スコッチウイスキー

マッカラン ダブルカスクとシェリーオークの違い|味わい比較と評価

マッカラン ダブルカスク12年とシェリーオーク12年の違いを、樽構成・味わい・価格で比較。ヨーロピアンオークとアメリカンオークのシーズニング樽が香味に与える影響や、ハイボール・贈り物など用途別の選び方も解説します。

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結論:ダブルカスク12年とシェリーオーク12年の違いは樽の構成と価格|早見表で比べる

結論から言うと、2本はどちらもシェリーで味付け(シーズニング)した樽だけで熟成しています。公表されている樽構成上の違いは、アメリカンオーク樽の有無です。シェリーオーク12年はヨーロピアンオーク樽だけを使い、ダブルカスク12年はヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽を併用します。ただし、充填回数や配合比は公表されていないため、香味の差がすべて樽材によるとは言い切れません。なお、ダブルカスクのアメリカンオーク樽はバーボン樽ではなく、シェリーで味付けした樽です(詳しくは次章)。評価としては、ダブルカスクは軽く甘い方向に寄せ、価格も抑えたマッカランです。濃いシェリーの厚みを求めるならシェリーオークを選びます。「薄い」という評は欠陥ではなく、40%の度数とアメリカンオーク樽の配合という設計の結果です。

早見表:シェリーオーク12年とダブルカスク12年

項目シェリーオーク12年ダブルカスク12年
樽の構成シェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽のみシェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽+シェリーで味付けしたアメリカンオーク樽
発売時期ダブルカスクより前からある定番2016年
度数(日本流通品)40%40%
容量700ml700ml
原材料モルトモルト
公式が挙げる香味の方向性香り:バニラ、ほのかなジンジャー、ドライフルーツ、シェリー、ウッドスモーク/味わい:豊かなドライフルーツとシェリー、ウッドスモークとスパイス香り:ファッジ、オレンジとレモンの砂糖漬け、バニラ/味わい:ミルクチョコレートレーズン、クリーミーなトフィー、オレンジピール
メーカー希望小売価格(2025年4月改定後・二次情報)税別13,500円(税込14,850円)税別9,900円(税込10,890円)
実売価格4,530円前後(2026年11月3日時点)4,530円前後(2026年11月3日時点)

香味の差は、オークの種類によって溶け出す成分が違うことから生まれます(詳しくは次章)。2本は同じ40%なので、ダブルカスクが軽く感じられる理由は度数ではなく、樽の構成にあります。

価格を見るときの注意

  • 税別と税込を取り違えないことが大切です。ダブルカスク12年の9,900円は税別、10,890円は税込です。改定前の価格は、最後の章にある「メーカー希望小売価格の推移」の表で確認できます。
  • 早見表の希望小売価格は、二次情報に基づく金額です。購入や値付けの前には、サントリーの最新の発表で数字を確かめてください。

用途別の選び方

  • 濃いシェリーの重さや、ドライフルーツと渋みのある厚い口当たりを求める人:シェリーオーク12年
  • 甘さと軽さのバランス、価格を重視する人:ダブルカスク12年
  • ハイボールを中心に飲む人:ダブルカスク寄り。タンニンの多い原酒は炭酸で割ると渋みが前に出やすく、バニラと柑橘の側が炭酸になじみやすいためです。
  • 贈り物で「マッカランらしいシェリーの濃さ」をはっきり伝えたい場合:シェリーオーク12年。予算を1万円前後に収めたい場合:ダブルカスク12年
  • バーや酒販店で2本並べる場合:ダブルカスクを入り口に置き、シェリーオークを「樽をヨーロピアンオークだけにするとどう変わるか」の飲み比べ用にします。

なぜ味が変わるのか:ヨーロピアンオークとアメリカンオークの『シーズニング樽』を製法から読む

ウイスキーのイメージ写真

ダブルカスク12年の樽は、2種類ともシェリーで味付けしたシーズニング樽です。シェリーオーク12年との味の差は、シェリーの有無からではなく、樽材がヨーロピアンオークかアメリカンオークかという違いから生まれます。この差を正しく理解するには、まず「シェリー樽」という言葉の中身を整理する必要があります。

シーズニング樽とは:「シェリー樽」の実態

シーズニング樽とは、新しく組んだ樽にシェリーを一定期間入れ、木にシェリーの香味をなじませた樽です。マッカランの場合、シーズニングに使うシェリーは主にオロロソ(辛口で、酸化させながら熟成するシェリー)とされます。シーズニングに使ったシェリーは、通常は製品として瓶詰めされません。目的は、樽に香味を移すことにあります。

樽を組むときの火の入れ方も、香味に影響します。スペインのクーパレッジ(製樽所)では、内側を焦がすチャーよりも、内側をあぶるトーストが中心です。トーストは木の成分を熱で分解し、バニリンや甘いスパイスの香りを引き出します。チャーは内側に炭の層を作り、色とカラメルのような香味を加えます。炭の層には、活性炭のように好ましくない成分を取り除く働きもあります。

シェリーの産地にあるボデガ(熟成庫)では、ソレラ(古い樽から少しずつ抜き、若い酒を継ぎ足す熟成方式)で何十年も使い込んだ樽があります。シーズニング樽は、このボデガ樽とは別物です。ボデガ樽は、長年の使用で木から出る成分が大きく減っています。一方、シーズニング樽は木そのものがまだ若く、タンニンや色素を多く残しています。現在のスコッチで「シェリー樽」と呼ばれるものは、ウイスキー熟成のために用意されたシーズニング樽が中心です。そのため、ラベルの「シェリー」は「シェリーで下味を付けたオーク樽」と読むのが実態に合います。

メーカーが説明する工程

メーカーの案内によると、ダブルカスクのアメリカンオーク樽は次の手順で用意されます。アメリカ産の新しいオーク材をスペインに運んで樽に組み、シェリーで味付けします。その樽にスペイサイドの蒸溜所で原酒を詰め、12年以上熟成します。この原酒を、同じくシェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽の原酒と合わせます。どちらの樽にもシェリーの香味が入っているため、2本を飲み比べたときに出る差は、樽材そのものの違いが大きな要因と読めます。ただし、後で述べるように、充填回数や配合比は公表されていません。

樽材の違いが香味に出る理由

ヨーロピアンオーク(主にQuercus robur系)はエラジタンニンが多く、色を濃くするとともに、口の中で締まる渋みの骨格を作ります。この渋みが、レーズンのようなドライフルーツやクローブ系のスパイスの重さを支えます。アメリカンオーク(Quercus alba)は、タンニンが少ない代わりに、ココナッツのような香りを持つウイスキーラクトンや、バニラ香の主成分であるバニリンが出やすい樽材です。そのため、香りの立ち上がりが明るくなります。メーカーが挙げる「アメリカンオークはバニラとシトラス、ヨーロピアンオークはドライフルーツとスパイス」という説明は、この性質に対応しています。ただし、樽から溶け出す成分の量は樽材だけでは決まりません。トーストの強さ、樽の大きさ(バットかホグスヘッドか)、ウイスキーを詰めた回数によっても変わります。

テイスティングでは、次の2点を見ると樽の寄与を判断しやすくなります。1つは、ノージング(香りを取る段階)で最初にバニラや柑橘の皮が来るかどうかです。これはアメリカンオーク側の香りです。もう1つは、フィニッシュ(余韻)で歯ぐきに残る渋みの強さです。これはヨーロピアンオーク側の厚みです。シェリーオーク12年と並べて同量を注ぎ、香りと余韻の2点だけを比べると、配合の違いがはっきり分かります。

混同しやすい点:バーボン樽ではない

  • ダブルカスクのアメリカンオーク樽は、シェリーで味付けした樽です。バーボン樽ではありません
  • バーボン樽を加えているのは、トリプルカスク12年(旧ファインオーク12年、日本では2020年4月7日発売)です
  • マッカランは2004年まで、シェリー樽の原酒だけで製品を作っていました。ダブルカスクは、バーボン樽を使わずにアメリカンオークの個性を取り込んだ設計と読めます
  • 「昔のマッカランより平板」という評価の背景には、2004年以降の樽構成の変化だけでなく、樽の調達の変化もありえます。業界全体で、使い込まれたボデガ樽から、ウイスキー用に作るシーズニング樽へと調達の中心が移りました。上で見たとおり、2つは木から出る成分の量が違うため、昔のボトルとの印象の差につながりえます
  • 客から「バーボン樽ですか」と聞かれたときは、「アメリカの木で作ったシェリー樽です。バーボン樽を使うのはトリプルカスクです」と答えると正確です

公表を確認できない仕様

以下の仕様はメーカーの公表を確認できなかったため、この記事では断定しません。

  • ファーストフィル(シェリーやバーボンを抜いた後、初めてウイスキーを詰める樽)とリフィル(ウイスキーの熟成に2回目以降使う樽)の比率
  • ヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽の配合比
  • 冷却濾過の有無
  • 着色の有無(ブランドとして着色しない方針を打ち出してきた歴史はあるものの、ダブルカスク12年の公式ページでの記載は未確認)

蒸溜側の前提

ザ・マッカランは、ピートを焚かない麦芽を使う蒸溜所として知られています。2018年に開業した新蒸溜所は、36基の小型ポットスチルを備えています。小型で背の低いスチルは還流(蒸気が冷えて釜に戻り、再び蒸溜されること)が少なく、重い成分も再溜液に乗りやすいため、厚みのある原酒になりやすいとされます。なお、銅との接触は本来、硫黄化合物などを除き、原酒を軽く・クリーンにする方向に働きます。厚みにつながるのは、還流の少なさとカットの取り方です。ブランドは、再溜で製品に回すミドルカット(中間部分)を狭く取ることを特徴に挙げています。ヘッド(初めに出る部分)とテイル(終わりに出る部分)を多めに除き、重くフルーティな原酒を狙う考え方です。この厚みのある原酒が、シェリー樽の強い香味に負けずに受け止める土台になっています。

香り・味わい・余韻を並べて比較|40%の度数と加水でどう変わるか

2本の差は、ノージング(グラスから香りを取る段階)、パレット(口に含んだときの味わい)、フィニッシュ(飲み込んだ後の余韻)の3段に分けて比べると整理しやすくなります。どちらの銘柄も、メーカーが公表する香味表現を基準にします。

段階ダブルカスク12年(公式の香味表現が基準)シェリーオーク12年(公式の香味表現が基準)比べるときの着眼点
ノージングファッジ、オレンジとレモンの砂糖漬け、バニラバニラ、ほのかなジンジャー、ドライフルーツ、シェリー、ウッドスモーク最初の一嗅ぎで、柑橘とバニラが先に立つか、ドライフルーツが先に立つか
パレットミルクチョコレートレーズン、クリーミーなトフィー、オレンジピール豊かなドライフルーツとシェリー、ウッドスモークとスパイス舌の中ほどで甘さが丸く広がるか、締まって引くか
フィニッシュトフィーとオレンジピールの甘苦さが中心豊かなドライフルーツ、甘いトフィー、ウッドスモーク、スパイス飲み込んで数秒後に残るのが、甘さか渋みか

公式の表現を並べると、シェリーオーク12年にもバニラやトフィーが挙がっています。そのため、2本の差は「バニラがあるか、ないか」ではありません。香味の重心がどこにあるかの違いです。ダブルカスクは柑橘とクリーミーな甘さに重心があり、シェリーオークはドライフルーツとウッドスモーク、スパイスに重心があります。

「クリーミー」と「スパイシー」で評価が割れる理由

ダブルカスクは「クリーミー」とも「スパイシー」とも評されます。どちらの評価も成り立つ理由は3つあります。

  • 同じ刺激でも、呼び方が人によって違う:アメリカンオーク側のバニラとトフィーは「クリーミー」と表現されます。一方、タンニンの厚みが薄いぶん、40%のアルコールの刺激が舌先に出やすくなります。この刺激を「スパイシー」と呼ぶ人もいます。シェリーオークの刺激は、渋みに包まれて「ドライ」と表現されることが多いため、相対的にダブルカスクのほうがスパイシーと書かれやすくなります
  • ロット差:年数表示のある製品でも、ボトリングごとに使う樽の組み合わせが変わります。そのため、ボトリング時期が違うボトル同士のレビューは、厳密には同じ液体を評価したものではありません
  • 開栓からの経過時間:開栓直後は揮発しやすいアルコールの刺激が前に出ます。数週間たってボトル内の空気に触れると、刺激が落ち着き、甘さが感じ取りやすくなる傾向があります。開栓直後の評価と、残り半分になってからの評価は分けて読む必要があります

度数の前提:海外レビューを読むときの注意

日本で流通しているボトルは、どちらも40%・700mlです。一方、米国向けなどのシェリーオーク12年は43%・750mlとされています(メーカーの公表は未確認)。3%の差でも、香りの立ち方や口中の密度は変わります。海外のレビューで「シェリーオークのほうが力強い」と書かれていても、43%で飲んだ結果かもしれません。手元の40%と比べるときは、ラベルの度数を確かめてください。43%のボトルを40%にそろえるには、20mlに対して水を約1.5ml加えます。

飲み比べの手順

  1. 同じ形のチューリップ型テイスティンググラスを2脚用意し、各15〜20mlを同量注ぎます。グラスの形が違うと、香りのたまり方が変わって比較になりません
  2. 注いでから数分置き、ダブルカスク→シェリーオークの順にノージングします。そのまま同じ順で、ストレートのパレットとフィニッシュを比べます
  3. スポイトで両方に2〜3滴ずつ加水し、香りの開き方を比べます。40%はもともと低めの度数なので、加水しすぎると香りが平板になります。数滴ずつ足し、香りが開いたと感じたところで止めます
  4. ダブルカスク側で柑橘とバニラがどこまで前に出るか、シェリーオーク側でドライフルーツの奥にある渋みがどう変わるかを書き留めます

順番は、軽い方から重い方へが基本です。シェリーオークを先に飲むと、タンニンが舌に残り、次のダブルカスクが実際より薄く感じられるためです。順番の影響を除くには、水で口をすすいで数分置き、逆の順番でも試します。2回とも同じ差を感じたなら、それは樽の構成による差と判断できます。

ダブルカスクの本当の評価|『まずい』『薄い』と言われる理由と、価格に見合うかの判断基準

ウイスキーのイメージ写真

「まずい」「薄い」という評価は、中身を分けると3種類になります。度数と樽の構成から説明できる事実、過去の製品との比較、価格への不満です。根拠の種類が違うため、同じ重みで受け取ると判断を誤ります。

否定的な声根拠の種類読み方
「40%で軽い」度数と樽構成という事実40%は、スコッチウイスキー規則(SWR 2009)が定める最低の瓶詰め度数です。加水して度数を下げる分、43%や46%の製品より口中の密度は低くなります。アメリカンオーク原酒で渋みの厚みが薄まる点は前の章で触れたとおりです。欠陥ではなく、設計の結果と読めます
「昔のマッカランより平板」過去の製品との比較2004年以前はシェリー樽のみ(第2章参照)。ただ、比べている「昔」がいつのどのボトルかで結論が変わります。記憶との比較は再現できないため、同じ条件で並べて確かめられない評価です
「ブランド料が高い」価格への不満香味の評価ではなく、支払う金額と得られる香味が釣り合うかの判断です。中身の良し悪しとは分けて扱います

2016年の発売と「12年」表示の意味

ダブルカスク12年は2016年に発売されました。SWRの規定では、年数表示はボトルに入る原酒のうち最も若いものの年数を示します。平均の年数ではありません。つまり「12年」は、12年以上熟成した原酒だけで構成されていることを保証する下限の表示です。味の厚みまで保証するものではありません。「12年なのに軽い」という不満の多くは、年数表示に厚みの保証を期待したことから生まれています。

ブランドの価格帯と中身の評価を分ける

海外の愛好家の間には、「マッカランの名前がなければもっと安い」という見方があります。この見方は、価格の中にブランドとしての価格帯が含まれていることを指摘したもので、中身が劣るという主張とは別のものです。基準になる数字は、早見表のメーカー希望小売価格と実売例です。判断は目的によって分けます。贈り物では、名前が相手に伝わること自体に価値があります。一方、自分で飲む場合や店の棚に置く場合は、液体だけを同じ価格帯の他銘柄と比べるのが筋です。

判断基準:シェリー樽の厚みを1万円台で求めるなら

買う目的が「シェリー樽の厚み」なら、ほかの蒸溜所のシェリー樽主体の12年と飲み比べてから決めるのが合理的です。候補の度数や樽の構成は、ボトリングの時期によって変わることがあります。購入前に各社の公式情報とラベルで確かめてください。

比較候補実売価格公式とラベルで確かめる項目
グレンドロナック 12年5,940円前後(2026年11月3日時点)度数、使うシェリー樽の種類、冷却濾過と着色の表記
アベラワー 12年 ダブルカスクマチュアード5,687円前後(2026年11月3日時点)度数、2種類の樽の内訳。名前に同じ「ダブルカスク」が入っていても、樽の構成がマッカランと同じとは限りません
グレンファークラス 12年3,850円前後(2026年11月3日時点)度数、シェリー樽の比率と種類
  • 度数が違う候補と比べる場合:前の章の手順で加水して40%にそろえてから、余韻に残る渋みの強さを比べます。そろえずに比べると、樽の差ではなく度数の差を評価することになります
  • そろえた条件でも候補のほうが厚く、価格も近い場合:シェリー樽の厚みが目的なら候補を選びます
  • 厚みの差が小さい場合や、ハイボール用・飲み比べの入り口として使う場合:ダブルカスク12年で十分です
  • 贈り物で名前の通りやすさを優先する場合:ダブルカスク12年を選びます。ただし「マッカランらしい濃さ」を伝えたいなら、価格が一段上のシェリーオーク12年(早見表参照)まで予算を上げる価値があるかを検討します
  • バーや酒販店:候補の1本を隣に置いて同量で出すと、客が自分で「ブランドの価格帯」と「中身」を見分けられる売り方になります

受賞歴については、コンペ名・年・賞を確認できなかったため、判断材料に含めていません。評価は、手元のグラスで同じ条件をそろえて確かめるのが確実です。

ダブルカスクとシェリーオーク、それぞれに合う飲み方と店での出し方

2本の差は、提供温度と度数を変えたときに最もはっきり出ます。タンニンの多いヨーロピアンオークの原酒は、冷やしたり炭酸で割ったりすると渋みが目立ちます。一方、ラクトンやバニリンの多いアメリカンオークの原酒は、薄めても香りの骨格が残ります。この性質を前提に、飲み方と店での出し方を決めます。

飲み方ダブルカスク12年シェリーオーク12年
ストレート(常温・30ml)注いですぐ飲める数分置いてから飲む
トゥワイスアップ(1:1)柑橘とバニラが開くドライフルーツが前に出る
ハイボール(1:3〜4)向く渋みが出やすく、向きにくい
店での位置づけハイボールと入門向けの1杯ストレートと飲み比べ用

ストレート:同じ条件で注ぎ、待つ時間だけ変える

チューリップ型グラスに、常温(およそ18〜20℃)のシングル(30ml)を注ぎます。口がすぼまったグラスは香りを集めやすく、度数の低い40%でも香りを拾えます。ダブルカスクは注いですぐに柑橘とバニラが立つので、そのまま出して構いません。シェリーオークは数分置きます。注いだ直後はアルコールの揮発が強く、渋みと刺激が重なって角張って感じられます。時間を置いて揮発が落ち着くと、渋みの角が取れ、ドライフルーツの甘さが表に出てきます。店では、シェリーオークを出すときに「少し置くと開きます」と一言添えると、最初の一口の印象が変わります。

トゥワイスアップ:20%で香りの配置が変わる

トゥワイスアップは、ウイスキーと常温の水を1:1で割る飲み方です。40%が約20%まで下がります。アルコールの刺激が引くため、度数の高いときにはエタノールに隠れていた香りが拾いやすくなります。ダブルカスクでは、アメリカンオーク由来のバニラと柑橘の皮が一段開きます。シェリーオークでは渋みが薄まり、レーズンのようなドライフルーツが前に出ます。冷水を使うと香りの揮発が鈍るため、必ず常温の水を使います。硬度の高い水は味に影響するため、軟水を選びます。

ハイボール:軽さのあるダブルカスクが向く

炭酸水は冷蔵庫でよく冷やし、開けたてを使います。

  1. グラスに氷をいっぱいまで入れ、マドラーで回してグラスを冷やし、溶けた水を捨てる
  2. ウイスキー30mlを注ぎ、グラスの外側が冷たくなるまでマドラーでステアしてウイスキーを冷やす。減った分の氷を足す
  3. 炭酸を90〜120ml(1:3〜4)、氷に当てずにグラスの内側を伝わせて静かに注ぐ
  4. マドラーを底まで差し込み、縦に1回だけ持ち上げて混ぜる

低温と炭酸の酸味は、渋みと苦みを強く感じさせます。そのため、タンニンの厚いシェリーオークは、割ると後味がざらつきやすくなります。ダブルカスクは渋みが薄く、柑橘とトフィーの甘さが炭酸の刺激となじむので、1:4まで伸ばしても香りが残ります。

開栓後の保管と小瓶に移す目安

  • 立てて保管する。寝かせると、高い度数の液体がコルクに触れ続けて傷みやすくなる
  • 直射日光と高温を避け、温度変化の少ない棚の奥に置く
  • 残量が半分を切ると、瓶の中の空気が増えて酸化が進み、香りが早く抜けやすくなる
  • 半分を切り、かつ数か月以内に飲み切る見込みがない場合は、口元まで満たせる大きさの小瓶に移し、空気に触れる面を減らす

店の値付け:1杯あたりの原価から逆算する

700mlからシングル(30ml)で取れるのは約23杯です(700÷30≒23.3)。まず仕入れ値を23で割って1杯の原価を出し、次にその原価を店の原価率で割って売価を決めます。店は通常、業務用の仕入れ値(税別)で計算します。下の例は、早見表のメーカー希望小売価格(税別・二次情報)をそのまま仕入れ値と仮定し、原価率を25%と30%に置いた概算です。実際には自店の仕入れ値で計算してください。

  • ダブルカスク12年:9,900円÷23≒430円。原価率25%なら約1,700円、30%なら約1,400円
  • シェリーオーク12年:13,500円÷23≒587円。原価率25%なら約2,300円、30%なら約2,000円
  • 2本の差:仕入れ値の差3,600円÷23=1杯あたり約157円

税込で計算する場合は、消費税分も原価に含まれます。税込10,890円と14,850円で計算すると、1杯の原価差は約172円になります。

注ぎこぼしや味見の分を考えると、実際に取れる杯数は23杯を下回ります。原価には数%の余裕を見ておきます。ハイボールで出す場合は、炭酸、氷、レモンなどの原価を足してから逆算します。原価の差は1杯約157円ですが、原価率25〜30%で売価に直すと、約520〜630円の差になります(税込で計算した場合は約570〜690円)。シェリーオークを飲み比べ用に置くなら、この売価の差が「樽をヨーロピアンオークだけにした分の価格」であると説明できます。

シェリーオークのラインナップとダブルカスクの位置づけ|贈り物での選び方とよくある質問

ウイスキーのイメージ写真

マッカランの12年には、樽の構成が違う3種類があります。シェリーオークには18年や25年などの長熟ボトルもありますが、12年はその入り口という位置づけです。年数違いの味わいの比較は関連記事に譲り、ここでは12年の3種類の違い、価格の推移、贈り物での選び方をまとめます。

12年の種類樽の構成バーボン樽
シェリーオーク12年シェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽のみ不使用
ダブルカスク12年(2016年発売)シェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽+シェリーで味付けしたアメリカンオーク樽不使用
トリプルカスク12年(旧ファインオーク12年、日本では2020年4月7日発売)シェリーで味付けしたヨーロピアンオーク樽+シェリーで味付けしたアメリカンオーク樽+バーボン樽使用

メーカー希望小売価格の推移

確認できた改定のみを示します。金額は二次情報に基づきます。

製品改定時期旧価格→新価格(税別)新価格(税込)
シェリーオーク12年2025年4月12,500円→13,500円14,850円
ダブルカスク12年2025年4月9,040円→9,900円10,890円
  • 仕入れ値や贈答の予算は、改定前の価格で見積もらないようにしてください

贈り物での選び方

  • 目上の人や取引先:シェリーオーク12年。マッカランの定番として名前が通りやすく、ダブルカスクより一段上の価格帯(早見表参照)も贈答の格に合います
  • ハイボールを日常的に飲む相手:ダブルカスク12年。前の章で触れたとおり、炭酸で割っても渋みが出にくい構成です
  • 海外の知人:国によって仕様が違います(仕様の違いは度数の章を参照)。現地で飲み慣れた味と比べて「薄い」と受け取られないよう、日本仕様であることを一言添えて渡します

Q. カウンターでダブルカスクを注文するとき、どう伝えれば取り違えられませんか

「マッカランの12年」とだけ言うと、シェリーオーク、ダブルカスク、トリプルカスクのどれを指すのか分かりません。「マッカラン ダブルカスク 12年」と樽の名前まで伝えます。あわせて、量(シングルかダブルか)と飲み方(ストレート、ハイボールなど)も一度に伝えると、確認のやり取りが減ります。

Q. ボトリング時期の違うボトルを見分けるには

ボトルの裏やラベル、瓶の首元などに印字されたロット番号やコードを確認します。前の章で触れたとおり、ボトリングごとに樽の組み合わせは変わります。飲み比べやレビューの記録には、銘柄名に加えてこの番号も書き留めておくと、どのボトルの評価かを後から区別できます。

Q. 実売価格が定価より安いのはなぜですか

メーカー希望小売価格は、販売店の売値を縛るものではありません。そのため、大手ECでは価格競争で値が下がりやすくなります。安いボトルを買うときは、度数・容量の表記と正規輸入品かどうかをラベルで確かめてください。

Q. 蒸溜所と所有者の基本情報は

ザ・マッカラン蒸溜所は、1824年にアレクサンダー・リードが創業しました。1999年からはエドリントン社が所有しています。日本ではサントリーが価格を改定し、販売しています。

よくある質問

ロックで飲むなら、ダブルカスクとシェリーオークのどちらが向きますか

ダブルカスク12年が向きます。冷やすとタンニンの渋みが強く感じられるため、ヨーロピアンオーク樽だけのシェリーオーク12年は、冷えると渋みが前に出やすくなります。氷はグラスに近い大きさの塊を1つにすると、溶ける水が少なく薄まり方もゆるやかです。シェリーオークをロックで飲むなら、少し溶けて温度が戻ってから香りを取ると、ドライフルーツの香りを拾いやすくなります。

ダブルカスクのハイボールにレモンを添えるなら、搾ったほうがよいですか

搾らず、皮を軽くひねって香りの油を表面に飛ばす程度にとどめるのが無難です。ダブルカスク12年にはオレンジピールや柑橘の砂糖漬けの香味があり、皮の香りがそこを持ち上げます。果汁を入れると酸味が加わり、炭酸の酸味と重なって苦みが強まるうえ、トフィーの甘さも削られます。店で出す場合は、レモンの原価も1杯の原価に足してください。

つまみを合わせるなら、それぞれ何が合いますか

ダブルカスク12年には、公式の香味表現にあるミルクチョコレートやオレンジピールに寄せた、ミルクチョコや柑橘ピールのチョコがけが合わせやすい組み合わせです。シェリーオーク12年は渋みの骨格があるため、ナッツやチーズのように脂肪分のある食べ物が向きます。脂が渋みを和らげ、ドライフルーツの甘さが残りやすくなります。

出典・参考にした情報

この記事で紹介した銘柄

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。 妊娠中・授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがあります。 お酒は適量を楽しみ、飲酒運転は絶対におやめください。