱の強さ、銅との接触、そしてミドルカットが重なって決まります。ミドルカットとは、蒸溜の初めに出る前留(ヘッド)と終わりに出る後留(テール)を除き、製品に使う中留の範囲を決めることです。メーカーは、この範囲を狭く取る「狭いカット」を特徴に挙げています。カット率は、公表値として確認できた数値がないため記載しません。原酒の厚みをスチルの背丈だけで説明すると、蒸溜の一部しか見ていないことになります。
色・ピート・冷却濾過・年数表示:言えることと言えないこと
- 色:第1章のとおり、メーカーは両シリーズとも樽熟成に由来する自然な色だと説明しています。ただし色は、樽の使用履歴や樽ごとの個体差でも変わります。色だけで樽構成や香味の強さは判断できません
- ピート:スモーキーさの主な源は、麦芽を乾燥させるキルン(乾燥塔)でピート(泥炭)を焚く工程です。煙に含まれるフェノール類が麦芽に付き、その量は麦芽のフェノール値(ppm)で示されます。マッカランの公式説明は「ピート麦芽の使用で知られる銘柄ではない」という表現にとどまります。両12年物のフェノール値は公表情報で確認できないため、数値は推測で書きません。飲んで香ばしさを感じる場合は、樽内側の焼き(トーストやチャー)に由来する木の香ばしさや、ジンジャーなどのスパイスがそう感じられている可能性があります
- 冷却濾過:冷却濾過は、ウイスキーを冷やし、低温や加水で白濁する原因となる脂肪酸エステルなどの成分をフィルターで除く処理です。この2本で行っているかどうかは、公表情報で確認できません。「ノンチルだから濃い」といった説明は根拠になりません
- 年数表示:第1章のとおり下限の数字です。2本の差は年数ではなく樽構成から読みます
「まずい」「過大評価」「美味すぎる」「シェリーの王様」はどこまで正しいか:評判と価格の時系列検証
「まずい」「過大評価」という声を読むときは、味そのものへの評価なのか、期待や価格とのずれへの評価なのかを分けます。反対に「美味すぎる」「シェリーの王様」という声も、どちらのボトルを、いくらで買った前提なのかを確かめないと正しく読めません。
否定的な評価が出る3つの理由
- 度数40%と余韻の短さ:両12年物は40%で瓶詰めされます。加水で香味成分の濃度が下がるため、度数の高いボトリングに慣れた人ほど余韻を短く感じやすくなります。物足りないと感じたら、まず小ぶりのチューリップ型グラスで香りを集めます。加水は数滴にとどめます(手順は飲み方章)
- ダブルカスクに濃いシェリーを期待する:メーカーがファッジやバニラを挙げる設計なので、「シェリーの王様」という像で飲むと軽く感じます。これは欠陥ではなく、設計の方向が違うということです
- 同価格帯のシェリー系との比較:シェリーオーク12年は税別13,500円です。同じ予算なら、他の蒸溜所の高めの度数のシェリー系シングルモルトも候補に入ります。度数や濃さを価格で割って比べると、割高に見えやすくなります
肯定的な評価と「ロールスロイス」の意味
「美味すぎる」という評価も、ダブルカスクの甘さへの反応か、シェリーオークのドライフルーツ感への反応かで意味が変わります。どちらのボトルの感想かを確かめてから読みます。「シングルモルトのロールスロイス」は、ブランドの格を語る通称です。味の優劣を示す客観的な基準ではありません。贈答では相手に伝わる価値になりますが、香味を判断する材料にはなりません。受賞歴も、現行品については確認できないため、評価の根拠にはしません。
価格の時系列:口コミの前提をそろえる
| 時点 | 内容 | 評価を読むときの注意 |
|---|---|---|
| 旧商品ページ | ダブルカスク12年が税別8,000円 | 過去の数字が残っているだけで、現行価格ではない |
| 2022年の改定 | シェリーオーク12年が税別9,000円 | 「定価9,000円」の出どころの一つ。現行価格ではない |
| 2024年4月 | シェリーオーク12年の値上げが報じられている | 2022年改定後の価格を前提にした口コミは、ここで前提が変わる |
| 2025年3月まで | ダブルカスク税別9,040円、シェリーオーク税別12,500円 | 2025年4月の改定直前の価格 |
| 2025年4月1日出荷分から | 両12年物を含む輸入ウイスキーの価格を改定(ダブルカスクは税別9,040円→9,900円) | これより前の「安い」「コスパが良い」は旧価格が前提 |
| 現行の希望小売価格 | ダブルカスク税別9,900円、シェリーオーク税別13,500円 | 評価はこの価格と比べて読み直す |
| 2026年4月1日出荷分からの改定発表 | 主な対象は響・山崎・白州 | マッカラン12年が対象かどうかは確認できていない |
ネット上で見かける「定価9,000円」という数字は、2つの時点の価格と重なります。税別9,000円は、シェリーオーク12年の2022年改定後の希望小売価格です。また、ダブルカスク12年の2025年4月改定前の価格(税別9,040円)を指している可能性もあります。価格の記述がある口コミは、銘柄(シェリーオークかダブルカスクか)、税込か税別か、投稿の時期の3点を、上の表と照らし合わせてから読んでください。
価格に触れた評価は、購入時期と実売額を確認する
同じ中身でも、支払った額によって飲み手の要求水準は変わります。価格に触れる評価は、投稿時期の希望小売価格と、投稿者が実際に払った額を確かめてから読みます。読み分けの基準は次のとおりです。
- 価格に触れていない否定的な評価:香味の好みの問題です。濃さを求めた人の不満ならシェリーオークを、甘さが苦手な人の不満なら他銘柄を検討する材料になります
- 価格に触れた否定的な評価:投稿日の価格を確認します。現行価格で比べて同じ結論になるかどうかを見ます
- 「昔は良かった」:現蒸溜所の開設は2018年です。そこで蒸溜した原酒が12年表示に使えるのは、早くても2030年以降です。「新蒸溜所で味が落ちた」という説は、現行の12年物には当てはまりません
飲み方別レビュー:ストレート・加水・トゥワイスアップ・ロック・ハイボールの手順と、2種それぞれの向き不向き

メーカーは、ストレート、氷を使う飲み方、ソーダを使う飲み方を紹介しています。どの飲み方も公式に想定されているので、どちらが向くかは好みと条件で変わります。下の表は優劣の評価ではなく、樽構成と風味表現から考えた確かめどころです。香りを比較するなら両方ストレートから、冷やしたときの好みは同じ量と温度で試すと、再現できる形で選べます。
| 飲み方 | 手順の要点 | シェリーオーク12年で見る点 | ダブルカスク12年で見る点 |
|---|---|---|---|
| ストレート | チューリップ型グラスにシングル30ml前後。数分置いてから香りを取る | ドライフルーツとスパイスの重なり | ファッジ・バニラの甘さと柑橘の明るさ |
| 加水 | スポイトで2〜3滴ずつ加え、そのたびに比べる | スパイスの香りがどう変わるか | 甘い香りがどう変わるか |
| トゥワイスアップ | 常温の軟水と1:1 | 果実とスパイスのどちらが強まり、どちらが弱まるか | 甘さの印象がどう変わるか |
| ロック | 大きく硬い氷で、溶ける水を抑える | 甘さが引いて渋みが目立たないか | 甘さが残るか |
| ハイボール | ウイスキー30mlにソーダ90〜120ml、すべて冷やす | 1杯単価(次章)と満足度が釣り合うか | 柑橘とバニラが炭酸と合うか |
ストレートと加水:40%からの「数滴」の意味
口がすぼまったチューリップ型のテイスティンググラスを使い、シングル(30ml前後)を注ぎます。注いだ直後はエタノールの揮発が強く、鼻を刺します。数分置いてから、グラスを揺らさずに最初の香りを取ってください。
加水はスポイトで2〜3滴ずつ加え、そのたびに香りを確かめます。両12年物は瓶詰め前にすでに40%まで加水されており、足した水の分だけ度数はさらに下がります(たとえば30mlに5mlなら約34%)。加えすぎた水は戻せないため、少量ずつ足して、香りが好みの位置に来たところで止めます。さらに薄めて比べたいときは、次のトゥワイスアップとして別のグラスで作ると、ストレートと並べて比較できます。
トゥワイスアップ:1:1で香りの出方を比べる
ウイスキーと常温の軟水を1:1で合わせ、約20%にします。硬水はミネラルの味が乗るため避けます。度数が下がると、アルコールの刺激が鼻を覆いにくくなります。一方で、希釈による香りの変化は成分ごとに異なり、立ちやすくなる香りもあれば、感じにくくなる香りもあります。シェリーオークならドライフルーツとナツメグ・ジンジャー、ダブルカスクならファッジやバニラと柑橘というメーカーの表現を手がかりに、ストレートと並べて、どの香りが強まりどれが弱まったかを確かめてください。
ロック:冷やしたときの差は同じ条件で比べる
温度が下がると香り成分は揮発しにくくなり、香りが閉じます。舌も甘さを感じにくくなる一方で、渋みは残りやすいとされます。このため、渋みやスパイスの方向に寄りやすいヨーロピアンオーク主体のシェリーオークは、冷やすと甘さが引いて乾いた印象になる可能性があります。ダブルカスクは甘さの印象が残りやすい可能性があります。ただし好みは人によって分かれるため、2本を同じ量、同じ大きさの氷、同じ時間で並べて確かめてください。ロックにするときは、大きく硬い氷を使ってください。溶けた水で40%からさらに薄まるのを遅らせられます。
ハイボール:1:3〜1:4、温度と炭酸を守る
- グラスとウイスキーを冷蔵し、ソーダは冷蔵庫でよく冷やしておく
- 氷をグラスいっぱいに入れ、ウイスキー30mlを注ぐ
- マドラーで十数回ステアしてウイスキーと氷を冷やし、沈んだ分の氷を足す
- ソーダ90〜120mlを、氷に当てないようグラスの内側を伝わせて静かに注ぐ
- マドラーで底から1回持ち上げるだけにし、かき混ぜない
40%の原酒は、3〜4倍に割ると香味が痩せやすくなります。氷が溶けるほど薄まり、注ぐときに炭酸が抜けるほど香りも立たなくなります。だから、すべてを冷やしておく工程は省けません。ダブルカスクの柑橘とバニラは、炭酸の刺激と合わせやすい組み合わせです。一方、30mlあたりの単価は次章のとおりシェリーオークのほうが約170円高くなります。シェリーオークのドライフルーツとスパイスの重なりをソーダで割って楽しむかは好みが分かれるため、試すならまず1杯で確かめてからにしてください。
開栓後の扱い
- 瓶内の空気が増えるほど酸化と揮発が進み、香りの立ち上がりから変化する。残りが3分の1ほどになったら、満量に近くなる小瓶に移す
- 立てて保管する。横に寝かせると、度数の高い液体がコルクを傷めやすい
- 直射日光と高温を避け、温度変化の少ない暗所に置く
価格に見合うか:自分用・贈答用・店で扱う場合の判断基準と、同価格帯の比較候補
マッカラン12年が価格に見合うかは、誰が何に使うかで変わります。判断の土台は1杯あたりの単価です。700mlを30mlで割ると約23杯分になり、この数字から自分用・贈答用・店の値付けを順に考えます。
自分用:1杯30mlの単価で選ぶ
- シェリーオーク12年:希望小売価格の税込14,850円で約636円。ドライフルーツとスパイスの濃さを、ストレートや加水で味わう人向け
- ダブルカスク12年:希望小売価格の税込10,890円で約467円。カクヤスの実売税込9,548円なら約409円。日常的に飲む人や、ハイボールにも回す人向け
差は1杯あたり約170〜230円です。濃いシェリー感を求めないなら、この差を払う理由はありません。常温で香りを取りながら飲む時間が中心なら、シェリーオークの単価は割高とは言えません。
贈答用:予算と渡す相手で決める
マッカランは、ウイスキーに詳しくない相手にも名前が通じやすい銘柄です。どちらの12年も箱入りで渡せます。予算が1万円前後ならダブルカスク、1万5千円前後ならシェリーオークが目安です。購入時は、掲載価格が箱入りの価格かどうかを確かめてください。
海外に住む知人へ贈る場合は、まず日本で買う意味を考えます。マッカランは海外でも入手しやすい銘柄なので、現地で手に入るものを日本から運ぶ価値は小さくなります。国際配送では、酒類の扱いに制限があります。配送業者の規定と相手国の受け取り条件を、発送前に必ず確認してください。手渡しできないなら、現地で入手しにくい日本の銘柄を選ぶほうが筋が通ります。
店で扱う場合:原価率から1杯の価格を逆算する
1杯の販売価格は、次の式で出します。
仕入れ値(税別)÷ 実際に取れる杯数 ÷ 目標原価率
仕入れ値は、酒販店などからの請求書上の額を使い、税の扱い(税別)と箱の有無をそろえます。以下は、希望小売価格(税別)で仕入れたと仮置きし、700mlから30mlが23杯取れるとした場合の参考値です。実際の仕入れ値で計算し直してください。
- ダブルカスク(税別9,900円÷23杯=約430円):原価率30%なら約1,435円、25%なら約1,722円
- シェリーオーク(税別13,500円÷23杯=約587円):原価率30%なら約1,957円、25%なら約2,348円
計量の誤差や開栓後の確認があるため、実際に提供できる杯数が23杯になるとは限りません。棚卸しで1本あたりの実際の杯数を記録し、その数で割り直して価格を補正します。メニュー価格を税込で表示する場合は、算出した額に消費税を加えてから端数を整えます。
マッカランは名前で注文されやすい銘柄です。メニューには「マッカラン12」とだけ書かず、「シェリーオーク」か「ダブルカスク」まで書きます。ハイボール用にダブルカスク、ストレート用にシェリーオークと分けて置けば、注文の幅に応えられます。2本の価格差もメニュー上ではっきり示せます。
同価格帯のシェリー樽系と比べる軸:樽構成・度数・価格
マッカラン12年の代わりを探すときは、次の3点で比べます。度数と価格は市場やロットで変わることがあるため、購入前にラベルと販売ページで確認してください。
| 銘柄 | 樽構成の比べどころ | 度数(正規品ラベルの表示) | 価格の目安 |
|---|---|---|---|
| グレンファークラス 12年 | シェリー樽熟成を前面に出す銘柄 | 43% | 5,880円前後(2026年10月13日時点) |
| グレンドロナック 12年 | ペドロ・ヒメネスとオロロソのシェリー樽 | 43% | 5,940円前後(2026年10月13日時点) |
| アベラワー 12年 ダブルカスクマチュアード | シェリー樽とバーボン樽(アメリカンオーク) | 40% | 5,687円前後(2026年10月13日時点) |
| グレンフィディック 12年 | バーボン樽主体にシェリー樽を合わせる。シェリー樽系の代替ではなく、ダブルカスク12年と比べる対象 | 40% | 3,960円前後(2026年10月13日時点) |
- マッカランを選ぶ理由:ブランドの通りやすさ。両12年物ともシェリーで風味づけした樽だけで構成されていること。色は樽熟成に由来する自然な色だとメーカーが説明していること
- マッカランを選ばない理由:度数は40%で、濃さを価格で割ると割高に見えやすいこと。名前の価値を必要としない自分用なら、43%のグレンファークラス12年やグレンドロナック12年も候補に入ること
2本の12年の香味の違いは /macallan-double-cask-vs-sherry-oak-taste-comparison-review/ で、ほかのシェリー樽系銘柄の選び方はおすすめ銘柄の記事で詳しく扱っています。
マッカラン12年の評価でよくある疑問

初心者が最初に買うならどちらですか
迷ったらダブルカスク12年を選んでください。メーカーが甘さの方向の風味を挙げる1本で、価格も抑えられるため、ストレートからハイボールまで試しながら1本を使い切れます。干しぶどうやデーツ、赤ワインの渋みが好きなら、最初からシェリーオーク12年を選んでも外れにくいです。決めきれない場合は、バーで両方をシングルずつ頼み、常温のまま並べて飲み比べてください。ボトル1本の価格差より安く、自分の好みがはっきり分かります。
ロックにしたら白く濁りました。品質の問題ですか
品質の問題とは限りません。低温や加水で脂肪酸エステルなどの成分が溶けきれなくなって起こる現象で、温度が戻れば澄むことが多いです(成分の説明は第2章)。この2本が冷却濾過されているかは公表情報で確認できないため、白濁から処理の有無を判断することもできません。常温に戻しても濁りが消えない場合や、沈殿や異臭がある場合は、購入店に相談してください。
買ってから何年も置いておけば、味は良くなりますか
良くなりません。第1章のとおり年数表示は樽で熟成した期間で、瓶詰め後は熟成が進みません。何年保管しても「12年」は12年のままです。未開栓でも立てて、直射日光と高温を避けた温度変化の少ない暗所に置いてください。長く置いて起こり得るのは、コルクの劣化や液面の低下など、品質を損なう方向の変化です。
開栓から何か月で飲み切るべきですか
決まった期限はありません。変化の速さは、瓶内の空気の量と保管環境で大きく変わるためです。満量に近いうちは変化がゆっくりで、残りが減るほど酸化と揮発が進みます。自分で目安をつかむなら、開栓直後に少量を小瓶に満量で取り分けておき、数か月後に元の瓶の中身と並べて香りを比べます。残りが3分の1ほどになったら、飲み方章のとおり満量に近くなる小瓶に移してください。
トリプルカスク12年は終売ですか
第1章のとおり、現行製品一覧には載っておらず、正式な終売発表も確認できていません。見かけたらラベルの「TRIPLE CASK」を確認し、現行の2種とは別の商品として価格を判断してください。
店頭価格が希望小売価格より安いのはなぜですか
希望小売価格はメーカーが示す参考価格で、実際の販売価格は各店が決めます。安く見える主な理由は3つです。箱なしで売っている場合、正規の輸入ルート以外で入った並行輸入品の場合、価格改定前に仕入れた在庫品の場合です。贈答用なら箱の有無を、正規品にこだわるなら裏ラベルの輸入者表示を確認してください。
よくある質問
2種を飲み比べるときは、どちらから先に飲めばいいですか
ダブルカスク12年を先に飲んでください。メーカーがオークスパイスやジンジャーの余韻を挙げるシェリーオーク12年を先に飲むと、スパイスの余韻が残り、後のダブルカスクのファッジやバニラの甘さを感じにくくなります。2杯の間には常温の軟水を一口含んで、口の中をリセットします。グラスの形と注ぐ量をそろえると、差が比べやすくなります。
バーで注文するときは、何と伝えればいいですか
「マッカラン12」だけでなく、「シェリーオーク」か「ダブルカスク」まで指定し、飲み方と量を添えます。たとえば「マッカランのシェリーオーク12年をストレートで、シングル」です。店によっては片方しか置いていないので、まず置いているほうを確認してください。チェイサーに常温の水を頼むと、飲む合間に口をリセットできます。
同じラベルでも、買った時期によって味は違いますか
小さな差が出ることはあります。シングルモルトは多数の樽の原酒を配合して瓶詰めするため、樽ごとの個性が配合のたびに少しずつ変わります。メーカーは風味をそろえるように配合しますが、ロットごとの違いは公表されていません。口コミを比べるときは、ボトルの種類に加えて購入時期も確かめてください。自分で比べるなら、同じ時期のボトル同士で並べます。
水割りにするなら、どちらが向いていますか
ダブルカスク12年から試すのが無難です。ロックの節と同じ理由で、冷やして薄めるとシェリーオークは甘さが引いた印象になる可能性があります。手順は次のとおりです。グラスに氷を満たし、ウイスキー30mlを注いでマドラーでステアし、ウイスキーと氷を冷やします。沈んだ分の氷を足してから、冷やした軟水を60〜75ml(1:2〜1:2.5)注ぎ、軽く数回混ぜて仕上げます。
この記事で紹介した銘柄
20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。